はじめに
3月に発表された禁止改定から時間が経ち、レガシーの環境は大きく変わっています。イゼットデルバーとイニシアチブのみが支配していた時代は過ぎ去り、ありとあらゆるアーキタイプにチャンスが巡ってきています。レガシーは今まさに、群雄割拠の時代を迎えているのです。
そんな折に開催された『第22期レガシー神挑戦者決定戦』。前回までと違って明確な仮想敵が存在しない中で、参加者たちはどんなデッキを選択したのでしょうか。
今回は同大会のメタゲームブレイクダウンを振り返っていきます。
メタゲームブレイクダウン
デッキタイプ | 使用者数 | トップ16 |
---|---|---|
リアニメイト | 23 | 0 |
スニークショー | 21 | 2 |
イゼットデルバー | 20 | 2 |
ディミーアシャドウ | 12 | 0 |
イニシアチブ | 10 | 1 |
ANT | 10 | 1 |
8 Cast | 9 | 2 |
ドゥームズデイ | 9 | 1 |
ティムールデルバー | 8 | 1 |
エルフ | 8 | 1 |
ジェスカイコントロール | 8 | 1 |
オムニテル | 8 | 0 |
多色コントロール | 7 | 0 |
《石鍛冶の神秘家》 | 7 | 0 |
赤単プリズン | 6 | 0 |
赤単ペインター | 5 | 1 |
Death and Taxes | 5 | 0 |
アルーレン | 5 | 0 |
Lands | 5 | 0 |
その他 | 53 | 3 |
合計 | 239 | 16 |
(編集者注:使用者数4名以下のデッキは「その他」に計上しています。)
《表現の反復》の消失により、勢力図は大きく塗り替えられました。イゼットデルバーが弱体化したことでコンボデッキは最盛期を迎えており、今大会では使用者数二桁以上のデッキの内、半数を占めているほどでした。リアニメイトやスニークショーといった踏み倒し型のコンボデッキに人気が集中しており、オムニテルまで含めれば実に参加者の5人に1人がこの戦略を選択していたことになります。
メタゲームの変化に加えて、これら踏み倒しに共通しているのが《偉大なる統一者、アトラクサ》の存在です。タイトなダメージレースを繰り広げるデルバーマッチにおいてライフを気にせず無条件でアドバンテージを獲得できるため、スニークショーの固定枠であった《グリセルブランド》からその座を奪ってしまったほど。イゼットデルバーの弱体化と《偉大なる統一者、アトラクサ》の加入が相まって、メタゲームに化学変化がもたらされたのです。
《偉大なる統一者、アトラクサ》視点でみると、同カードをメインボードに1枚以上採用していたのは51名にものぼります。リアニメイトやスニークショー以外にも、エルフやバントオーダーなどの《自然の秩序》パッケージでも採用されていました。
メタゲームの最上位デッキ名にイゼットデルバーの名前がないのはいつ以来でしょうか。一時的に白単イニシアチブと人気を二分していたとはいえ、長らく環境最強を謳っていたデッキがその座を明け渡しています。それでも3番手に位置するあたり、デルバー人気に陰りなしといったところでしょう。
《白羽山の冒険者》を失った白単イニシアチブは多色化路線へと舵を切り、存続しています。ですが、コンボデッキの増加から立ち位置は悪化しており、禁止改定の影響は色濃く反映されているようです。
ほか《死の影》やANT、8 Cast、ドゥームズデイなど《表現の反復》禁止の影響を受けないカウンター入りのアグロ、もしくはコンボデッキが続きます。デルバーの減少とコンボデッキの増加からコントロールデッキは有利な立ち位置にいるとはいえず、少数にとどまっています。
弱体化したデッキの今
では、イゼットデルバーと白単イニシアチブはどのように構築を変えたのでしょうか。
デルバー
イゼットデルバーに求められたのは戦略自体の見直しです。《表現の反復》を失ったことでリソースゲーム自体を諦め、テンポゲームを主体とした構築がみられました。1マナ域から展開をはじめて、伝統的な《もみ消し》&《不毛の大地》によるマナディストラクション戦略や《稲妻の連鎖》などの火力でサポートしていくわけです。
