はじめに
お疲れ様です。てんさいチンパンジー(@tensai_manohito)です。
チャンピオンズカップ・サイクル2のエリア予選がすべて終了し、すでにサイクル3の店舗予選が始まりました。これからプレミアム予選も始まり、パイオニアはますますの盛り上がりを見せています。
というわけで今回は、サイクル3のフォーマットであるパイオニアについて、現在の環境のおさらいと主要アーキタイプの紹介になります。以前の記事からのアップデートを中心に環境に跋扈するアーキタイプ達を紹介・解説しつつ、最新セット『ファイレクシア:完全なる統一』の影響についても触れていきます。
パイオニア環境おさらい
ずばり「ラクドスミッドレンジ」が最強デッキ!という認識に誤りはないでしょう。といっても異常なシェア率や勝率を誇っているわけではなく、あくまでほかのデッキよりは人気、という程度です。かなりフラットな環境といえるでしょう。
最強デッキであるラクドスミッドレンジに強いとされるデッキが、「グルール機体」「エニグマファイヤーズ」「セレズニアエンジェル」などのスケールデッキたちです。「相手より1ランク重く」することで、カード同士のぶつかり合いを有利に運びます。戦場に出たカード同士での交換では絶対に有利になるようにという思想で組まれており、この戦法は古来よりミッドレンジ対決を制する上で重要になります。
が、スケールデッキは「アゾリウスコントロール」を苦手としています。スケールデッキは戦場に出たあとの交換は得意ですが、あくまで戦場に出たあとの話。重くなればなるほど打ち消しや全体除去に対して弱くなっていくのは当然の話です。
ならばアゾリウスコントロールが最強では?と思うかもしれませんが、メタゲームというのはそう単純な話では終わりません。なぜならアゾリウスコントロールはラクドスミッドレンジに弱く、ここでメタゲームが一周します。
《思考囲い》で《ドミナリアの英雄、テフェリー》などのキーカードを抜かれたうえで《鏡割りの寓話》《墓地の侵入者》といった対処の難しいパーマネントを連打してきます。頼みの《放浪皇》は《砕骨の巨人》、《ドミナリアの英雄、テフェリー》は《戦慄掘り》と明確な解答をメインから擁しており、除去の腐りやすいメイン戦ですら《税血の収穫者》《鏡割りの寓話》で上手く処分して戦ってきます。
そこに「ロータスコンボ」「白単アグロ」といった別角度のアグロ/コンボデッキがいくつか存在し、それらがまたこれらの関係性をややこしくしています。たしかにラクドスミッドレンジが強いとはされているものの、環境自体は群雄割拠・混沌としたメタゲームを形成しています。
主要アーキタイプ紹介
メタゲーム上位から主なデッキを順に紹介していきます。全アーキタイプを紹介することは難しいので、今回は12アーキタイプに絞って解説します。
ラクドスミッドレンジ
王道ミッドレンジデッキ。現在のパイオニアで最強のデッキは?と聞かれれば、やはり真っ先に挙がるのはラクドスミッドレンジでしょう。
《思考囲い》《致命的な一押し》といった軽量リソース交換から《税血の収穫者》《砕骨の巨人》《鏡割りの寓話》などの優れたパーマネントを展開。どんどんリソースを交換していき、枯れてきたタイミングで各種ミシュラランドや《黙示録、シェオルドレッド》で制圧します。
ラクドスミッドレンジの強みはなんといっても土地が優秀なことです。色を絞ることでショックランドの採用を抑え、両面ランドやスローランドを優先して採用できます。おかげで多色デッキにありがちな土地からのダメージやタップインのもたつきが少ないです。
ほかにも《反逆のるつぼ、霜剣山》《見捨てられたぬかるみ、竹沼》《ロークスワイン城》《バグベアの居住地》《目玉の暴君の住処》《変わり谷》といったバリューランドを多く採用でき、カード同士交換していけば最終的にこれらの土地で勝てるという算段です。
『ファイレクシア:完全なる統一』で再録された《黒割れの崖》も地味ながらも良いアップデートです。これによって1ターン目に《思考囲い》を唱えられる確率が上がりました。差し替える候補としては赤単色である《山》《バグベアの居住地》《反逆のるつぼ、霜剣山》あたりになるでしょう。
性質上、白単アグロやアゾリウスコントロールのようなフェアデッキを得意としています。逆にロータスコンボ、緑単信心、グルール機体、エニグマファイヤーズなどスケール差のある相手を苦手としています。
ただし、スケール差のある相手は構造上、ミッドレンジに比べると自爆しやすく、またラクドスミッドレンジが手札破壊や軽量除去での妨害を得意とすることから、意外となんとかなる……というケースが多いです。苦手といっても3:7を越えるマッチアップは存在せず、せいぜい4:6以内に収まってる印象です。その対応力の高さが強さの秘訣であり、安定感こそ強さです。
- 2022/07/29
- これだけ読めばいい!ラクドスミッドレンジ完全解説!
- 佐藤 啓輔
緑単信心
《ニクスの祭殿、ニクソス》から爆発的なマナを生み出すビッグマナ・コンボデッキ。国内ではあまり人気のない印象のアーキタイプですが、オンライン上では高いメタゲームの占有率を誇ります。実際にテーブルトップとMagic Onlineでプレイしていると、あきらかに後者での当たる回数が多いです。
『兄弟戦争』で強力なアーティファクトが追加されて大幅に強化されました。《街並みの地ならし屋》《マイトストーンとウィークストーン》《石の脳》はすでに定番となっています。《街並みの地ならし屋》は《絶え間ない飢餓、ウラモグ》を彷彿とさせる唱えたときに誘発する能力。妨害されない除去能力で厄介なパーマネントを確実に退かすことができます。かつてはこの枠が《隕石ゴーレム》だったことを考えると、とんでもないアップデートです。
《マイトストーンとウィークストーン》はお手軽なドローソース&除去として活躍します。《大いなる創造者、カーン》からのマナカーブもよく、一見使い道のなさそうな2マナ生成も《ニクスの祭殿、ニクソス》や《ハイドラの巣》の起動にあてられます。
緑単信心はその見た目に反して(?)、非常に難解なデッキです。コンボ一辺倒ではなく、時として《ハイドラの巣》《老樹林のトロール》《茨の騎兵》で殴ってライフを詰める展開もあります。その際には《ビヒモスを招く者、キオーラ》の能力でクリーチャーをアンタップして実質警戒のように使ったりと、同じカードであっても常に同じ役割として運用するとは限りません。
《収穫祭の襲撃》で何を捲ったらどうなるかのイメージも大事です。《ニクスの祭殿、ニクソス》が捲れることを考慮して先に戦場にある《ニクスの祭殿、ニクソス》を起動するのか。《茨の騎兵》《老樹林のトロール》のような信心の高いクリーチャーが捲れることを考慮して《ニクスの祭殿、ニクソス》を残すのか。期待値もそうですし、どちらのパターンなら勝ち得るのかのイメージを持つことが重要です。
ただ、《大いなる創造者、カーン》が捲れたときのサーチ先まで考えると、いよいよ選択肢が多すぎて完璧にプレイするのは難しいという域を越えて無理な気もしてきます。とにかく難しいデッキなので、使用候補に入れる場合はしっかり練習しておきましょう。
アゾリウスコントロール
どのフォーマットにも存在するコテコテのコントロール。国内ではラクドスミッドレンジと同じくらい人気のある印象を受けます。打ち消し、全体除去、プレインズウォーカーの古事記にも載っている(?)組み合わせで戦います。
《鏡割りの寓話》が使われている中で、3マナの打ち消しである《吸収》を使っていることに関してはいささか疑問が残りますが、《至高の評決》《放浪皇》《ドミナリアの英雄、テフェリー》といった一部カードは間違いなく令和スペックです。モダン級のカードパワーを擁しています。
《空を放浪するもの、ヨーリオン》の有無などの構築もバリエーションがありますが、最近は《孤児護り、カヒーラ》+《軍備放棄》型が主流のようです。低マナ域の除去に難のあるアゾリウスコントロールですが、令和の《剣を鍬に》こと《軍備放棄》の採用によってその弱点を補っています。《軍備放棄》を使うためにマナベースはかなり工夫が施されており、なんと《大草原の川》がフル投入!通称「バトルランド」。久々に見たという方もいるかもしれません。私も最初は驚きました。よくこんな土地を見つけてきたな……。
《孤児護り、カヒーラ》は純粋に手札が+1枚というのを買っての採用でしょう。対ラクドスミッドレンジは手札の質よりも枚数が重要で、手札の呪文はズタボロにされる前提でまずは土地を並べて、後のトップ勝負に持ち込みます。そのため、《真っ白》《死の飢えのタイタン、クロクサ》のような選択肢が自分にある手札破壊で土地を捨てたくない=代わりに捨てる要員と役立ちます。「相棒」の役割がそれでいいのか……。
ラクドスミッドレンジに有利なデッキを食い物にして生きているだけでなく、めちゃくちゃ苦手な相手が少ないというのもアゾリウスコントロールの強みです。白単アグロやラクドスミッドレンジにこそかなり不利ですが、それ以外は苦手といっても4:6以内には収まっている印象です。ラクドスミッドレンジ同様、安定感=強さという認識は間違っていないでしょう。
ロータスコンボ
《睡蓮の原野》を用いたビッグマナ・コンボデッキ。《森の占術》《衝動》で《睡蓮の原野》を探し、《演劇の舞台》で《睡蓮の原野》をコピーして準備完了。《見えざる糸》《熟読》《砂時計の侍臣》でマナを増やしつつ、《出現の根本原理》を唱えます。《出現の根本原理》から《全知》《来世の警告》《溺神の信奉者、リーア》などを選び、さらにリソースを伸ばしてゆきます。最終的には、《首謀者の収得》でサイドから《副陽の接近》を持ってきて二度唱えることでフィニッシュです。
《出現の根本原理》は相手に選択肢がありますが、どの組み合わせて選べれても基本的にはこちら勝利できるように組まれているので、実質1枚コンボです。唱えられればほぼ勝ちなので、このカードを唱えることがゴールです。
パイオニア黎明期から存在するコンボデッキで、一度は《死の国からの脱出》の禁止指定によって弱体化を受けるものの、少しずつアップデートを経て環境に留まり続けています。最近のトレンドは《希望守り》の追加です。本来なら《演劇の舞台》で増やす必要のある《睡蓮の原野》が1枚でもコンボが決まる点が魅力です。《見えざる糸》との爆発力は凄まじく、「督励」した《希望守り》を《見えざる糸》で起こすととんでもない量のマナが産まれます。
《希望守り》を考えるとサイド後に除去を残さざる得ないですが、ロータスコンボ相手に除去を残す行為はかなりのリスクがあります。ただ、メイン戦に関しては腐りがちな除去に当たって悲しい気持ちにはなります。特に赤系デッキで採用率の高い《砕骨の巨人》で除去されてしまう点はマイナスポイント。が、それで1ターン稼げるなら儲けもの。メイン戦での勝率は非常に高いコンボデッキなので、この程度のリスクよりはリターンのほうが大きい、ということでしょう。
ロータスコンボが環境で勝ち残るための条件はただ1つ。《減衰球》が環境に存在するか否か。これがすべてです。いくら《耐え抜くもの、母聖樹》があるからといっても、常に《減衰球》を乗り越えながら戦うのはさすがに厳しいです。出てこないに越したことは有りませんし、採用されていなければそれがベストです。みんなの記憶からロータスコンボの存在が消え、《減衰球》がまったく取られなくなった瞬間がチャンスです。
- 2022/08/12
- ロータスコンボ完全ガイド ~睡蓮と共に歩む~
- 増田 勝仁
セレズニアエンジェル
クリーチャーシナジーのミッドレンジデッキ。単体では役に立たない(…)クリーチャーが多いですが、クリーチャー同士の組み合わせとライフゲインを絡めた圧倒的な制圧力がウリです。《翼の司教》《希望の源、ジアーダ》のような、なぜこれが部族サポートとして許されているのか意味不明なスペックをしているクリーチャーが多数存在します。
クリーチャー同士の繋がりが大事なため、1:1交換を繰り返す除去ミッドレンジに弱そうな見た目をしていますが、フル投入された《集合した中隊》《カイラの再建》で対抗・リカバリーしてきます。サイド後は《形成師の聖域》も追加されるため、単体除去だけで対策しようとすると痛い目を見ます。
今までは緑マナの総数・アンタップイン率に難がありましたが、《剃刀境の茂み》の加入でより安定感が増しました。特に初手近辺で土地が少ない場合、2ターン目に《翼の司教》を唱えるために《枝重なる小道》を白面で置いた結果、緑マナが一生でなくて《集合した中隊》が撃てない…といったこともありましたが、そういった悲しい事件は起きづらくなりました。
性質上、グルール機体のようなクリーチャーデッキにはめっぽう強く、特にライフゲインのおかげで逆転不可能なレベルの差を作れます。逆に全体除去を多用するアゾリウスコントロールや、干渉手段が乏しいことからロータスコンボなどを苦手としています。
あまり気にしなくてもよいかもしれませんが、ミラーマッチは地獄絵図のような戦場になります。戦闘で入るダメージよりも明らかにライフゲイン量のほうが多く、ライフは3桁を突破することもザラにあります。そうなるとライブラリーアウト以外でゲームが決着せず、つまり《集合した中隊》《カイラの再建》を多く唱えた側は敗北するという訳の分からない結末を迎えます。どうしても気になる場合は《永遠の放浪者》や《群れの力、アジャニ》のような必殺技を用意しましょう。
クリーチャーデッキには有利だがコンボやコントロールデッキは無理!と相性がハッキリしているので、フィールドが明確な場合には使用候補に挙がるでしょう。
グルール機体
ラクドスミッドレンジの弱点を突いたキラーデッキ。《エシカの戦車》《領事の旗艦、スカイソブリン》はいずれもそれより下のマナ域のクリーチャーとの戦闘では最強です。フェアな激突では絶対に負けないという強い意志を感じます。
また、《黙示録、シェオルドレッド》のようにサイズ負けする・突破の難しい接死持ちクリーチャーなどは《アクロス戦争》で対処可能です。《アクロス戦争》は機体とも相性がよく、第Ⅲ章の誘発に対応して機体で「搭乗」=タップさせることで、本来は相手に返すはずのクリーチャーを自爆させられます。
グルール機体は『ファイレクシア:完全なる統一』によって大幅な強化が見込まれます。今までは初動のマナクリーチャー(《ラノワールのエルフ》《エルフの神秘家》)を唱えるための緑マナに不安を抱えていましたが、《銅線の地溝》はその弱点を克服してくれるでしょう。また、《免れ得ぬ破滅、ルーカ》は《湧き出る源、ジェガンサ》を邪魔することなく採用できます。《コラガンの命令》のようなアーティファクト破壊を咎める別角度の脅威として活躍が期待できます。
構造はマナクリーチャー+クリーチャーデッキに強いビッグアクションなので、コントロールデッキとの相性はすこぶる悪いです。特にアゾリウスコントロールは天敵です。マナクリーチャーを経由して2ターン目の《無謀な嵐探し》で一気にマウントが取れればよいですが、少し長引くと常に《吸収》《至高の評決》に怯えながら戦うことになります。
現在のパイオニアで最強格のアグロデッキなので(そしてアグロデッキの選択肢が意外と少ない)、どうしてもアグロが使いたい!という方はこのグルール機体がオススメです。
白単アグロ
まさしく正統派アグロデッキ。強さの割に過小評価されている印象を受けますが、単純なデッキの強さはラクドスミッドレンジとほぼ同等だと思っています。
戦い方はいたってシンプル。低マナ域の優秀なクリーチャーを並べて、それらを《サリアの副官》《光輝王の野心家》で強化し、《輝かしい聖戦士、エーデリン》《精霊への挑戦》で押し込むお手本アグロデッキです。《サリアの副官》《輝かしい聖戦士、エーデリン》《変わり谷》などはモダンのアグロデッキでも採用されるレベルの強力なパーマネントですので、当然パイオニアではオーバーパワーです。強すぎます。
《精霊への挑戦》の存在はこのデッキを1ランク上へ押し上げています。フィニッシュ手段として強烈なうえに除去デッキに対しても耐性付与として有効であり、それでいて1マナと軽いため腐りにくい。このカードを使いたいがために色を絞って白単にしているといっても過言ではないでしょう。
『兄弟戦争』で追加された《徴兵士官》は地味ながらに強力なアップデートです。本来であれば後半に無視できる1マナ域のクリーチャーが最終的にリソースを稼ぐため、4マナ到達前に除去する必要があります。ほかの1マナ域である《不屈の護衛》《有望な信徒》なども最終的には無視できない存在になるため、実質デッキに入っているすべてのクリーチャーが除去を要求するというから恐ろしい話です。
愚直ビートダウンなので除去デッキに弱いと思いきや、《救出専門家》《婚礼の発表》でしっかり対応してきます。特に《婚礼の発表》は《サリアの副官》と非常に相性がよく、どちらから先に唱えても強烈なシナジーを形成します。《婚礼の祭典》になれば《アーデンベイル城》や《輝かしい聖戦士、エーデリン》で増えるトークンすら無視できません。
ラクドスミッドレンジのサイドにいまだに《引き裂く流弾》が採用されていることからも分かる通り、少しでも舐めた瞬間に一気に潰されるくらいの爆発力を秘めています。実際に使用するかはメタゲームの良し悪しもありますが、ポテンシャルが非常に高いデッキであることは間違いありません。
イゼットフェニックス
《弧光のフェニックス》を使ったコントロールデッキ。一時代を築いたデッキですが、最近は少し下火な印象を受けます。《表現の反復》を失い、リソース回復を《パズルの欠片》《宝船の巡航》に頼らざる得なくなった結果、墓地対策に弱い=適切にサイドカードを取られると勝てないポジションデッキに。《真っ白》《未認可霊柩車》のような対策が少なくなったタイミングがねらい目です。
とはいえフェアなリソース交換は最強クラス。《呪文貫き》《焦熱の衝動》《稲妻の斧》で相手のカードと交換して、《パズルの欠片》から《宝船の巡航》を唱えて、《弧光のフェニックス》を一気に戦場に戻して…と、まわっているときのこのデッキは最強に見えます。
ただし、プレイは非常に難解です。手札の入れ替えが多く、何度も取捨選択を強いられます。特に《弧光のフェニックス》を墓地に落とすタイミングが難しいと感じます。序盤に適当に落とすと《宝船の巡航》のコストに使えなかったり、《漁る軟泥》《墓地の侵入者》《真っ白》の餌食になってしまったり。かといって捨てる手段自体は限られているので、ここで本当に捨てた方がよいのか?という判断がシビアです。
デッキとしての地力はあり、キビキビ動くことから”ゲームをしている”感じがして満足感も◎です。根強いファンも多く、メタゲームの良し悪しに関わらず一定数存在してもおかしくないデッキでしょう。
- 2022/07/15
- 《帳簿裂き》で蘇るイゼットフェニックス
- Javier Dominguez
ラクドスサクリファイス
《大釜の使い魔》《魔女のかまど》《波乱の悪魔》のサクリファイスギミックを使ったミッドレンジデッキ。直近で人気のアーキタイプで、タッチ緑の《フェイに呪われた王、コルヴォルド》を採用したジャンドサクリファイスも含みますが、ほとんどは純正2色でまとめられたタイプです。
《波乱の悪魔》を絡めた戦場の制圧力はピカイチ。クリーチャーデッキはひとたまりもないです。部族デッキを始め、白単アグロのようなデッキに対しては一度態勢が整えば負けることはないでしょう。
《不運な目撃者》も地味ながらシナジーがあって、いぶし銀の活躍を見せます。コンボパーツを探す手助けにもなりますし、自身がサクリファイスギミックとも相性がよいです。《命取りの論争》《鏡割りの寓話》もラクドスサクリファイスには欠かせないキーカードです。複数カードの組み合わせデッキなので引きムラが発生しやすく、この手の潤滑油・ドローソースは多いに越したことはありません。
と、ここまでの話からも分かる通り、必要なカードの多さから一定数の自爆がありえます。やはりデッキに複数枚引きたくないカードが何枚も入っていること自体が、事故を引き起こす要因となっています。どれだけサポートしても事故は起こるべくして起こります。割り切りましょう。
イゼット独創力
モダンでもお馴染み《不屈の独創力》を使ったコンボデッキ。モダンのそれとは異なり、X=2以上での瞬殺を狙う真の意味でのコンボデッキです。狙って踏み倒すのは《歓楽の神、ゼナゴス》+《世界棘のワーム》の組み合わせで、《歓楽者ゼナゴス》で《世界棘のワーム》のパワーを倍&速攻を付与して一撃30点!!ほかにも《蝗の神》+《滝の賢者》や《奔流の機械巨人》(+《マグマ・オパス》)などの派生形もあります。
サイド後は踏み倒し先を《船砕きの怪物》《星界の大蛇、コーマ》にシフトも可能です。《世界棘のワーム》は通常の除去には強いものの、《消失の詩句》《放浪皇》のような追放除去には無力なため、そういった相手には瞬殺コンボを狙わず、《歓楽の神、ゼナゴス》はサイドアウトして普通にデカブツを踏み倒す呪文として使います。ラクドスミッドレンジのようなミッドレンジ相手は単純に《世界棘のワーム》が強力なので、ワンパンで倒す必要がなく、そういった場合も《歓楽の神、ゼナゴス》は抜いて別のフィニッシャーに差し替えます。
このデッキに限った話ではないですが、イゼットカラーの弱点として《黙示録、シェオルドレッド》が倒しづらいというのが挙げられます。イゼットフェニックスに関しては《稲妻の斧》があるのでそこまでではないですが、イゼット独創力の場合は《焙り焼き》のような専用除去を取らない限りは1:1交換が難しいです。
《不屈の独創力》用のタネを用意するのに《予想外の授かり物》のようなドローを多用することから、《黙示録、シェオルドレッド》は必ず除去しなければならないにも関わらず、除去するのが難しい…という明確な弱点を抱えています。特に《思考囲い》などの妨害を擁するラクドスミッドレンジには手を焼きます。
登場初期からあまりリストが進化していないことから、個人的にはまだまだ伸びる余地があるアーキタイプだと思っています。特にフィニッシャーをこだわらなければいろんなパターンで組めるので、興味がある人は頑張って開拓してみてください(丸投げ)。
アブザンパルヘリオン
《大牙勢団の総長、脂牙》《パルヘリオンⅡ》を組み合わせた純正コンボデッキ。なぜ《軍団のまとめ役、ウィノータ》が禁止で《大牙勢団の総長、脂牙》が許されるのか。 そう疑問に思うのも当然の威力と速度を誇ります。3-4ターン目に13打点かつ4/4飛行・トークンが2体並ぶため、普通は逆転できません。ここで試合終了です。
アブザンパルヘリオンで特に凶悪なのが《忌まわしい回収》。《パルヘリオンⅡ》を落として《大牙勢団の総長、脂牙》を拾ったら終わりです。2マナの1枚コンボです。そんなことが許されるのか…?
《大牙勢団の総長、脂牙》を使った単体コンボに注目されがちですが、意外とミッドレンジプランも行けるのが特徴です。というよりも《エシカの戦車》単体が強すぎてプランになっているだけという話でもあります。機体が相手のカードと交換できれば、実質8/8相当のクリーチャー。強すぎだろ!
しかし、《黙示録、シェオルドレッド》の存在は向かい風です。《エシカの戦車》単体では突破できないので、グダグダしてしまうとライフを吸い尽くされてしまいます。やはり狙うのは《パルヘリオンⅡ》です。いくらミッドレンジが行けるからといってコンボを狙わない理由にはなりません。暴力はすべてを解決します(?)
一時期に比べると人気の落ちた印象を受けますが、それでもまだまだ強力なデッキであることには変わりません。ラクドスミッドレンジに有利かつ、不利なデッキも最速3ターンキルを狙える極悪コンボデッキ。ぜひ使いましょう。
エニグマファイヤーズ
《奇怪な具現》を用いたコントロールデッキ。大量に採用されたエンチャントを《奇怪な具現》でクリーチャーに変換して戦います。《創案の火》と「相棒」の組み合わせは非常に相性がよいです。《創案の火》で呪文を支払うのにマナが必要なくなるため、土地を「相棒」の回収コストにあてられますし、《創案の火》で失ったリソースをそのまま「相棒」が回収してくれます。
また、《力線の束縛》のおかげで7マナのクリーチャーを踏み倒せるようになりました。4ターン目に《産業のタイタン》《裏切りの工作員》が踏み倒されたらたまったもんじゃないです。『ファイレクシア:完全なる統一』からは《機械の母、エリシュ・ノーン》も採用されているようですが、ちょっとオーバーキルな感じが否めません。
中盤戦以降はほぼ無敵で、リソース&戦場の制圧力ともに最強クラスです。しかし、序盤にはかなり難があり、《スレイベンの守護者、サリア》が出てこようものならその場で卒倒するレベルです。《力線の束縛》のような序盤を埋めてくれる強力な除去のおかげで多少はマシになったものの、《力線の束縛》用の「版図」も安定して満たせるかというとイマイチ不安が残ります。
どちらも安定感がイマイチなことから、あまりメタゲームの上位になるタイプではありませんが、デッキの強さ自体は保証します。ただ、ポジションデッキであることは間違いないので、白単アグロやアゾリウスコントロールにイジメられても責任は負えません。自己負担でお願いします。
オススメデッキ紹介
最後に私見100%のオススメデッキを3+1選を紹介します。
ラクドスミッドレンジ
やはり最強デッキを推さないわけにはいかないでしょう。この手のシェア率が高いときのミッドレンジデッキは本当に強いことが多いです。安定したマナベースと強力なパーマネントの組み合わせ。隙がありません。苦手なデッキも大量の手札破壊で妨害して強制的に事故らせることで五分付近まで寄せることができるため、いくら不利なデッキが存在しても一定の勝率は保てるでしょう。
要約:最強デッキを使え!
グルール機体
すでに解説済みですが、ファストランドの加入によって安定感が爆上がりしました。このアップデートは本当に大きく、アグロデッキにおける序盤にアンタップインする2色土地の重要性は、それだけで1記事になってしまうほどです(?)。現状でもそれなりですが、今後も対コントロール向けのカードが追加されれば、より上のポジションを狙えるデッキであることは間違いないでしょう。
要約:最強デッキに強いデッキを使え!
アゾリウスコントロール
とにかくマッチアップ間の相性が安定しています。極端に苦手なマッチアップが少なく、下位Tierのデッキとの相性は五分~有利付近のものが多いです。逆にラクドスミッドレンジや白単アグロといった上位Tierのデッキが苦手ではあるため、長いラウンド/人数の多いイベントで安定したスコアが出せればよいようなイベントでは向いているでしょう。
要約:最強デッキを倒そうとするデッキを倒せるデッキを使え!
番外編:ロータスコンボ
このデッキを推す理由は強さではなく「特殊な技術や知識が必要」だからです。
通常のアグロ/ミッドレンジ/コントロールとは異なり、勝利手段が特殊な方法であるため、それに向かうために通常行うそれとは異なります。なんとなく手札にある土地とパーマネントとスペルを並べてなんとなくゲームになる…ということは一切ありません。ゆえに「環境に《減衰球》が少ないなら使ってみようかな」と安易な気持ちで使おうとすると最初は痛い目を見ます。
このデッキを知っている・知らないは大きな差になります。自分で使う際もそうですし、相手にした際に撃たれたら必敗に思える《出現の根本原理》も意外と穴があります。《首謀者の収得》も1枚しか採用されていないことを把握していれば、《思考囲い》で落として《墓地の侵入者》でゲームから取り除くことで詰ませることができます。
これらの“穴”は使ってみるとすぐに気づきます。なので練習の価値が非常に高いです。また、コンセプトそのものに大きなアップデートはないため、一度覚えてしまえば後で使おうと思ったときにすぐに使えます。なので、触れたことがない・興味がないからこそ一度練習してみるとよい、という意味でオススメしています。
過去に執筆したデッキガイドがあるので、気になる方はこちらも読んでみてください。執筆時点ではマイナーだった《原初の災厄、ザカマ》も、今ではほぼ確実に採用されていることに時代を感じますね。
- 2022/08/12
- ロータスコンボ完全ガイド ~睡蓮と共に歩む~
- 増田 勝仁
おわりに
今回の記事は以上になります。これから店舗予選/プレミアム予選をまわる方の参考になれば幸いです。
『ファイレクシア:完全なる統一』は地味ながらも各種デッキを着実にアップデートさせました。現時点では見た目通りの影響を与える程度に留まっていますが、ここから研究が進んでどのように変化していくかも楽しみですね。
増田 勝仁(Twitter)