「4色ローム」デッキガイド ~ウーズと土地の輪廻にようこそ~

増田 勝仁

はじめに

初めましての人は初めまして。いつもお世話になってる方はお疲れ様です。てんさいチンパンジーこと増田 勝仁(@tensai_manohito)です。

ありがたいことに今期もお声が掛かり、晴れる屋とのライター契約を結びました。これもひとえに応援してくださったみなさんのおかげです。ありがとうございます!今期もよろしくお願いいたします。

早速ですが、今回は「4色ローム」のデッキ紹介です。「名前は聞いたことあるけど、実際にはどういうデッキなのかよくわからない…」「興味はあって組んでみたけど、上手く使いこなせない…」といった方に向けての内容になります。なので、デッキの概要や大まかなプレイ指針などの解説が中心になります。

また、4色ロームを使う予定がない方に向けても、4色ロームの弱点や苦手なカードについても紹介しますので、最後までお付き合いいただけると幸いです。

4色ロームとは?

大スライム、スローグルク天上都市、大田原見捨てられたぬかるみ、竹沼耐え抜くもの、母聖樹

「4色ローム」とは、《大スライム、スローグルク》と「魂力」持ちの土地を中心とした土地コンボ・コントロールデッキです。名前の由来は《スローグルク》が「《壌土からの生命/Life from the Loam」と同等の挙動をとることから来ています。

4色ロームは長期戦に優れており、下準備さえ整えば《スローグルク》が単体で戦場の制圧からゲームのフィニッシュまですべてをカバーします。《見捨てられたぬかるみ、竹沼》とのセットで実質の除去耐性かつ、超強化されたサイズからのトランプルで相手のライフを一気に削り取ります。

また、《スローグルク》《ウィンドグレイスの魂》《天上都市、大田原》《耐え抜くもの、母聖樹》との組み合わせでリソースを減らさずに戦場やライフを操作することも可能です。

しつこい負け犬策謀の予見者、ラフィーン漆月魁渡

反面、序盤が脆いデッキであるため、苛烈な攻めや細かい交換を苦手としています。デッキ単位というよりは構造や展開に左右される面が大きいため、たとえば対エスパーミッドレンジにおいても、《しつこい負け犬》《策謀の予見者、ラフィーン》《漆月魁渡》のようなアグレッシブなカードが多ければ多いほど苦手ですが、逆に《不笑のソリン》《夜明けの空、猗旺》《聖域の番人》といった重いカードに寄せられたタイプは得意です。

敬虔な新米、デニック墓地の侵入者未認可霊柩車

また、《大スライム、スローグルク》《見捨てられたぬかるみ、竹沼》で墓地を使う都合上、当然ですが墓地対策に弱いです。

特に現在のスタンダードでは《敬虔な新米、デニック》《墓地の侵入者》《未認可霊柩車》といった採用率が高い&強力な墓地対策が多く存在するため、メイン戦はまだしも、サイド後にのびのびと自分のやりたいことをやって勝利!とは行かないパターンも多いです。

サンプルリスト

採用カード:メインボード

《英雄の公有地》

英雄の公有地

実質アンタップイン可能な全色ランド(!)

デッキ全体を伝説に寄せることによって、破格の性能になります。メインボードで《英雄の公有地》に対応していないカードは《アーボーグのルアゴイフ》《冥府の掌握》のみですし、そもそも緑と黒については《英雄の公有地》に頼らずとも十分なカウントを用意しています。このカードのおかげで、見た目以上に安定して色マナの供給&ラグも少なく展開できます。

アンタップインで色が出るだけでも十分ですが、呪禁付与の能力も強力です。《ウィンドグレイスの魂》《大スライム、スローグルク》が動き始めると土地が余りがちになるので、呪禁付与のためにマナを構える余裕も出てきます。

「魂力」土地

耐え抜くもの、母聖樹天上都市、大田原見捨てられたぬかるみ、竹沼

コンセプトを支える「魂力」土地たち。《見捨てられたぬかるみ、竹沼》はもっとも重要な「魂力」土地で、「切削」で墓地を肥やし、墓地回収で《大スライム、スローグルク》を使いまわす動きがインチキくさいです。《天上都市、大田原》《耐え抜くもの、母聖樹》も最終的には無限に使いまわせるようになるため、ほぼすべてのパーマネントに対応できます。

《大スライム、スローグルク》

大スライム、スローグルク

このデッキの切り札です。カード単体で見たときの強さは、明らかにスタンダードで許されるレベルを越えています。土地が墓地に落ちるたびに+1/+1カウンターが乗る能力によって、想像以上のスピードで育っていきます。かつトランプルのおかげでチャンプブロックも許さないため、いざ育ち始めると素早くゲームを畳んでくれるのです。

