Translated by Riku Endo
(掲載日 2023/03/03)
はじめに
みなさん、こんにちは。
プロツアー・ファイレクシアで、私たちのチームの4人は比較的新しいバージョンのオーラをパイオニアで使うことにした。私自身はこのデッキでトーナメントを7-3で終え、チーム全体の勝率は60%だった。
サンプル数は少ないが、大会で成績の良かった上位5つのデッキの内3つが異なるバージョンのオーラデッキであったことがマッチアップデータから見てとれる。このデータが、オーラが現段階のパイオニアにおいて良いポジションにいることを示唆しているだろう。
I ran the numbers! Here are the Pioneer match win rates from Pro Tour Phyrexia. 📊 #PTPhyrexia pic.twitter.com/G27cCehwKa
— Frank Karsten (@karsten_frank) February 19, 2023
最初に言及しなければならないのは、このデッキには非常に極端なマッチアップが有利と不利の両方に存在するということである。おそらく私が今まで使ってきたどのデッキよりももっと多い。それゆえ、このデッキの成功はメタゲームとその日の組み合わせに依るところがかなり大きいし、度胸も求められる。もしあなたが五分五分のマッチアップで接戦を繰り広げながら勝ちたいのなら、このデッキは向いてないだろう。
一方で、このデッキは使用率があまり高くなく、多くのプレイヤーに十分に対策されていない。つまり、対戦相手はほかの当たりうるアーキタイプと対戦するときよりも、多くミスをしやすいということだ。知られていないデッキを使うことで対戦中優位に立てるというのは、数か月前に書いた世界選手権の振り返りの中でも語っている。
- 2023/01/11
- 世界選手権を振り返って
- Matti Kuisma
デッキリスト解説
こちらが私とチームメイトの使ったリストだ。
このデッキの一般的なゲームプランはとてもはっきりしている。強力な2マナ域を1枚プレイして、それにオーラをたくさんつけて、攻撃して相手を倒す、以上だ。妨害されなければ、おそらくこのデッキはフォーマット最速だろう。
プロツアーの調整中、チームメイトの1人が何度も1人回しを行ったデータに基づくと、3ターン目のリーサルはおおよそ30%の確率であった。4ターン目でのリーサルは容易で、もしそこまでに倒せなくても、5ターン目を超えることはめったになかった。このデッキは妨害してこない相手をすぐさま倒すことに極めて一貫しているのだ。
しかし、裏返せばいくつかのデッキはこのデッキを止めることが非常に簡単ということでもある。たとえば、このフォーマットでもっともポピュラーなラクドスミッドレンジに対しては大きく不利だ。《思考囲い》や《致命的な一押し》、《税血の収穫者》、そしてサイドボードに入っている多くの全体除去など、このデッキを打ち負かすために必要なあらゆる手段を持ち合わせている。
このデッキの完成度を上げる鍵となっている要因のひとつは《離反ダニ、スクレルヴ》の登場だ。このカードのおかげで除去に対して強くなり、先手における本当に理想的な初手の1枚になってくれる。1ターン目《離反ダニ、スクレルヴ》2ターン目《皇の声、軽脚》のマナカーブ通りの動きを止められる相手はそういない。伝説のクリーチャーでもあることから、デッキに《モックス・アンバー》を採用できるようになり、このデッキをさらに早くしてくれているのだ。
強力な1マナクリーチャーに加えて、オーラでも自分のクリーチャーを守ることもできる。もっとも明確なのは《最上位権限》で、単体除去に対する耐性をもたらしてくれる。《ケイヤ式幽体化》は破壊、追放問わずどんな除去に対しても有用で、《戦闘研究》は《スカイクレイブの亡霊》や《アクロス戦争》のような、マナコストの重い解答に対して負担をかけることに優れている。こういった重たい呪文は、「護法」で1ターンずらすだけでたいていは無力化できる。相手が「護法」用のマナを用意している間にオーラなら勝ち切れるからだ。
3ターンキル
早期決着について話すと、《皇の声、軽脚》でも《照光の巨匠》でも可能だ。それぞれのもっともよくあるパターンは次のようになっている。
まずは《皇の声、軽脚》と土地3枚が戦場にある状態から始めて《無鉄砲》と《天上の鎧》、《歩哨の目》がハンドにある形。
《歩哨の目》を唱えて《皇の声、軽脚》の効果で2枚目の《無鉄砲》を持ってくる。
《無鉄砲》を唱えて《皇の声、軽脚》で2枚目の《天上の鎧》を持ってくる。
<《天上の鎧》を唱えてさらにパワーを上げるオーラをどれか持ってくる。たとえば、ブロッカーをタップする《まばゆい神盾》や飛行を付与できる《グリフの加護》などだ。
《天上の鎧》は両方とも+6/+6修正を与えるので合計+12/+12、《無鉄砲》2枚が+4/+0修正を与えて、そのほか2つのオーラがそれぞれパワーを+1修正する。《皇の声、軽脚》の元々のパワーが2なので(12+4+1+1+2)で結果ピッタリ20点ダメージとなる。
《照光の巨匠》の場合もとても似ている。《照光の巨匠》が戦場にいて、《無鉄砲》と《天上の鎧》《歩哨の目》がハンドにある形だ。
《天上の鎧》を唱えて、「謀議」でスペルを捨てる。
《無鉄砲》を唱えて「謀議」でもう1枚スペルを捨てる。
《歩哨の目》を唱えて「謀議」でもう1枚スペルを捨てる。
誘発する「謀議」で+1/+1カウンター3つを得て、《天上の鎧》によるパワー+3の修正、《無鉄砲》によるパワー+2の修正、《歩哨の目》によるパワー+1の修正を受ける。結果《照光の巨匠》のもともとのパワー1を合わせて(3+3+2+1+1)でパワー10の二段攻撃になり、ちょうど20点ダメージとなる。
マッチアップとサイドボーディングガイド
ラクドスミッドレンジ‐大きく不利
先にも述べた通り、このマッチアップはとても厳しい。単純に手札破壊含め相手の妨害手段が、クロックになるこちらのクリーチャーに対して多すぎる。幸いラクドスミッドレンジはメタゲームの内15%にすぎず、それを補えるほどに有利なマッチアップがある。
勝ち筋はあるものの、勝つにはたいていこちらが運に恵まれるか、相手が不運に見舞われるかが必要になる。先手後手のダイスロールに勝って、かつ《離反ダニ、スクレルヴ》から始めて《皇の声、軽脚》をプレイして守るためのスペルを唱えるくらい良いスタートをする必要があるかもしれない。
もっとも簡単な勝ち方は、《皇の声、軽脚》のための《最上位権限》を見つけることなのは間違いないが、それでさえサイド後のゲームでは《絶滅の契機》のせいで勝ちが確実なものになるわけではない。
相手のデッキのなかには、とりわけサイド前のゲームではまったく有効でないカードもある。相手が妨害手段を引かずに《墓地の侵入者》や《鏡割りの寓話》を引きすぎれば、こちらのクリーチャーを突っ込ませて勝つことができる。
また、「相棒」の《湧き出る源、ジェガンサ》も重要になる。唱えられるくらいにゲームが長引くことが頻繁にあるし、《致命的な一押し》や《煤の儀式》といった相手の除去に引っかからないからだ。
瞬速持ちの《盲信者の確信》は《皇の声、軽脚》につけて《ケイヤ式幽体化》を効果で持ってくれば、除去へのカウンターにもなりうる点は覚えておくといい。
vs. ラクドスミッドレンジ
緑単信心‐大きく有利
緑単信心はこのフォーマットに置いて2番目にポピュラーなデッキで、オーラにとっては信じられないくらい有利なマッチアップだ。私たちがこのマッチアップについて研究し始めたとき、オーラが最初22連勝したほどだ。単純に緑単信心にはこちらを止める妨害手段がない。たとえ先手を取られても、多くのゲームでオーラは緑単信心に速度で負けることはない。
クロックとなる《皇の声、軽脚》か《照光の巨匠》を求めて積極的にマリガンすべきという点には注意が必要だ。このマッチアップは純粋なダメージレースになるから、《上級建設官、スラム》のあるハンドは、たとえ良さそうに見えても大抵遅すぎる。相手を素早く倒せるから有利なのであって、《上級建設官、スラム》がオーラをキャントリップにするから有利なのではない。
vs. 緑単信心(先手)
vs. 緑単信心(後手)
マナクリーチャーに対処するために《ポータブル・ホール》を入れると、緑単信心には純粋なサイドボードがないため相手の動きが遅くなり、相対的にこちらがさらに早くなる。また《離反ダニ、スクレルヴ》は、ときに《照光の巨匠》が相手を1ターン早く仕留める手助けになる(後手で重要)。一方で《上級建設官、スラム》はオーラを引けばドローをより継続的にしてくれる(先手で重要)。
しかし、《大いなる創造者、カーン》には封じられるので《離反ダニ、スクレルヴ》はあまり頼りにできない点には注意だ。必要であれば後手のときにもう1枚《離反ダニ、スクレルヴ》を抜いて、《異形化するワンド》などから自分のクリーチャーを守るために《ロランの脱出》を入れてもいい。
ロータスコンボ-有利
ロータスコンボもたいていはダメージレースになるマッチアップのひとつ。つまりは有利になるマッチアップだが、相手のデッキにはいくつか干渉してくるカードも入っているので、緑単信心のときほど有利ではない。
サイド後では相手が全体除去を入れてくるし、《天上都市、大田原》から自分のクリーチャーを守れない点も相まって《離反ダニ、スクレルヴ》を抜きたくなるだろう。ゲームは少し遅くなるし、辛抱も必要だ。その分、サイド前のゲームより《上級建設官、スラム》が良い活躍をするだろう。また《減衰球》は《ロランの脱出》で守れるしこのマッチアップではとても有効だ。
相手が《希望守り》や《旅するサテュロス》を多く入れていることが分かっているのなら、2枚目の《ポータブル・ホール》をサイドインしたほうが良いだろう。
vs. ロータスコンボ
グルール‐有利
グルールはかなり早いデッキだし、こちらへの妨害手段も有しているのだが対応しきれるほどじゃない。なので、とりわけ1本目、つまりサイド前のゲームではオーラ側は明らかに有利といえるだろう。
サイド後になると《引き裂く流弾》のように軽い除去をより多く入れてくるので、より拮抗したゲームになる。
vs. グルール
アゾリウスコントロール‐ほぼ互角
アゾリウスコントロールとのマッチアップは、相手のデッキリストの細部によるところが大きい。もし相手が軽い単体除去を多く採用している、または代わりに《一時的封鎖》を入れている、はたまたその両方とも入れているならわずかに不利かもしれない。
逆に、相手のデッキが単体除去や全体除去を少なくして、ドローやフィニッシャーを優先しているバージョンならオーラ側がやや有利だろう。アゾリウスコントロールの動きがぎこちないときには、こちらが軽くてもすぐに処理しなければいけないクリーチャーで咎めることもしばしばある。
《歩哨の目》は特にこのマッチアップにおいて価値が高い。墓地から再度唱えることで自分のクリーチャーの誘発型能力をもう一度使えるし、警戒が《放浪皇》への耐性になる。
vs. アゾリウスコントロール
白単人間‐やや有利
1本目で有利なもうひとつのマッチアップだが、サイド後は白単人間側が軽い干渉手段をより入れてくるので形勢が不利になる。対応策となるのが《ポータブル・ホール》と《静寂をもたらすもの》。《静寂をもたらすもの》は《粗暴な聖戦士》と《スカイクレイブの亡霊》への抑止力となる。また、《サリアの副官》の誘発も封じてくれる。
《ポータブル・ホール》の最優先となるターゲットは、《スレイベンの守護者、サリア》などであって、《徴兵士官》のような適当な1マナクリーチャーではない。
vs. 白単人間
ラクドスサクリファイス‐大きく不利
1本目で相手が《思考囲い》を持っていなければラクドスミッドレンジよりかは多少やりやすいが、それでも非常に不利なマッチアップなことに変わりはない。ラクドスミッドレンジと違って、このデッキには対象を取らない除去が入っていない。そのため《最上位権限》がもっとも確実な勝ち筋になる。
一方で、《初子さらい》で壊滅的な被害が出ることもあるし、《波乱の悪魔》の前では《照光の巨匠》は実にみじめに見えてしまう。
vs. ラクドスサクリファイス
先手なら《歩哨の目》か《照光の巨匠》1枚はそのままにして、《ポータブル・ホール》の3枚目は入れなくてもいい。
天使‐大きく有利
天使は最小限の干渉手段しか有しておらず、リーサルまでにも時間がかかる。すなわちオーラにとって相性が良い。加えて、天使のほとんどのリストはサイドボードに有効なカードが多くは入っていないので、サイド後にさらに有利になる数少ない相手となっている。
とはいえ、複雑な盤面の状況には常に注意を払わなければならない。《翼の司教》と《輝かしい天使》《正義の戦乙女》のコンボが始まっても、放っておいて絆魂持ちのスタッツの大きいクリーチャーを作り上げれば問題ない。
vs. 天使
おわりに
《離反ダニ、スクレルヴ》の登場がこのアーキタイプの大きな後押しとなり、早期決着もたくさんできる驚くほど楽しいデッキになった。普段からこういった類のデッキが好きなら、試してみることをオススメする。
とにかく《致命的な一押し》や《焦熱の衝動》を持った相手と当たらないようにするんだ!私のプロツアーでの7勝すべてが《致命的な一押し》なしのデッキとの対戦によるもので、入っているデッキに対して3敗を喫したのは偶然ではない……。
マッティ・クイスマ (Twitter)