USA Modern Express vol.86 -微笑みのゴブリン-

Kenta Hiroki

はじめに

みなさんこんにちは。

日本国内では年末に『The Last Sun 2022』が控えており、モダンのテーブルトップイベントが充実していますね。

今回の連載では、先週末に開催された『Modern Showcase Challenge』と『Modern Challenge』の入賞デッキを見ていきたいと思います。

Modern Showcase Challenge 11/19
ショーケースを制したのは部族デッキ

2022年11月19日

  • 1位 Goblins
  • 2位 Hardened Scales
  • 3位 Rakdos Evoke
  • 4位 Rakdos Evoke
  • 5位 Rakdos Evoke
  • 6位 Calibrated Blast Combo
  • 7位 Belcher
  • 8位 Azorius Control

トップ8のデッキリストはこちら

先週末にMOで開催されたShowcase Challengeは、参加者350人のスイスラウンド9回戦という長丁場で行われました。

一番入賞者が多かったのはRakdos Evokeで、なんと優勝したのは赤黒をベースに《下賤の教主》を採用したGoblinsでした。

デッキ紹介

Goblins

Goblinsは今まで目立った活躍こそありませんでしたが、セットがリリースされる度に強力なゴブリンクリーチャーが登場し、トーナメントレベルにまで強化されました。

人目を引く詮索者ボガートの先触れ鏡割りのキキジキ

部族シナジーを利用してアドバンテージを稼げるデッキなので、除去にもある程度耐性があります。また、《ボガートの先触れ》《人目を引く詮索者》(《鏡割りのキキジキ》)による瞬殺コンボも搭載されており、最速で3ターン目に決めることが可能です。

コンボの基本的な動きは以下のとおり。

1. 召喚酔いしていないアンタップ状態の《人目を引く詮索者》を用意する。

2. 《ボガートの先触れ》を場に出して、能力で《鏡割りのキキジキ》をライブラリートップに設置。

3. 《人目を引く詮索者》がライブラリートップの《鏡割りのキキジキ》の起動型能力を得ることができるため、自身のコピーであるトークンを無限に生成。

相手のエンド時に起動すれば、返しのターンでのアタックで勝利です。《霊気の薬瓶》を利用することによって、インスタントタイミングで不意をつくこともできます。

また、《投石攻撃の副官》がいればゴブリン・トークンをサクリファイスしてドレインするという手段もあり、戦闘をすることなくゲームを終わらせることもできます。

☆注目ポイント

ゴブリンの首謀者モグの戦争司令官

《ゴブリンの首謀者》を始めとしたアドバンテージ獲得手段があり、《敏捷なこそ泥、ラガバン》に対するブロッカーも多いためIzzet Ragavanやコントロールなどフェアデッキに強い反面、「続唱」デッキなどコンボを苦手とします。

虚空の力線血染めの月

そのため、サイドボードには《虚空の力線》《血染めの月》が多めにとられています。《血染めの月》はTronやAmulet Titanなどの土地コンボだけでなく、《不屈の独創力》コンボにも有効です。

ゴブリンの損壊名手仮面の蛮人万物の姿、オルヴァール

《ゴブリンの損壊名手》はロードでありながらメインから無理なく採用できるアーティファクト対策でもあり、Hammer Time相手に活躍してくれます。

赤黒だとどうしてもエンチャントに触りづらいので《仮面の蛮人》がサイドに用意されています。1枚だけですが、ゴブリンなので《ゴブリンの女看守》でサーチしてくることが可能です。《万物の姿、オルヴァール》《不屈の独創力》コンボの《残虐の執政官》対策になります。

Azorius Control

プロツアー殿堂プレイヤーのGuillaume Wafo-Tapa氏も参戦し、見事にプレイオフ進出を果たしていました。

デッキはもちろん彼の得意とするAzorius Controlで、一般的なリストと違いプレインズウォーカーを最小限にまで絞り、インスタントスピードのスペルが中心のコントロールになっています。

☆注目ポイント

時を解す者、テフェリー孤独サメ台風

プレインズウォーカーは《時を解す者、テフェリー》のみと必要最低限にまで絞られており、勝ち手段も《孤独》《サメ台風》といったインスタントスピードで動けるものが選択されています。また、《時を解す者、テフェリー》《虚空の杯》は「続唱」対策にもなります。

神聖なる月光激しい叱責

《神聖なる月光》は主に《不屈の独創力》コンボや《衝撃の足音》対策です。《ウルザの物語》の構築物・トークン対策になる《激しい叱責》もあり、環境に合わせたカードの採択がされています。

ヘリオッドの高潔の聖堂

採用されている特殊地形では《ヘリオッドの高潔の聖堂》が印象的です。エンチャント版の《アカデミーの廃墟》で、《サメ台風》とのコンボはWafo-Tapa氏のこだわりが分かる調整になっています(Wafo-Tapa氏は『時のらせん』ブロック構築のプロツアーにおいて、《トリスケラバス》《アカデミーの廃墟》で再利用するコントロールで優勝した)。