+1/+1カウンターを取り除くことで実質の除去耐性も持っており、仮に除去されても《見捨てられたぬかるみ、竹沼》を拾う→起動して《大スライム、スローグルク》を拾うことで結局は倒せません。また、戦場から離れたときに墓地の土地を回収する能力で稼ぐアドバンテージ量も異常です。すべてが強すぎます。

このカードの強さに疑いの余地はなく、どうやってこのカードをサポートするか・どうやってこのカードを活かしていくのかを考えていきます。それを突き詰めたのが、この4色ロームです。

《ウィンドグレイスの魂》

ウィンドグレイスの魂

土地に関連する能力を複数持ったクリーチャー。自前で土地を伸ばすので、手札から土地を置く必要がなくなる&置かない土地を利用する能力を持つ、単体でも強力なクリーチャーです。そこに《大スライム、スローグルク》と並ぶことで完璧なシナジーを形成します。

手札から土地を捨てると《スローグルク》が育ち、育った《スローグルク》が再び墓地の土地を回収し…と、十分なマナさえあれば半無限に《ウィンドグレイスの魂》の効果を使い続けられます。

主な使い方は、ライフ回復で実質相手のクリーチャーを無力化することです。4色ロームは常にマナを使い続けるので、土地を伸ばす能力も噛み合っていて非常に嬉しいです。このカードのためだけに赤をタッチするレベルですね。

《アーボーグのルアゴイフ》

アーボーグのルアゴイフ

切削&アタッカー。唯一の非伝説。重ねるほど強力で、先手は連打するだけで勝てるイージーウィンも発生します。ただし、墓地対策には非常に弱いので注意が必要であるのと、頻繁にサイドアウトするカードでもあります。

各種伝説のクリーチャー

屍術の俊英、ルーデヴィック樹海の幻想家、しげ樹ヴォーデイリアの冒涜者、ヴォハーラトスタイン翁

序盤を支える伝説のクリーチャーたち。それぞれがカードを墓地に送る能力を持っています。

単純に「切削」するだけなら《アンデッドの執事》《麒麟の教え》《風変わりな農夫》なども考えられますが、最終的に《見捨てられたぬかるみ、竹沼》《天上都市、大田原》《大スライム、スローグルク》でループするのが目的なため、「魂力」を1ターンで何度も使えるように伝説のクリーチャーを並べることが重要になります。そのため、効果が地味であったり被るリスクを考慮したうえでなお伝説のクリーチャーを優先しています。

《冥府の掌握》

冥府の掌握

普通の除去。デッキ全体をクリーチャーと土地に寄せる必要があるため、除去に割ける枠が少ないです。そのため、多少のデメリットは我慢して当たる範囲の広い・裏目の少ない強力な除去を優先しました。2点のライフ支払いは重くのしかかりますが、背に腹は代えられません。

採用カード:サイドボード

《穢れたもの、ソルカナー》

穢れたもの、ソルカナー

サイド後は墓地対策で詰むことを回避するために、墓地を利用しない勝ち手段として採用しています。《穢れたもの、ソルカナー》は毎ターンアドバンテージを生み出す強力なクリーチャーです。

《ラトスタイン翁》で適正ターンよりも素早く出ればそのまま制圧できますし、裏切り能力も大量に投入された《天上都市、大田原》で回避しやすく、デメリットはほとんど気になりません。また、《屍術の俊英、ルーデヴィック》のコピー能力を強く使える対象でもあるため、別軸の勝ち手段としてはベストだと考えています。

《切り崩し》

切り崩し

対アグロ用の追加除去。当たる範囲は狭いですが、《ザンダーの居室》《ジアトラの試練場》といった確定タップインランドの多さから、2マナ以降のカードが重なると消化しづらいです。そのため、タップインを処理しながら唱えられる1マナの除去を優先しています。

《未認可霊柩車》

未認可霊柩車

ほぼミラー専用の墓地対策。序盤のリソース管理がシビアで、何枚引いても強いわけではないです。そのため、最低限の1枚のみを採用しています。

《羅利骨灰》

羅利骨灰

ほぼ《未認可霊柩車》専用除去。いざ出てこなくても「キッカー」で万能除去になるので腐りにくいです。メインギミックが墓地を利用することもあり、この最強の墓地対策を無視することはできません。ただ、メインの戦略と噛み合ってるわけではないので、困ったら2本目はサイドインして、見えないようなら3本目はサイドアウトするくらいの気持ちです。

《否認》

否認

ほぼ《ヴェールのリリアナ》《絶望招来》専用打ち消し。序盤は1ターンに1アクションしか取れず、パーマネントを1つずつ並べることしかできません。そのため、適正ターンの《ヴェールのリリアナ》《絶望招来》はクリーンヒットしやすく、唱えられるだけで天井に突き刺さってしまいます。

《締めつける瘴気》

締めつける瘴気

ほぼ横並びトークン系デッキ専用除去。4色ロームは自分の展開を優先する都合上、序盤から細かく相手のカードに触ることがないため、トークン系デッキを苦手としています。なので、専用キラーカードとして全体除去をサイドに用意しています。

プレイ指針

本項ではプレイ指針について解説します。

ゴールを明確に!

コンボデッキを扱ううえで重要なのは、目指すべきゴールを明確にすることです。ただなんとなくカードを右から左に唱えているだけでは絶対に勝てません。

明確なゴールをイメージし、それに向かって「いまはスタートからゴールの間のどこにいるのか」「なにが足りないのか・なにがあればゴールなのか」を意識して戦いましょう。

4色ロームが目指すべき形は以下の通りです。

①戦場に《大スライム、スローグルク》《スローグルク》以外の伝説のクリーチャー×2体(《ウィンドグレイスの魂》が含まれているのがベスト)

②手札に《見捨てられたぬかるみ、竹沼》《天上都市、大田原》

この状態になると、《大スライム、スローグルク》はほぼ無敵になり、リソースも半無限です。《見捨てられたぬかるみ、竹沼》で土地を落とす&クリーチャーを拾う→《スローグルク》で土地を拾う→土地を伸ばして行動できる回数を増やす→…と繰り返して展開していき、最終的には《天上都市、大田原》を使いまわして戦場を制圧します。

クリーチャーを並べろ!

ヴォーデイリアの冒涜者、ヴォハー屍術の俊英、ルーデヴィックラトスタイン翁

とにかく伝説のクリーチャーを並べましょう。《ヴォーデイリアの冒涜者、ヴォハー》《屍術の俊英、ルーデヴィック》《ラトスタイン翁》は「魂力」土地の起動コストを軽くしつつ墓地を肥やす能力を有しているため、積極的に並べていきましょう。

勘違いされがちですが、4色ロームは墓地を貯めること自体はそこまで重要ではありません。それよりも《見捨てられたぬかるみ、竹沼》が1マナで起動できるようになることのほうが重要です。《竹沼》《スローグルク》を探すこともできますし、《竹沼》《スローグルク》とのセットでループできる状態になれば墓地は勝手に貯まっていきます。

屍術の俊英、ルーデヴィック大スライム、スローグルク見捨てられたぬかるみ、竹沼

理想は2~3ターン目に各種伝説のクリーチャー、4ターン目に《ウィンドグレイスの魂》or《大スライム、スローグルク》《見捨てられたぬかるみ、竹沼》/《天上都市、大田原》を構える展開です。ただし、クリーチャーを並べる都合上、序盤のしょうもないクリーチャーとの交換は控えましょう。

例えば、以下のような状況を考えます。

相手の戦場に《しつこい負け犬》、自分の戦場に《屍術の俊英、ルーデヴィック》、自分の手札に《ラトスタイン翁》と持っている場合。

この場合、《しつこい負け犬》の攻撃に対して《ルーデヴィック》をブロックに差し出すのはイマイチです。《しつこい負け犬》の攻撃はスルーして、返しの《ラトスタイン翁》で受けるようにしましょう。

マリガンはふわっと!

これといったマリガン基準は特に設けておらず、自分都合である程度動ければ問題ありません。あまりにも土地が多すぎる/少なすぎる場合はマリガンしますし、序盤がスカスカの手札もマリガンは検討したほうがよいです。4色ロームだからといって特に変わったことはありません。いつも通りで行きましょう。

序盤は土地を置け!

《大スライム、スローグルク》が回り始めてからはリソースは半無限です。ライブラリーが残っている限り無限に土地を拾い続けられ、《見捨てられたぬかるみ、竹沼》が起動できる限りはクリーチャーも無限に拾えます。

しかし、行動できる回数は土地の枚数というMTGの大前提は変わりません。何度も《大スライム、スローグルク》を出し直す都合上、土地はそれなりの枚数が必要になります。

見捨てられたぬかるみ、竹沼天上都市、大田原

なので、序盤は土地が置けるときに置きましょう。頻出するのは《見捨てられたぬかるみ、竹沼》《天上都市、大田原》などの「魂力」土地が手元に1枚しかないから…と手札にため込んでしまうケースです。

結局、土地が並んでいなければこれらの「魂力」土地も強く使えません。なので、序盤は悩んだら置いたほうがよいです。目安としては6枚目以降から悩むくらいがちょうどよいでしょう。5枚目まではノータイムで置いて問題ありません。

終盤は土地を置くな!

ウィンドグレイスの魂英雄の公有地

序盤は置いたほうがよいと言っていた土地ですが、終盤は逆にあまり置かないほうがよいです。手札に土地を残しておくことで、《ウィンドグレイスの魂》を引いたときに起動コストにあてられるためです。なので、置く必要のない土地は最低でも1枚は残しておきましょう。

ただし、《英雄の公有地》が複数戦場にある場合はその限りではありません。起動マナを確保するためにも土地は多めに並べたほうがよいです。このあたりの塩梅は難しいかもしれませんが、ある程度の指針が理解でれきばあとは流れでなんとかなるでしょう。

除去は大切に使え!

切り崩し冥府の掌握

《鏡割りの寓話》の第Ⅰ章で出てくるトークンなど、クリーチャーで受けられるレベルのサイズのクリーチャーは可能な限り無視しましょう。この程度のクリーチャーにまで除去を使い始めると手札がもちませんし、最終的に出てくる《黙示録、シェオルドレッド》といった強力なフィニッシャーに対抗できません。なので、除去は安く唱えずに狙いを定めていきましょう。

一気に詰めろ!

《見捨てられたぬかるみ、竹沼》《大スライム、スローグルク》のループに入れば勝利は目前でしょう。だからといってダラダラとやっていては《絶望招来》《怒りの大天使》で直接ライフを失う可能性もあります。なので、詰められるタイミングが来たらさっさとゲームを詰めていきましょう。

大スライム、スローグルク見捨てられたぬかるみ、竹沼天上都市、大田原

特によくあるのが以下の動きです。

1. 《大スライム、スローグルク》がいる状態で2体目を唱える。

2. 新しく出た《スローグルク》をレジェンドルールで墓地に落とす。

3. 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》を拾う→《竹沼》を起動して墓地を肥やしながら《スローグルク》を回収

と繰り返して、最後は《天上都市、大田原》を拾って相手のブロッカーを排除するパターンは覚えておきましょう。《見捨てられたぬかるみ、竹沼》の過程で戦場の《大スライム、スローグルク》が巨大化していくので、これで一気に詰めることができます。

サイド方針

本項ではサイド指針について解説します。サイドイン候補については採用カード解説の項で解説済みのため、サイドアウト候補について解説していきます。

4色ロームに採用されているカードは非常にシンプルです。

①「《大スライム、スローグルク》《ウィンドグレイスの魂》

②「①以外の伝説のクリーチャー」

③「《アーボーグのルアゴイフ》

④「《冥府の掌握》

役割で分けると上記の4種だけです。この中でも①はサイドアウトしません。どのマッチでも残します。それ以外の②③④から選びましょう。

各種伝説のクリーチャー

樹海の幻想家、しげ樹ヴォーデイリアの冒涜者、ヴォハー屍術の俊英、ルーデヴィック

《樹海の幻想家、しげ樹》《ヴォーデイリアの冒涜者、ヴォハー》《屍術の俊英、ルーデヴィック》などです。被ったときに役割が薄いので、《切り崩し》《締めつける瘴気》と差し替えるときはこのあたりが候補になります。

《アーボーグのルアゴイフ》

アーボーグのルアゴイフ

《未認可霊柩車》のような墓地対策に対して無力です。サイズは一切上がらず、無駄な「切削」は《未認可霊柩車》を無駄に育てさせてしまうだけです。別軸のフィニッシャーである《穢れたもの、ソルカナー》に差し替えましょう。

《冥府の掌握》

冥府の掌握

5色版図のような対象の少ない相手には減らしましょう。また、先手の場合は除去よりもクリーチャーの展開を優先する都合上、減らしたほうがよいでしょう。

4色ローム対策

本項では4色ローム対策について解説します。

《未認可霊柩車》

未認可霊柩車

墓地を利用したデッキなので、当たり前ですが墓地対策が刺さります。その中でも、恒久的かつ最後はアタッカーとして運用できる《未認可霊柩車》は最強の対策カードです。頼むからサイドに入れないでくれ…(?)

《告別》

告別

マジでヤバいです。クリーンヒットしたらその場で試合終了です。4色ロームは戦場にどんどんクリーチャーを並べていく&墓地もリソースとして使うデッキなので、一発綺麗にもらったらゲームセットです。

一応、《大スライム、スローグルク》に+1/+1カウンターが3つ乗った状態をキープできるところまで持っていければ、《告別》に対応して《スローグルク》を手札に戻す&墓地から複数の《竹沼》《大田原》《ザンダーの居室》《ジアトラの試練場》を拾うことでリカバリーは可能です。

遅れれば遅れるほどケアはしやすいので、適正ターンに唱えられることのみ割り切ることが多いです。

《ヴェールのリリアナ》《絶望招来》

ヴェールのリリアナ絶望招来

4色ロームの弱点は主に以下の2つが挙げられます。

① リソースを稼げるカードが少ない

② 1ターンに複数アクションを取りづらい

そのため、上記の弱点を突く《ヴェールのリリアナ》《絶望招来》を苦手としています。特に適正ターンに唱えられる場合はケアもクソもないので、クリーンヒットして悶絶します。

《墓地の侵入者》

墓地の侵入者

ほかの対策に比べるとインパクトは小さいですが、これでも十分に効果的です。ただし、《ラトスタイン翁》《ウィンドグレイスの魂》や少し育った《大スライム、スローグルク》で止まってしまうので、過信は禁物です。

《敬虔な新米、デニック》

敬虔な新米、デニック

《大スライム、スローグルク》が止まります。意外と止まるのは《スローグルク》だけなので、なんとかなるのでは?と思うかもしれませんが、《スローグルク》が中心のデッキなのでなんともなりません。とはいえ、ほかの対策に比べれば比較的マシと言えるでしょう。

単体除去/打ち消し

4色ロームは最終的にいくつかのカードを無視することができます。その最たるが序盤のクリーチャーです。《大スライム、スローグルク》との戦闘では無力だったり、《ラトスタイン翁》《ウィンドグレイスの魂》を突破できなかったりなどなど。サイズの小さいクリーチャーは賞味期限が短く、意外と腐りやすいです。

そのため、専用のサイドカードを取るほどの枠がない場合は「リソース交換(除去、手札破壊、打ち消しなど)+リソース獲得手段(ドローソース、墓地回収など)」という構成を意識するとよいです。

冥府の掌握かき消し勢団の銀行破り

《ラトスタイン翁》で止まってしまうクリーチャーや《天上都市、大田原》にハマりやすい重いクリーチャーをサイドアウトし、リソースに直結する除去や打ち消し、ドローソースに入れ替えましょう。戦場のクリーチャーを片っ端から除去して《見捨てられたぬかるみ、竹沼》を効率よく起動できないようにさせれば、《婚礼の発表》《鏡割りの寓話》だけでも十分に押し切れます。

TIPS

本項では4色ロームを扱うにあたってのTIPSを紹介します。

《ウィンドグレイスの魂》

ウィンドグレイスの魂

テキストからは分かりづらいですが、土地を拾う効果は対象を取っていません。そのため、選んだ後に《未認可霊柩車》で妨害されることはありませんし、《敬虔な新米、デニック》が戦場にいても問題なく拾えます。

また、土地を拾う効果は相手の墓地も選べます。自分の墓地は《大スライム、スローグルク》で回収する用に取っておきたいので、基本的に相手の墓地から選びましょう。

《見捨てられたぬかるみ、竹沼》

見捨てられたぬかるみ、竹沼

《ウィンドグレイスの魂》同様、対象を取りません。また、拾うクリーチャーは解決時に選ぶので、墓地にクリーチャーがいないときでも起動型能力を使うことができます

《屍術の俊英、ルーデヴィック》《ルーデヴィックの傲慢、オーラグ》

屍術の俊英、ルーデヴィック屍術の俊英、ルーデヴィック

コピーするクリーチャーを選んで追放するはコストです。対応して対象を取り除いて不発にさせる、ということはできません。ただし、対応して《屍術の俊英、ルーデヴィック》を除去することは可能です。

コピーしても名前は《ルーデヴィックの傲慢、オーラグ》で固定なので、すでに戦場にいるクリーチャーをコピーしても、レジェンドルールが適用されることはありません。《アーボーグのルアゴイフ》をコピーしてもステータスは4/4で固定です。

質問解答

事前にTwitter(マシュマロ)で質問を募ってたので、それについて回答します。質問を投げて下さった方々、ありがとうございます。

Q1. 《スレイベンの守護者、サリア》《策謀の予見者、ラフィーン》は使わないの?《ウィンドグレイスの魂》より《ラフィーン》のほうが強くない?

同様の質問内容が最多でした。いずれも質問の本質は同じなので、まとめて回答します。

(※便宜上、今回紹介したリストは赤型(《ウィンドグレイスの魂》採用)、比較対象を白型(《策謀の予見者、ラフィーン》採用)と称します)

スレイベンの守護者、サリア策謀の予見者、ラフィーン夜明けの空、猗旺

白い伝説のクリーチャーは間違いなく強力です。《スレイベンの守護者、サリア》《策謀の予見者、ラフィーン》《夜明けの空、猗旺》などなど。どれも緑や黒だったら採用されていたクリーチャーでしょう。

問題はマナベースです。赤型の色カウントはG=18, B=18, U=18, R=12で、しかも赤マナは《ザンダーの居室》《ジアトラの試練場》《英雄の公有地》から出すため、ほかの色カウントを妨害しません。加えて、赤いカードが《ウィンドグレイスの魂》《穢れたもの、ソルカナー》と重いカードのみで、序盤に赤マナを必要としません。

しかし、白型の場合は4マナ以上の《ウィンドグレイスの魂》《穢れたもの、ソルカナー》の代わりに、《スレイベンの守護者、サリア》《策謀の予見者、ラフィーン》といった序盤からの白マナを要求します。

赤型と同じようなマナベースでは、明らかにバランスの崩れたカードの束になってしまうことは明白です。この問題さえクリアできれば白型も優れた選択肢といえるでしょう。

解決のための方法はいくつか考えられますが、その1つは単純にマナベースを整えることです。採用カードの色を絞ることでマナベースへの負荷を下げ、実現可能なレベルまでに整えるのです。

樹海の幻想家、しげ樹ラトスタイン翁

たとえば、《樹海の幻想家、しげ樹》《ラトスタイン翁》のような《大スライム、スローグルク》以外の緑のクリーチャーを廃してみるのはどうでしょうか。これならば、赤型がスゥルタイタッチ赤でまとめられているのと似たようなイメージで、エスパータッチ緑にまとまると思います。

実際に並べてみてみましょう。

サンプルリスト:4色ローム白型

これならば色カウントはB=18, U=20, W=18, G=12となり、十分な枚数といえるでしょう。もともとの《冥府の掌握》の枠は《皇国の地、永岩城》に差し替えたので、色カウントにかなり余裕ができています。

敬虔な新米、デニック

《敬虔な新米、デニック》《大スライム、スローグルク》と相性が悪いですが、序盤はナイスサイズブロッカーかつ裏面は墓地にクリーチャーが落ちやすい構造と相性がよいため採用してみました。《デニック》自体が墓地に落ちればそれもリソースとして数えられるため、多少の《スローグルク》との相性の悪さには目をつむりましょう。

Q2.《ウィンドグレイスの魂》の強さがイマイチ分からない!このカードって本当に必要?

ウィンドグレイスの魂

この質問内容も複数来ていました。白型のほうが単純なカードパワーが高く、人気があるようです。ただ、採用カード紹介の項でも紹介した通り、《ウィンドグレイスの魂》は4色ロームの2枚看板の片割れだと思っています。

というわけで、《ウィンドグレイスの魂》に関連する疑問や回答をいくつかまとめてみました。

墓地に土地がないときには出さないほうがよい?

出したほうがよいです。

常にマナを使うデッキなので、基本的にはマナを使い切り続けた方が、中盤以降のダブルアクションに繋がって良い方向に転がることが多いです。

土地を釣り上げると墓地に土地がなくなって《大スライム、スローグルク》と相性が悪くない?

序盤~中盤はとにかく土地を伸ばしたいので、墓地から土地がなくなっても構いません。

見捨てられたぬかるみ、竹沼大スライム、スローグルク

《見捨てられたぬかるみ、竹沼》《大スライム、スローグルク》がループし始めれば墓地は気にしなくてよくなるので、まずは土地を伸ばす方が大事です。

起動型能力が使いづらい!

ライフ回復がもっとも重要で、それ以外はたまに使うかな…というレベルです。ライフ回復も《大スライム、スローグルク》がセットじゃない限りは損をしてしまうので、無理して使う必要はありません。


以上をすでに踏まえたうえで「やはり不要だ!」と考えているのであれば、先述した白型をテストしてみるのはいかがでしょうか。

紹介するリストが必ずしも正解とは言えませんし、疑問や不満を抱いたまま同じリストを回し続けるのも不毛です。せっかくなので、いろいろなカード・リストをテストしてみたほうが建設的です。

Q3. エスパーミッドレンジ/グリクシスミッドレンジの押しつけがキツい!

策謀の予見者、ラフィーン死体鑑定士

申し訳ないですが、これについては回答を持ち合わせていません…

これは4色ロームに限った話ではなく、ほかのデッキでも相手の理想的な動きには対抗できないことのほうが多いです。デッキ云々ではなく、現在のスタンダード全体がそうなっています。なので、無理なものは無理!と割り切るしかないと思います。

Q4. 《ドーンハルトの主導者、カティルダ》《浄化の刃、シャナ》《アーボーグのラタドラビック》《レンと七番》はどうですか?

《アーボーグのラタドラビック》はデッキと噛み合っていますし、特に白型であれば積極的に採用したい4マナ域だと思います。ほかのクリーチャーについてはちょっと懐疑的です。

《ドーンハルトの主導者、カティルダ》

ドーンハルトの主導者、カティルダ

マナクリーチャーに求められている要素の1つとして”足りない色マナを供給する“ということが挙げられます。

《ドーンハルトの主導者、カティルダ》は自身だけでは白/緑マナしか供給できないため、結局は色カウントのサポートにはなりません。マナフラッドが受けられる点は評価できますが、あまりデッキと合っているとは言い難いです。

《浄化の刃、シャナ》

浄化の刃、シャナ

攻撃を通すための除去が足りておらず、仮にドローできたとしても引いた手札を戦場に還元するまでにあまりにも時間が掛かりすぎます。伝説のクリーチャーである1点でしか評価できず、流石に4色ロームに採用するのは難しいかなと思います。

《レンと七番》

レンと七番

プレインズウォーカーで除去に強くする思想は間違いないと思いますが、いかんせん重いのが気になります。また、《見捨てられたぬかるみ、竹沼》などの「魂力」土地はプレインズウォーカーでは軽くならないため、ちょっとチグハグに感じます。惜しいカードだとは思うので、あまりにも飛行が止まらなすぎる点が気になるのであれば、検討の余地はあるかもしれません。

Q5. 《ヴォーデイリアの冒涜者、ヴォハー》が弱い!

ヴォーデイリアの冒涜者、ヴォハー

正直、相手が《敬虔な新米、デニック》《しつこい負け犬》《税血の収穫者》を唱えた返しに《ヴォーデイリアの冒涜者、ヴォハー》を唱えるのはどうなんだ…と思うのは至極真っ当な感想です。

ただ、それを”弱い”で片付けるのであればこんな質問は来ないでしょう。きっとなんとかしたいと思いつつも、代案が思いつかず現状にもやもやしているのでしょう。

《ヴォーデイリアの冒涜者、ヴォハー》は「伝説のクリーチャーである」「墓地を肥やす効果を持っている」という2点だけで採用されています。それ以外の要素を無視しているため、「ステータスが貧弱すぎて相手の攻撃が一切止まらない」「除去が少なすぎて墓地利用の起動型能力を使いこなせない」などの問題が残ったままです。

見捨てられたぬかるみ、竹沼天上都市、大田原

それを踏まえてなお、《見捨てられたぬかるみ、竹沼》《天上都市、大田原》を強く使うという思想の下で採用されています。

弱い、というのはまさに「ステータスが貧弱すぎて相手の攻撃が一切止まらない」などのデメリット部分の話でしょう。どうしてもこの部分が気になるというのであれば、それをクリアしたカードに差し替えてみるのも手です。最終版では採用に至らなかったものの、十分強力と感じたテスト済みのカードを2種紹介しますので、ぜひとも試してみてはいかがでしょうか。

《穢れた敵対者》

穢れた敵対者

序盤を埋める2マナ域かつ2/3というステータスで、《鏡割りの寓話》のトークンをガッチリ止めます。トークンを出すモードは、《大スライム、スローグルク》《ウィンドグレイスの魂》で伸ばした土地を利用して大量に出すことが可能なので、ゲームを速やかに片付けることができます。

惜しむらくは伝説のクリーチャーでないこと。そのせいで《英雄の公有地》から色カウントを取ることができないため、若干マナベースをいじる必要が出てきます。

《機械壊しの河童》

機械壊しの河童

《穢れた敵対者》と異なりパワーは小さいですが、タフネス3かつ接死を持っているため、《鏡割りの寓話》のトークンはしっかり止められます。また、《婚礼の発表》に対してもプレッシャーを掛けられます。このクリーチャーの攻撃に対して、相手は接死持ちへクリーチャーを差し出すか、黙って《婚礼の発表》を破壊されるのを眺めるかの2択を迫れるのです。

《穢れた敵対者》同様、伝説のクリーチャーでないのがネック。効果だけ見れば絶対に採用したいレベルで強力なのですが…

Q6. 最新のリストを教えて!

肉体装置技師、アシュノッドガイアの声、ティタニア喉首狙い

『兄弟戦争』からいくつか強化されそうなカードもありますね。記事の最後にアップデート版のリストを紹介します。

Q7. 《未認可霊柩車》のような墓地対策は、どのように使われるのがキツい?

未認可霊柩車

《大スライム、スローグルク》がいない間は簡単です。適当で大丈夫です(?)

問題は《スローグルク》がいる場合で、おそらく質問していただいた方もそれを気にしていることでしょう。

大スライム、スローグルク見捨てられたぬかるみ、竹沼

+1/+1カウンターが3つ乗っている状態で墓地の土地を対象に取ろうものなら、起動型能力で手札に戻されてしまいます。仮に+1/+1カウンターが3つ乗っていなかったとしても、《未認可霊柩車》の起動に合わせて《竹沼》を起動→《スローグルク》を起動と動かれることもあり、なかなか上手くいきません。

そうなると《未認可霊柩車》《スローグルク》の起動のチキンレースになってしまい、基本的にはクリーチャー側のほうが有利です(ゲームを進める打点を持っている分だけ、クリーチャーのほうが有利なのは当然ですが)。

冥府の掌握邪悪を打ち砕く

なので、強制的に《スローグルク》を起動させる除去とセットで運用するのがよいです。除去で《スローグルク》を退かそうとする→《スローグルク》が戻る→対象に取られた墓地の土地を《未認可霊柩車》で先に追放しましょう。

また”《未認可霊柩車》単体で起動すると、《スローグルク》を手札に戻させられる“とも考えられます。相手の攻撃時やターン終了時に《未認可霊柩車》を起動することで、《スローグルク》を強制的に戻すかそのまま土地を追放するかの2択を迫れます。もちろん、そのまま土地を追放できればこちらの望む展開なので問題ないでしょう。

ただ、相手は土地を回収することを諦めて、《スローグルク》が一切手札に戻らず、逆に巨大化した状態で殴りかかってくることも考えられます。その状態でもやはり除去が輝きます。なので、ベストは「除去とセットで運用すること」です。

『兄弟戦争』によるアップデート

すでに『兄弟戦争』のカードリストが公開されています。その中から強化されそうなカードをいくつか紹介します。

《ラノワールの荒原》

ラノワールの荒原

ダメージランドもこれで10種勢ぞろい!これでトライオーム+スローランドの組み合わせで、2ターン目に2マナ域のクリーチャーが唱えられないパターンが減ります。多少痛いのはご愛嬌ということで。

《ガイアの声、ティタニア》

ガイアの声、ティタニア

ライフ回復!《ウィンドグレイスの魂》がほぼライフゲイン目的で入っていることを考えても、この能力は嬉しいです。サイズもやけにデカく、《しつこい負け犬》《税血の収穫者》をガッチリガードするタフネス4の安心設計です。

《自然の聖域、アルゴス》

自然の聖域、アルゴス

ティタニアとの合体カードの片割れ。ほぼタップインなのがイマイチです。あわよくば《大スライム、スローグルク》から拾って合体できたらいいな…くらいの1枚が限界でしょう。《自然の聖域、アルゴス》は採用せず、ティタニアのみの採用も十分考えられます。

《肉体装置技師、アシュノッド》

肉体装置技師、アシュノッド

1マナの伝説クリーチャー!これだけで採用理由に足ります。接死以外の効果はどれもオマケですが、1マナで伝説のクリーチャーを設置できるということがそもそも最強です。絶対に4枚!絶対です!!

《忠実な護衛、ハジャール》

忠実な護衛、ハジャール

《無私の霊魂》を彷彿とさせる破壊不能付与に加えて、脅威の2マナ3/3というサイズ!戦場にクリーチャーを並べるコンセプトにマッチしています。現状のマナベースのままでの採用は難しいですが、マナベースを調整したうえでぜひとも採用したいです。

《喉首狙い》

喉首狙い

《冥府の掌握》の2点ダメージとはおさらば!環境で活躍するクリーチャー次第では《冥府の掌握》に戻る可能性はありますが、基本的には《喉首狙い》のほうが優れているでしょう。

サンプルリスト:「4色ローム」アップデート版

残念ながら《忠実な護衛、ハジャール》はマナベースの都合上で採用できませんでした…。《ヴォーデイリアの冒涜者、ヴォハー》《屍術の俊英、ルーデヴィック》との同居は難しそうなので、このあたりの採択を変えれば上手くいきそうな気がします。どなたかよろしくお願いします(丸投げ)。

おわりに

「4色ローム」ガイドは以上になります。

4色ロームは比較的新しいデッキで、現在のミッドレンジ環境に対して真っ向から挑む新しいタイプのデッキです。伝説のクリーチャーが追加される度に強化されるので、今後の伸び代もあります。まだまだ開拓の余地が残されていますので、どのような活躍をしていくのか楽しみです。

本記事を通じて4色ロームの魅力が少しでも伝わったのなら幸いです。それではまた。

増田 勝仁(Twitter)

この記事内で掲載されたカード

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

増田 勝仁 リミテッドよりも構築フォーマットを得意とし、ひとたび好みのデッキを見つけるとただひたすらに使い続ける。そのやり込み具合は日本でもトップクラスで、誰よりもデッキへの理解が深く、プロからも一目置かれているプレイヤーだ。「日本一」の称号を求めて戦う「日本選手権2019」でトップ8に入賞し、舞台をオンラインへと移した「日本選手権2021 SEASON1」では使い続けたナヤフューリーで悲願の優勝。マジックの歴史にその名を刻んだ。 増田 勝仁の記事はこちら