はじめに
みなさんこんにちは。
もう読者のみなさんはご存じかもしれませんが、3月6日に《表現の反復》と《白羽山の冒険者》が禁止カードに指定されました。
環境を長い間支配していたIzzet Delverと、昨年の冬に登場してからトップメタに位置していたMono White Initiativeの両方にテコ入れがされたため、レガシーコミュニティではようやく公式が行動を起こしてくれたという意見が多数を占めていました。
今回の連載では、禁止改定直後に開催されたLegacy Challengeの入賞デッキを見ながら、新環境のレガシーを分析していきたいと思います。
Legacy Challenge 3/11
禁止改定後のレガシー環境
2023年3月11日
- 1位 Sneak and Show
- 2位 5C Zenith
- 3位 8 Cast
- 4位 Mono Blue Painter
- 5位 Mono Red Painter
- 6位 Mono Red Stompy
- 7位 Gruul Initiative
- 8位 Reanimator
トップ8のデッキリストはこちら
禁止改定後のLegacy Challengeは、《表現の反復》を失って弱体化を強いられたIzzet Delverが数を減らし、今までDelver系に抑えられていたコンボデッキが勝つという大方の予想通りの結果になりました。
また、《白羽山の冒険者》が禁止にされたことでMono White Initiativeも姿を消し、このデッキと相性が悪かったMono Red Stompyも復権してきています。
デッキ紹介
Gruul Initiative
《白羽山の冒険者》が退場したものの「イニシアチブ」というメカニズム自体は健在です。禁止改定前の環境ではほぼ白ベース一択でしたが、新環境では《混沌の洞窟の冒険者》と《アンダーマウンテンの冒険者》といった赤と緑の「イニシアチブ」クリーチャーを軸にした新バージョンが早速結果を残していました。
☆注目ポイント
《白羽山の冒険者》の禁止で「イニシアチブ」クリーチャーは《混沌の洞窟の冒険者》など4マナ域からのスタートになりました。可能な限り早い段階から出して圧倒的なアドバンテージ差をつけるために、《猿人の指導霊》と《エルフの指導霊》といったマナ加速がフル搭載されています。
《アンダーマウンテンの冒険者》は最近MOに実装されたことで注目を集めている緑の「イニシアチブ」クリーチャーで、マナ加速能力は《混沌の洞窟の冒険者》の能力とも相性が良く、警戒なので「イニシアチブ」を維持しやすくなっています。
あらゆるフォーマットで活躍している《鏡割りの寓話》は、レガシーでも通用する強さを持っています。プレッシャーをかけつつ手札を整え、強力なフィニッシャーをコピーするという能力は、このデッキにとてもマッチしています。《時を超えた英雄、ミンスクとブー》が使えることも赤緑の強みです。マナ加速を利用することによって、最速で1ターン目に出すこともできます。
Sneak and Show
環境が大きく動いた直後のメタゲームを考えるのは困難ですが、レガシーでは禁止改定の影響を受けなかったデッキが多く存在します。アーキタイプ自体に直接影響がないとはいえ、環境が変化することでポジションの有利不利が発生するのです。今大会で優勝したSneak and Showもそのひとつです。
Sneak and Showはデッキ単体で見れば環境トップクラスのデッキパワーを持つコンボデッキですが、Izzet Delverの存在によって不利な立場にありました。しかし、《表現の反復》を失ったことで弱体化したこともあり、以前よりも優勢な立ち位置になったのです。
☆注目ポイント
基本的な構成にあまり変化は見られないものの、禁止改定前と比べると細部のカード選択に違いがみられます。Izzet Delverがトップメタだった旧環境では、相手の手札が整う前に仕掛ける必要があったため《目くらまし》をフル搭載していましたが、現在では安定性を優先して追加の《定業》が採用されています。
サイドボードにも変化が見られます。禁止改定前の環境では青対策の《防御の光網》が4枚採用されていましたが、現在は同じ青対策でもReanimatorやStormなどコンボデッキに効果的な《夏の帳》が優先されています。緑をタッチすることでマナ基盤に負担はかかりますが、Delver系など青い《不毛の大地》デッキ用に《花の絨毯》が使えるようになっています
8 Cast、Painterなどは禁止改定の影響を受けなかったので《溶融》は必須カードの1枚です。クリーチャーデッキ用に軽い除去として《稲妻》も採用されています。ReanimatorやShow and Tell系が流行ることで《封じ込める僧侶》の採用率も上がることが予想されるので、今後は軽いインスタント除去の必要性が増しそうです。
Legacy Challenge 3/12
コンボの世界
2023年3月12日
- 1位 Elves
- 2位 8 Cast
- 3位 Reanimator
- 4位 Gruul Initiative
- 5位 Doomsday
- 6位 Orzhov Rector
- 7位 Cephalid Breakfast
- 8位 Mono Red Stompy
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日曜日に開催されたLegacy Challengeもコンボデッキが中心となりました。Izzet Delverが弱体化したことで、今まで抑えられていたコンボデッキが続々と復権してきています。
Mono Red Stompyも禁止改定によって追い風が吹いているようです。《虚空の杯》や《三なる宝球》など現環境のさまざまな戦略に刺さるカードを多用しているため、今後もよく見かけるデッキになるかもしれません。
デッキ紹介
Mono Red Stompy
《虚空の杯》《血染めの月》《三なる宝球》といった置物を、《金属モックス》や2マナランドを利用することによって最速1ターン目からプレイし、相手を妨害しながら戦います。
このように相手を選ばない強力なプレイパターンを持つ戦略は、現在のように混沌としたメタでは有用な選択肢になります。
☆注目ポイント
メインから《未認可霊柩車》が採用されています。レガシーには墓地を利用するデッキが多く存在するため無駄になりづらく、強制アタックさせられるゴブリン・トークンを「搭乗」させることもできます。長期戦になればフィニッシャーとしても機能する優秀なカードです。
このデッキは限定的な効果を持つカードが多く、《金属モックス》や《猿人の指導霊》といったカードは序盤はマナ加速として必須ですが、中盤以降は不要牌となりやすく《血染めの月》などはあまり複数枚引きたいカードではありません。そのため、不要牌を有効牌に変換できる《鏡割りの寓話》の第Ⅱ章はこのデッキにとって非常に有効な能力となります。
8 Cast
《不毛の大地》デッキが弱体化したことは、8 Castを含めた多くの《古えの墳墓》デッキにとって朗報でした。このデッキはアドバンテージを稼ぐ手段が豊富で、《虚空の杯》やカウンターなど妨害手段も搭載されています。
《物読み》や《思考の監視者》でカードを引きつつ、軽いアーティファクトを並べて最終的に《河童の砲手》や《練達飛行機械職人、サイ》で大量のトークンを生成してゲームを終わらせます。
☆注目ポイント
《ウルザのガラクタ》や《ミシュラのガラクタ》を再利用することで毎ターン追加のドローができるので、《湖に潜む者、エムリー》はこのデッキにとって重要なアドバンテージ源となります。カウンターやアーティファクト除去によって墓地に落ちた《虚空の杯》も再利用でき、相手にとってはマストアンサーとなります。
フィニッシャーである《河童の砲手》は、除去耐性があるためカウンター以外では対策されにくく、Delverなどフェアデッキとのマッチアップで特に強さを発揮します。同じくフィニッシャーの《練達飛行機械職人、サイ》は、飛行持ちのトークンを生成することができるので各「イニシアチブ」デッキにも有用な勝ち手段となります。
禁止改定後も「イニシアチブ」は健在なので、サイドに採用されている《緻密》など「イニシアチブ」デッキ対策はまだまだ必須となりそうです。《魂の洞窟》からプレイされたクリーチャーも対処できるので、追加の妨害として有用です。
総括
禁止改定後に開催されたLegacy Challengeの結果を見ていきましたが、さまざまなアーキタイプが結果を残していました。《アンダーマウンテンの冒険者》を採用した赤緑の「イニシアチブ」デッキも登場するなど、禁止改定後のレガシーはIzzet Delverと Mono White Initiativeの2強から多様性のある環境に変化しました。
弱体化を強いられたIzzet Delverは、《予報》や《航路の作成》といったドロースペルを新たなカードアドバンテージ源として試していますが、やはり《表現の反復》の代わりを務めるには荷が重すぎるため、デッキ構成を変更する必要が出てきそうです。
現在のレガシーはいろんな戦略に可能性のある面白い環境で、特にデッキビルダーやチューナーにとっては今が一番面白い時期だと思います。
USA Legacy Express vol.214は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!