はじめに
みなさんこんにちは。
《表現の反復》と《白羽山の冒険者》が禁止されガラリと環境が変わったレガシーですが、みなさんはどうお過ごしですか?
今回の連載では、Legacy Challengeの入賞デッキを見ながら禁止後の環境を解析していきたいと思います。
Legacy Challenge 3/25
石鍛冶の復権?
2023年3月25日
- 1位 Jeskai Stoneblade
- 2位 Izzet Delver
- 3位 8 Cast
- 4位 Cephalid Breakfast
- 5位 Reanimator
- 6位 8 Cast
- 7位 Izzet Delver
- 8位 Mono Black Depths
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禁止改定から1か月が経ちましたが、ここ数週間は《石鍛冶の神秘家》を採用したデッキの台頭が印象的でした。《石鍛冶の神秘家》自体は禁止改定前の環境でもCephalid BreakfastやDeath and Taxesなど一部のデッキで見られましたが、Jeskaiなど青いフェアデッキでの採用は旧環境では非常にめずらしいものでした。
Delver系は健在であり、弱体化はしたものの結果を残し続けています。旧環境でも活躍していた8 CastやReanimator、Cephalid Breakfast なども存在し、禁止改定後のレガシーは混沌としています。
デッキ紹介
Jeskai Stoneblade
今大会で優勝したのは『ファイレクシア:完全なる統一』統率者デッキの新カードである《語り部の杖》をフィーチャーしたJeskai Stonebladeでした。
禁止改定前の環境では、Jeskai系のミッドレンジ/コントロールは《表現の反復》を使うIzzet Delverとの消耗戦で苦戦を強いられ、さらに相性が悪い「イニシアチブ」デッキの存在もあり活躍する機会に恵まれませんでした。しかし、それらのデッキが弱体化したため復権を果たしました。
今回のリストは、カードアドバンテージを稼ぎつつ相手の脅威を捌いていくコントロール寄りな構築になっており、ロングゲームに強くなっています。
☆注目ポイント
《語り部の杖》はキャントリップ付きの3マナ1/1飛行トークンとして扱うことができます。このデッキは特にトークン戦略に特化はしてないものの、《サメ台風》など付随的なトークン生成カードが採用されているため、強力なアドバンテージ源として機能します。また《濁浪の執政》に対するブロッカーとしても使うことができ、装備品の対象にもなるため地味ながら優秀です。
《石鍛冶の神秘家》は除去されやすいのが難点ですが、カードアドバンテージを生み出し放っておくと《殴打頭蓋》や《カルドラの完成体》といった強力な装備品でプレッシャーをかけることができます。インスタントタイミングで装備先を用意できる《サメ台風》との相性も良いです。
《謙虚》は4マナと重いため最近のレガシーではあまり見かけることのないカードでしたが、このデッキが苦戦を強いられるSneak and ShowやReanimatorといったデッキに高い効果が期待できます。また、相手を弱体化させてこちらは装備品によってサイズで競り勝つことが可能です。
サイドからは《溶融》や《血染めの月》など赤い対策カードが多く採用されています。これは主に、禁止改定後の環境に多い8 CastやLands、多色コントロールなどをマークしたものとなります。
Legacy Showcase Qualifire 4/2
勝ち続けるJeskai Control
2023年4月2日
- 1位 Jeskai Control
- 2位 Stiflenought
- 3位 Doomsday
- 4位 Temur Delver
- 5位 Reanimator
- 6位 Reanimator
- 7位 Helm Combo
- 8位 8 Cast
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最終シーズンに開催される『Showcase Qualifier』は、『Showcase Challenge』でプレイオフにまで勝ち残ったプレイヤーと、ラストチャンス予選を勝ち抜いたプレイヤーのみが参戦できる小規模ながらレベルの高いイベントです。
多種多様なデッキが結果を残しており、禁止改定後のレガシー環境を定義するような結果になりました。
最終的に優勝したのは、《一日のやり直し》+《船殻破り》《覆いを割く者、ナーセット》コンボを搭載したJeskai Controlでした。
デッキ紹介
Jeskai Control
《一日のやり直し》+《船殻破り》コンボと《時を解す者、テフェリー》や《放浪皇》など、強力なプレインズウォーカーを搭載したJeskai Control。基本的に青白でサイドの《紅蓮破》や《溶融》《血染めの月》といった特定のデッキに刺さるカードのために赤をタッチしています。
《一日のやり直し》コンボを搭載したJeskaiは旧環境でも一定数見られましたが、《表現の反復》を備えたDelverとのマッチアップに苦戦を強いられていました。
コンボを使用する最大の利点は、ほかのコンボデッキに対してプロアクティブなプランを取りやすいことです。Sneak and ShowやDoomsdayなど環境の多くのコンボデッキは《渦まく知識》などドロースペルを使用するため、《船殻破り》や《覆いを割く者、ナーセット》は単体でも効果的です。
