好きなデッキで勝ちたいじゃないか
「メタ外のデッキで結果を残す」「オリジナリティのあるデッキで結果を残す」ということに取りつかれた人間がいます。
かくいう自分もその一人。2人構築をメインに遊んでいたころは、かつての名コラム『週刊デッキウォッチング』に掲載されるのを糧に、さまざまなデッキを使ってきました。
統率者戦においても同様で、《打ち砕かれた者、ジョン・イレニカス》《メイガス、ルチア・ケイン》といったデッキを神挑戦者決定戦に持ち込んでは惨敗。「オリジナリティを出したい」という気持ちばかりが先行し、十分な調整・検討・練習をしないままに臨んだことが敗因でした。
しかし、今回は違います。「これしかない」というデッキに出会い、「このデッキを使うからには無様はさらせない」と調整・練習を繰り返し、『第4期統率者神挑戦者決定戦』の予選を突破しました。
諸手を上げて喜ぶほどの戦績ではないでしょう。それでも、これまでの4大会で入賞した52デッキの中に緑単はただ1つ。「競技的な統率者戦において緑は不遇」とされる中で、わずかながらも爪あとを残すことができました。
緑単フリークのみなさまこんにちは。晴れる屋のきよそねです。今回は先日の神挑戦者決定戦で使用した《ワイアウッドの呼び手、ギランラ》と《東の樹の木霊》の「共闘」デッキ、通称「ギラ木」をご紹介します。
「競技的な統率者戦において緑は不遇」と書きましたが、決して緑単のデッキが存在しないわけではありません。先日紹介した《放浪の吟遊詩人、イーサーン》のほか、定番どころとしては《養育者、マーウィン》や《野生の心、セルヴァラ》、海外の大会では《自然の伝令、イェヴァ》が優勝したこともありました。
そのなかで「ギラ木」という組み合わせはあまり馴染みがないかもしれません。「共闘」といえば色の数を増やせることも魅力の一つ。それをあえて単色で組む意味はあるのでしょうか。
ギランラ+木霊とは
《ワイアウッドの呼び手、ギランラ》によるマナ加速+ドローと、《東の樹の木霊》によるテンポアドバンテージの組み合わせによって、緑単でも屈指の盤面制圧力を持つデッキです。
クリーチャーデッキの宿命として、競技的な環境においてはややスピード不足気味ですが、妨害されづらく安定した展開が可能。ミドルレンジのゲームにもつれこんだ場合にはなかなかの勝率を叩きだします。
神挑戦者決定戦時点でのデッキリストは以下の通り。
ほとんどの場合速度勝負では分が悪いため、「誰かの仕掛けが妨害によって失敗した後に自分が走る」というのが基本的な戦略になります。とはいえ、緑単で可能な妨害には限界があります。あまり積極的には妨害せず、自分の動きを優先したほうが勝てます。
こちらにヘイトが向かない範囲でマナを伸ばしつつ、隙を見つけたら一気に走りきりましょう。《東の樹の木霊》の能力を活かしたチェインコンボ、《野生の魂、アシャヤ》による無限マナ、《孔蹄のビヒモス》などが勝ち手段になります。
一部の採用カードと、それに関連したテクニックを紹介しましょう。
《ワイアウッドの呼び手、ギランラ》
《ワイアウッドの呼び手、ギランラ》のドロー能力は、6マナ以上の呪文を唱えるために使われたマナそれぞれについて誘発する遅延誘発型能力です。そのため《クウィリーオン・レインジャー》などのアンタップや《ニクス咲きの古きもの》でマナを増やすことで、ドローする枚数も増やすことが可能。《クウィリーオン・レインジャー》で戻した土地は《東の樹の木霊》で戦場に出せるため、積極的にアンタップしてドローしていきましょう。
同じくマナを出す統率者である《養育者、マーウィン》や《野生の心、セルヴァラ》と比べるとやや弱いのも重要で、「見たら焼け」というほどのカードではありません。また、除去されたからといってデッキが機能不全になることもありません。ほかの緑単と比べてもやや低速なデッキですが、代わりに安定感を得ることに成功しています。
《東の樹の木霊》
莫大なテンポアドバンテージをもたらしてくれる能力を持っていますが、スタックの積み方によってその効率は大きく変化します。
たとえば、場に《東の樹の木霊》がいる状態で《森林の怒声吠え》をプレイした場合は、
1. 《森林の怒声吠え》と《東の樹の木霊》の能力がそれぞれ誘発。
2. 《森林の怒声吠え》の能力を解決し、《激情の共感者》を場に出す。
3. 《激情の共感者》と《東の樹の木霊》の能力がそれぞれ誘発。
4. 《激情の共感者》の能力を解決し、《絢爛なビヒモス》を手札に加える。
5. 《東の樹の木霊》の能力を解決し、マナ総量3以下のカードを出す。
6. 《東の樹の木霊》の能力を解決し、マナ総量6以下のカードを出す。
といった順番で能力を解決することで、余すことなく木霊の能力を活かせます。
土地をプレイすることで土地を戦場に出せるのも大きな魅力。フェッチランドによってサーチしてきた土地でも能力が誘発するため、手札に複数枚のフェッチランドがある場合は、一気にすべて場に出すことが可能。場合によってはフェッチランドを温存することもあります。全体除去を苦手とする緑単ですが、この動きによって若干の耐性が。これを活かすために土地をサーチするカードは多めに採用しています。
また《適者生存》のようなマストカウンターのカードはプレイせず、《東の樹の木霊》の誘発によって戦場に出しましょう。《忍耐》によってインスタントタイミングで出すことも可能です。
《野生の魂、アシャヤ》《クウィリーオン・レインジャー》
緑単ではおなじみのこのコンボ。タップで2マナ以上出せるクリーチャーを、森になった《クウィリーオン・レインジャー》自身をコストにアンタップすることで、無限マナを生み出します。このデッキにおいては、1マナしか出ないクリーチャーでもコンボが可能。《東の樹の木霊》の能力によって、2回に1回はレインジャーのコストを踏み倒せます。
最終的には《ワイアウッドの呼び手、ギランラ》のマナを無限に出して、6マナ以上のカードが続く限りドローし続けましょう。手札に6マナ以上のカードがない場合でも、無限マナを出した後で森になった《東の樹の木霊》を手札に戻すことで、6ドローは確保できます。
《ワイアウッドの共生虫》
これまた緑単ではおなじみのカード。《ワイアウッドの呼び手、ギランラ》をアンタップすることの重要性は先に述べた通りです。《東の樹の木霊》との相性も抜群で、エルフをプレイ→木霊が誘発→誘発スタックで能力を起動という手順を踏むことで、ETBの誘発を2回使えます。
《クウィリーオン・レインジャー》の能力を先に起動してしまって《野生の魂、アシャヤ》とのコンボに入れない場合、《ワイアウッドの共生虫》で起動回数をリセットできることも覚えておきましょう。
《グレートヘンジ》
パイオニアの緑信心でおなじみのパワーカード。ドロー能力によってチェインを進めることも可能ですが、重要なのはむしろコスト軽減能力。木霊によって3マナにまでコストが軽減され、3マナで9マナまでのパーマネントを踏み倒すことができます。これで《ニクス咲きの古きもの》なんて出そうものならもう勝利は目前です。
使いこなすために
ここまでに挙げたようなテクニックは氷山の一角。1人回しを繰り返す中で、思いもよらない動きを見つけることもあります。一見してまだ安全そうな盤面からの奇襲性が高いデッキでもあるので、1人回しで「ここからなら勝てる」という状態と動きを体に覚えさせましょう。《東の樹の木霊》の誘発のスタックへの積み方を考えるのは、パズルにも似た楽しさがあります。
実践では相手からの妨害やヘイトコントロールも意識する必要がありますが、それらも最高効率の動きを身につけた上で、そこから逆算して変化させていくのが近道となります。
今回は統率者神挑戦者決定戦で使用した《ワイアウッドの呼び手、ギランラ》と《東の樹の木霊》についてご紹介しました。なお『週刊 緑単で遊ぼう!』は今回が最終回となります。ぶっちゃけネタ切れ。短い期間ではありましたが、ご愛読ありがとうございました!