はじめに
お疲れ様です。てんさいチンパンジー(@tensai_manohito)です。
私事ですがこの1か月はいろいろなことがありました。
『Magic Online Modern Showcase Challenge』で優勝したり、
モダンショーケース。独創力。
— てんさいチンパンジー (@tensai_manohito) February 12, 2023
UR 〇〇
壁 〇××
ハンマー ×〇〇
グルール 〇×〇
エレメンタル 〇〇
独創力 〇×〇
サイ 〇〇
サイ 〇〇
エレメンタル 〇〇
親和 ×〇〇
サイ 〇〇
デスタク ×〇〇
1st🏆
100勝ちと思われた壁にだけ負けたの謎だが。
アトラクサはご想像に任せます。 pic.twitter.com/TAmDx0zMM0
マジック:ザ・ギャザリング公式Youtubeの「マジック環境分析ラボ」「マジラボ戦略室 モダン編」を乗っ取ったりにお邪魔したり、
【動画更新】
— マジック:ザ・ギャザリング (@mtgjp) February 24, 2023
今回の #マジラボ は「 #プレイヤーズコンベンション 横浜2023」直前SP!
モダンのオープン大会にむけて、現環境の代表デッキと採用された新カードを一挙に紹介
増田勝仁選手( @tensai_manohito )と一緒にモダンのメタゲームを分析・研究しよう。https://t.co/oRQyQlGWEl#mtgjp pic.twitter.com/vsFIqRTTqk
【動画更新】
— マジック:ザ・ギャザリング (@mtgjp) March 1, 2023
大型大会にむけて、このフォーマットは見逃せない!
「マジラボ戦略室」モダン編!
マジラボ所長・原根健太選手と、マジラボ モダン担当・増田勝仁選手が対戦。
アミュレットタイタンVS独創力コンボ、行方はいかに?https://t.co/v1vmMcsYJ4#mtgjp #プレイヤーズコンベンション pic.twitter.com/3IHNencADH
『チャンピオンズカップファイナル サイクル2』に参加してプロツアー権利を獲得をしたり、
チャンピオンズカップファイナルday2。グリクシス。
— てんさいチンパンジー (@tensai_manohito) March 5, 2023
ジャンド ○○
青単 ××
赤単 ×○○
アブザン ×○○
ID
最後勝ってもtop8無いためIDで終了。
8-3-1で16位。800ドルとPT権利。デッキは微妙だったかも。 pic.twitter.com/go0fQORBsb
などなど。いろいろありましたが、今月はそのなかでも直近イベントである『チャンピオンズカップファイナル サイクル2』で使用した「グリクシスミッドレンジ」について掘り下げます。単なるデッキガイドではなく、使用したリストとその反省、その反省から「どうすればよかったのか」の理想を追い、そして今後どうなっていくかについて考えていきます。
グリクシスミッドレンジの過去
『チャンピオンズカップファイナル サイクル2』で使用したリストは以下の通りです。
王道のグリクシスミッドレンジを使用しました。リスト公開制を意識して採用している打ち消しを散らしていること、最多になるであろうミラーマッチを意識してリソース源を多めに採用しています。
最終結果は8-3-1で16位(18位までがPT権利+次回『チャンピオンズカップファイナル サイクル3』の権利)と望外の成績でしたが、残念ながら反省点は多かったです。
反省その1:ミラーマッチに寄せすぎた
『エルドレインの王権』期のスタンダード、過去最強と言わしめた「シミックフード」「スゥルタイフード」をご存じでしょうか。後にあらゆるフォーマットで禁止指定を受けた《王冠泥棒、オーコ》をはじめ、《むかしむかし》《夏の帳》と明らかにオーバースペックの呪文が無規制で使えた、間違いなく歴代最強のスタンダードデッキです。
このころのスタンダードは本当にこの”フードデッキ”の一強で、当時のプロツアー相当イベント『ミシックチャンピオンシップⅥ』でも占有率は約69%(バントフードも含める)と、異常な数値をたたき出していました。
現在のグリクシスミッドレンジはどうでしょうか。『チャンピオンズカップファイナル サイクル2』の占有率も28.4%と最多ではありましたが、1強というにはほど遠いです。実際、2番手、3番手と続いた「エスパーレジェンズ」「赤単アグロ」もそれぞれ12.4%、7.2%と決して低い占有率ではありません。
にもかかわらず、私は「グリクシスミッドレンジはきっと最多!そこに寄せよう!」と安易に考えました。これは非常に良くない。特定のアーキタイプに寄せるということは、当然ですがそれ以外のアーキタイプには落ちるということです。
「白単ミッドレンジはまあ大丈夫!(無根拠)」「赤単アグロや青単テンポは当たっても1-2回だろうし多少落としても平気!(無根拠)」と思ってましたが、実際に「赤単アグロ」「青単テンポ」「白単ミッドレンジ」などの苦手デッキの占有率を合計したら、グリクシスミッドレンジに近い数値になります。つまりどういうことでしょうか…?
結果を見てみましょう。私の2日間の成績は以下の通りです。
デッキ | 成績 |
---|---|
グリクシスミッドレンジ | 〇〇 |
エスパーレジェンズ | 〇×〇 |
赤単アグロ | ×〇× |
グリクシスミッドレンジ | 〇×〇 |
グリクシスミッドレンジ | ×〇〇 |
赤単アグロ | ×〇× |
ラクドスアトラクサ | 〇〇 |
デッキ | 成績 |
---|---|
ジャンドミッドレンジ | 〇〇 |
青単テンポ | ×× |
赤単アグロ | ×〇〇 |
アブザンミッドレンジ | ×〇〇 |
グリクシスミッドレンジ | ID |
結果的に対グリクシスミッドレンジは4試合、対赤単アグロ、青単テンポは4試合と同じ回数だけ当たりました。ちゃんと占有率通りです。目論見通り(?)、ミラーマッチにはIDを除くと全勝。しかし、ガードを下げていた赤単アグロ、青単テンポは4試合当たって脅威の1-3。しかも、勝った1試合は相手のマリガンや事故に助けられただけです。
いくら占有率がトップだからといって、所詮は約30%。それ以外に当たることのほうが多いのです。それこそ”フードデッキ”のように圧倒的であれば寄せる価値はありますが(実際、当時もメインから《害悪な掌握》《霊気の疾風》のような色対策カードが採用されていました)、今回のようにある程度ばらけていることが予想できているのであれば、あまりやり過ぎないほうがよいでしょう。
過度な寄せはミッドレンジの特徴である「メイン戦はどんな相手にも満遍なく戦えて、サイド後にアジャストする」という強みも損なわれてしまいます。今回はまさにそれで失敗した良い例といえるでしょう。反省です。
反省その2:ミラーマッチを理解していなかった
寄せた結果、ミラーマッチが全勝だった!…といえばまだ聞こえはいいですが、実際にはそんなことはありません。
いまでこそミラーマッチの鍵となるカード=《剃刀鞭の人体改造機》という認識を持っていますが、当時はほかのマッチアップでの役割も考慮して《青の太陽の黄昏》《眼識の収集》《強迫》を優先していました。
しかし、それらのカードは有効ではあるもののゲームを決定づけるほどのインパクトはなく、せいぜいちょっと有利に運べる/ほかのカードとの組み合わせで多少はマシになるといった程度。
それに対して《剃刀鞭の人体改造機》は適正なタイミングで戦場に出れば、本当に単体でゲームに勝てるレベルの決定打になります。自分では寄せたと思っていたが、実際には寄っていなかったという。滑稽な話です。
それに気づいたのはなんと当日。
試合前のリスト交換で相手のリストに《剃刀鞭の人体改造機》が入っているときは「あ、入ってるんだ。まあ大丈夫だろう」と高を括っていましたが、サイド後に実際に戦場に出てきてびっくり。それだけでボコボコにされてしまいました。
これはまずいとその場でサイドプランを変更。本来はサイドアウト予定の《黙示録、シェオルドレッド》《税血の収穫者》をすべてメインに戻し、代わりに《剃刀鞭の人体改造機》に押されている展開では役に立たない《絶望招来》を減らすことに。これが上手くハマって、《剃刀鞭の人体改造機》との殴り合いに持ち込んでなんとか勝利を収めました。
その場では上手くいったものの、これは本当にたまたま運が良かっただけだと思ってます。相手もこちらのプランにアジャストして《喉首狙い》を多めに残していたらそれだけでアウトです。少なくとも、こちらも《剃刀鞭の人体改造機》を採用していれば、このような博打サイドボーディングを行うことなく五分の戦いに持ち込めていたでしょう。
ミラーマッチの”肝”を理解していなかった故です。反省です。
反省その3:白単ミッドレンジを過大評価しすぎていた
「白単ミッドレンジ」はグリクシスミッドレンジのキラーデッキとしてポジションを確立しており、実際、練習段階でも勝率は悪かったです。とはいえ、グリクシスミッドレンジのような3色ミッドレンジが単色ミッドレンジに劣るということはMTGの歴史上でもあまりなく、寄せればその分だけ勝率は担保できると考えました。その結果が《青の太陽の黄昏》と《感電の反復》です。
《青の太陽の黄昏》は《夜明けの空、猗旺》や《聖域の番人》といったゲームを決定づけるクリーチャーをむしろ逆に利用できますし、《鋼の熾天使》のような3マナ域を奪うだけでも十分に役に立ちます。《感電の反復》はゲームが長引きやすいこのマッチアップにおいて、最終的には大技の投げつけ合いになるので、そこで《絶望招来》や《青の太陽の黄昏》の威力を高める意味で採用しています。
大量の”使用済み”エンチャントで《絶望招来》に耐性のある白単ミッドレンジですが、流石に《感電の反復》を絡めて何度も高威力の《絶望招来》を唱えられては流石に耐えられません。
ほかにも白単ミッドレンジ側がこのマッチアップで意識するであろう「2マナ浮かせての《セラの模範》」に対して裏目の《散乱光》や、《放浪皇》《婚礼の発表》によるトークン横並びに対する裏目の《兄弟仲の終焉》など、とにかくメインから白単ミッドレンジを意識した構成になっています。
しかし、当日は1度も対戦することはありませんでした。それどころかグリクシスミッドレンジに次いで2番手だろうと踏んでいた占有率も、まさかの5%以下。完全に読み違えました…。
結果、《感電の反復》をサイドインした回数は驚異の0回。メインに採用した《兄弟仲の終焉》もあまり活躍はせず。用途の限られたカード=ほかのマッチアップでは役に立たないようなカードの採用は、あまりミッドレンジ向きの思想ではないなと思わされました。反省です。
全体を通して
数々の反省が出てくる中、実際は8-3-1という結果が出ていることについては端的に“運が良かった”としかいえません。もう少し赤単アグロに当たっていたら、相手のグリクシスミッドレンジに《剃刀鞭の人体改造機》が採用されていたら…もう1敗してすべてを失っていた(※)可能性は大いにあります。
(※概ね8-3-1が18位までのラインだったため、4敗はほぼアウト)
自身、普段はこの手の王道ミッドレンジを避けたデッキ選びをする傾向が強く、正直に言ってミッドレンジに苦手意識はありました。しかし、いつまでの避けては通れない道だろう…ということで、今回は早い段階からグリクシスミッドレンジに絞って練習をしていました。
が、やはり今までサボってた分のツケが出たなという結果と反省に。メタゲームの読みの甘さは今回に限った話ではないのでまだしも、調整の精度の低さは浮き彫りになる結果になりました。
ただ、失敗すればその反対は成功です。何もしなければずっとそのままだったことが、行動したことによって方向が定まったともいえます。そういう意味でもグリクシスミッドレンジを選んだことに一切の後悔はないですし、また別の機会にミッドレンジを選択することへの抵抗は今回よりも小さいものになるでしょう。これが成長です。ますだはレベルアップしました。多分。
ますだはレベルアップした!
