USA Modern Express vol.90 -完成化していくモダン-

Kenta Hiroki

はじめに

みなさんこんにちは。

『ファイレクシア:完全なる統一』がリリースされて3週間が経ちましたが、《偉大なる統一者、アトラクサ》《マイコシンスの庭》のほかにも新カードが複数のデッキで見られるなど、環境に大きな影響を与えているようです。

今回の連載では、先週末に開催されたModern Challengeの結果を見ていきたいと思います。

Modern Challenge 2/18
新環境でも強いラガバン

2022年2月18日

  • 1位 Izzet Ragavan
  • 2位 4C Cascade
  • 3位 Jeskai Prowess
  • 4位 Creativity Combo
  • 5位 Rakdos Evoke
  • 6位 Amulet Titan
  • 7位 Dimir Mill
  • 8位 Amulet Titan

トップ8のデッキリストはこちら

《マイコシンスの庭》を獲得してさらに強化されたAmulet Titanは、今大会でも複数のプレイヤーを上位に送り込んでいました。

旧環境から強かったデッキが順当に結果を残しているなかで、《完成化した精神、ジェイス》を採用したDimir Millも結果を残しているなど前評判通りモダンにも影響を与える強力なセットであることが確認できます。

デッキ紹介

Dimir Mill

《書庫の罠》《面晶体のカニ》など「切削」する効果を持つカードを利用して最終的にライブラリーアウトで勝利します。

《面晶体のカニ》《遺跡ガニ》以外はクリーチャーを採用していないので除去はあまり役に立たず、軸をずらした戦略なのでコントロールのような遅いデッキに強いデッキになります。《致命的な一押し》《湖での水難》といった除去や妨害も搭載されていますが、Burnのように速攻でライフを攻めてくるデッキは苦手とします。

ライブラリーアウトはもともとはカジュアルプレイヤーに人気があるファンデッキ的な立ち位置でしたが、最近は強力な「切削」スペルが多数登場したため大会でも上位で見られるようになりました。

☆注目ポイント

ターシャズ・ヒディアス・ラフター

《ターシャズ・ヒディアス・ラフター》は、《ミシュラのガラクタ》《敏捷なこそ泥、ラガバン》といった低マナ域のカードが中心のフォーマットでは強力なライブラリー破壊スペルとして機能します。ほかの「切削」スペルと異なり追放するので、《引き裂かれし永劫、エムラクール》などでライブラリーをリセットされることを防ぐことができます。

Fractured Sanity

《正気破砕》はカードを14枚も「切削」できる強力なライブラリー破壊スペルです。色拘束の強い3マナのソーサリースペルはもっさりしてしまうこともありますが、サイクリングすることも可能で同時に「切削」できるのでIzzet Ragavanのようにカウンターを使用するデッキに対しても使えます。

Jace, the Perfected Mind

『ファイレクシア:完全なる統一』から登場した《完成化した精神、ジェイス》もメインから採用されています。相手を「切削」しつつ《彼方の映像》と同様の効果が得られる[-2]能力があるので、場に出てからすぐにアドバンテージを得ることができます。完成化しない状態で出てくれば忠誠値が5あるので[-X]能力によって場に出た直後から15枚「切削」できるなどこのデッキに非常にマッチした優秀なプレインズウォーカーです。

Modern Challenge 2/18
新セットによって強化されたアーキタイプ

2022年2月18日

  • 1位 Obosh Red
  • 2位 Dimir Mill
  • 3位 Rakdos Evoke
  • 4位 Izzet Ragavan
  • 5位 4C Elementals
  • 6位 4C Elementals
  • 7位 Death and Taxes
  • 8位 Tron

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優勝したのは《大祖始の遺産》をメインからフル搭載し、墓地対策に大きく力を入れたObosh Redでした。また、前述の大会でも結果を残していたDimir Millが準優勝という好成績を残しています。

デッキ紹介

Death and Taxes

モダン版のDeath and Taxes。カードパワーで相手を圧倒するよりもシナジーで勝負するタイプの戦略で、ヘイトベアーを利用することによって相手の行動を制限していくプリズン戦略的な側面もあります。モダンには《不毛の大地》《リシャーダの港》といったカードがないので、《レオニンの裁き人》《幽霊街》の組み合わせで相手のマナを縛っていきます。

《火と氷の剣》《ルーンの与え手》による除去耐性の高さもこのデッキの特徴です。《スレイベンの守護者、サリア》《レオニンの裁き人》などによって行動を制限されていることが多いため、《ルーンの与え手》の召喚酔いが解ける前など相手にとっては適切なタイミングで除去を撃つのが困難になります。

☆注目ポイント

レオニンの裁き人幽霊街エメリアのアルコン

フェッチランドの起動を妨害する《レオニンの裁き人》は、《スレイベンの守護者、サリア》と並んで主要なヘイトベアーになります。相手がマナを支払うことができなければ、《幽霊街》《露天鉱床》として機能します。

《エメリアのアルコン》はHammer TimeやIzzet Ragavanなど1ターンに複数のスペルを使用するデッキを大幅に減速させることができ、「続唱」も封じることができるモダンでも優秀なヘイトベアーです。特殊地形を使うデッキがほとんどを占めるモダンでは多くのデッキの動きを制限することができ、Death and taxes側は《霊気の薬瓶》などを駆使することで影響を最小限に抑えることができます。

耐え抜くもの、母聖樹ガドック・ティーグ辺境地の罠外し

基本的な構成はModern Showcase Challengeでも準優勝していたDeath and Taxesに似ていますが、緑をタッチしています。緑を足すことの最大の利点は《耐え抜くもの、母聖樹》が使えることで、Hamnmer TimeやTronとの相性が改善されており、《レオニンの裁き人》との相性も良いです。また、《ガドック・ティーグ》《辺境地の罠外し》といったヘイトベアーも使えるようになりサイドボードの選択肢が広がりました。

離反ダニ、スクレルヴMelira, the Living CureSoulless Jailer

《離反ダニ、スクレルヴ》は追加の《ルーンの与え手》のように機能し、《石鍛冶の神秘家》などキーとなるクリーチャーを除去から守ります。《生ける治療、メリーラ》も自軍のクリーチャーを除去から守るカードですが、自身も2マナで3/3となかなかの性能なのでコンボ相手にはクロックとしても機能します。《魂なき看守》《墓掘りの檻》の能力を内蔵したクリーチャーで、《ルーンの与え手》《離反ダニ、スクレルヴ》で守りやすいためクリーチャーであることはこのデッキでは利点になります。

4C Elementals

『モダンホライゾン2』から登場した「インカーネーション」サイクルによってトーナメントレベルにまで強化されたElementals。

《発現する浅瀬》などエレメンタル部族シナジーや、2種類のプレインズウォーカーによってアドバンテージを稼いでいくミッドレンジで、《魂の洞窟》のおかげでカウンターに耐性があるのでコントロールやIzzet Ragavanに強いデッキになります。

☆注目ポイント

発現する浅瀬

《発現する浅瀬》はピッチでプレイできるインカーネーションと相性がよく、このカードが場にある状態で《孤独》《激情》を出せばカード1枚分を取り戻すことができます。《敏捷なこそ泥、ラガバン》に対するブロッカーとしても有用で除去されてもたいていはアドバンテージが取れています。

機械の母、エリシュ・ノーン

『ファイレクシア:完全なる統一』の目玉カードである《機械の母、エリシュ・ノーン》も採用されています。《孤独》《激情》など各種ETB能力が2回誘発するようになるため、莫大なアドバンテージを稼ぐことができます。メインで1枚のみの採用ですが《エラダムリーの呼び声》でサーチしてくることができ、タフネスが7というのも《邪悪な熱気》の範囲外なので優秀です。

Modern Challenge 2/19
モダン環境にも侵食するファイレクシア

2022年2月19日

  • 1位 Jeskai Obosh
  • 2位 Rakdos Evoke
  • 3位 Hammer Time
  • 4位 Amulet Titan
  • 5位 Izzet Ragavan
  • 6位 Izzet Ragavan
  • 7位 Hammer Time
  • 8位 Mono Red Saga

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日曜日に開催されたModern Challengeで優勝したのは、《機械の母、エリシュ・ノーン》を採用したJeskai Oboshでした。《永久のドラゴン》などモダンでは珍しいカードも散見されるオリジナルデッキです。

ほかには、最近ほぼ毎回上位で見られるAmulet Titanや定番のHammer Time、Izzet Ragavan、Rakdos Evokeなどが中心となっています。

デッキ紹介

Jeskai Obosh

《獲物貫き、オボシュ》を「相棒」として採用したデッキは赤単が代表的ですが、優勝したのはジェスカイ型のミッドレンジでした。《激情》《血染めの月》など基本的な構成は赤単と同様のものですが、白を足すことで《虹色の終焉》《冥途灯りの行進》《孤独》といった優秀な除去が使えるようになりました。

《血染めの月》がメインからフル搭載されているため、最近活躍が著しいAmulet Titanなど特殊地形を多用するデッキに強い構成になっています。また、《時を解す者、テフェリー》をタッチすることで「続唱」デッキとの相性の改善を図っています。

☆注目ポイント

血染めの月永久のドラゴン

多色でありながら《血染めの月》をフル搭載していますが、脅威の多くが赤いカードで《永久のドラゴン》によって《平地》をサーチしてくることができるためそこまで負担になることはさなそうです。

時を解す者、テフェリー万物の姿、オルヴァール

特定のマッチアップとの相性を改善させるために青がタッチされています。《時を解す者、テフェリー》は「続唱」デッキやカウンターを多用するデッキなど、多くのマッチアップで活躍してくれます。《不屈の独創力》コンボには《万物の姿、オルヴァール》で対応可能です。

Mono Red Saga

BurnやProwessといったデッキがモダンの代表的な赤いアグロデッキですが、今回入賞していた赤いデッキは高速アグロにアーティファクトシナジーをハイブリットした戦略になっています。

《ドラゴンの怒りの媒介者》《敏捷なこそ泥、ラガバン》といったマスト除去に加えて、《爆片破》《感電破》といった火力による突然死もあるため相手にとってはかなりのプレッシャーとなります。

《舞台照らし》によってアドバンテージを稼ぐことができ、《ウルザの物語》のほかにも《バグベアの居住地》《反逆のるつぼ、霜剣山》といったユーティリティーランドにより息切れしにくいのでロングゲームにも強いデッキになっています。

☆注目ポイント

Experimental Synthesizerウルザの物語

《実験統合機》は1マナと軽いアーティファクトでカードアドバンテージを得ることができ、場から離れても効果が誘発するため《爆片破》のコストに最適なアーティファクトです。

アーティファクトが多いので、このデッキの《ウルザの物語》フィニッシャー級のトークンを生成できます。必要に応じて《大祖始の遺産》などを探せるため、多くのマッチアップで互角以上に渡り合うことが可能です。

Pyrite Spellbombヴォルダーレンの美食家舞台照らし

《黄鉄の呪文爆弾》《ヴェクの聖別者》を除去できるカードであり、《ウルザの物語》でサーチもできます。《ヴォルダーレンの美食家》はETB能力で《舞台照らし》の「絢爛」の条件を満たしてくれます。

破壊放題虚空の鏡万物の姿、オルヴァール

サイドには《破壊放題》がフルに採用されており、Hammer Timeを強く意識していることがわかります。《大祖始の遺産》《魂標ランタン》など追加の墓地対策も多めです。「続唱」デッキ対策の《虚空の鏡》《不屈の独創力》コンボ対策の《万物の姿、オルヴァール》など、主にコンボデッキ対策にもスペースの多くを割いています。

総括

マイコシンスの庭完成化した精神、ジェイス離反ダニ、スクレルヴ

『ファイレクシア:完全なる統一』からの新カードによってAmulet TitanやDimir Mill、Death and Taxesといったデッキが台頭してきていますが、環境を支配するほどではなく多種多様なデッキが結果を残しています。

Living End、Breachなど墓地を使ったデッキが活躍していたので、《大祖始の遺産》《忍耐》といった墓地対策をメインから採用したデッキも散見されます。また、《マイコシンスの庭》によって増加傾向にあるAmulet Titanを対策するために多くのデッキが《血染めの月》をメインから採用しています。

USA Modern Express vol.90は以上になります。来月には『プレイヤーズコンベンション横浜2023』が開催されます。モダンの大規模なイベントも開催されるため楽しみですね。

それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!

この記事内で掲載されたカード

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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら