USA Modern Express vol.95 -決戦後のモダンは今-

Kenta Hiroki

はじめに

こんにちは。

ゴールデンウィークでは、みなさんモダンを楽しめましたでしょうか。

今回の連載では『第23期モダン神挑戦者決定戦』と『Modern Challenge』の入賞デッキを見ていきたいと思います。

第23期モダン神挑戦者決定戦
神の創造力

2023年5月4-5日

  • 1位 5C Creativity
  • 2位 Izzet Breach
  • 3位 5C Creativity
  • 4位 Tron
  • 5位 Hammer Time
  • 6位 4C Omnath
  • 7位 Tron
  • 8位 Azorius Control

トップ8のデッキリストはこちら

ゴールデンウイーク中に開催された『第23期モダン神挑戦者決定戦』は、一番人気のある構築フォーマットであるモダンらしく参加者254名と大盛況でした。

現環境のトップメタである5C Creativityが優勝し、神決定戦もミラーマッチという結果になりました。

デッキ紹介

5C Creativity

5C Creativityはモダンでもっとも優秀なスペルを使うコンボデッキです。デッキの動き自体はそれほど複雑ではなく、《不屈の独創力》から《残虐の執政官》を高速で出すのが主な目的です。

《レンと六番》によって土地を安定して伸ばしやすく、十分な枚数の妨害スペルも採用されているため《残虐の執政官》を普通にプレイすることもできます。また、対戦相手は常に《不屈の独創力》を意識する必要があるため、積極的なプレイングが難しくなります。

血染めの月

現環境のデッキとのマッチアップですが、Izzet Ragavanは《残虐の執政官》で負けることを防ぐために常に保守的なプレイングを強いられます。フィニッシャーの《濁浪の執政》に対しても《力線の束縛》という明確な解答が用意されているため、《血染めの月》にさえ気をつければ有利なマッチアップです。

衝撃の足音死せる生

Temur CascadeやLiving Endといった「続唱」デッキは、《否定の力》でバックアップしつつ、このデッキよりも速いターンから仕掛けてくるので難しいマッチアップになります。また、Temur Cascadeもサイド後に《血染めの月》を投入してくるため、気をつけておきたいところです。

☆注目ポイント

呪文貫き

《時を解す者、テフェリー》《血染めの月》などモダンには脅威となるスペルが多数存在します。4枚採用された《呪文貫き》はそれらを1マナで処理できるだけでなく、相手のカウンターから《不屈の独創力》コンボを守ることができる重要なスペルです。

プリズマリの命令鏡割りの寓話

《プリズマリの命令》除去・手札入れ替え・《不屈の独創力》用のトークン生成と非常にデッキに噛み合っており、アーティファクト破壊も環境に多い《ウルザの物語》を使ったデッキ相手に活躍します。

《鏡割りの寓話》から出るトークンは宝物まで生成してくれるため、X=2の《不屈の独創力》を決めやすくなります。《血染めの月》を置かれても、宝物さえあればなんとか動けます。

耐え抜くもの、母聖樹神聖なる月光

サイドの《耐え抜くもの、母聖樹》は、《血染めの月》を使ってくるデッキやHammer Time、Amulet Titan相手に有効です。《神聖なる月光》は同型やTemur Cascade、Living Endなど多くのマッチアップで活躍します。

Tron

今大会で2名の入賞者を出したTron。Tronはモダン初期から存在する古株で、かつてはフェアデッキを脅かす土地コンボでした。最近は速度で勝るHammer Timeや《ドラゴンの怒りの媒介者》《敏捷なこそ泥、ラガバン》といった規格外の1マナ域の脅威によって厳しくなりましたが、現在でも結果を残し続けています。

デッキの基本的な動きは変わらず、《森の占術》《探検の地図》でトロンランドをそろえて《絶え間ない飢餓、ウラモグ》で勝利します。《大いなる創造者、カーン》から状況に応じたアーティファクトをサーチすることができ、最近のセットからの収穫も多く強化されています。

☆注目ポイント

Cityscape Leveler

《街並みの地ならし屋》は最近加わった新戦力です。《絶え間ない飢餓、ウラモグ》と同様にプレイした際に能力が誘発するのでカウンターに耐性があり、「蘇生」持ちなのでIzzet RagavanやAzorius Controlといったフェアデッキにとって大きな脅威となります。

Warping Wail

《不屈の独創力》をはじめとして、《表現の反復》《衝撃の足音》《死せる生》など現環境の多くの重要なスペルはソーサリーです。それらをカウンターしつつ、《敏捷なこそ泥、ラガバン》《帳簿裂き》といったクリーチャーも除去できる《歪める嘆き》は、かなり優秀なのでメインに4枚採用も納得です。

The Stone BrainHaywire Mite

サイドボードでは《石の脳》がコンボ対策として採用されています。マナが大量に出るこのデッキならば起動コストもそれほど気にならず、独創力コンボとのマッチアップでは《残虐の執政官》《不屈の独創力》を指定することで大きく減速させることができます。

《機能不全ダニ》《敏捷なこそ泥、ラガバン》と交換することができ、各種《ウルザの物語》デッキや天敵の《血染めの月》対策にもなる大変優秀なクリーチャーです。このデッキ相手には除去を減らしてくるので、生き残りやすいのもポイントです。

Modern Challenge 5/12
『機械兵団の進軍:決戦の後に』からの新戦力

2023年5月12日

  • 1位 Rakdos Grief
  • 2位 Amulet Titan
  • 3位 4C Omnath
  • 4位 Colorless Tron
  • 5位 Rakdos Grief
  • 6位 Temur Cascade
  • 7位 Glimpse Combo
  • 8位 Living End

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今大会のプレイオフではCreativity Comboが不在で、Living EndやTemur Cascadeといった「続唱」デッキやRakdos Griefなどが中心になっています。『機械兵団の進軍:決戦の後に』で登場した《復活した精霊信者、ニッサ》をフィーチャーした多色ミッドレンジも結果を残しています。

デッキ紹介

4C Omnath

《創造の座、オムナス》と各種インカーネーションを採用した多色ミッドレンジ。さっそく新セットから《復活した精霊信者、ニッサ》が採用されています。

優秀なピッチエレメンタルと多色デッキ定番の除去である《虹色の終焉》《力線の束縛》により、パーマネントデッキに対してかなり強く戦えます。

☆注目ポイント

エラダムリーの呼び声

除去が満載なのでクリーチャーデッキに強く、《孤独》《激情》《エラダムリーの呼び声》でサーチできます。また、《エラダムリーの呼び声》は墓地対策の《忍耐》もサーチしてこれるので、Living Endなど墓地デッキ相手にもメインから対抗できます。

Nissa, Resurgent Animist

『機械兵団の進軍:決戦の後に』で登場した《復活した精霊信者、ニッサ》は、フェッチランドをプレイする度にマナを出しつつカードアドバンテージも得られる強力なカードです。手に加わるカードはどれも強力で、相手にとって放置できるクリーチャーではありません。

Elesh Norn, Mother of Machines

《機械の母、エリシュ・ノーン》は、《空を放浪するもの、ヨーリオン》を失って弱体化を強いられたこのデッキの復権の大きな助けになりました。同型やAmulet Titanなど多くのデッキをメインから対策でき、タフネスが7もあるので火力系の除去に耐性があります。《孤独》《力線の束縛》も使えないため、対策する手段が限られているのも強みです。

Modern Challenge 5/13
Hardened Scalesが復権

2023年5月18日

  • 1位 Sultai Shadow
  • 2位 Hardened Scales
  • 3位 4C Creativity
  • 4位 5C Creativity
  • 5位 Hardened Scales
  • 6位 Hardened Scales
  • 7位 Rakdos Grief
  • 8位 Rakdos Grief

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『機械兵団の進軍』からの新カードである《打ち砕かれた尖塔、オゾリス》によって強化された、Hardened Scalesがプレイオフに3名の入賞者を出す活躍をしていました。

そして優勝したのは《イコリアへの侵攻》を軸にしたSultai Shadowでした。

デッキ紹介

Hardened Scales

《硬化した鱗》《搭載歩行機械》《歩行バリスタ》といった+1/+1カウンターを使ったカードによるシナジーを軸にしたアグロデッキ。『モダンホライゾン2』から《微光蜂、ザーバス》《ウルザの物語》といった新戦力が登場したことで活躍が期待されていましたが、最近は《虹色の終焉》《力線の束縛》など優秀な除去が散見されるため、あまり見られなくなっていました。

『機械兵団の進軍』から追加の《硬化した鱗》として機能する《打ち砕かれた尖塔、オゾリス》が登場したことによって強化され、今大会で好成績を残すなど復権の兆しを見せています。

☆注目ポイント

Ozolith, the Shattered Spire

《打ち砕かれた尖塔、オゾリス》はクリーチャーでないアーティファクトの+1/+1カウンターも倍増させることができ、自身の能力によって2マナで+1/+1カウンターを2個乗せることができます。《硬化した鱗》よりも1マナ重く伝説であるため複数並べられないのがネックとなりますが、「サイクリング」付きなので手札に複数来てしまっても問題になることはなさそうです。

ウルザの物語

このデッキの《ウルザの物語》は非常に強力です。アーティファクトが多いのでフィニッシャー級のトークンを生成することができ、《オゾリス》《溶接の壺》といったカードを状況に応じてサーチできます。

Sultai Shadow

見事に優勝したのは『機械兵団の進軍』の《イコリアへの侵攻》を軸にした《死の影》デッキでした。

メインから採用されている《吸血鬼の呪詛術士》《激しい叱責》によって、今大会で複数いたHardened Scalesに強い構成になっています。実際、準々決勝と決勝戦でHardened Scalesを破っての優勝です。

☆注目ポイント

ウルヴェンワルド横断タルモゴイフ

《ミシュラのガラクタ》《イコリアへの侵攻》《飢餓の潮流、グリスト》《激しい叱責》といった複数のカードタイプを採用しているため、《ウルヴェンワルド横断》の「昂揚」の条件を満たすのも容易です。また、《タルモゴイフ》が早い段階からパワー5以上のサイズにまで成長します。

Invasion of IkoriaVampire Hexmageドライアドの東屋

新カードの《イコリアへの侵攻》は、表面は《破滅の終焉》に近い能力で、《吸血鬼の呪詛術士》をサーチしてカウンターを取り除けば即座に変身可能です。《吸血鬼の呪詛術士》とのコンボ以外でも3マナで《死の影》をサーチしてくることができ、《死の影》の一度の攻撃で容易に《イコリアへの侵攻》を変身させることができます。ほかにも、マナが必要なら《ドライアドの東屋》を持ってきたり、《飢餓の潮流、グリスト》もサーチしてくることができたりと普通に使っても十分に強いカードです。

激しい叱責死の影

メインから3枚と多めに採用された《激しい叱責》は、《ウルザの物語》デッキなど多くのデッキに有効であり、このデッキでは《死の影》とのコンボで一時的に13/13にすることができます。

総括

不屈の独創力衝撃の足音敏捷なこそ泥、ラガバン悲嘆

Creativity Combo、Temur Cascade、Izzet Ragavan、Rakdos Griefは依然として人気があり、大きなイベントに参加する際はそれらのデッキの動きをしっかりと理解しておく必要があります。

Rakdos Griefは現在ではIzzet Ragavanよりも上位で見られるようになりました。また、ほかのコンボデッキやミッドレンジに対して速度で勝負ができるLiving Endも一定数見られます。

多くのプレイヤーによって『機械兵団の進軍』と『機械兵団の進軍:決戦の後に』のカードが試されており、新カードを採用した4C Omnath、Hardened ScalesやSultai Shadowなどが結果を残していました。今後、新カードを使ったアーキタイプが勝ち組になるのか要注目です。

USA Modern Express vol.95は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!

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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら