はじめに
みなさんこんにちは。
今月はEternal Weekend、Eternal Party 2022など、テーブルトップのレガシーイベントが充実していましたね。特にアメリカで開催されたNorth America Eternal Weekendは、配信者であるAnuraag氏がカバレージを提供してくれました。
Anuraag氏は、この1年間を通してSCG Conなど大規模なレガシーイベントを中心にカバレージを提供しつづけるなど、コミュニティーに大きく貢献してくれました。カバレージの動画も彼のTwitchのチャンネルで見ることができます。
さて、今回の連載では最近開催されたイベントの入賞デッキを見ていきたいと思います。
North America Eternal Weekend
やはり最後に残ったのはデルバー
2022年12月10日
- 1位 Izzet Delver
- 2位 4C Control
- 3位 Cephalid Breakfast
- 4位 Izzet Delver
- 5位 Mono White Initiative
- 6位 Mono White Initiative
- 7位 Selesnya Depth
- 8位 Mono White Initiative
トップ8のデッキリストはこちら
アメリカで開催されたNorth American Eternal Weekendは、参加者450人超えとレガシーのテーブルトップイベントを待ち望んでいたプレイヤーが多かったことがわかります。
Izzet Delverは今大会でもっとも人気があったアーキタイプで、決勝戦では相性が悪いとされている4C Controlとのマッチアップでしたが、《発展の代価》を《神秘の聖域》で使いまわして勝利を収めるという環境最高のデッキらしい強さを見せました。
そして、最近話題の「イニシアチブ」デッキであるMono White Initiativeも、プレイオフに3名ものプレイヤーを送り込むなど高い勝率を見せます。
デッキ紹介
Mono White Initiative
Mono White Initiativeは、今大会においてミラーマッチ以外のマッチアップで65%以上の勝率を出していました。気になる各マッチアップですが、このデッキ自体が新しいデッキなので対戦に慣れていないプレイヤーが多かったことを考慮すると、単純に勝率だけを見ただけでは判断が難しいと思われます。
このデッキは、多様でインパクトのある脅威に加えて、マナ加速を利用した1ターン目の《虚空の杯》もあるなど、現環境トップメタのIzzet Delverを含めた青いフェアデッキに強いデッキです。
特に《練達の地下探検家》は《稲妻》に耐性があり、ブロックされないクロックとして脅威になります。《孤独》や《精霊界との接触》といった、《濁浪の執政》に対する解答にアクセスできるのもこのデッキの強みです。
コンボデッキとのマッチアップですが、Doomsdayに対しては1ターン目に《最後の審判》をプレイされない限り、《選定された平和の番人》や《精鋭呪文縛り》などの妨害持ちクロックや、キャントリップを封じる《虚空の杯》もあるため相性は悪くないといえます。
一方、対Elvesに関しては《アロサウルス飼い》で《虚空の杯》を無効化され、《垣間見る自然》で大量ドローされた後の《自然の秩序》への対処が難しく、やや厳しめのマッチアップとなります。
☆注目ポイント
「イニシアチブ」の脅威が知れ渡っている現在では、サイドボードに《解き放たれた狂戦士》など専用の対策カードを用意したデッキも増えてきました。《解き放たれた狂戦士》は2マナと軽く、プロテクション(白)なため対処が困難で、「イニシアチブ」を奪われやすいです。
対処法としては、《歩行バリスタ》が無色なので《秘密を掘り下げる者》などに睨みを利かせつつスマートに除去できます。
コンボやデルバーに対して有効な《虚空の杯》ですが、ミラーマッチでは役に立たないため最近では両方のマッチアップで使える《剣を鍬に》が優先される傾向にあります。
ただいくら《濁浪の執政》の解答になるとはいえ、デルバーとのマッチアップでは1ターン目に《虚空の杯》を置ければそれだけでゲームを有利に進めることができるため、Izzet Delverとのマッチアップを考慮すると《虚空の杯》をメインに入れたほうが良いでしょう。
《選定された平和の番人》は、《ウルザの物語》や《演劇の舞台》の起動、Doomsdayの勝ち手段である《タッサの神託者》を課税することができ、自身もパワー3なので主にコンボデッキとのマッチアップで活躍します。《精鋭呪文縛り》も似たような能力を持っていますが、飛行なのでブロッカーとしても「イニシアチブ」を奪い返すアタッカーとしても優秀です。
Legacy Eternal Weekend 2022
Elvesがオンラインのエターナルを制する
2022年12月10日
- 1位 Elves
- 2位 Mono White Initiative
- 3位 Elves
- 4位 Izzet Delver
- 5位 Elves
- 6位 4C Control
- 7位 Izzet Delver
- 8位 Izzet Delver
トップ8のデッキリストはこちら
Eternal WeekendはMOでも開催されました。North America Eternal Weekendと同日の開催で、時間帯は主にヨーロッパのプレイヤーに合わせたものになっていたようです。
今大会でもIzzet Delverが1番人気で、その次点にMono White Initiativeでした。印象的だったのは、Elvesが多数勝ち残っていたことです。Elvesの苦手な瞬殺コンボデッキが上位に少なく、Mono White Initiativeとの相性が良かったことも今回の結果につながったと予想されます。
デッキ紹介
Elves
今大会で見事に優勝を果たし、《The Tabernacle at Pendrell Vale》の絵画を入手することに成功したElves。
最近は《悪魔の職工》を採用したミッドレンジ型が見られるようになりましたが、結果を残したのは《イラクサの歩哨》や《垣間見る自然》を使った伝統的なコンボに特化したバージョンでした。流行りのMono White Initiativeに対しては、相手の妨害手段が限定的なのでコンボによって速度で勝負することで有利にゲームを進めることができます。
☆注目ポイント
カウンターを無効化する《アロサウルス飼い》は、今やこのデッキにとって欠かせないカードです。Izzet Delverを始めとした青いデッキとの相性を改善し、《虚空の杯》にも有効なのでMono White Initiativeに対しても強く出れます。
《葉冠の幻想家》はマナはかかるものの追加の《垣間見る自然》のように機能し、《緑の太陽の頂点》でサーチもできます。レガシーでは特別に強いカードではないものの、サーチする際の選択肢の一つとして採用されていることが多いです。
サイドにはIzzet Delver用のカードが多数あり、《忍耐》《虚空の力線》《殺し》といった《ドラゴンの怒りの媒介者》や《濁浪の執政》の対策にスペースの多くを割いています。《大祖始》は《自然の秩序》からサーチできる追加のフィニッシャーで、Mono White Initiative相手に出せれば勝利も同然です。
Eternal Party 2022 in Osaka Winter
Delver祭り
2022年12月11日
- 1位 Izzet Delver
- 2位 The Spy
- 3位 Izzet Delver
- 4位 Izzet Delver
- 5位 Izzet Delver
- 6位 Izzet Delver
- 7位 Izzet Delver
- 8位 Reanimator
トップ8のデッキリストはこちら
Eternal Weekend Asiaに続き、日本のレガシーイベントラッシュを締めくくる今大会は見事なまでにデルバー祭りでした。猛威を振るっていたMono White Initiativeですが、トップ16にまでは勝ち残っていたもののプレイオフまでは届かなかったようです。
デッキ紹介
Izzet Delver
Izzet Delverがトップ8に6名と凄まじいパフォーマンスを見せました。
「イニシアチブ」デッキの流行によって速度で勝負できるコンボデッキが増加傾向にあり、Mono White Initiativeも同型を意識して《虚空の杯》をメインから抜いたりしたことなどが勝因だと思われます。
☆注目ポイント
今大会で結果を残していたリストは、除去枠に《練達の地下探検家》などタフネス4のクリーチャーにも効く《邪悪な熱気》を採用していました。Mono White Initiativeは同型で無駄になりやすい《虚空の杯》をメインから抜いたリストが主流になりつつあるため、1マナの除去の信頼性は増しています。
一般的なリストは《濁浪の執政》が4枚ですが、序盤で手札に来ても出せないので3枚に減量されており、その枠が《厚かましい借り手》になっています。《練達の地下探検家》や《虚空の杯》、各種トークン、《濁浪の執政》に触れるため、メインから2枚採用したリストも見られるようになりました。
全体火力と《溶融》の効果を1枚にまとめた《兄弟仲の終焉》の登場によって、サイドボードの枠に余裕ができました。Mono White Initiative対策に《解き放たれた狂戦士》が採用されることも増えましたが、相手も《歩行バリスタ》で対応してきます。そのため、少し重くなるものの除去耐性があっていろいろなマッチアップで使える《真の名の宿敵》が選択されています。
《予報》は《ミシュラのガラクタ》や《ドラゴンの怒りの媒介者》ともシナジーがあり、墓地を肥やすことができるので「昂揚」や《濁浪の執政》のプレイがしやすくなります。ほかにも、相手が《神秘の聖域》でライブラリートップに呪文を戻したところを狙って落としたり、《最後の審判》後に相手の計算を狂わせたりすることもできます。
Reanimator
「イニシアチブ」は強力なメカニズムですが、Mono White Initiativeには《意志の力》がないのでReanimatorやThe Spyは有力な選択肢となります。
Reanimatorは長い間レガシーを牽引する墓地デッキで、《暗黒の儀式》や《水蓮の花びら》から最速で1ターン目に《グリセルブランド》や《残虐の執政官》を出すことができる、レガシーでもっともアンフェアなデッキの一つです。
☆注目ポイント
一般的なReanimatorは赤黒ですが、《実物提示教育》をタッチしてサイド後の墓地対策をかわせるようになっています。
デッキの主な勝ち手段は《グリセルブランド》や《残虐の執政官》をリアニメイトすることですが、《黙示録、シェオルドレッド》は普通にプレイしやすく、キャントリップを牽制することもできるため多くのマッチアップで活躍します。