☆注目ポイント
コンボパーツの《覆いを割く者、ナーセット》は、相手の追加のドローを制限しつつキーカードの《一日のやり直し》を探し出すことができます。また《時を解す者、テフェリー》の[+1]能力によって、相手のターンにも《一日のやり直し》をプレイすることができるようになります。
《放浪皇》は《紅蓮破》に引っかからない脅威で《一日のやり直し》を決めた後に速やかにゲームを終わらせます。
《激しい叱責》は主に《ウルザの物語》の構築物・トークン対策になります。《不毛の大地》を採用していないので、《ウルザの物語》を対策することは重要です。《タッサの神託者》なども対策でき、《時を解す者、テフェリー》の[-3]能力で再利用することが可能です。
《至高の評決》はDelver系、Elves、Death and Taxesなど多くのマッチで役に立ちます。《意志の力》の代用コストにもなるので、コンボデッキなどクリーチャーを使用しないマッチアップでも無駄になりにくいところが《終末》よりも優秀な点です。カウンターされないのもDelver系とのマッチアップでは重要になります。
Temur Delver
新環境でもDelver系は健在です。《表現の反復》が禁止になったことで、手軽にアドバンテージを取る手段を失ったDelverをどのように調整していくのかが課題になっていました。
新たなアドバンテージ源として《予報》や《無謀なる衝動》などが試されており、リストによっては《第三の道の偶像破壊者》を採用して横に並べる戦略を取ったものもありさまざまなバリエーションが見られます。MOの大会で結果を残しているバージョンは、《タルモゴイフ》や《時を超えた英雄、ミンスクとブー》を採用したティムール型が多いようです。
メインではアドバンテージを獲得する手段は皆無で、1マナ域のクリーチャーと《タルモゴイフ》で早い段階からプレッシャーをかけていき、カウンターや火力でバックアップしていきます。
☆注目ポイント
ティムールとはいっても、緑はメインの《タルモゴイフ》とサイドの《時を超えた英雄、ミンスクとブー》と必要最低限に留まっています。色を足すことで《不毛の大地》に弱くなるリスクがありますが、《タルモゴイフ》は同型で除去されにくい脅威として活躍します。また、過去のリストにはなかった《ミシュラのガラクタ》のおかげでクロックのスピードも上がっています。
《時を超えた英雄、ミンスクとブー》は歴代でも最高クラスのプレインズウォーカーです。多角的に攻めることが可能になり、《剣を鍬に》や《虹色の終焉》といった白い除去を多用するデッキとのマッチアップでも活躍します。
メインから採用されている追加のカウンターの《呪文貫き》は、環境が変化した結果増加したコンボやJeskai Controlなど多くのマッチアップで有用です。強豪プレイヤーが集う大会ということで、青いデッキとのマッチアップを想定し《紅蓮破》もメインから採用されています。
Legacy Challenge 4/8
禁止改定後も健在のイニチアチブ
2023年4月8日
- 1位 Elves
- 2位 Boros Initiative
- 3位 Jeskai Control
- 4位 Death and Taxes
- 5位 Izzet Delver
- 6位 8 Cast
- 7位 8 Cast
- 8位 Elves
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土曜日に開催されたLegacy Challengeでもっとも印象的だったのが、新環境向けに調整されたBoros Initiativeが準優勝していたことでした。
《白羽山の冒険者》が禁止になったことで白系の「イニシアチブ」デッキは衰退したと思われていましたが、《混沌の洞窟の冒険者》のために赤をタッチしたバージョンが新環境の主流になっています。
デッキ紹介
Boros Initiative
主力だった《白羽山の冒険者》を失っても「イニシアチブ」というメカニズム自体は強力なことに変わりなく、禁止改定後の環境でも結果を残せるほどのデッキパワーであることが証明されました。
新環境では追加の「イニシアチブ」クリーチャーとして《混沌の洞窟の冒険者》が採用され、《水蓮の花びら》や《金属モックス》といったマナアーティファクトや《猿人の指導霊》を使って1ターン目から「イニシアチブ」クリーチャーを展開するという動きも健在です。
構造上「イニシアチブ」を奪い返すことが困難なコントロールと相性が良く、特に最近復権してきているJeskai Controlにも有利です。
☆注目ポイント
《精鋭呪文縛り》《混沌の洞窟の冒険者》《練達の地下探検家》《選定された平和の番人》とデッキ内の主力クリーチャーが人間で統一されているため、《魂の洞窟》の恩恵を受けれるようになっています。その分人間でない《エメリアのアルコン》が少し出しづらくなっていますが、レガシーにおいて強力な妨害能力を持つのでメインからフル搭載されています。
「イニシアチブ」を守ることも重要なので除去は必須です。メインでは《虚空の杯》が採用されているため、《孤独》や《精霊界との接触》といった除去が中心で《剣を鍬に》はサイドに採用されています。
サイドには相性の悪いPainter対策として《ガイアの祝福》が採用されています。こちらのクリーチャーよりもサイズで勝るトークンを生み出す《ウルザの物語》には、《月の大魔術師》で対応します。
Legacy Challenge 4/9
やはり強いイニチアチブ
2023年4月9日
- 1位 Echo Storm
- 2位 Elves
- 3位 Jeskai Control
- 4位 8 Cast
- 5位 Oops! All Spells
- 6位 Boros Initiative
- 7位 Boros Initiative
- 8位 White Initiative
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土曜日のLegacy Challengeでの準優勝というパフォーマンスは決して偶然ではなく、日曜日では「イニシアチブ」デッキがプレイオフに3名入賞という強さを見せました。
一方でDelver系はトップ32まで見渡しても不在と振るわず、《表現の反復》なしに復権してきたJeskai Controlと渡り合うのは厳しいようです。
Delver系が弱体化したことで勝ち残っているのはコンボデッキです。Delver系よりもクロックが遅いJeskai Controlに有利なこともあり、コンボにとって有利な環境になっています。
デッキ紹介
Jeskai Control
《表現の反復》と《白羽山の冒険者》が禁止になったことで、大きな恩恵を受けたデッキがJeskai Controlです。禁止改定前の環境ではDelver相手にリソース負けもありましたが、弱体化したことに加えて《語り部の杖》という新戦力を得て復権を果たしました。
《石鍛冶の神秘家》や《一日のやり直し》など青白ベースのデッキの活躍が見られますが、今回は《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》と《放浪皇》といったトークンを生成できるプレインズウォーカーと《語り部の杖》を用いたコントロールが結果を残しています。
毎ターン追加ドローが決まれば、Delverをはじめとしたフェアデッキに対して無類の強さを見せます。しかしコンボ相手には遅く、旧環境と同様に復権してきた「イニシアチブ」デッキに対しても厳しいマッチを強いられるため対策を厚くする必要があります。
☆注目ポイント
《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》と《放浪皇》は《語り部の杖》とシナジーがあり、特にギデオンは《至高の評決》で相手の場を更地にしたあとに速やかにフィニッシュを決めてくれます。
《セヴィンの再利用》は《紅蓮破》など青対策に引っかからないため、Jeskai同型とDelver系などフェアデッキとのマッチアップで活躍します。
特殊地形対策の枠は《血染めの月》が一般的ですが、Landsや12Post、Darkdepthsなどは《耐え抜くもの、母聖樹》で対処してくることも多く、フェッチランドが使えなくなってしまうリスクもあるため《破滅》が選択されています。
《謙虚》は、このデッキが苦手とする「イニシアチブ」デッキとのマッチアップを含めた多くのマッチアップで使えるエンチャントで、環境によってはメインからも採用できそうです。
Echo Storm
《ギャンブル》と《隔離用構築物》《謎鍛冶》を活用したコンボデッキでGamble Stormとも呼ばれています。このデッキの動きは、《謎鍛冶》が場にある状態で0マナアーティファクトを複数回プレイしてカードを引き、最終的に《ぶどう弾》でゲームを決めます。
クロックが遅く除去など不要牌になりやすいカードが多いJeskai Controlなどは有利なマッチアップとなるため、こういったチェインコンボ系のデッキは現環境ではいい立ち位置にあります。
☆注目ポイント
《隔離用構築物》はこのデッキのキーカードです。捨てたカードを再利用する能力を利用することで、《謎鍛冶》は強力なドローエンジンとして《ギャンブル》は1マナのサーチスペルとして機能します。《隔離用構築物》が場にいれば《打開》も1マナ4ドロースペルになります。
このデッキの《ライオンの瞳のダイアモンド》は《永劫のこだま》とのコンボ用のマナアーティファクト以上の働きをします。《隔離用構築物》と組み合わせることで、実質《Black Lotus》として機能します。
《ウルザの物語》はフィニッシャー級の構築物・トークンを容易に生成することができるだけでなく、コンボパーツの《ライオンの瞳のダイアモンド》をサーチできる重要なカードです。《ライオンの瞳のダイアモンド》をできる《マイコシンスの庭》も採用されています。《ライオンの瞳のダイアモンド》はマナ能力を起動するためにタップを必要としないため、コピーしてすぐに起動できます。
総括
禁止改定によって環境が変化してさまざまなデッキが見られるようになりました。特に前環境から強かった8 Castはほぼ毎回入賞しているため、《溶融》などアーティファクト対策は必須です。フェアデッキではJeskai Controlで特に《語り部の杖》を採用した形が結果を残しています。しかし、先週末の『Legacy Challenge』ではコントロールにとって相性が悪い「イニシアチブ」デッキが復権していたため環境に合わせた調整が必要になりそうです。
ほかにはReanimator、Cephalid Breakfast、Elvesなども結果を残しています。Delverも緑をタッチしたバージョンや《表現の反復》に変わるアドバンテージ源として《予報》や《無謀なる衝動》を採用したバージョンも見られます。
USA Legacy Express vol.215は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!