はじめに
『スカージ』で「ストーム」という能力が登場して以降、あらゆるフォーマットで「ストーム」デッキが組まれてきました。古くはデザイアに始まり、ドラゴンストーム、けちストーム、ANTなど。統率者戦でも《死の国からの脱出》と《思考停止》はよく見かけるカードです。
多くの場合、そこに緑の姿はありません。《騒鳴の嵐》はリスストームを生み出しましたが、ほとんどの型ではほかに緑の要素を含みません。直近では《敬慕される腐敗僧》を用いた毒ストームが研究されていますが、ストーム要素自体は赤に頼っています。
では緑単でストームデッキを組むことは不可能なのでしょうか。マジックとはそれほどまでに狭量なゲームだったのでしょうか。
《前駆軟泥、エーヴ》の活かし方を考えよう
緑単マニアのみなさまこんにちは。晴れる屋のきよそねです。今回は緑単ストーム。《前駆軟泥、エーヴ》を統率者にしたデッキをご紹介します。
《前駆軟泥、エーヴ》は唯一無二の「ストーム」を持ったクリーチャー呪文。そのターンに唱えられた呪文の数だけ伝説ではない自身のトークンを生み出し、自身のコントロールしているウーズの数だけカウンターが乗って戦場にでます。あまり頻繁に見かけるカードではありませんが、レガシーのANTでは《狼狽の嵐》対策としての採用実績があります。
ちなみにパーマネント呪文のコピーによって戦場に出るトークンは「生成」されているわけではないので、生成されるトークンを倍にする《似通った生命》などのカードでは倍になりません。ちょっと残念。
統率者戦においては《食物連鎖》との1枚コンボが可能。自身とトークンをコストに唱え直すことで、クリーチャー限定の無限マナと無限のトークンを生み出すことができます。とはいえ、緑単は特定のエンチャントに頼るには不向きな色。緑特有の大量ドローか、《次元橋》のような大振りなもので探し出すしかありません。メインプランとするにはやや頼りないですね。
ならば《食物連鎖》っぽいカードを大量に投入しましょう。《前駆軟泥、エーヴ》やトークンをマナに変えるカードを思いつく限り投入していきます。
「ストーム」といえばコスト軽減。こちらはかなりの種類があるため、軽減効率の良いものから優先的に採用していきます。
コストを軽減しつつトークンをマナに変えることで、《前駆軟泥、エーヴ》を何度も唱えるチェインコンボを目指します。無限とはいかずとも、対戦相手を圧殺するだけのトークンを並べることはたやすいでしょう。
デッキリスト
そうして出来上がったのがこちらのリスト。
さすがに毎回コンボを目指す構築は無理があったので、ある程度の「ストーム」で《前駆軟泥、エーヴ》を唱えて殴っていくプランも用意しました。マリガンで探すべき手札はおおむね3通り。
・4ターン以内に無限コンボかチェインコンボをスタートできる。
・3ターン以内にストーム4以上で《前駆軟泥、エーヴ》を唱えられる。
・ストームは少なめだが、十分なアドバンテージ源がある。
1-2ターン目は最低限のマナ加速だけをしつつ、3ターン目以降に一気に呪文を連打しましょう。「ストーム」が4ならクロックは20。統率者戦といえど無視できる数字ではありません。
何枚か特徴的なカードを紹介します。
ワイアウッドの共生虫
終身名誉エルフ。マナ加速やETBの再利用など多岐にわたって活躍するカードですが、このデッキでは「ストーム」を稼ぐという重要な役割が。各種クリーチャーサーチでは常に上位の選択肢になります。
アドバンテージ源
アドバンテージ源はさまざまなものを採用していますが、なかでも特に《前駆軟泥、エーヴ》と相性の良いのがこの3枚。これらが引けている場合は、多少低めの「ストーム」カウントでもエーヴを唱えてしまいましょう。
《ニクスの祭殿、ニクソス》
紹介するまでもないほどに強くて有名なカードですが、このデッキにおいては別格。《ガイアの揺籃の地》をも置き去りに。《前駆軟泥、エーヴ》の信心は3。コピーであるトークンも同じく信心を持つため、ひとたびエーヴを唱えたならばとんでもない量のマナを生み出してくれます。
ところで
このデッキを組むにあたって1人回しをしたんですが、組んだ本人が頭を抱えるくらいに回すのが難しいです。構築とスキルの問題とか言ってはいけない。
なにせ緑単はクリーチャーの色。《暗黒の儀式》やアーティファクトと違い、マナを生むためには召喚酔いから覚めている必要があります。次のターンのマナのために唱えるのか、「ストーム」のために温存するのか。どのようなカードの使い方をすればもっとも効率的に「ストーム」を稼げるのか。あらゆる行動でこれらを考えていくことになります。
そのため前回のイーサーンに引き続き、とにかく1人回しが重要。これもまた緑単の醍醐味です。パズルを解いているようで病みつきになりますよ。
今回は《前駆軟泥、エーヴ》でパズルのような緑単をご紹介しました。また次回《ギャレンブリグ城》でお会いしましょう。