《ダウスィーの虚空歩き》は墓地対策としてだけでなくアタッカーとしても優秀です。サイド後は除去が減らされる傾向にあるため、ハンデスを多数搭載したこのデッキと相性も良いです。
Legacy Challenge 12/17
Eternal Weekend後のレガシー
2022年12月17日
- 1位 Jeskai Delver
- 2位 Painter
- 3位 Sneak and Show
- 4位 Izzet Delver
- 5位 Izzet Delver
- 6位 Painter
- 7位 Reanimator
- 8位 Temur Delver
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先週末に開催されたLegacy Challengeのプレイオフは、Mono White Initiativeが不在でDelver系が中心となりました。
《剣を鍬に》をタッチしたJeskai Delverなど、Mono White Initiativeを意識したバージョンも入賞しています。『兄弟戦争』から《ファイレクシアのドラゴン・エンジン》を採用したPainterも見られました。
デッキ紹介
Jeskai Delver
現環境のデルバーはほぼIzzet Delverオンリーでしたが、「イニシアチブ」デッキの台頭によって状況が変わってきたようです。
優勝したのは、Izzet Delverに《剣を鍬に》や《虹色の終焉》をタッチしたJeskaiバージョンでした。色を足したことによってマナ基盤が若干不安定になった代わりに、「イニシアチブ」クリーチャーや《虚空の杯》に対する解答にアクセスできるようになりました。
☆注目ポイント
《剣を鍬に》や《虹色の終焉》といった優秀な除去にアクセスできるようになり、より確実に《練達の地下探検家》や《虚空の杯》を対策できるようになりました。しかし、《稲妻》を失ったことで速度が落ち、コンボデッキとのマッチアップでは不安が残ります。
サイドに採用されている《静寂をもたらすもの》は《倦怠の宝珠》と似た能力を持ちますが、死亡誘発も封じることができて飛行なので「イニシアチブ」を奪い返すことにも貢献します。
Legacy Challenge 12/18
プレイオフの半数がイニシアチブ
2022年12月18日
- 1位 Elves
- 2位 Temur Delver
- 3位 Mono White Initiative
- 4位 Mono White Initiative
- 5位 Izzet Delver
- 6位 Mono White Initiative
- 7位 Mono Red Storm
- 8位 Mono White Initiative
トップ8のデッキリストはこちら
日曜日のLegacy Challengeは、Mono White InitiativeとDelver系が中心で、優勝は《垣間見る自然》や《自然の秩序》を搭載したコンボ型のElvesでした。
デッキ紹介
Temur Delver
《敏捷なマングース》は採用されていませんが、《タルモゴイフ》や《もみ消し》といった懐かしい顔ぶれが集う現代のカナディアンスレッショルド。緑を足したことで《時を超えた英雄、ミンスクとブー》にもアクセスすることができるようになりました。
☆注目ポイント
《タルモゴイフ》は除去耐性こそないもののサイズで勝るため、Izzet Delverとのマッチアップでは対処されにくい脅威となります。Mono White Initiative相手では地上のクリーチャーを止めることができるので、《タルモゴイフ》で地上を固めて飛行で攻撃することで「イニシアチブ」を維持しやすくなります。
効果が限定的ということで最近はあまり見かけなくなった《もみ消し》でしたが、「イニシアチブ」デッキの台頭によって価値が増しました。《魂の洞窟》から「イニシアチブ」クリーチャーが出てきたとしても、《もみ消し》で誘発型能力をカウンターすることで相手は「イニシアチブ」を得ることができなくなります。
総括
今月開催された主な大会結果を見ていきましたが、アメリカやオンラインのイベントでは「イニシアチブ」デッキが上位で多く見られる一方で、日本国内ではIzzet Delverが上位を支配していました。
今回の結果でさまざまな意見が散見されますが、「イニシアチブ」に関してはまだ登場したばかりなので少し時間が必要になりそうです。Izzet Delverは研究が進んだ現在ではプレイヤーの練度に大きく左右され、特に日本国内のイベントに関してはIzzet Delverを選択した強豪プレイヤーが順当に結果を残していたこともあり、判断が難しいところです。
2022年はレガシーにとって激動の年でした。新年早々に《敏捷なこそ泥、ラガバン》が禁止にされ、そのあとの新セットから《帳簿裂き》《鏡割りの寓話》《時を超えた英雄、ミンスクとブー》といった強力なカードが続々と登場。最近では話題の「イニシアチブ」デッキが現れたこともあり、いろいろな新デッキも見られるようになりました。
今年はテーブルトップのイベントが充実していて日常に戻りつつあるということが実感できました。来年もSCG Con New Jerseyなどレガシーのテーブルトップイベントがあるので楽しみです。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!そして良いお年を