グリクシスミッドレンジの現在
数々の反省(?)を経て、『チャンピオンズカップファイナル サイクル2』翌週のMTGアリーナで行われた『ウィークエンド予選』もグリクシスミッドレンジを使用しました。そのときのリストは以下の通り。
サイドに落としていた《税血の収穫者》をメイン4枚に戻し(そもそもこれも意味不明でしたね…)、《兄弟仲の終焉》《眼識の収集》などのメインからミラーに寄せていた要素もすべて排除しました。《黙示録、シェオルドレッド》をメインにスライドして対アグロを担保。特にリスト非公開の場合はアグロが強い傾向にある(※)ので、ガードを上げる意味でもあります。
(※相手によらず自分都合でキープ/マリガンを判断できるため、1本目の勝率が高くなりやすい。逆に公開制の場合は1本目から適切にマリガンで除去などを探されるので勝率が落ちやすい)
今度こそ《剃刀鞭の人体改造機》を採用し、対グリクシスミッドレンジ用に同様の思考をするであろう相手に対して《炎恵みの稲妻》を採用しました。当日のマッチアップと結果は以下の通りです。
デッキ | 成績 |
---|---|
エスパーレジェンズ | 〇〇 |
ゴルガリミッドレンジ | ×〇× |
エスパーレジェンズ | ×〇〇 |
セレズニアポイズン | ×〇〇 |
赤単アグロ | 〇×〇 |
エスパーレジェンズ | 〇×〇 |
グリクシスミッドレンジ | ×× |
5-2で初日落ちでした。無念。グリクシスミッドレンジにこそ敗北したものの、同じ思想で《剃刀鞭の人体改造機》を採用しているエスパーレジェンズに対しては、《炎恵みの稲妻》が想定通りの働きで活躍しました。
赤単アグロにも『チャンピオンズカップファイナル サイクル2』のときは1本目をすべて落としていましたが、メインに戻した《黙示録、シェオルドレッド》が強くて1本目を取ることに成功。3本目も比較的楽な先手でゲームを始められたため、無事勝利できました。セレズニアポイズンに対してもメイン戦こそ落としたものの、サイド後は増量した《兄弟仲の終焉》を引くことができ、劣勢の状況から逆転で勝利できました。これも良い変更でした。
メインを丸く組んでサイド後にアジャストする。なるほど、「ミッドレンジはこうあるべきなんだな」としみじみ思いました(?)。普段は寄せがちな構築をすることが多かったのですが、こういうMTGもあるのかと学びました。結果は奮わず残念でしたが、私個人としては前週と合わせて得るものの大きかったイベントとして満足しています。
グリクシスミッドレンジの未来
私が参加する予定だった直近のスタンダードイベントは、前述の『ウィークエンド予選』が最後になります。なので、以降は本腰を入れて…ということはないですが、グリクシスミッドレンジの未来については興味があります。今後、どうなっていくのかについて考えてみます。
《剃刀鞭の人体改造機》の価値が上がっていく場合、後手は《絶望招来》を減らすプランもありえるのかなと思います。先手の押している展開では最後の一押しに使えますが、逆に押されている展開では《剃刀鞭の人体改造機》を生け贄に捧げられるだけで、戦場への影響はほとんどなしというイマイチなカードに成り下がってしまいます。
逆に《黙示録、シェオルドレッド》は《剃刀鞭の人体改造機》とのレースを制する上でも重要になり、サイド後に残すのもそこまで悪くはないように思えます。とはいえ、《喉首狙い》にも当たってテンポよく2マナと4マナが交換されるのも寒いので、悩ましいところではありますが…それも踏まえて、ミラーマッチもサイド後は《喉首狙い》を減らさないほうが主流になっていくのかなと予想しています。
また、《炎恵みの稲妻》《苦痛ある選定》の採用率も上がっていくでしょう。《剃刀鞭の人体改造機》を後腐れなく対処できる除去として、ほかの除去と枠を争う形になりそうです。ただ、《炎恵みの稲妻》《苦痛ある選定》のどちらが優れているかは議論の余地があります。改めていくつかのマッチアップを想定して比較してみましょう。
グリクシスミッドレンジ
《苦痛ある選定》に比べると《炎恵みの稲妻》のほうが当たりどころが少なく、相手の《税血の収穫者》を倒すと《死体鑑定士》が腐ってしまうなどなかなか使いづらい展開が目立ちます。相手の《死体鑑定士》を腐らせているともいえるので、採用する場合は自分が《死体鑑定士》を減らすなどサイドプランを工夫するのが良いでしょう。どちらかというと、1マナの軽さよりは範囲を取りたい場面が多いので、《苦痛ある選定》のほうが良さそうな気配を感じます。