クロックとして追加されていたのは《第三の道の偶像破壊者》や《タルモゴイフ》といった2マナクリーチャー。さらには少量ですが、《厚かましい借り手》や《真の名の宿敵》の採用も目立ちました。安定したリソース確保が難しいならば、ゲームレンジ自体を短くし、カードの賞味期限内での決着を試みていたのです。
とはいえ、手慣れた戦略をそう簡単に諦めきれないのがマジックというもの。広大なレガシーのカードプールならば《表現の反復》の代替品もあるはずと考えたプレイヤーも一定数いました。
《予報》や《航路の作成》など《表現の反復》と同じ2マナのドローソースを採用した構築も散見されました。ただし、いずれのカードもアドバンテージを獲得するには一工夫必要であり、五分以上の状況が求められます。これ単体に劣勢を覆すほどのパワーはなく、現在のところテンポ寄りの構築が優勢となっています。
イニシアチブ
イニシアチブ戦略は「イニシアチブ」持ちのクリーチャーを早期にプレイできるかによって勝敗が左右されます。その意味で3マナと4マナの差は大きく、《白羽山の冒険者》は唯一無二のカードでした。今後は《古えの墳墓》+《金属モックス》に加えて、さらに1枚のマナソースを必要とするのですから。
まず候補に上がったのは《混沌の洞窟の冒険者》有する赤。マナ加速である《猿人の指導霊》を採用でき、《鏡割りの寓話》や《激情》などのグッドスタッフがそろっています。禁止改定前から少数ながらボロス型も存在していたことを踏まえ、最有力候補に思えました。
しかし、ここで「イニシアチブ」戦略に疑問が生じます。そもそも2色で構築するならば《白羽山の冒険者》のない白を使うメリットはあるのでしょうか?
そこで白羽の矢が立ったのが緑です。《アンダーマウンテンの冒険者》は警戒により「イニシアチブ」を巡る攻防で活躍します。《エルフの指導霊》を採用することで《猿人の指導霊》と合わせて8枚体制とし、早期に4マナ域へ到達できるように構築されています。
《むかしむかし》はこのデッキにおける潤滑油であり、必要に応じてマナソースや「イニシアチブ」へとアクセスできます。《時を超えた英雄、ミンスクとブー》は別角度の脅威であり、ほかの色にはないメリットとなります。
今が旬、コンボ!
イゼットデルバーの衰退によりチャンスが巡ってきたのがコンボデッキです。墓地を中継するかどうかで分かれるものの、リアニメイト、スニークショーといずれも《偉大なる統一者、アトラクサ》をゴールとして構築されています。《グリセルブランド》と違い、ライフが減った状態でもアドバンテージを獲得できるという明確なメリットが存在します。
《納墓》と《再活性》。リアニメイト戦略ならばわずか2マナで、さらに最速タイミングで《偉大なる統一者、アトラクサ》の着地を狙えます。全体的にコンボパーツが軽いため仕掛ける際に手札破壊をはさむマナ的余裕があり、コンボの確実が高いのも魅力です。
マナコストはやや高いものの、《騙し討ち》は召喚酔いを無視して攻撃可能です。ターンをまたがずに《引き裂かれし永劫、エムラクール》でボードを半壊させたり、《偉大なる統一者、アトラクサ》でダメージレースをまくったりと、コンボスタートが遅れたとしても強引にボードの主導権を取り返せるのです。
踏み倒し系のコンボデッキと比べて難解ながら、好ポジションに位置しているのがANTやドゥームズデイです。リアニメイトなどと違い、戦闘を経由せず勝敗が決するため、打ち消し呪文など対処手段が非常に限られます。イゼットデルバーに代表される軽量クロック+妨害デッキを苦手としていたものの、《表現の反復》の禁止により、相性差は大きく改善されています。
総括
レガシーから《表現の反復》と《白羽山の冒険者》が去ったことで、メタゲームは大きく変化しました。現在のメタゲームの中心はコンボデッキですが、各種デルバーやデスシャドウなどクロックパーミッション戦略も一定数存在しており、予断を許さない状況です。コントロール戦略が低調なのもふまえて、今後もコンボとクロックパーミッションが牽引していくと思われます。