はじめに
みなさんこんにちは。
今年の夏にバルセロナで開催されるプロツアーにモダンが採用されることが決まり、モダンはさらなる盛り上がりが期待できそうですね。
今回の連載では『Modern Showcase Qualifier』とチェコのプラハで行われた『LMS Prague』の入賞デッキを見ていきたいと思います。
Modern Showcase Qualifier
ついにあのデッキが優勝
2023年3月25日
- 1位 Dimir Mill
- 2位 Tron
- 3位 5C Creativity
- 4位 4C Omnath
- 5位 Cascade Crash
- 6位 4C Control
- 7位 Golgari Yawgmoth
- 8位 Grixis Shadow
トップ8のデッキリストはこちら
毎月マジックオンラインで開催される『Modern Showcase Challenge』の上位8名と、ラストチャンス予選で全勝だったプレイヤーのみが参戦できる『Showcase Qualifier』。優勝者にはMOCS本戦への参加権利が与えられるため、小規模ながら非常にレベルの高いイベントでした。
今大会でもIzzet RagavanとCreativityはもっとも人気のあったアーキタイプでしたが、それ以外にも多種多様なデッキがプレイオフにまで勝ち残っていました。
そして優勝したのは、なんとDimir Mill。ライブラリーアウト戦略は長い間カジュアル寄りでしたが、最近は『ファイレクシア:完全なる統一』からも新戦力に恵まれ、ハイレベルなイベントでも結果を残せるほどにまでに強化されました。
デッキ紹介
Dimir Mill
Dimir Millは相手をライブラリーアウトさせて勝利する戦略で、デッキ自体はモダンというフォーマットが始まって以来存在し続けています。
デッキの動きは、《面晶体のカニ》や《遺跡ガニ》《書庫の罠》《正気破砕》《ターシャズ・ヒディアス・ラフター》といったカードで相手のデッキを「切削」していきます。もともとはファンデッキとしてカジュアルー層に好まれていましたが、『モダンホライゾン2』や『フォーゴトン・レルム探訪』からの新カードによって中堅以上の立ち位置まで強化されました。
そして『ファイレクシア:完全なる統一』から《完成化した精神、ジェイス》が登場したことによって、『Showcase Qualifier』を制するほどにまで強化されました。
モダンの多くの直線的な戦略に共通していますが、このデッキの弱点として《引き裂かれし永劫、エムラクール》や《神聖の力線》といった特定の対策カードに弱いことが挙げられます。相手がどれぐらい対策をしてきているかによって強さが変動しますが、今大会ではメタが絞られているため《レンと六番》をタッチした青白などコントロールを持ち込んだプレイヤーも参戦していたこともあり、Dimir Millは良い選択肢となったようです。
☆注目ポイント
《致命的な一押し》や《湖での水難》など優秀な妨害スペルを搭載しているので、コントロールのように振舞うこともできます。メインから採用されている《外科的摘出》は「切削」スペルと相性が良く、落とした相手のキーカードを追放することで本来の動きを封じることが可能です。
《廃墟の地》は《面晶体のカニ》や《遺跡ガニ》の「上陸」を発動させたり、強制的にライブラリーを探させるので《書庫の罠》を0マナで唱える手段にもなります。
『ファイレクシア:完全なる統一』から登場した《完成化した精神、ジェイス》は、4マナでプレイすることによって最大で15枚のカードを「切削」することができます。またアドバンテージ源としても機能するので、このデッキの成功に大きく貢献しています。
《ターシャズ・ヒディアス・ラフター》は軽いスペルが主流のモダンでは非常に優秀な「切削」スペルで、特にHammer TimeやBreach Comboなど現環境で人気があるコンボデッキに有効です。サイドの《罠の橋》は、このデッキにとって脅威となる《濁浪の執政》をシャットアウトすることができます。Izzet Ragavanは一度場に出てしまった置物を対策する手段に貧しいため、非常に有用な対策となります。