Rakdos Evoke

禁止改定後のモダンのイベントで結果を残し続けているRakdos Evoke。

優秀な除去やクリーチャーに加えて、「想起」した《悲嘆》《激情》を「不死」系スペルで使いまわすコンボを搭載したデッキで、最速で1ターン目から相手のプランを半壊させることができます。

《鏡割りの寓話》《歴戦の紅蓮術士》などのおかげでマナフラッドしにくいのもこのデッキの強みですが、単体では弱い「不死」系スペルが腐ることも少なからずあり、墓地を使うため墓地対策に弱いという弱点があります。

☆注目ポイント

鏡割りの寓話歴戦の紅蓮術士

《不死なる悪意》などの「不死」系スペルは、対象になるクリーチャーが引けなかった際は不要牌になるリスクがあります。そのため、手札を入れ替えることができる《鏡割りの寓話》《歴戦の紅蓮術士》といったカードは重要です。

終止月の大魔術師仕組まれた爆薬

除去は《濁浪の執政》《原始のタイタン》を対象に取れる《終止》が優先されています。サイドの《月の大魔術師》は、《耐え抜くもの、母聖樹》で除去されない対Amulet Titan/Tron用カードです。《仕組まれた爆薬》《ヴェクの聖別者》《虚空の杯》《不屈の独創力》コンボのトークンなどさまざまなマッチアップで使えます。

Modern Challenge 11/20
環境最高のミッドレンジ

2022年11月20日

  • 1位 Rakdos Evoke
  • 2位 Hammer Time
  • 3位 5C Cascade
  • 4位 Merfolk
  • 5位 Jeskai Breach
  • 6位 Izzet Ragavan
  • 7位 Izzet Ragavan
  • 8位 Izzet Prowess

トップ8のデッキリストはこちら

日曜日に開催されたModern Challengeは、フェアデッキが多数結果を残していました。

Jeskai BreachやHammer Time、5C Cascadeといったコンボデッキも勝ち残っているなど、禁止改定後のモダンは多種多様なデッキが活躍できる環境になっています。

Jeskai Breach

《研磨基地》+《死の国からの脱出》+《モックス・アンバー》など0マナのアーティファクトによるループコンボを搭載したデッキ。「ストーム」を稼いで最終的に《ぶどう弾》で勝利します。最速で3ターン目にはコンボを決めることができるため、ほかのコンボデッキに対しても速度で劣ることはありません。

《敏捷なこそ泥、ラガバン》《ウルザの物語》《表現の反復》といった環境最強レベルのカードもあり、コンボに頼らずとも十分に強いデッキで軽いアクションが多く動きも安定しています。

☆注目ポイント

湖に潜む者、エムリーウルザの物語

《湖に潜む者、エムリー》このデッキのエンジンであり、《死の国からの脱出》のために墓地を肥やす役割を果たし、《ミシュラのガラクタ》を再利用することでアドバンテージ源としても機能します。

《ウルザの物語》は脅威となる構築物・トークンを2体生み出しつつ、コンボパーツの《モックス・アンバー》をサーチできます。

帳簿裂き

《帳簿裂き》は墓地の状況に依存しないアタッカーとして優秀ですが、このデッキではコンボパーツを探しつつ墓地も肥やすことができる「謀議」がより重要になります。

シナジーデッキは不要なパーツが手札で腐るリスクがありますが、《帳簿裂き》によって容易に有効牌に変換できます。《湖に潜む者、エムリー》の能力によって同じターンに複数のスペルをプレイしやすくなるので、Izzet Ragavanなどほかの《帳簿裂き》デッキよりも「謀議」が誘発します。

時を解す者、テフェリー

《死の国からの脱出》コンボは基本的に青赤がメインでしたが、白をタッチすることで《時を解す者、テフェリー》が使えるようになりました。

《時を解す者、テフェリー》相手の妨害をシャットアウトできるのでコンボを安全にしやすくしたり、このデッキにとって苦手な「続唱」コンボを対策しつつ《虚空の杯》《濁浪の執政》といった問題となるカードをバウンスしたりと、このデッキにとって必要な要素を多く持ったプレインズウォーカーです。

また、[-3]能力によって《モックス・アンバー》をバウンスしてマナを増やしたり、《死の国からの脱出》を使いまわしたりすることもできます。

虹色の終焉摩耗+損耗

白を足すことで《虹色の終焉》《摩耗/損耗》といった優秀な除去を採用できるようになり、特に《摩耗/損耗》《ウルザの物語》、Hammer Timeの装備品、《虚空の杯》など厄介な置物を効率的に処理することができます。

総括

禁止改定からしばらく経ちますが、現在のモダンはコンボやフェア問わずにさまざまなデッキが活躍しています。

GoblinsやMerfolkといった部族デッキも、最近のセットで強化されて環境のトップデッキとも渡り合えるほどになり、プレイしていて楽しい環境といえます。

USA Modern Express vol.86は以上となります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!

この記事内で掲載されたカード

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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら