はじめに
みなさんこんにちは。
待ちに待った新セットの『ファイレクシア:完全なる統一』がリリースされましたね。カードプールが広いレガシーでは、ほかの構築フォーマットより新セットが環境に大きな影響を与えることは稀ですが、《偉大なる統一者、アトラクサ》《気まぐれな呪文踊り》などレガシーでも通用する強力なカードが含まれていました。
さて、今回の連載では先週末に開催されたLegacy Challengeの入賞デッキを見ていきたいと思います。
Legacy Challenge 2/11
《グリセルブランド》をも凌ぐフィニッシャー
2022年2月11日
- 1位 Mono Blue Painter
- 2位 Echo Storm
- 3位 Reanimator
- 4位 Mono White Initiative
- 5位 Storm
- 6位 Mono Black Depths
- 7位 Izzet Delver
- 8位 Mono Black Helm
トップ8のデッキリストはこちら
『ファイレクシア:完全なる統一』がMOに実装された直後に開催されたLegacy Challenge。
全体的にコンボデッキが多く、優勝を収めたのは『ファイレクシア:完全なる統一』がリリースされる前の環境でも活躍していた青単色の《絵描きの召使い》コンボでした。
新カードも早速使われており、特に《偉大なる統一者、アトラクサ》を新たなフィニッシャーとして採用したReanimatorは多くのプレイヤーから注目を集めていました。
デッキ紹介
Reanimator
『ファイレクシア:完全なる統一』で登場した《偉大なる統一者、アトラクサ》はスタンダード、モダンなどあらゆるフォーマットですでに活躍しています。レガシーでは《再活性》や《実物提示教育》といったスペルでコストを踏み倒すことができるため、ここでも有力なフィニッシャーとして注目を集めているのです。
最近は赤黒型が主流でしたが、《意志の力》と《悲嘆》という2種類のピッチスペルのコストとしても使用できる《偉大なる統一者、アトラクサ》の登場によって青黒型のReanimatorが復権を果たしました。
赤をあきらめたことで《信仰無き物あさり》から《入念な研究》にダウングレードされてしまったのは残念ですが、カウンターや《実物提示教育》にアクセスすることができるためコンボを守りやすくなり、フィニッシャーを踏み倒す手段が分散されることによって対策もされにくくなります。
☆注目ポイント
《偉大なる統一者、アトラクサ》は長らくReanimatorの主力を務めていた《グリセルブランド》よりも優先して採用されるほどでした。ETB能力によって手札を補充できるため、ライフの損失をすることなくアドバンテージを稼げること、青黒というカラーを活かして《意志の力》と《悲嘆》の代用コストに充てれる点で優れています。
《偉大なる統一者、アトラクサ》の能力を活かせるようエンチャントの《Dance of the Dead》も入っており、アドバンテージの期待値も上がっています。《グリセルブランド》と違ってライフが7以下の状態でも手札を補充できるため、Izzet Delverのようにライフを詰めてくるデッキとのマッチアップでも安定します。
《死体発掘》よりも優先してエンチャントである《動く死体》と《Dance of the Dead》が採用されています。《Dance of the Dead》はテキストが長いカードですが、要は《動く死体》のバリエーションでエンチャントされて墓地から復活したクリーチャーが+1/+1と強化される代わりに、タップ状態で場に出てアンタップするのにマナを支払う必要があるため、《動く死体》と比べると使い勝手は劣ります。
墓地デッキはメインこそ妨害がないので強力ですが、サイド後は墓地対策が厳しくなります。《虚空の力線》《安らかなる眠り》《墓掘りの檻》といった置物を対策するために《厚かましい借り手》がとられています。また、サイド後は墓地を使わない踏み倒し手段である《実物提示教育》も投入されるため、赤黒型に比べて墓地対策に耐性がついています。
デルバーや「イニシアチブ」デッキに対して《叫び大口》も3枚と多めに採用されています。「想起」でプレイした後もリアニメイトでき、回避能力により「イニシアチブ」を奪えます。《金線の酒杯》はスイーパーとして使えるほかに、ゲームが長引いた際は10点火力としても使える面白いチョイスです。
Echo Storm
『神河:輝ける世界』から登場した《隔離用構築物》は、そのターン中に限り手札から捨てたカードをプレイできるようになるため《ライオンの瞳のダイアモンド》との組み合わせが強力です。《隔離用構築物》があれば、実質《ライオンの瞳のダイアモンド》は《Black Lotus》になります。
《ライオンの瞳のダイアモンド》+《永劫のこだま》のコンボも搭載されており、「ストーム」を稼いで最終的に《ぶどう弾》《思考停止》《巣穴からの総出》によって勝利します。
《謎鍛冶》などでデッキを掘り進むことができ、《ライオンの瞳のダイアモンド》をサーチしてこれる《ウルザの物語》《永劫のこだま》をサーチしつつ効率的に墓地に落とせる《ギャンブル》など、キーパーツを手に入れる手段にも恵まれています。
☆注目ポイント
このデッキも『ファイレクシア:完全なる統一』からの新カードによって強化されています。手札を4枚も補充することができる《執念深い炎焚き》は、《隔離用構築物》とシナジーがあり強力なドローエンジンとして機能します。このデッキでは油カウンターも蓄積しやすく、多くの場合1マナで起動することができます。
《マイコシンスの庭》はモダンでも活躍している土地で、レガシーでも《ライオンの瞳のダイアモンド》と相性がいいカードとして話題になっていました。《ライオンの瞳のダイアモンド》は起動するのにタップがいらないため、コピーしてすぐに強力なマナ加速として機能します。このデッキ以外にもTESや《深海の破滅、ジャイルーダ》デッキでも使われているなど、『ファイレクシア:完全なる統一』のカードの中でも可能性を感じさせるカードです。
Legacy Challenge 2/12
Izzet Delverの新戦力
2022年2月12日
- 1位 Izzet Delver
- 2位 Grixis Delver
- 3位 Elves
- 4位 Elves
- 5位 Reanimator
- 6位 Cephalid Breakfast
- 7位 Reanimator
- 8位 Cephalid Breakfast
トップ8のデッキリストはこちら
土曜日のLegacy Challengeで結果を残していたReanimatorが今回も健闘していました。そのほか、ElvesやCephalid Breakfastなど前環境でも活躍していたアーキタイプも結果を残しています。
前環境で猛威を振るっていた「イニシアチブ」デッキは、ElvesやCephalid Breakfast、Delverといったデッキが中心の環境では厳しかったようです。そして最後まで残ったのは、やはりトップメタのIzzet Delverで、環境に応じてアップデートされています。
デッキ紹介
Izzet Delver
《気まぐれな呪文踊り》はレガシーに大きな影響を与える可能性があるカードとしてリリース前から話題になっていました。禁止カードに指定された《戦慄衆の秘儀術師》とも比較されており、《戦慄衆の秘儀術師》と同様に軽いスペルを多用するIzzet Delverの新たな主力のクリーチャーとなる可能性があるとされていました。
このデッキは《秘密を掘り下げる者》の枠に《気まぐれな呪文踊り》を採用し、相性のいいカードである《ミシュラのガラクタ》も多めに採用したDelverless Delverとも呼ばれているバージョンです。
《気まぐれな呪文踊り》は能力を起動するために攻撃を通す必要がありますが、一度攻撃を通しただけで多大なアドバンテージを稼げる可能性があるため、相手にとってはマスト除去となります。メインから採用できる回避能力持ちのクロックは、「イニシアチブ」デッキ相手でも重要となります。
☆注目ポイント
《気まぐれな呪文踊り》に油カウンターを2個乗せることは、《ミシュラのガラクタ》など軽いスペルを多用するためそれほど難しくなく、《表現の反復》を2回連続で唱えられればかなりゲームを優位にすすめることができます。
また、このクリーチャーの利点の一つとして墓地に依存しないことが挙げられます。墓地の状況によって強さが変動する《濁浪の執政》や《ドラゴンの怒りの媒介者》を主力としているため、特に墓地対策が厳しくなるサイド後のゲームにおいて墓地に依存しない勝ち手段は重要なものとなります。
《気まぐれな呪文踊り》は相手にとって除去しなくてはならない脅威であり、相手がこのクリーチャーを処理するために《剣を鍬に》や《紅蓮破》を使用すれば《濁浪の執政》も生き残りやすくなります。また、ブロックされないため《忍耐》や《悪意の大梟》などで止まりがちだったこのデッキにとって信頼性の高いクロックとなります。
しかし、1マナのクロックを減らすことは早い段階から相手にプレッシャーをかけることが難しくなることを意味します。特にコンボデッキとのマッチアップではクロックの遅さは致命的になりやすく、「イニシアチブ」とのマッチアップでも後手時にはかなり遅く感じられます。今後はメタゲームによって、従来の《秘密を掘り下げる者》を採用したバージョンか《気まぐれな呪文踊り》バージョンかを使い分けていく必要も出てきそうです。
《軽微なつまづき》はプレビュー段階でかなりの論争を生み出したカードでした。あの《精神的つまづき》の再来と評価する人もいれば、極めて平凡なカードと評価する人で意見が分かれていたのです。筆者もこのカードはそれほど強くないと評価した一人でしたが、蓋を開けてみれば今大会の決勝戦まで残った2つのDelverでメインから3枚も採用されていました。
さすがに0マナでもプレイできた《精神的つまづき》と比べるのは酷ですが、《軽微なつまづき》は《剣を鍬に》や《紅蓮破》といった現環境でもっともポピュラーな除去や、《暗黒の儀式》《再活性》《納墓》といった多くのコンボデッキのキーカードを弾くことができるため、環境によっては十分にメインからでも使えます。
Grixis Delver
Izzet Delverタッチ《殺し》は、もともと「イニシアチブ」デッキの《練達の地下探検家》などをテンポを失わずに除去できるということで広まったバージョンです。
《殺し》がタッチされている以外は今大会で優勝を収めたIzzet Delverと似た構成ですが、このデッキは《秘密を掘り下げる者》と《気まぐれな呪文踊り》の両方を採用した丸い構成になっています。
☆注目ポイント
0マナでプレイできる《殺し》は《気まぐれな呪文踊り》と相性も良く、《ミシュラのガラクタ》《目くらまし》《意志の力》とともに0マナでプレイできるスペルが増えることで、よりスムーズにデッキを回すことができます。そういった理由からも、「イニシアチブ」デッキが減少傾向にある現在でも《殺し》をタッチする意味はありそうです。
《秘密を掘り下げる者》は《濁浪の執政》や《気まぐれな呪文踊り》といった脅威と比べるとインパクトでは劣りますが、完全にカットしてしまうと早い段階からクロックをかけることが重要となるコンボデッキとのマッチアップで不利になってしまいます。しかし、《秘密を掘り下げる者》と《気まぐれな呪文踊り》の両方を採用することでスペルの枠が取られてしまうため、全体のバランスを考慮して2枚の採用になっています。
総括
新環境ということで多くのデッキが試験的に『ファイレクシア:完全なる統一』のカードを採用していましたが、その中でも大きな成功を収めたのは《偉大なる統一者、アトラクサ》と《気まぐれな呪文踊り》でした。
特に《偉大なる統一者、アトラクサ》はすべての構築フォーマットでも活躍しており、レガシーにも大きな影響を与えることは明らかでした。まだまだ環境初期なので、研究が進むことでさらに使えるスリーパーが見つかるかもしれませんね。
来月には『プレイヤーズコンベンション横浜2023』の併催イベントとして、『日本レガシー選手権』が開催されます。新環境になって初めて開催される大規模なテーブルトップのイベントなので楽しみですね。
以上、USA Legacy Express vol.213でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!