はじめに
みなさん新年あけましておめでとうございます。今年もオンライン、テーブルトップのレガシーの情報をお届けしていきますのでよろしくお願いします。
1月にはアメリカではSCG Con New Jerseyが、日本国内では 第21期レガシー神決定戦が開催されるなど、レガシーのイベントが充実しています。
さて、今回の連載ではLegacy Super Qualifierの入賞デッキを見ていきます。
Legacy Super Qualifier
イニチアチブの冬
2022年12月29日
- 1位 White Stompy
- 2位 Painter
- 3位 4C Control
- 4位 Naya Initiative
- 5位 Izzet Delver
- 6位 Izzet Delver
- 7位 Painter
- 8位 Jeskai Aura
トップ8のデッキリストはこちら
昨年末にMOで開催されたLegacy Super Qualifierはホリデーシーズンだったこともあり、300名近い参加者が集まりました。
優勝したのは、ここ最近レガシーを支配しているWhite Stompyでした。Eternal Weekend以来、「イニシアチブ」デッキが環境に与える影響について話題になっていますが、その中での優勝となりました。トップメタのIzzet Delverも安定した成績を残しています。
また、北米のEternal Weekendで高い勝率を出していたPainterも準優勝と好成績を残しています。ほかには「イニチアチブ」デッキに駆逐されたと思われた多色コントロールやレガシーでは珍しいJeskai Auraなどトップ8にはさまざまなデッキが見られます。現在のレガシー環境はまだまだイノベーションの余地があるようです。
デッキ紹介
Izzet Delver
現環境でも活躍を続ける不動のトップメタ、Izzet Delver。「イニシアチブ」デッキの台頭によりIzzet Delverのリストも変化しています。
「イニシアチブ」デッキがIzzet Delverに強いコントロールを駆逐してしまい、ほかに上位で見られるのは速度で勝負できるコンボデッキ程度。そのため、Delverは依然として安定した成績を残しています。
☆注目ポイント
《ドラゴンの怒りの媒介者》の「諜報」と相性のいい《ミシュラのガラクタ》をフル搭載することによって、圧倒的な速度で墓地が肥えていくため早期に「昂揚」を達成できます。《ミシュラのガラクタ》を4枚採用することで《濁浪の執政》を早い段階からプレイでき、《表現の反復》でアドバンテージを稼ぎやすくなっています。
「イニシアチブ」デッキの流行により青いコントロールデッキが減少し、メインボードから《紅蓮破》を採用する必要性は薄れましたが、代わりに《練達の地下探検家》などのタフネス4以上のクリーチャーを処理しなければなりません。そこで除去枠には《稲妻》の枚数を減らして《邪悪な熱気》が採用されています。早い段階での「昂揚」達成を考えると、《ミシュラのガラクタ》フル搭載は理に適っています。
サイドボードに採用されている《激情》はタフネス4のクリーチャーを除去することができ、さらにElvesなど小型のクリーチャーを並べるマッチアップでは全体除去のように機能するため、最近のメタゲームに合致したカードです。《虚空の杯》をX=1で張られた状況では、手札で無駄になっている《稲妻》などを代替コストにあてることで、墓地へクリーチャーを落として「昂揚」達成を補助します。
Jeskai Aura
《不可視の忍び寄り》や《真の名の宿敵》といった除去耐性のあるクリーチャーに《圧倒的洞察》や《執着的探訪》 などのオーラを付けてビートダウンしていくレガシー版のHex Proof Aura。
モダンのBooglesのような直線的な戦略ではなく、《不可視の忍び寄り》や《真の名の宿敵》を除去とカウンターでバックアップしていくクロックパーミッションのような構成になっています。
☆注目ポイント
除去耐性と回避能力を合わせ持つ《不可視の忍び寄り》と《真の名の宿敵》は「イニシアチブ」を奪いやすいクリーチャーです。それらにオーラである《圧倒的洞察》や《執着的探訪》を付けることで、強化しつつアドバンテージを稼いでいきます。特に《圧倒的洞察》は絆魂が付与されるためIzzet DelverやWhite Stompyとのダメージレースでも優位に立てます。
サイドボードでもっとも印象に残ったのは《ハルマゲドン》であり、土地を並べる多色コントロールやLands、Postとのマッチアップで劇的に活躍しそうです。ほかには《溶融》や《紅蓮破》、《祭典壊し》など特定のマッチアップで活躍するカードのために赤がタッチされています。
Painter
北米で開催されたEternal Weekendで高い勝率を出して話題になっていたPainterは、今大会でもプレイオフに2名を送り込むなど好調を維持していました。
このデッキのメインの勝ち手段は《絵描きの召使い》+《丸砥石》のアーティファクトを使ったコンボであり、仮に妨害されたとしても《ゴブリンの溶接工》や《ゴブリンの技師》によって再度コンボを狙うことができます。
メインボードから《紅蓮破》(《赤霊破》)を複数枚採用しているため、Izzet Delverのフィニッシャーである《濁浪の執政》やアドバンテージ源の《表現の反復》に対応できます。また、マナ加速からの《絵描きの召使い》+《丸砥石》のコンボはカウンターのない「イニシアチブ」デッキには対処されにくく、現環境のトップメタに強く有力な選択肢とされています。
☆注目ポイント
Red Stompyの新戦力としてレガシーで活躍している《鏡割りの寓話》はこのデッキでも採用されています。手札を入れ替えるⅡ章の能力がコンボデッキと相性が良いのは言うまでもなく、それ以外の宝物トークンを生成するⅠ章と《鏡割りの寓話》によるアグロプランも十分に脅威となります。
《ウルザの物語》はコンボを補助しながら、同時にコンボ以外の勝ち手段をもたらしています。カウンターで対処されない土地である《ウルザの物語》は《丸砥石》をサーチできるため、《絵描きの召使い》が戦場にいる状態でⅢ章を解決することができれば自動的にコンボが完成します。
このデッキと対峙した相手は《鏡割りの寓話》と《ウルザの物語》の構築物トークンの対処に追われることになり、これによりコンボを決める隙も生まれやすくなります。《溶融》や《兄弟仲の終焉》といった専用の対策カード以外で《絵描きの召使い》と構築物トークンを同時に処理するのは困難を極めます。
『兄弟戦争』からの新カードである《マイトストーンとウィークストーン》が採用されています。5マナと重いため主に《ゴブリンの溶接工》で踏み倒すことになりそうですが、宝物トークンや各種マナ加速を利用すれば普通にマナを支払ってのプレイも可能です。
クリーチャーを複数除去できる《激情》もこのデッキの強化に貢献しています。Red Stompyと同様に赤単色のデッキであり、土地以外はアーティファクトと赤いカードでまとめられているため「想起」でもプレイしやすくなっています。
White Stompy
今大会で見事に優勝をおさめて本戦への参加権利を獲得したAndrea Mengucci氏はWhite Stompyを選択していました。
《白羽山の冒険者》と《練達の地下探検家》の2種類の「イニシアチブ」クリーチャーを活用したWhite Stompy。同デッキはEternal Weekendが開催される直前に開催されたMOのイベントで結果を残して以来、各種大会で複数のプレイヤーを上位に送り込む強さを見せており、現在ではIzzet Delverと並んで環境のトップメタに位置しています。
White Stompyは2マナランドやアーティファクトマナによるマナ加速から《虚空の杯》で相手の行動を制限してクロックを展開していくスタイルですが、ほかの《虚空の杯》を採用したデッキと異なり《魂の洞窟》によってカウンターを封じることができ、Izzet Delverや青いフェアデッキに強い構成です。
反面、白単色でカウンターが使えないためReanimatorやThe Spy、Elves、Painterなどのコンボデッキは相性が悪いマッチアップとなります。しかし、サイドボードの構成次第では勝てないマッチではなく、事実今大会では不利とされていたPainterに2度勝利しています。
☆注目ポイント
White Stompyには2種類の「イニシアチブ」クリーチャーが採用されています。《白羽山の冒険者》のアンタップ能力は疑似的な警戒として機能するため、攻撃しながら「イニシアチブ」を守ってくれます。
対して《稲妻》に耐性を持つ《練達の地下探検家》は攻撃時に付与されるプロテクションにより、奪取された「イニシアチブ」を取り返す役目を持っています。「探検」もドロースペルが使えないこのデッキにとっては地味に嬉しい能力であり、ドローの質の向上に一役買っていますね。
《虚空の杯》は同型では不要牌になりやすいためメインボードから外されていた時期もありましたが、1ターン目に置くことができればIzzet Delverを含めた多くのデッキに対してイージーウインが狙えるため、余程ミラーマッチが多いメタゲームでない限りはメインでの採用が安定します。
《虚空の杯》の採用により《剣を鍬に》が使いにくくなったことで注目を集めたのが《精霊界との接触》です。3マナというコストも2マナランドを多用しているこのデッキではそれほど負担にならず、《虚空の杯》で制限されない除去スペルとして定着しています。
また、忘れてはならないのが「魂力」です。「イニシアチブ」を含めたETB能力(Enter The Battlefield:戦場へ出たときに誘発する能力)を持つクリーチャーを「明滅」することでダンジョンの探索を進めることができ、相手の除去を避けつつアドバンテージを稼いでくれます。
メインから採用されている《歩行バリスタ》はミラーマッチやElvesとのマッチアップでブロッカーとなる小型クリーチャーを除去するのに使えるほか、Izzet Delverのサイドボードに採用されている《解き放たれた狂戦士》対策にもなっています。
White Stompyに《歩行バリスタ》が採用され始めたことで《解き放たれた狂戦士》の代わりに除去耐性を持つ《真の名の宿敵》が増加傾向にあるため、対策の対策としてサイドボードには攻撃クリーチャー限定の布告系除去《神聖な協力》が採用されています。ダメージレースを主たる勝ち手段とするこのデッキでは地味なライフゲインも有用であり、2マナランドを多数採用している構造上「増呪」コストの支払いも容易です。
総括
「イニシアチブ」デッキが登場してからしばらく経ち研究が進んだことでリストも洗練され、昨年末に開催されたLegacy Super Qualifierでは優勝するなど結果を残し続けています。
現在、レガシーコミュニテイーでは多人数でプレイされることを前提にデザインされた「イニシアチブ」は個人戦では強すぎるという意見が散見されています。《白羽山の冒険者》や《練達の地下探検家》といった主要なパーツを禁止にするのか、「相棒」のように「イニシアチブ」のルール自体に変更を加えるのかも論争になっています。
しかし、PainterやCephalid Breakfast、Elves、Jeskai AuraなどWhite StompyやDelver以外の戦略も選択の余地があり、環境も「イニシアチブ」に対応してきているため禁止やエラッタを出さなければいけない状況ではなさそうです。
USA Legacy Express vol.211は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!