4C Omnath
《空を放浪するもの、ヨーリオン》亡き後も健在の4C Omnath。『ファイレクシア:完全なる統一』からもETB能力の効果を倍にする《機械の母、エリシュ・ノーン》が登場して強化されました。
今大会でプレイオフに入賞したバージョンは、《発現する浅瀬》の代わりに《鏡割りの寓話》が採用されており、エレメンタルシナジーを軸にしたバージョンではなく多色のタップアウトコントロールスタイルに仕上がっています。
《氷牙のコアトル》に加えて《虹色の終焉》と《力線の束縛》の両方がフル搭載と除去が多めで、Izzet Ragavanなどを意識した構成になっています。
☆注目ポイント
今回入賞したリストは《エラダムリーの呼び声》などのサーチスペルが不採用で、メインから《機械の母、エリシュ・ノーン》が2枚採用されています。《機械の母、エリシュ・ノーン》は自軍のエレメンタルクリーチャーを含めたETB能力を倍増させる一方で、相手のETB能力をシャットアウトするため同型をはじめとした現環境の多くのデッキに有効です。
メインからカウンターが不採用なので《不屈の独創力》デッキなどのコンボデッキは苦手なマッチとなります。《不屈の独創力》に対しては《万物の姿、オルヴァール》《神聖なる月光》《ドビンの拒否権》などサイドで対策を厚くしています。
最近は《力線の束縛》が多色デッキの主要な除去として定着していますが、《ドラゴンの怒りの媒介者》《敏捷なこそ泥、ラガバン》《シガルダの助け》《レンと六番》などを早い段階で対処するために《虹色の終焉》もメインからフルに採用されています。またサイドには追加の《耐え抜くもの、母聖樹》が用意されており、このデッキでは《レンと六番》で再利用することができるため非常に有用な土地として活躍します。
4C Control
Azorius Controlに《創造の座、オムナス》《レンと六番》《耐え抜くもの、母聖樹》をタッチした目新しいバージョン。
フェッチランド+トライオームのおかげで色を増やすことも容易です。もともと青白は《力線の束縛》のためにトライオームを採用していたので、《レンと六番》と《耐え抜くもの、母聖樹》を加えてもデッキの構成をそこまで変える必要がなく、基本的な構成はAzorius Controlのままになっています。
☆注目ポイント
マナ基盤の都合上、安定して《レンと六番》を2ターン目にプレイするのは難しそうですが、このデッキでは《大魔導師の魔除け》や《対抗呪文》を構えたいので必ずしも2ターン目にプレイする必要がなく、4ターン目以降にカウンターを構えつつ唱えることが多くなりそうです。
《不屈の独創力》デッキやAmulet Titanといった特定のアーキタイプを意識していたようで、《神聖なる月光》や《激しい叱責》といったカードがメインから採用されています。軽いインスタントスピードのキャントリップなので無駄になりにくく、苦手なマッチアップをメインから対策できるようになります。
LMS Prague – Grand Open Qualifier
《巨智、ケルーガ》を「相棒」にした多色エレメンタルが優勝
2023年4月1日
- 1位 5C Elementals
- 2位 Cascade Crash
- 3位 5C Creativity
- 4位 5C Creativity
- 5位 4C Combo
- 6位 Living End
- 7位 Hammer Time
- 8位 Rakdos Evoke
Markus Leicht
トップ8のデッキリストはこちら
先週末にヨーロッパで開催された大規模なテーブルトップのモダンのイベント。かつてのGPを彷彿とさせる2日制のイベントで、参加者1054名と大盛況だったようです。
Best April fools ever!
— ⌽✯ 𝕋𝕙𝕖𝕎𝕚𝕝𝕝ℍ𝕒𝕝𝕝𝔼𝕩𝕡 ✯⌽ (@TheWillHallExp) April 1, 2023
1054 players in our main event!
Prague✅️
Modern✅️@LegacyEUTour we are live!https://t.co/M8YaunXxRg pic.twitter.com/ipTYwx1VkH
メタゲームブレイクダウンによると初日でもっとも人気があったデッキはやはりIzzet Ragavanで、2日目進出率のほうも5C Creativityに次いで2位と安定した成績でした。しかし、高い2日目進出率にかかわらずIzzet Ragavanはプレイオフではなんと不在でした。
最終的に優勝したのは《巨智、ケルーガ》を「相棒」にした多色エレメンタルで、ほかにもさまざまなアーキタイプが結果を残していました。
デッキ紹介
Cascade Crash
『モダンホライゾン2』から《断片無き工作員》が再録されて以来、Cascade Crashは常に結果を残し続けており、現環境でももっとも人気があるデッキのひとつです。プレイングも比較的簡単なので、モダンを普段あまりプレイしていないプレイヤーにもオススメです。
基本的にはティムールカラーですが、《力線の束縛》や《時を解す者、テフェリー》のために白をタッチしたバージョンも存在します。タッチ白はティムール型が苦戦を強いられていた《濁浪の執政》に対する解答にもアクセスしやすく、一方でティムール型は《血染めの月》を無理なく採用できるなど、相手の予想外の角度から攻めることもできます。
☆注目ポイント
《否定の力》に加えて《神秘の論争》もメインから採用されており、Izzet Ragavanなどを強く意識していることが分かります。《帳簿裂き》や《時を解す者、テフェリー》といったやっかいな呪文を対策する手段にもなるので、現環境ではメインからでも十分に活躍します。
《衝撃の足音》以外のフィニッシャーとして《濁浪の執政》が採用されています。Izzet Ragavanと違って軽い呪文が少ないので早い段階でのプレイは難しいですが、《呪文貫き》や《狼狽の嵐》といった対策カードに引っかからず、《虚空の杯》で《衝撃の足音》を封じられた際のフィニッシャーとして活躍が期待できます。
メインから《否定の力》を4枚採用しているので《不屈の独創力》デッキに強く、サイドからは《ドワーフの鉱山》を封じる《血染めの月》も投入されます。この大会でも《不屈の独創力》デッキに対して6-1という戦績を残しています。
5C Elementals
MOの強豪プレイヤーとしても知られているMarkus Leicht(@RespectTheCat90)は、《巨智、ケルーガ》を「相棒」として採用した5C Elementalsを持ち込み見事に優勝を果たしました。
多色ミッドレンジは《不屈の独創力》デッキを苦手としていましたが、新戦力である《機械の母、エリシュ・ノーン》を獲得したことで改善されています。
《魂の洞窟》のおかげでIzzet Ragavanなどカウンターを多用するフェアデッキに強く、多色デッキなことを活かして《時を解す者、テフェリー》や《鏡割りの寓話》といった各色の優秀なカードが使えるところがこのデッキの強みです。
☆注目ポイント
「相棒」にするためには、土地以外のカードがすべて3マナ以上でなければならない《巨智、ケルーガ》を採用しているため、一般的なリストと異なり《レンと六番》が使えません。そのため、安定して土地を並べるために枚数も26枚と多めです。
《巨智、ケルーガ》によるデッキ構築の制限は「続唱」デッキと似ているため、このデッキでも除去や妨害として《火/氷》《死亡/退場》《力線の束縛》といったカードを活用することで補っています。
《機械の母、エリシュ・ノーン》は各種エレメンタルクリーチャーのETB能力や《力線の束縛》《巨智、ケルーガ》などの能力が追加で誘発し、相手は誘発しなくなるので《不屈の独創力》デッキや同型などさまざまなマッチアップで活躍します。
サイドの追加の除去も《名誉回復》や《残忍な切断》といった3マナ以上のものが採用されています。特に《残忍な切断》は《濁浪の執政》や《機械の母、エリシュ・ノーン》《原始のタイタン》など環境の多くの脅威に対する解答になります。
総括
Izzet Ragavanは現環境でもっともポピュラーなアーキタイプですが、今回取り上げた大型イベントではプレイオフに不在など勝ち切れていないようです。
同じく人気な《不屈の独創力》デッキは優勝こそ逃しているものの、安定した成績を残し続けています。対策としては《血染めの月》が有効ですが、宝物・トークンやサイドの《豊かな成長》で乗り越えられることもあるため、《万物の姿、オルヴァール》がオススメです。
USA Modern Express vol.93は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!