USA Legacy Express vol. 212 -デルバーとイニシアチブの2強-

Kenta Hiroki

はじめに

みなさんこんにちは。

新年早々レガシー神決定戦やSCG Conなどレガシーのイベントが充実していましたね。

今回の連載では最近開催されたレガシーイベントでの入賞デッキを見ていきたいと思います。

第21期レガシー神決定戦
多色コントロールが神を打ち破る

2022年1月8日

  • 1位 4C Control
  • 2位 Mono White Initiative
  • 3位 ANT
  • 4位 Izzet Delver
  • 5位 Izzet Delver
  • 6位 Mono Green Painter
  • 7位 Izzet Delver
  • 8位 Izzet Delver
清田 勝之

清田 勝之

トップ8のデッキリストはこちら

参加者187名と大盛況だった第21期レガシー神決定戦

今大会で優勝を果たし、見事に神・高野選手を打ち破った清田 勝之選手が使用していたのは多色コントロールでした。

Mono White InitiativeやIzzet Delverといったトップメタが勝ち残る中、Mono Green Painterなどめずらしいデッキも見られました。

デッキ紹介

4C Control

Anuraag Das氏が昨年末に配信でプレイしていた《Stifle》入りの多色コントロールを使いこなして、見事に神の座を射止めた清田選手。

トップメタのIzzet Delverを倒しつつ「イニシアチブ」デッキとも渡り合えるように調整されたコントロールデッキに仕上がっています。

除去が多いためクリーチャーデッキに対して無類の強さを見せる一方で、それらの除去が役に立たないコンボデッキは苦手とします。《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」として採用しているため、カウンターなど必要なカードを引きにくいことも弱点の一つです。

☆注目ポイント

もみ消し

《もみ消し》は「イニシアチブ」の誘発を妨害するほかにも、DoomsdayやCephalid Comboの《タッサの神託者》や、Reanimatorの《残虐の執政官》、Elvesの《孔蹄のビヒモス》《グリセルブランド》の起動型能力もカウンターできるので、多くのマッチアップで活躍します。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》も能力をカウンターすることで、ペナルティーなしで場に残すことができます。

時を超えた英雄、ミンスクとブー

《時を超えた英雄、ミンスクとブー》環境最高の4マナプレインズウォーカーとして定着しています。このデッキのアドバンテージ源兼フィニッシャーで、対処されなければわずか数ターンでゲームを終わらせるほどの強さです。トークンは対処されても毎ターンアップキープ時に帰ってくるので、対処するのは困難を極めます。しかし、《時を超えた英雄、ミンスクとブー》は場に出たときに能力が誘発するため、相手がそれに対応して《稲妻》などで対処できるので注意が必要です。

終末兄弟仲の終焉

クリーチャーが並ぶデッキや《真の名の宿敵》など、単体除去に耐性を持つクリーチャー用に《終末》が4枚採用されています。追加のスイーパーとしてサイドには《兄弟仲の終焉》も見られます。《兄弟仲の終焉》は8 Castなどアーティファクトデッキとのマッチアップでも使えるスペルで、サイドボードのスペースの節約にも貢献しています。

花の絨毯

Izzet Delverを倒すためのデッキというだけあり、サイドに《花の絨毯》が4枚積まれているなど徹底しています。Izzet Delverのように島を使ったデッキとのマッチアップでは、毎ターン《Black Lotus》と表現されるほどのマナアドバンテージを生み出し、《不毛の大地》《目くらまし》を無効化しつつ行動回数を増やすことができる強力なエンチャントです。

SCG CON Legacy $10K
Delverがワンツーフィニッシュ

2022年1月14日

  • 1位 Izzet Delver
  • 2位 Izzet Delver
  • 3位 Mono Blue Painter
  • 4位 Grixis Delver
  • 5位 8 Cast
  • 6位 Mono Black Combo
  • 7位 Reanimator
  • 8位 Cephalid Breakfast

大会詳細とデッキリストはこちら

2023年に入って初めて開催されたSCG Conは、テーブルトップのレガシーイベントということもあり参加者169名で行われました。

Izzet Delverと「イニシアチブ」デッキは今大会でも人気があり、ほかにはPainter、Cephalid Breakfastといった「イニシアチブ」デッキに強いデッキが結果を残していました。

最終的に決勝戦まで勝ち残ったのはIzzet Delverで、「イニシアチブ」デッキは対策が厳しかったのか今大会のプレイオフでは不在でした。

デッキ紹介

Mono Blue Painter

8 CastとPainterのハイブリットで、8 Castのフィニッシャーの《河童の砲手》《練達飛行機械職人、サイ》《絵描きの召使い》+《丸砥石》コンボに差し替えられています。

《絵描きの召使い》+《丸砥石》コンボを搭載したデッキの種類は多く、第21期レガシー神決定戦でも緑単のPainterコンボが入賞していました。

Izzet Delverと並んで現環境を支配している「イニシアチブ」デッキと相性がいいところが、《絵描きの召使い》系のデッキが増加した理由になります。

☆注目ポイント

絵描きの召使い丸砥石

《水蓮の花びら》などマナアーティファクトを並べて、《物読み》《思考の監視者》でアドバンテージを稼いでいく基本的な動きは8 Castと変わりませんが、《絵描きの召使い》+《丸砥石》のコンボの瞬殺プランが搭載されているため、妨害手段が限られている「イニシアチブ」デッキに強い構成になっています。

湖に潜む者、エムリー

このデッキの《湖に潜む者、エムリー》は、墓地に落ちた《絵描きの召使い》《丸砥石》を再利用することができるということもあり重要度が増しています。

意志の力金属の叱責否定の力

メインから《意志の力》《金属の叱責》、サイドには《否定の力》などカウンターが多めに搭載されているため、ほかのPainterよりもコンボデッキに耐性があります。サイド後には《河童の砲手》が投入され、もとの8 Castに近い構成になり、Elvesなど部族系のデッキとのマッチアップ用に《疫病を仕組むもの》も見られます。

Legacy Showcase Challenge
Izzet DelverとWhite Initiativeの2強

2022年1月15日

  • 1位 Izzet Delver
  • 2位 Cephalid Breakfast
  • 3位 Izzet Delver
  • 4位 Mono White Initiative
  • 5位 Izzet Delver
  • 6位 Izzet Delver
  • 7位 TES
  • 8位 Izzet Delver

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MOの大規模なイベントであるLegacy Showcase Challengeは、MOCS本戦に出場するためのShowcase Qualifierへの参加権がかかっているだけあり、Izzet Delverや「イニシアチブ」デッキが中心のイベントでした。

人気があった「イニシアチブ」デッキでしたが、やはりここでも対策が厳しくプレイオフにはわずか1名で、もう一つのトップメタデッキのIzzet Delverはプレイオフに6名という極端な結果となりました。

Izzet Delverは「イニシアチブ」デッキとそれほど相性が悪くなく、「イニシアチブ」デッキに強いとされるコンボデッキの多くがIzzet Delverにとって相性がいいマッチアップであることも勝因だと思われます。

デッキ紹介

Izzet Delver

今大会で見事に優勝を果たしたJUJUBEAN__2004は、非常に興味深いアプローチをとっていました。

「イニシアチブ」対策として除去枠に《殺し》が採用されており、そのために《Underground Sea》をタッチしています。

この奇策は功を奏したようで、JUJUBEAN__2004のツイッター上でのレポートによるとスイスラウンドで「イニシアチブ」に6回戦連続で当たり、そのすべてに勝利していました。

☆注目ポイント

殺しUnderground Sea

Izzet Delverの定番の除去である《稲妻》よりも、《殺し》が優先されています。テンポアドバンテージを失うことなく《練達の地下探検家》を処理することができ、ミラーマッチでも《濁浪の執政》を対処できます。《殺し》用の土地が《Underground Sea》1枚のみなのは不安が残るところですが、このバージョンがターゲットとしている「イニシアチブ」は《不毛の大地》を採用していないため、特に不便を感じる場面はなかったようです。

Unchained Berserker

サイドボードも《解き放たれた狂戦士》が3枚と徹底しており、「イニシアチブ」にだけは負けないように構築していたことが分かります。

SCG CON Legacy $5K
やはり最後に勝つのはデルバー

2022年1月15日

  • 1位 Izzet Delver
  • 2位 Izzet Delver
  • 3位 Mono White Initiative
  • 4位 Painter
  • 5位 Mono White Initiative
  • 6位 Boros Initiative
  • 7位 Cephalid Breakfast
  • 8位 Painter

大会詳細とデッキリストはこちら

日曜日にもレガシーのイベントが開催されました。最終日にもかかわらず、賞金総額5000ドルと大変豪華なイベントでした。

今大会のプレイオフもIzzet Delverと「イニシアチブ」系のデッキが中心でしたが、PainterやCephalid Breakfastといった「イニシアチブ」系に強いとされているコンボデッキも結果を残していました。最終的に決勝戦まで勝ち残ったのはIzzet Delverで、デッキの地力の高さが分かる結果となりました。

デッキ紹介

Cephalid Breakfast

Cephalid IllusionistShukoDread ReturnThassa's Oracle

MOのイベントでも結果を残していたCephalid Breakfast。《セファリッドの幻術師》とそれを0マナコストで対象にできるパーマネント(《手甲》《コーの遊牧民》)と組み合わせることによってライブラリーのすべてのカードを「切削」し、《ナルコメーバ》をライブラリーから出して《戦慄の復活》を「フラッシュバック」することで《タッサの神託者》をリアニメイトして勝利します。

このデッキの構成は、カウンターや除去、《ウルザの物語》パッケージなども搭載されたコンボフィニッシュを搭載したミッドレンジなので、コンボをちらつかせつつフェアデッキとして振舞うことができ、カードアドバンテージを得る手段もあるためコンボを妨害してくる戦略にも耐性があります。

このデッキが結果を残し始めた当初は《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」として採用し、《石鍛冶の神秘家》パッケージやサーチ手段である《護衛募集員》、それらのクリーチャーをインスタントタイミングで出せる《霊気の薬瓶》なども搭載されたバージョンが主流でしたが、現在では60枚バージョンも見られるようになりました。

☆注目ポイント

剣を鍬に虹色の終焉Triumph of Saint Katherine

メインは主にコンボでの勝利を目指していきますが、サイド後は《剣を鍬に》《虹色の終焉》《聖カトリーヌの凱旋》などが投入されて、Esper Midrangeに変形する選択肢もあります。

悪意の大梟

《濁浪の執政》を含めた現環境でポピュラーな脅威を受け止める《悪意の大梟》は、コンボ完成までにかなりの時間を稼いでくれます。飛行持ちなので「イニシアチブ」も取り返しやすく、ブロッカーとしても優秀なため奪い取った「イニシアチブ」も守りやすくなります。

Step ThroughUrza's Saga時を解す者、テフェリー

各種ドロースペルに加えて、《通り抜け》はキーカードの《セファリッドの幻術師》をサーチすることができ、《ウルザの物語》《手甲》をサーチすることができるためデッキの動きが非常に安定しています。また、《時を解す者、テフェリー》を設置しておくことでコンボを安全に決めることができます。

Triumph of Saint Katherine

《聖カトリーヌの凱旋》は『統率者デッキ:Warhammer 40,000』に収録されている「絆魂」と「奇跡」を持つクリーチャーで、MOではまだ実装されていないのでテーブルトップのみ見られるカードになります。「奇跡」によって早い段階から絆魂持ちの5/5を出すことができるため、Izzet Delverとのマッチアップで活躍します。

Boros Initiative

「イニシアチブ」は現環境でIzzet Delverと並んでもっとも人気があるデッキで、現在は研究が進みほかの色をタッチしたバージョンも見られるようになりました。

色を足すことでマナ基盤の安定性は落ちるものの、白単に比べて「プロテクション(白)」クリーチャーなど一部の対策カードに耐性があります。

☆注目ポイント

Caves of Chaos Adventurer

赤をタッチするメリットとして、3種類目の「イニシアチブ」クリーチャーである《混沌の洞窟の冒険者》が使えることです。《練達の地下探検家》と同じマナコストでタフネスが3とやや除去されやすいのが難点ですが、ダンジョンを踏破しているなら強力なアドバンテージ源として機能します。また、《解き放たれた狂戦士》など「プロテクション(白)」を持つクリーチャーで止まらないことも強みになります。

鏡割りの寓話

赤を足すもう一つのメリットとして《鏡割りの寓話》が使えることが挙げられます。Ⅱ章のルーティング能力によって不要になった《金属モックス》などを有効牌に変換することができ、Ⅲ章まで到達したあとは《孤独》など各種ETB能力持ちのクリーチャーをコピーする動きが強力です。

溶融紅蓮破

《溶融》も使えるためPainterとの相性の改善も期待できます。青対策の《紅蓮破》にアクセスできるのも、赤をタッチする明らかな利点の一つですね。

トーナメントレポート

Izzet Delver

SCG Con New Jerseyには筆者も参加してきました。残念ながら土曜日に開催されたLegacy 10Kは振るわなかったものの、日曜日に開催されたLegacy $5Kでは準優勝という成績を残すことができました。優勝トロフィーまであと一歩だったので残念でしたが、賞金が豪華で普段あまりプレイする機会がないテーブルトップのレガシーで入賞できで良かったです。次こそはトロフィーを持ち帰りたいですね。

不毛の大地目くらまし

デッキは使い慣れたIzzet Delverでリストも極めて普通でした。いろいろと試してみましたが、やはり《不毛の大地》《目くらまし》の枚数は4枚のほうがしっくりきたので、今大会では4枚に戻しました。「イニシアチブ」とのマッチアップでは相手の2マナランドを割って減速させることも重要になってくるため、《不毛の大地》を4枚にしておいて正解でした。

厚かましい借り手

自由枠とされている《厚かましい借り手》は1ゲーム目から置物を対策でき、「イニシアチブ」デッキとのマッチアップでは瞬速を活かした奇襲をかけやすいなど、フレキシブルなところが気に入っていたので多めに採用しています。1マナ除去が少なかったと感じたので、2枚目は《邪悪な熱気》《稲妻の連鎖》でもよかったかもしれません。

ラウンド デッキ 成績
Round 1 4C Control 1-0-0
Round 2 Storm 0-2
Round 3 Mono Red Painter 2-0
Round 4 Mono White Initiative 2-0
Round 5 Cephalid Breakfast 2-0
Round 6 Mono White Initiative 2-0
Round 7 Mono White Initiative 2-0(トス)
準々決勝 Mono Red Painter 2-0
準決勝 Mono White Initiative 2-1
決勝 Mirror 0-2
Counterbalance真の名の宿敵激情

《相殺》は1枚のみ採用したリストも散見されましたが、コンボデッキやミラーマッチ、コントロールなどさまざまなマッチアップで使えるため2枚採用が推奨されます。「イニシアチブ」対策ですが、多くのリストは赤をタッチしているか《歩行バリスタ》を採用し始めているので、コントロールに対しても追加の脅威として機能する《真の名の宿敵》を採用することに決めました。

《激情》は最近Delverのサイドボードで見られるようになったカードで、タフネス4の《練達の地下探検家》をテンポを損なわずに除去することができ、ElvesやDeath and Taxesといった小型のクリーチャーを多用するデッキとのマッチアップでも重宝します。《剣を鍬に》《殺し》といった除去のために色を足したバージョンも見られますが、《真の名の宿敵》《激情》を加えることで純正のIzzetでも十分に渡り合うことができると考えています。

今大会でもMono White Initiativeとのマッチアップはすべて勝つことができました。決して特別に相性がいいマッチアップではありませんが、現在のサイドボードの構成ではサイド後は少し有利になります。メイン戦は相手のバージョンにもよりますが、最近はイニシアチブ側もミラーマッチを意識して《虚空の杯》がメインから外れる傾向にあるため、以前よりも有利になったと言えます。

総括

さて、テーブルトップとMOのイベントを一通り見てきましたが、やはり現環境はIzzet DelverとMono White Initiativeの2強状態のようです。

Izzet Delverがコンボデッキを駆除している一方で、イニシアチブがDelverが苦手とするコントロールデッキを抑えているなど、お互いの苦手なデッキをカバーし合うという図式が完成されてしまっているという意見も散見されます。次回の告知でどういった変更が加えられるのかも関心が集まっています。

USA Legacy Express vol. 212は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!

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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら