はじめに
みなさんこんにちは。
『ファイレクシア:完全なる統一』がリリースされてからしばらくが経ちますが、みなさんどうお過ごしでしょうか?
今回の連載では『Modern Showcase Challenge』と『Modern Challenge』の入賞デッキを見ていきたいと思います。
Modern Showcase Challenge 3/11
異なる2つのラガバンデッキ
2023年3月11日
- 1位 Jund Saga
- 2位 Izzet Ragavan
- 3位 Hammer Time
- 4位 5C Creativity
- 5位 Izzet Prowess
- 6位 Izzet Ragavan
- 7位 Merfolk
- 8位 4C Creativity
トップ8のデッキリストはこちら
今大会の結果で印象的だったのはJundが優勝していたことでした。Jundは実は『プレイヤーズコンベンション横浜2023』のモダンオープンでもプレイオフに3名入賞と復権の兆しは見せていましたが、大きな大会での優勝は久々です。
準優勝は現環境でもっとも人気のあるIzzet Ragavanで、色の組み合わせは異なるものの《敏捷なこそ泥、ラガバン》を採用したフェアデッキが安定した成績を残しています。
デッキ紹介
Jund Saga(1位)
除去、ハンデス、アドバンテージ源、効率的なクロックがそろっており、Jundはモダンのフェアデッキ代表格とされていましたが、最近はカードパワーの上昇やAmulet Titanなど苦手なマッチアップが増えたため減少傾向にありました。しかし、Jundも《レンと六番》や《ウルザの物語》《敏捷なこそ泥、ラガバン》といった強力なカードを手に入れたことで返り咲いています。
《タルモゴイフ》は除去の質の向上によって最近はそれほど見られなくなったものの、Izzet Ragavanなど火力除去が中心のデッキにとっては対処が困難な脅威であることは変わりません。クロックとしても優秀で、コンボデッキに対しても序盤からプレッシャーをかけることができます。
☆注目ポイント
3色デッキで色マナのでない《ウルザの物語》を採用するのは、色事故や《血染めの月》に弱くなるリスクこそありますが、それに見合っただけのカードパワーがあります。
墓地対策になる《虚無の呪文爆弾》やアグロ対策の《影槍》、置物対策の《機能不全ダニ》といったカードをサーチしてこれるので、アーキタイプ数の多いモダンにおいて、これらをメインから対応できるのは非常に重要です。エンチャントなのも地味に優秀で《タルモゴイフ》の強化に貢献します。また、土地なので《レンと六番》で再利用することができ、さらにアドバンテージを稼ぐことができます。
豊富な種類の除去にアクセスできるのもJundの強みです。《コラガンの命令》や《機能不全ダニ》はHammer Timeとのマッチアップで特に活躍する除去で、《耐え抜くもの、母聖樹》は置物対策だけでなく苦手とするAmulet TitanやTronといった土地コンボ対策も兼ねてくれます。《レンと六番》で再利用することもできるので、相手に土地を与えてしまうというデメリットを考慮しても有用な土地といえます。
メインとサイドに1枚ずつ採用されている《大渦の脈動》は、3マナのソーサリーと最近のモダンの基準ではかなり重い部類のカードになりますが、Temur Cascadeのサイ・トークンをまとめて除去できるところが評価されている理由のひとつになります。
サイド後は土地コンボ対策の《高山の月》や《不屈の独創力》コンボ対策の《万物の姿、オルヴァール》などより明確なものにさし変わります。《仕組まれた爆薬》はHammer Timeなど軽いパーマネントを並べるデッキや、Temur Cascadeなどトークンを並べてくる相手に有効です。
Temur Cascade(13位)
《衝撃の足音》は依然として強力なスペルです。「続唱」の関係上、デッキに2マナ以下のカードを入れられませんが、《火/氷》《死亡/退場》《激情》といった分割スペルやピッチでプレイできるスペルで序盤をカバーしています。
一度に複数のパワー4・トランプル持ちが並ぶので、多くのフェアデッキにとっては対応が追いつかずそのまま押し切れることもあります。一方、速いコンボデッキや《虚空の杯》《時を解す者、テフェリー》といった特定のカードを苦手としています。多色バージョンはそれらの対策カードを除去できる《力線の束縛》を使えますが、3色バージョンはマナ基盤が安定しており《血染めの月》を無理なく運用できるというメリットもあります。
☆注目ポイント
《否定の力》は《衝撃の足音》を通す助けになると同時に、ほかのコンボデッキに対しての妨害としても機能します。サイドに4枚採用された《神秘の論争》は、主にカウンターや《時を解す者、テフェリー》を狙い撃ちしたカードです。
《力線の束縛》ほどではないものの、《厚かましい借り手》は《虚空の杯》や《時を解す者、テフェリー》といった厄介な置物を対策しつつクロックとしても機能する優秀なカードです。Amulet TitanやHammer Timeが多い現環境では、《活性の力》は4枚採用する価値があります。また、手札に来てしまった《衝撃の足音》をすぐ「待機」させずに、ピッチコスト用に持っておくことも念頭に入れておきましょう。
Izzet Prowess(5位)
Izzet Prowessは《損魂魔道士》《僧院の速槍》といった「果敢」クリーチャーや《スプライトのドラゴン》を軽いスペルで強化し、圧倒的な速さのクロックで相手のライフを削る高速アグロデッキです。《死の国からの脱出》は主にコンボデッキで使われていますが、このデッキではアドバンテージ源として運用されています。
《表現の反復》や《死の国からの脱出》により中盤以降の強さも持ち合わせており、特に終盤は《死の国からの脱出》によって圧倒的なアドバンテージ差をつけることができます。
☆注目ポイント
《死の国からの脱出》はレガシーでは即禁止になったカードですが、モダンでは健在です。Breach Comboの専用パーツだと思われていましたが、強力なアドバンテージ源として機能することが分かり使われ始めました。
墓地から《変異原性の成長》を再利用すれば、「果敢」と合わせて高打点を叩き出すことができます。また《ドラゴンの怒りの媒介者》と《ミシュラのガラクタ》との相性が良く、《ドラゴンの怒りの媒介者》が場にある状態で《ミシュラのガラクタ》を「脱出」させることで大量のカードを引くことができます。
赤いデッキの天敵である《ヴェクの聖別者》が弱点なので、《蒸気の絡みつき》などの対策はサイドに欠かせません。一貫して効率性を重視したカード選択をしており、サイド後もデッキの構成が歪まないように必要最低限の対策に厳選されています。
《溶岩の投げ矢》も含めてこのデッキには《ドラゴンの怒りの媒介者》や《敏捷なこそ泥、ラガバン》を対処する手段が多数あり、現環境の多くのフェアデッキと互角以上に渡り合えます。ほかのフェアデッキと比べるとデッキを組むコストもリーズナブルなので、これからモダンを始めたいという方にもオススメできるデッキです。
Modern Challenge 3/19
モダン版の《全知》コンボ
2022年3月19日
- 1位 Golgari Yawgmoth
- 2位 Azorius Control
- 3位 Twiddle Storm
- 4位 Glimpse Combo
- 5位 Izzet Ragavan
- 6位 Jund Creativity
- 7位 Izzet Ragavan
- 8位 Izzet Ragavan
トップ8のデッキリストはこちら
先週末に開催されたモダンチャレンジではIzzet Ragavanが3名入賞、最終的に優勝したのはGolgari Yawgmothでした。そのほか、Twiddle StormやGlimpse Combo、Jund Creativityといったコンボデッキが中心となっています。
Glimpse Comboは《偉大なる統一者、アトラクサ》を新たな勝ち手段に据えており、コンボ発動後にさらにアドバンテージを稼ぐことができるようになり確実な勝利を狙えるようになりました。
デッキ紹介
Glimpse Combo(4位)
Glimpse Comboはその名の通り《明日の瞥見》を軸にしたコンボデッキです。このデッキの動きは至ってシンプルで、《カルニの庭》や《波ふるい》でパーマネントを場に多く並べ、「続唱」スペルから《明日の瞥見》をプレイして強力なパーマネントを複数展開します。
《全知》や《多元宇宙と共に》を場に出すことができれば、《偉大なる統一者、アトラクサ》や《引き裂かれし永劫、エムラクール》といった強力なクリーチャーのコストを踏み倒すことができます。
☆注目ポイント
従来の《明日の瞥見》コンボは、《ゴブリンの闇住まい》の能力で《明日の瞥見》を使いまわす構成になっていました。しかし、今回入賞したリストは《多元宇宙と共に》や《全知》を出して、《偉大なる統一者、アトラクサ》や《引き裂かれし永劫、エムラクール》のコストを踏み倒すというスタイルになっており、その場でゲームに勝ちやすくなりました。
《緻密》は《時を解す者、テフェリー》など厄介なプレインズウォーカーを対策すると同時に、サイド後に瞬速持ちのクロックとしても活躍します。パーマネントを多くプレイすることで、《明日の瞥見》のヒット率を上げることにも貢献します。
「続唱」を利用したコンボデッキなのでデッキに2マナ以下のカードを入れられません。そのため、《虚空の杯》を処理できるカードとして《耐え抜くもの、母聖樹》が採用されています。
Twiddle Storm(3位)
今大会でもっとも印象に残ったデッキなのが「Twiddle Storm」です。非常にユニークなコンボデッキで、パイオニアのロータスコンボのように《睡蓮の原野》と《ぐるぐる》《夢の掌握》を利用して大量のマナを生みだします。
軽いスペルが多く、一度《死の国からの脱出》を置くことができたらすさまじい速さで墓地を肥やすことができます。最終的に《秘本掃き》を「脱出」させ続けて相手のライブラリーアウトを狙うか、《ぶどう弾》で相手のライフを削り切ります。
☆注目ポイント
《願い爪のタリスマン》は《死の国からの脱出》などキーパーツをサーチすることができ、相手にコントロールが渡る前に《ぐるぐる》や《夢の掌握》でアンタップすることで再度カードをサーチすることができます。
相手のカウンターなど妨害を対策するために《呪文貫き》と《否定の契約》の2種類のカウンターが採用されています。仕掛けるターンに勝負を決めてしまうなら、《否定の契約》のデメリットも気にする必要はありません。また、少しでもコンボまでの時間を稼げれば勝てるので、《待機》は実質デメリットなしの《剣を鍬に》のように機能します。
総括
モダンのメタは混沌としていますが、Izzet Ragavanは依然として人気があります。デッキの種類が多いモダンですが、ハイレベルなイベントになると「Izzet Ragavan」「Creativity Combo」「Hammer Time」「Temur Cascade」「Rakdos Evoke」「Amulet Titan」あたりが特に多くなるため、最低限これら6つのデッキの動きやゲームプラン、サイドプランについては理解しておいたほうがよさそうです。
現在のモダンはデッキの種類が多く、やり込み次第ではさまざまなデッキや戦略に勝つチャンスがある面白いフォーマットとなっています。
USA Modern Express vol.92は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!