エスパーレジェンズ
《炎恵みの稲妻》は1マナと軽い点や《夜明けの空、猗旺》を合わせ技で倒せるパターンもある点を評価できますが、《敬虔な新米、デニック》や《策謀の予見者、ラフィーン》に当たらないなどの裏目が気になります。その点、《苦痛ある選定》は対象が広く使いやすいですが、《離反ダニ、スクレルヴ》《スレイベンの守護者、サリア》などはテンポよく倒したい場面も多いので、どちらが優れているかは一長一短です。
なので、ほかの採用カードや構成で判断するのがよいでしょう。《切り崩し》とセットで1マナ域の枚数が膨れるようであれば、《苦痛ある選定》のほうを優先したいですね。逆に《切り崩し》が少ないのであれば《炎恵みの稲妻》を優先したいです。
セレズニアポイズン
《炎恵みの稲妻》のほうが《這い回る合唱者》《殺戮の歌い手》などをテンポよく倒せる反面、《別館の歩哨》《ふくれた汚染者》が倒せないなどの問題もあります。
《ふくれた汚染者》は《削剥》や《切り崩し》《兄弟仲の終焉》などほかの除去では倒せない場合も多く、範囲を取る意味でも多少のテンポの悪さは我慢して《苦痛ある選定》を採用したいです。
赤単アグロ
軽さがすべてです。1マナの軽さはほかのカードで代わりがききません。絶対に《炎恵みの稲妻》のほうがよいです。
サイドインする可能性の高い相手に対していくつか考えてみましたが、基本的に《苦痛ある選定》が良さそうに感じます。とはいえ、1マナという軽さは唯一無二の絶対なので、赤単アグロのような苦手マッチアップを重く見るのであれば《炎恵みの稲妻》を採用するというのも悪くないです。
ボーナストピック:サイドボーディングについて
最後にグリクシスミッドレンジのサイドボーディングについて解説します。「ここまで散々失敗した話をしたくせに偉そうに!」と怒り、暴れ散らかす人も多いとは思いますが(?)、ここは1つ反面教師的に役立てていただければと思います。リストは前述の「グリクシスミッドレンジの現在」で紹介したものを想定しています。
グリクシスミッドレンジ
vs. グリクシスミッドレンジ(先手)
vs. グリクシスミッドレンジ(後手)
先手は押して後手は受けるプランです。《税血の収穫者》をはじめ、2マナのカードは先手と後手で大きく価値が変わります。先手であれば2ターン目にほぼリスクなく唱えられますが、後手の場合はそこでタップアウトすると返しの《鏡割りの寓話》が通ってゲームセットです。
ゲームセットは大げさに聞こえるかもしれませんが、適正ターンの《鏡割りの寓話》はそれくらいのインパクトがあります。《鏡割りの寓話》でなかったとしても、除去や打ち消し→返しに《死体鑑定士》というパターンも寒いので、《税血の収穫者》を持っていたとしても、相手がマナを起こしている場合は唱えずにパスします。
そう考えると4ターン目以降に唱えるカードになる上に、4ターン目であれば《勢団の銀行破り》のほうがよいということもあり、基本的に後手ではサイドアウトしたほうがよいと考えています。
逆に先手はある程度パーマネントを出していかないと先手の利がなくなってしまいます。能動的に動きたい=一番読まれやすいリアクションである《かき消し》はサイドアウトします。《呪文貫き》や《散乱光》はケアが難しいのでそのままにします。
サイド後は《剃刀鞭の人体改造機》を巡る戦いになりますが、《剃刀鞭の人体改造機》を2ターン目にポン出しするか一考の余地があります。テンポよく除去→《死体鑑定士》で除外されてしまっては意味がありません。
なので、基本的に2ターン目には唱えず、《鏡割りの寓話》や《税血の収穫者》の血・トークンで捨てるのがベストです。仮に手出しする場合でも、2マナで戦場に戻せるタイミング(相手の戦場に4枚以上の基本でない土地が並んだタイミング)で2マナ浮かせつつ出すのがよいでしょう。こうすることで除去→《死体鑑定士》の最悪のパターンは防げます。
エスパーレジェンズ
vs. エスパーレジェンズ
基本的には受ける側にまわります。序盤は除去で相手の攻勢を抑えつつ、《鏡割りの寓話》《絶望招来》を起点に反撃していきます。先手の《スレイベンの守護者、サリア》にハマる展開だけは仕方ない部分もありますが、こちらが先手で《スレイベンの守護者、サリア》を《かき消し》できるような展開で目の前の《離反ダニ、スクレルヴ》に先に除去を撃つようなことだけは避けましょう。
エスパーレジェンズの《剃刀鞭の人体改造機》はたしかに脅威ですが、グリクシスミッドレンジのように《鏡割りの寓話》や《税血の収穫者》から出た血・トークンで直接墓地に送る→4/2で戦場に戻るというパターンが少ないです。
《策謀の予見者、ラフィーン》《見捨てられたぬかるみ、竹沼》を経由するパターンもありますが、前者は攻撃前に除去されやすく、後者は運任せなので考えないほうが建設的です。《勢団の銀行破り》に乗るパターンも少ないため、ブロックさえしなければ3/1のまま戦場に固定させてレースを挑むという展開も狙えるため、ある程度は無視できます。
《青の太陽の黄昏》はクリーチャーデッキに強いわけではありません。除去としてみるとかなりマナ効率が悪いです。6マナ辺りで《黙示録、シェオルドレッド》を奪えるようなタイミングでは、すでに《英雄の公有地》が構えられて役に立たない…というケースも頻発します。サイドアウトしましょう。
赤単アグロ
vs. 赤単アグロ(先手)
vs. 赤単アグロ(後手)
メイン戦はダメージランドから受けるダメージに加えて、1マナ域からの攻勢を捌くための除去が不足しているので、《怪しげな統治者、スクイー》《轟く雷獣》辺りの強力なパーマネントのどれかを撃ち漏らして押し切られやすいです。先手で《熊野と渇苛斬の対峙》からスタートされたら潔く諦めましょう。サイド後は軽量除去や全体除去が増えるのでかなり戦いやすくなります。
《絶望招来》は相手がプレインズウォーカーや《鏡割りの寓話》で重くしてきたときにはそれなりに有効ですが、それに頼らずとも《死体鑑定士》や《勢団の銀行破り》でプレッシャーを掛けていればそこまで苦になりません。むしろ重なることで敗因になりやすいので、残すとしても2枚程度に抑えたほうがよいです。基本的に全抜きをオススメします。
《勢団の銀行破り》はそこまで悪いカードではありません。この手のアグロデッキに対してあまり有効ではないと思われがちですが、パワー3以上のクリーチャー+《勢団の銀行破り》(4/4機体としての運用)という構えは意外と突破されづらいです。また、除去で捌く展開になると必ずドローソースが必要になるため、そういった意味でも必要な1枚です。とはいえ、後手で重ねて引くと唱えるタイミングがないので、やりすぎは禁物です。後手は減らしたほうが無難です。
青単テンポ
vs. 青単テンポ
本気で勝ちたいなら《未認可霊柩車》のようなクリティカルなサイドカードが必要です。今回はあるものでなんとかしようプランです。現状では間違いなく厳しいマッチアップです。
《削剥》は相手が《勢団の銀行破り》《高波エンジン》を採用している場合だけ残したいですが、基本的には誰も当たらない除去なので抜きましょう。また、《秘密を掘り下げる者》を除去できる《切り崩し》や《炎恵みの稲妻》はサイドインしません。
たしかに1ターン目に《秘密を掘り下げる者》、次のターンに即反転、それを打ち消しで守られてハイ負け!というのも寒い展開ではありますが、範囲の狭い除去を取って《トレイリアの恐怖》《傲慢なジン》を倒せないほうがよっぽど寒いです。《喉首狙い》で我慢しましょう。
《剃刀鞭の人体改造機》は3/1バニラとして使います。《税血の収穫者》とともに序盤に並べてぺちぺち殴ってライフを下げておくことで、《傲慢なジン》の殴り返しを防ぎます。《傲慢なジン》は2回の攻撃で負けることは多いですが、1回の攻撃で負けることはほとんどありません。つまり、ライフを落としておくことで《傲慢なジン》が攻撃に参加するターンを遅らせられます。そのあいだに横並びで打点をそろえる、もしくは《強迫》+除去をセットでそろえて相手の《傲慢なジン》を処理しましょう。
白単ミッドレンジ
vs. 白単ミッドレンジ
のらりくらりとやられて重いところが通って負け…という展開になりやすいです。勝つパターンは相手が重いところが通らない or リソース源に辿り着かずフラッドするの2通りです。素早く殴り切る展開はほとんど起きません。
《税血の収穫者》は《軍備放棄》《骨化》《神憑く相棒》《野心的な農場労働者》《婚礼の発表》《放浪皇》などなど…あらゆる方法ですぐに止まってしまうのでサイドアウトします。殴り切るのは不可能です。諦めましょう。《鏡割りの寓話》を重ねて引き、相手より素早くマナが伸びて《絶望招来》を唱えながら打ち消しを構える…といった、相手が誰であっても勝てるブンまわり以外は、基本的には打ち消し&リソースがっぷり勝負です。
《セラの模範》が通ると即《勢団の銀行破り》《婚礼の発表》といったリソース源を使いまわされるので、可能なら打ち消しで対処したいです。つまり、確定打ち消しである《軽蔑的な一撃》の扱いが非常に重要になります。
《夜明けの空、猗旺》《聖域の番人》は仕方ないですが、《放浪皇》は《絶望招来》《兄弟仲の終焉》でも対処可能です。なので《放浪皇》に《軽蔑的な一撃》を投げると最終的に足りなくなることが多いので、よほどクリティカルでなければ《放浪皇》は通して《軽蔑的な一撃》は温存したほうがよいです。
アトラクサ系
vs. アトラクサ系
ここではラクドス型を想定しています。グリクシス型の場合、サイド後は相手もこちらの打ち消し構成アジャストする形でリアニメイトパッケージを減らす=グリクシスミッドレンジに近しいin/outで問題ないでしょう。《軽蔑的な一撃》だけ追加でサイドインするイメージです。
ラクドス型の場合でも基本的な方針は同じです。メインから比較的有利に立ち回れることから大きく形は変えず、《軽蔑的な一撃》のような確定打ち消しを追加するのみに留めます。
逆に《税血の収穫者》を抜きすぎてあまり後ろ向きな構成にすると、相手がリアニメイトパッケージを抜いてきたときにハマってしまうので、構えていれば勝てる…といった考え方やサイドプランは辞めたほうがよいです。
ある程度は能動的に攻められるようなカードを残し、そういった展開を意識するべきです。マナベースが基本土地に寄っているのであれば《剃刀鞭の人体改造機》はサイドインしませんが、《偉大なる統一者、アトラクサ》の素出しを見越して特殊土地を多めに採用しているのであれば《剃刀鞭の人体改造機》も有効です。この辺りは柔軟に判断しましょう。
セレズニアポイズン
vs. セレズニアポイズン
《強迫》は対処の難しい《スクレルヴの巣》を抜く目的もありますが、最終的に相手の手札に《タイヴァーの抵抗》《勇敢な姿勢》《ダニの突撃》が残りやすいので、終盤になっても意外と腐りづらいです。逆に《かき消し》のような打ち消しは、序盤にテンポよくクリーチャーを展開されるとそれら対処に追われて浮きがちになるのでサイドアウトしたほうが無難です。
「堕落」を達成されると《種子中枢》によって《黙示録、シェオルドレッド》《勢団の銀行破り》以外のクリーチャーはダニ・トークンをパンプすることで簡単に突破されてしまうので、まずは「堕落」させないような除去やブロックを心掛けます。中盤以降、どうしても抑えきれず「堕落」を達成してしまうことにはなると思いますが、それまでには《鏡割りの寓話》《黙示録、シェオルドレッド》《勢団の銀行破り》で戦場を広げておく展開が理想です。
ただ、除去で捌いているだけでは最終的に《ミレックス》《スクレルヴの巣》が重いので、素早くライフを詰める必要があります。《税血の収穫者》《死体鑑定士》などはブロックに回し過ぎず、殴り返す気概を持って使いましょう。相手の除去は限られているので、《キキジキの鏡像》+《税血の収穫者》/《死体鑑定士》も狙いやすいです。
《兄弟仲の終焉》のアーティファクト破壊モードは、ほぼ相手のクリーチャーを一掃できる上にこちらにはほとんど被害がないので、《スクレルヴの巣》に制圧されていても逆転の可能性があります。
ただし、こちらの戦場にクロックがそろっておらず、ただ時間稼ぎのために唱えてしまうのはイマイチです。それでは《ミレックス》《スクレルヴの巣》ですぐにリカバリーされてしまいます。まずは《黙示録、シェオルドレッド》などの反撃できる体制を整え、その上で《兄弟仲の終焉》を起点に反撃しましょう。
おわりに
今回の記事は以上になります。意外とこうやってミッドレンジに向き合う機会がなかったので、いい練習になりました。近年のスタンダードはミッドレンジが強いことが少なかったのですが、『神河:輝ける世界』『ニューカペナの街角』以降は逆にミッドレンジが強い環境が続いているため、現ローテーションが終了するまではまだまだ付き合うことになりそうです。
『チャンピオンズカップファイナル サイクル3』の権利も得たため、直近で参加する予定のイベント(サイクル3のエリア予選など)もなくなりました。せっかくなので、パイオニアやモダンでもまだ触ったことのないアーキタイプを練習してみたいと考えています。そのなかで得た知見などを、またみなさんにお届けできたらなと思います。
増田 勝仁 (Twitter)