はじめに
みなさんこんにちは。
先週末はMMM Finals 2022 Winterが開催され、年末にはTHE LAST SUN 2022が控えているなど、今年はモダンのテーブルトップのイベントが充実していますね。
さて、今回の連載ではModern Showcase Qualifier、MMM Finals 2022 Winter、NRG Seriesの入賞デッキを見ていきたいと思います。
Modern Showcase Qualifier
強豪ぞろいの予選
2022年12月3日
- 1位 Eldrazi Tron
- 2位 Izzet Ragavan
- 3位 Rakdos Grief
- 4位 Belcher
- 5位 Hammer Time
- 6位 Rakdos Grief
- 7位 Jeskai Breach
- 8位 Jeskai Breach
トップ8のデッキリストはこちら
今大会の優勝者には、MOCS本戦への参加権が与えられます。Modern Showcase Challengeで上位まで勝ち残ったプレイヤーや、直前の予選を抜けたプレイヤーのみが参戦できるイベントだけあり、小規模ながら強豪ぞろいのレベルの高いイベントになりました。
優勝したのは、なんとEldrazi Tron。かつてはカードパワーの高さで常に一定数見られたエルドラージでしたが、『モダンホライゾン2』など強力なセットが登場して以降は、カードパワーのインフレにより環境からしばらく姿を消していました。
準優勝はIzzet Ragavanで、ほかにはRakdos Griefなど最近の強力なカードを搭載したデッキが中心でした。
デッキ紹介
Eldrazi Tron(1位)
最近のカードもちらほら見られますが、基本的な構成は数年前とほとんど変わらず、トロンランドや《エルドラージの寺院》を用いて各種エルドラージ・クリーチャーやプレインズウォーカーで攻めるミッドレンジデッキです。
《大いなる創造者、カーン》によってサイドボードから状況に応じたアーティファクトをサーチできるので、メインからさまざまなマッチアップに対応することができます。
☆注目ポイント
《虚空の杯》は現在トップメタの一角であるIzzet Ragavanや「続唱」デッキなどに対して有効なカード。《難題の予見者》や《現実を砕くもの》といったサイズのクリーチャーを処理できる《邪悪な熱気》もシャットアウトできます。
最近のカードも使われています。《カーンの酒杯》はフェッチランドやファイレクシアマナを対策でき、ラグはあるもののスイーパーとしても機能するため《血染めの月》など厄介な置物も対策できるようになりました。
《刻まれたタブレット》は確実性に欠けるのがネックとなりますが、1マナと軽く土地が手に入らなくても最低限キャントリップとして機能します。
無色デッキですが、《四肢切断》や《歪める嘆き》といった除去のおかげで相手の序盤の猛攻に押し負けるという弱点も緩和されています。特に《歪める嘆き》はソーサリーをカウンターできるのが優秀で、現環境には《不屈の独創力》《死せる生》《衝撃の足音》といったソーサリーが多いので活躍の機会に恵まれています。
Izzet Ragavan(2位)
今大会で準優勝したIzzet Ragavanは筆者も愛用しているデッキで、MOやSCGのテーブルトップイベントなどでもよく使っているデッキです。
このデッキの明確な強みは、効率的なスペルやキャントリップ、「諜報」「謀議」による一貫性と対応力の高さで各マッチアップで適切なゲームプランを実行することができます。
《帳簿裂き》や《ドラゴンの怒りの媒介者》によってサイドボードのカードを探せるので、メインでは不利とされているマッチアップの改善も図りやすく、序盤から圧力をかけれることからコンボデッキとのマッチアップを得意とします。除去が多く《虚空の杯》のあるAzorius Controlは、メインは不利なマッチとなりますが、カウンターが増えるサイド後は改善されます。
☆注目ポイント
《空を放浪するもの、ヨーリオン》が禁止になる前の環境では、多色コントロールやミラーマッチが多かったためアドバンテージを稼げる《大魔導師の魔除け》 を採用した形が主流でした。しかし、禁止改定後は多色コントロールが衰退し、《不屈の独創力》コンボや《力線の束縛》の登場によりトライオームを多用するデッキが増加したため、《血染めの月》をメインから採用した形が主流になっています。
ただ最近は《血染めの月》が意識され始めたので、以前と比べるとメイン戦でのサプライズ要素が薄くなったためメインから外れる傾向にあります。
現環境はコンボデッキが多く、それらのデッキは自身のコンボを守る能力にも長けているため、1ターンに複数のアクションを取れることが要求されます。そのため、コストの軽さを重視して《呪文貫き》がメインから3枚とられています。
サイドの《歴戦の紅蓮術士》はこのデッキではあまり見られないカードですが、アドバンテージを取れる勝ち手段としてコントロールやミラーマッチなど除去を多用するマッチアップで活躍します。
《万物の姿、オルヴァール》は《不屈の独創力》コンボに対するメタカードです。最近は《頑強》など《不屈の独創力》以外でも《残虐の執政官》を出す手段が用意されており、サイド後は《狼狽の嵐》なども投入されるため、カウンターだけでは対処しきることが難しくなりました。
《万物の姿、オルヴァール》はクリーチャーなので《狼狽の嵐》に引っかからず、《夏の帳》も考慮するとカウンター以外の妨害手段を用意しておくことは重要です。
新カードの《兄弟仲の終焉》は、MerfolkやGoblinsなどクリーチャーデッキに有効なだけでなく、アーティファクト対策も兼ねているためHammer TimeやAffinityなどのマッチアップでも活躍してくれます。クリーチャーとアーティファクトを1枚で対策できるので、サイドボードの枠をあけれる優秀なカードです。
MMM Finals 2022 Winter
独創力のワンツーフィニッシュ
2022年12月10日
- 1位 Creativity Titan
- 2位 5C Creativity
- 3位 Izzet Ragavan
- 4位 Azorius Control
- 5位 Amulet Titan
- 6位 Rakdos Grief
- 7位 Indomitable Creativity
- 8位 Domain Zoo
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先週末に日本国内で開催された大規模なテーブルトップイベント。さまざまなアーキタイプが入賞する中で決勝戦まで残ったのは、《不屈の独創力》コンボでした。
デッキ紹介
5C Creativity(2位)
効率的な除去や妨害でコントロールしつつ、相手が隙を見せたら《不屈の独創力》から《残虐の執政官》を出して勝利するデッキです。コンボを決めたターンに勝てなくても、《残虐の執政官》によって大きなアドバンテージ差がつくので、多くの場合は決まればほぼ勝ちの状況になります。
☆注目ポイント
コンボ手段は《不屈の独創力》だけでなく、手札に来てしまった《残虐の執政官》を《プリズマリの命令》や《鏡割りの寓話》で墓地に落とし、《頑強》でリアニメイトするプランも搭載しています。
《不屈の独創力》と違って除去を気にする必要がなく、《呪文貫き》などのソフトカウンターにもひっかかりにくいのが嬉しいポイントです。
《稲妻》《火/氷》《力線の束縛》と軽くて優秀な除去がそろっており、《敏捷なこそ泥、ラガバン》に対する耐性はコンボデッキのなかでもかなり高いです。また、《力線の束縛》で《濁浪の執政》を対処できるようになり、Izzet Ragavanとの相性も改善されています。
サイドボードには《狼狽の嵐》や《夏の帳》といった軽いコンボを保護する手段が多数採用されています。
《虚空の力線》は墓地コンボ以外にも、墓地を参照するカードの多いIzzet Ragavanにも有効です。またこのデッキでは、あとから引いてきても《プリズマリの命令》や《鏡割りの寓話》で入れ替えることができます。
NRG Series $15,000 Showdown – Louisville
群用割拠なテーブルトップのモダン
2022年12月10日
- 1位 4C Elementals
- 2位 Izzet Ragavan
- 3位 Jeskai Breach
- 4位 Jund
- 5位 Izzet Prowess
- 6位 Hammer Time
- 7位 Tron
- 8位 Burn
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アメリカの中西部で定期的に開催されている大規模なイベント。
先週末に開催されたモダンのイベントは、テーブルトップのモダンらしくコンボからフェアまで多種多様なデッキが結果を残していました。
そのなかでも、MOのModern Challengeでも結果を残していたIzzet Prowessは要注目のデッキです。
デッキ紹介
Izzet Prowess(5位)
『兄弟戦争』から登場したカードによって強化され、Modern Challengeで結果を残したことで広まったIzzet Prowess。
《魔力変》を利用して行動回数を増やし、《変異原性の成長》や《溶岩の投げ矢》といった低マナスペルによって《僧院の速槍》や《損魂魔道士》などの果敢クリーチャーを強化して一気に相手のライフを削ります。
☆注目ポイント
『兄弟戦争』から登場した《第三の道の偶像破壊者》は《若き紅蓮術士》と似たクリーチャーですが、《ミシュラのガラクタ》などソーサリーやインスタント以外の非クリーチャースペルでも能力が誘発するので使い勝手が向上しています。《虹色の終焉》や《邪悪な熱気》といった強力な単体除去が散見される現環境では、横に並ぶ戦略が有効です。
《ドラゴンの怒りの媒介者》は果敢クリーチャーではありませんが、「諜報」によって《死の国からの脱出》用の墓地を肥やしつつ《溶岩の投げ矢》を墓地に落とせるので、一見すると無害な果敢クリーチャーによるアタックからの突然死も狙いやすくなります。
主にコンボデッキで使われる《死の国からの脱出》ですが、このデッキでは中盤以降のカードアドバンテージソースとして使われます。
果敢クリーチャーがいる状態で《ミシュラのガラクタ》や《変異原性の成長》を再利用するだけで脅威となり、そのターンに勝利できなくても《第三の道の偶像破壊者》から大量のトークンを生成することによってアドバンテージを稼ぐことができます。
1マナの果敢クリーチャーが主力なので《大魔導師の魔除け》が厄介になりやすいです。そのため、《狼狽の嵐》や《月の大魔術師》などが多めにサイドにとられています。
《血染めの月》系のカードは土地コンボだけでなく、《力線の束縛》を活用するためにトライオームなど特殊地形を増量したAzorius Controlや最近よく見られるようになったDomain Zooなど、環境のさまざまなマッチアップに刺さります。
総括
テーブルトップとMOの両方のイベント結果を見ていきましたが、モダンは多様性がありフェア、コンボ問わずさまざまなアーキタイプが活躍しています。
『兄弟戦争』のカードを活用したデッキも早速見られ、特にここ最近MOで暴れまわっているIzzet Prowessは爆発力があり、コンボに対しても速度で負けないためテーブルトップでもよく見られるデッキになりそうです。
年末に開催されるTHE LAST SUNでは、トッププレイヤーがどのようなデッキを持ち込むのか要注目です。
以上、USA Modern Express vol.87でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!