はじめに
こんにちは、長谷川です。
今回は3月21日(火)に開催される『第3期パウパー神挑戦者決定戦』を控えた方に向けた「パウパーの今」をお届け!
現在のパウパーにどんな変化が起きているのか、マジックオンラインの『パウパーチャレンジ』の結果をもとに分析していきます。
トロンとコンボの隆盛
Pauper Challenge 2023/2/4
2023年2月4日
- 1位 フリッカートロン
- 2位 鋳造所トロン
- 3位 アゾリウスファミリア
- 4位 ナヤゲート
- 5位 グリクシス親和
- 6位 イゼットフェアリー
- 7位 オルゾフブリンク
- 8位 ディミーアテラー
トップ8のデッキリストはこちら
『ファイレクシア:完全なる統一』リリース前の環境の王者は間違いなく「トロン」でした。『兄弟戦争』により《エネルギー屈折体》を手に入れたことで完全にメタゲームへと復活したのです。さらに《予言のプリズム》が禁止されたときよりも明確に強化されているポイントが2つあり、採用されている土地が強くなったことと《探検の地図》の禁止解除の2点です。
以前はタップインのゲインランドを採用していたくらい土地が弱かったのですが、占術を持つ《水晶の岩屋》と《クアンドリクスの学舎》によって序盤と終盤に解答となるカードへアクセスしやすくなったり、《興隆する島嶼》の同型再販といえる《海門》の登場と大きな強化となっています。
土地が強力になればなるほど《探検の地図》のバリューも向上します。ウルザ土地をサーチする以外の選択肢がしっかりあるのは嬉しいですね。
オルゾフブリンク
この大会で重要な点は「オルゾフブリンク」の増加です。トップ32で見た際に約15%のシェアがあり、間違いなくこの週の勝ち組デッキといえるでしょう。
注目ポイント
出たときに効果があるクリーチャーを《儚い存在》や《ペガサスの守護者》で使いまわし、アドバンテージを獲得していくミッドレンジです。ライフゲイン要素や除去が多いことで環境に存在するアグロ、ミッドレンジに対して有利に戦うことができます。
オルゾフの増加によって厳しい状況に立たされていたのが赤単アグロを初めとするアグロデッキ、そしてボロスシンセサイザーなどの白系ミッドレンジです。
どちらもクリーチャーを主体に戦うデッキですが、《黎明運びのクレリック》や《鼓舞する監視者》といったライフ回復を行いながら盤面を支えるクリーチャーを出され、それがブリンクされることでさらに不利な状況へと陥ってしまいます。《黎明運びのクレリック》はエンチャントを破壊できるので、《未達への旅》などの除去に対しても強く立ち回れることも大きいです。
オルゾフがこういったアグロ~ミッドレンジを環境から締め出してしまった結果、オルゾフに強いコンボ・コントロールが上位に=トロンの天下に繋がったのです。
しかし、トロンの隆盛も長くは続きませんでした。
《トレイリアの恐怖》が環境を支配する
Pauper Challenge 2023/2/19
2023年2月19日
- 1位 ディミーアテラー
- 2位 オルゾフブリンク
- 3位 アゾリウスゲート
- 4位 ディミーアテラー
- 5位 壁コンボ
- 6位 ナヤゲート
- 7位 カルドーサレッド
- 8位 グリクシス親和
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2週間後、環境の王座となったのは「ディミーアテラー」。トロンに強い赤単を始めとしたアグロデッキが増え、オルゾフブリンクは減少。その結果として、再現性の高さとクリーチャー性能の高いディミーアテラーが頭角を現します。
ディミーアテラー
驚くべきことに、2月19日から続く3つのパウパーチャレンジをすべて「ディミーアテラー」が優勝するという偉業を成し遂げます。
注目ポイント
3つの優勝デッキで共通するポイントがマナベースの最適化というポイントです。以前は採用されていた《沼》や《灰のやせ地》ではなく、《汚染された帯水層》と《氷のトンネル》といった基本土地タイプを持ったタップインのデュアルランドに置き換わっています。
以前のマナベースですと《殺し》が安定して打てなかったり、青1マナのドロースぺルを連打する際に《沼》がノイズとなっていましたが、デッキ内の土地がすべて青マナを出せるようになったことでデッキの安定感や爆発力に大きく貢献しています。
また《渦まく知識》との相性の良さから採用されていた《灰のやせ地》は、《思考掃き》や《留意》を合わせてプレイすることで同様の役割となることから、より《トレイリアの恐怖》と相性の良い組み合わせへとシフトしています。
クリーチャーも徐々に《トレイリアの恐怖》と《グルマグのアンコウ》のみに絞られている傾向にあります。もともと入っていた《ファラジの考古学者》や《ボーラスの占い師》は、アグロデッキには強い半面、《トレイリアの恐怖》の軽減コストにならないのでプレイするターンに遅れが生じる原因になります。
現行のリストは「いかに《トレイリアの恐怖》をプレイするか」を強く意識したアプローチとなっており、スペル中心の構成になっているようです。このアップデートにより、デッキ基盤が強固となったことが3連続優勝の大きな要因だと考えています。
蘇るアグロとコントロールの双璧
Pauper Challenge 2023/3/4
2023年3月4日
- 1位 カルドーサレッド
- 2位 裏返しコンボ
- 3位 青単フェアリー
- 4位 グリクシス親和
- 5位 グリクシス親和
- 6位 グリクシス親和
- 7位 イゼットフェアリー
- 8位 グリクシス親和
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ディミーアテラーが勝ち過ぎたことによって、徐々に各デッキの照準は《トレイリアの恐怖》に向いていました。この大会でもっとも使用率が高いカードが《大祖始の遺産》だったことも、それを物語っています。
そんななかで、マジック・オンラインのグラインダーであるMoggedによる新型「カルドーサレッド」が優勝を果たします。
カルドーサレッド
注目ポイント
新たに登場した《ゴブリンの爆風走り》は、カルドーサレッドにとって重要なパズルのピースとなったようです。もともと《カルドーサの再誕》や《発火器具》といった能動的に生け贄を捧げるカードが採用されており、このデッキではほぼ1マナ3/2威迫として運用することが可能です。
また《カルドーサの再誕》によるトークン戦略とも相性が良く、クリーチャーが横並びすることで威迫がより強力に作用します。クリーチャーが多く並ばないディミーアテラーにとって威迫、そしてトークン戦略は非常に対処し辛くなっていますので、見事にメタゲームを読み切ったデッキ選択だったことが伺えます。
カルドーサレッドには《ゴブリンの奇襲隊》を多く採用したタイプも登場しており、《僧院の速槍》以外の強力な1マナ域を手にした赤単アグロが今後どのように進化していくのかも見逃せません。
グリクシス親和
この大会でトップ8の半分に「グリクシス親和」が入賞、トップ32の母数も15%となっておりアベレージがかなりの高水準です。
注目ポイント
デッキは以前からあるオーソドックスなものから、《ギックスの潜入者》を採用したサクリファイスシナジーに寄せたものなど各々のチューニングが施されていることから、このメタゲームにおいてもっとも適したデッキ基盤だと考えられます。
カルドーサレッドに対しては、《勢団の取り引き》によるライフ回復と《クラーク族のシャーマン》によるトークン戦略の否定と隙がありません。ロングゲームになれば多数の「親和」クリーチャーや《間に合わせの砲弾》が速やかにゲームを終わりへと導いてくれます。
ディミーアテラーに対しては相手と同様にドロースペルを連打して安定感を担保しつつ、《ケンクのアーティフィサー》による破壊不能のクリーチャーを作ることでダメージを完全にシャットアウトすることができます。横に《ケンクのアーティフィサー》が残ることで《チェイナーの布告》による除去を避けることができるのも優れています。また、上位4人の内2枚がメインボードから《虚無の呪文爆弾》を採用しているのも興味深いポイントです。
大ランデス時代到来
Pauper Challenge 2023/3/11
2023年3月11日
- 1位 グルールランデス
- 2位 グリクシス親和
- 3位 アゾリウスファミリア
- 4位 アゾリウスファミリア
- 5位 グルールランデス
- 6位 オルゾフブリンク
- 7位 青単フェアリー
- 8位 イゼットフェアリー
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グリクシス親和、カルドーサレッド、ディミーアテラーの三すくみ状態に待ったをかけたのが「グルールランデス」です。以前から存在するデッキタイプですが、直近のパウパーチャレンジを2連続で優勝しており要注目のデッキタイプになっています。
グルールランデス
注目ポイント
《東屋のエルフ》や《楽園の拡散》といったマナ加速から《Thermokarst》や《ムウォンヴーリーの酸苔》で土地を攻めるデッキなのですが、カルドーサレッドとディミーアテラーのどちらにも非常に有効な戦略となっています。カルドーサには《実験統合機》や《無謀なる衝動》といった、ある程度マナが伸びていると手数が増えるカードがあったり、テラーは必ずタップインしてしまう沼が8枚入っているためですね。
ランデスによって相手の動きが制限された後に、フィニッシャーである《復讐する狩人》《乗り込み部隊》《苛立つアルティサウルス》をプレイして一気に畳みかける、というわけです。
唯一グリクシス親和には、破壊不能の土地が採用されていることで上手く機能しないケースがありますが、サイドボードから入れ替わりとして《幻触落とし》がしっかり採用されています。メインボードはクリーチャーのサイズで押し切りつつ、サイド後は土地をしっかり狙うというゲームプランで対応していきます。
アゾリウスファミリア
グルールが台頭し始めて以降、上位に「ファミリアコンボ」が勝ち上がっているケースが増えています。特に3月11日のパウパーチャレンジでは3位、4位、9位に入賞と神決定戦でも注目のアーキタイプとなりそうです。
注目ポイント
《陽景学院の使い魔》によるマナ軽減をもとに、《古術師》2体を《幽霊のゆらめき》でブリンクすることで墓地のスペルを自由に回収しつつ、《アゾリウスの大法官庁》を《断絶》でアンタップしてマナを増やしながら盤面をコントロール。フィニッシュは《賢者街の住人》によるライブラリーアウトや、《断絶》を無限に撃って場を制圧してから殴り切ったりと安全に決めることができます。
グルールランデスの増加により不利だったデッキが減少したことで、徐々に風向きを上げているようです。グリクシス親和に対して最強のアンチカードである《塵は塵に》に加え、《存在の破棄》を含めた計8枚ものアーティファクト追放除去が採用されているのも特徴で、親和に対するヘイトデッキとして今後も注目となるでしょう。
ファミリアコンボはほかのコンボデッキに弱い側面を持ち合わせていることもあり、「ゴブリン頑強」や「壁コンボ」も今後良い選択肢になるかもしれません。
おわりに
今回はパウパーチャレンジの大会結果からメタゲームについてお届けしました。
現在は主に「カルドーサレッド」「グリクシス親和」「ディミーアテラー」「グルールランデス」の4つがメタゲーム上位に存在し、その流行に合わせた有利なデッキが勝ち上がっている印象にあります。神決定戦に出場される際は、この4つにはしっかり対応できるようにしておきましょう。
今回取り上げていない「フェアリー」や「トロン」「ナヤゲート」なども上位入賞をしていることが多く、さまざまなデッキに可能性があると感じています。もちろんオンラインには存在しない「ステッカーストンピィ」や新たに登場した「ディミーア毒コントロール」といったデッキの活躍も考えられますね!
晴れる屋のYoutubeにもパウパーの動画が公開されているので、そちらもチェックしてみてください!それでは!
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長谷川 翔一 (Twitter)