モダンの最前線に迫る
お疲れ様です。てんさいチンパンジー(@tensai_manohito)です。
前回の記事で「プロツアーの権利が取れた」とお伝えしましたが、諸事情により参加を断念しました。無念。
ただ、前々から時間ができたときにモダンのデッキを片っ端から練習したいと思っていたので、せっかくなのでこのタイミングでいろんなデッキを使ってみました。モダンは『モダンホライゾン2』リリース以降、各アーキタイプの進化こそはあるものの、大まかなアーキタイプの変化がありませんでした。特に環境上位のデッキは長い時間を掛けて洗練されている=完成度が高く、そこから学べるものも多いだろうと思った次第です。
前置きが長くなりましたが、今回は「モダンの最前線に迫る!」と称して、私のモダン備忘録になります。環境上位のデッキを中心に、いくつか気になるデッキやテストした感想などをつらつらと語っていきます。
イゼットマークタイド
最近こそ独創力コンボの勢いに押されつつありますが、いまだにモダン最強デッキとして頂点に君臨しています。
イゼットマークタイドが特に優れている点は、“苦手”なデッキはあっても”無理”なデッキがないところです。極端な話、すべてのデッキに対して五分近い勝率が期待できます。
たとえばヨーグモス医院。「不死」クリーチャー+《飢餓の潮流、グリスト》で地上のクリーチャーや後出しクロックも妨害されやすく、《忍耐》で墓地も対策されてしまったりとなかなか上手く立ち回らせてもらえません。しかし、ヨーグモス医院側がマナクリーチャー+《スランの医師、ヨーグモス》のような手札でキープした際に対しては、《敏捷なこそ泥、ラガバン》を絡めた除去や打ち消しでハメやすいです。
たとえば4色オムナス。カードを交換し続けると最終的には押し潰される、典型的な“重いミッドレンジ”で、フェアデッキには無類の強さを発揮します。イゼットマークタイドも例に漏れずフェアデッキなので、長期戦になればなるほどキツイ展開になります。しかし、序盤の《敏捷なこそ泥、ラガバン》《帳簿裂き》のプレッシャーに押されて、タップアウトした返しに《血染めの月》が通って機能不全になったり…といった勝ちパターンが用意されています。
この“不利ながらもなんとかなるパターンがある”というのがポイントです。
これがトロン vs. ハンマータイム(《エスパーの歩哨》の返しに《彩色の星》を唱えるところをイメージしてください)や独創力コンボ vs. バーン(フェッチランド+ショックランドの構造に加えて、《不屈の独創力》のタネを焼けるカードが10枚以上入っているデッキに本当に勝てるのでしょうか?)のように、現代のモダンには本当に本当に絶対に絶対に無理!というレベルの相性差のマッチアップが存在します。
独創力コンボのように上位tierのデッキですらこのような相性差があるなかで、イゼットマークタイドにはそのレベルの不利なデッキが存在しません。ハッキリ言ってこれは異常なことです。どんなデッキに対しても4~6割で戦えるデッキが、規制されることなく存在し続けているのです。このデッキがモダン最強と謳われるのも納得でしょう。
イゼットマークタイドは軽いカードでまとめられていますが、土地は4枚まではストレートに欲しいです。この4枚という枚数は《濁浪の執政》や《帳簿裂き》といった核となるクロックを唱えつつ《対抗呪文》を構えられる枚数であり、イゼットマークタイドにおけるマジックナンバーでもあります。
ただし、それ以上は基本的には不要であり、6枚を超え始めるといよいよフラッド気味で、そこまで伸びると流石に手札の呪文が足りなくなる印象です。なので、序盤は土地として置きつつ、終盤に不要になった場合は手札に変換できる《焦熱島嶼域》はデッキに非常に合った土地です。個人的には《天上都市、大田原》より優先すべきだと考えています。
サンプルリスト
イゼットマークタイドは固定スロットが多く、回せば回すほど洗練されてこの形になったんだなと感心します。枚数配分には個人差がありますが、個人的に触れるべきではないと感じているのが《ドラゴンの怒りの媒介者》と《稲妻》です。これらが3枚に減っていたり、場合によっては媒介者が抜けているタイプもありますが、それはイマイチに感じます。
イゼットマークタイドは攻める側/守る側どちらにも立てる万能デッキですが、相手のデッキが不明である内は自分が攻める側になることが多いです。アゾリウスコントロールのように捌くカード&リソース源が大量に入っているわけではないため、守っているだけで勝つことはありません。最初は守る側であっても、いつか攻める側に移る必要があります。
そうなったときに、軽量&高速クロックの《ドラゴンの怒りの媒介者》と本体を詰められる《稲妻》の存在は非常に重要です。特に《稲妻》を複数枚引いたときにこれで詰めるゲームは非常に多いです。メインは攻める側に立てるようにしつつ、サイド後にアジャストするのが良いでしょう。
独創力コンボ
モダン最強デッキ二翼の片翼。最近はイゼットマークタイド以上の人気で勢いがあります。
ジャンド型や4色(ティムールタッチ黒)型も存在しますが、現在は5色型が主流です。イゼットマークタイドが最強デッキである以上、それに強い《時を解す者、テフェリー》や《力線の束縛》といった《濁浪の執政》《帳簿裂き》を咎められる除去を採用できるほうが良いということでしょう。
独創力コンボは名前こそコンボデッキと名乗っていますが、その実態はフェアなコントロールデッキです。最近はコンボ要素を極力排して、《虹色の終焉》や《表現の反復》といった普通に強力なカードが採用されているケースが主流です。
このコンボ型からコントロール型へシフトしていくという変化は自然に感じます。独創力コンボのシェア率が上がれば上がるほどそれに対するガードは上がるため、もともとのコンセプトである4ターン目に《不屈の独創力》を唱えてハイ勝ち!となるゲームはほとんどなくなります。結局、ゲームが長引く前提でフェアに戦わざるを得なく、その間のアクションを埋めるのに《時を解す者、テフェリー》《表現の反復》が採用されて…ということでしょう。
独創力コンボは理想的な動きをしたときとそうでないときの差が激しく、かなりムラがあります。《レンと六番》→《鏡割りの寓話》と動けたときはそのプレッシャーに耐えられず相手がタップアウトすることもしばしばありますが、ただ除去や《不屈の独創力》だけを引いている展開も頻出します。《残虐の執政官》や《ドワーフの鉱山》など、初手近辺で引いたときに実質マリガンになるカードが多く、見た目以上に安定しない印象を受けます。
サンプルリスト
《山》は不要だと思っています。バーンのような攻撃的なデッキには必要かもしれませんが、結局《力線の束縛》を除去として使う以上、《山》をフェッチランドから持って来る展開はほとんどありません。
独創力コンボは対バーン、リビングエンド、アミュレットタイタンなど、“サイドを取れば勝てるが、取らないと厳しい”というマッチアップが多いです。特にバーンは対策カードを少し引くくらいでは勝てません。ならば割り切って、五分~ちょっと不利くらいのマッチアップに枠を割いたほうがよい…ということで、専用のサイドは取っていません。ほかのマッチアップ用に《高山の月》などを優先しています。
最近は《血の墓所》を廃して《サヴァイのトライオーム》に変更しているリストもあり、なるほど賢いなと感心しました。黒マナソース自体は《残虐の執政官》のために2つは必要ですが、《血の墓所》では実質《山》としての運用になってしまうので、あまり素引きしたくない土地です。そこが《サヴァイのトライオーム》になることで、《時を解す者、テフェリー》や《虹色の終焉》といったソーサリーの白いカード+《力線の束縛》や《神聖なる月光》のようなインスタントの白いカードを同時に唱えられるようになっています。
《平地》を採用しているリストもあり、これも面白いアプローチだなと思いました。《血染めの月》の影響下でも《力線の束縛》を4マナで唱えられるようになるので、《血染めの月》を退かせるという考え方でしょう。イゼットマークタイドやカスケードクラッシュなど、そこまで早くないデッキはそれでも間に合う…という考えは理解できます。それで本当に解決しているのかはあまりイメージはできませんが、ぜひともテストしてみたいとは思えるアプローチですね。
参考記事
- 2023/01/19
- 4色型「独創力コンボ」デッキガイド ~残虐にイージーウィンしよう~
- 増田 勝仁
ラクドス想起
ミッドレンジと紹介されることが多いですが、実態はほぼコンボ(たまにミッドレンジもあるよ)くらいの認識です。リストの変遷として、一昔前に比べると土地の枚数が増えている傾向があります。もともとは18~19枚でしたが、最近は20~21枚が主流のようです。
このデッキにおける土地枚数は意外と重要で、土地が伸びるとそれだけでプランになります。初手の《激情》《悲嘆》+《フェイン・デス》だけで勝てるときもままありますが、必ずしもそうとは限りません。結局、追加の脅威を繰り出すために、結局2~3マナのカードに頼ることになります。それを実現するためにも絶対に土地は3枚以上必要になります。
疑似蘇生呪文(《フェイン・デス》《不死なる悪意》《死せざる邪悪》《マラキールの再誕》)の扱いは悩ましいところです。《悲嘆》と繋げる場合は《フェイン・デス》でも《マラキールの再誕》でもまあまあ許せますが(もちろん、《フェイン・デス》のほうが優れていることは間違いないですが)、《激情》と繋げる場合はまったく別物です。
《フェイン・デス》なら4/4となり3ターンクロックですが、《マラキールの再誕》では3/3なので4ターンクロックですし、《稲妻》でも処理されてしまうラインです。とはいえ土地が重要という話の通り、ラクドス想起における土地枚数は多ければ多いほどプランになりやすいため、可能であれば《マラキールの再誕》を優先したいという気持ちが強いです。
《死せざる邪悪》はほかの疑似蘇生呪文とは少しだけ性質が異なります。「不死」を付与するため、すでに+1/+1カウンターが乗っているクリーチャーに使うことはできません。その代わりに死亡したクリーチャーがアンタップ状態で戻る点が優れています。
すでに《フェイン・デス》などで+1/+1カウンターが乗っている場合に使えないデメリットの反面、アタック時に死亡→アンタップで戻ると再びブロックに参加させるメリットもあります。とはいえ、デメリット側のほうが目立つのか、最近はほとんど《フェイン・デス》《不死なる悪意》が優先されており、《死せざる邪悪》は採用を見送られるケースのほうが多いようです。
サンプルリスト
2パターンをテストしました。
1つ目は既存のラクドス想起をそのままのパターンです。こちらは《マラキールの再誕》は不採用です。解説した通り、+1/+1カウンターが乗らない状態での《激情》がプランにならないためです。しかし、土地は多めが良いというのも間違いありません。とにかく《歴戦の紅蓮術士》が唱えられるまでの土地は絶対に欲しいです。そのため、物理的な土地の枚数を増やすことにしました。
2つ目はもはやラクドスミッドレンジと呼んだほうが良いでしょう。ラクドス想起に進化の道が残されているとするなら、
①《フェイン・デス》のような不安要素を《マラキールの再誕》のような運用の安定したカードに差し替える
②《マラキールの再誕》とくっついたときに弱い《激情》をプランに組み込まない(採用したとしても枚数を減らす)
の2点を実現することかなと思いました。その結果がこのラクドスミッドレンジです。実際、素出しの《悲嘆》は非常に強力で、これを普通に唱えるデッキがないことが不思議に感じるほどです。
ハンマータイム
《巨像の鎚》を踏み倒すコンボデッキ。性質上、除去を《稲妻》《邪悪な熱気》に頼るデッキに滅法強く、そのような相手に対しては一度《巨像の鎚》をクリーチャーに装備できれば即ゲームセットです。
2-3ターンキルを狙う勢いもありながら継続戦闘能力もそこそこあるという、分かりやすく強力なデッキの条件を満たしています。が、結局はショートレンジのゲームが本筋であり、ロングゲームは「できる(実際はあんまりできない)」という表現になります。
パイオニアをやっている方にはアブザンパルヘリオンをイメージしてもらうと分かりやすいかなと思います。《エシカの戦車》《領事の旗艦、スカイソブリン》による素出しプランがミッドレンジに強力!という触れ込みが、ハンマータイムにおいては《石鍛冶の神秘家》《ウルザの物語》に置き換わっているイメージです。
ただ、やはりというか問題点は同じです。結局のところ、《石鍛冶の神秘家》《ウルザの物語》のような選択肢を持てるカードを引いているときにはそういったゲームプランを選ぶことはできますが、《シガルダの助け》《羽ばたき飛行機械》《巨像の鎚》のようなカードが重なったら、もう行くしかありません。相手視点で分からないのが強み(=自分側に選択肢がある)と言われればたしかにその通りではありますが、これは相手に左右されてしまう部分かなとは思います。
個人的に負け方があまり好きになれなかった(どうしようもない初手が配られてマリガンを重ねやすい点が気になりました)ので、数リーグ使ってすぐに辞めてしまいましたが、理解を深めるためにもまた別の機会にテストしてみたいとは思ってます。
サンプルリスト
私がテストした際にはアゾリウス型でしたが、最近のMagic OnlineのLeague/Preliminary/Challengeの入賞率では白単型のほうが多いようです。打ち消しに相当する部分が《救済の波濤》になっているため、わざわざ青をタッチしなくても良いということでしょう。地味ながら良いアップデートですね。
カスケードクラッシュ
アンフェアキーワード能力「続唱」デッキのフェア担当。フェアの皮を被ったアンフェアデッキですが、実態はミッドレンジなのでやはりフェアデッキということでここはひとつ。
カスケードクラッシュは固定スロットが多いものの、自由枠にこれだ!とハマるカードがなく、その選定が課題とされていました。かつては《砕骨の巨人》が採用されていましたが、その後は《強大化》や《歴戦の紅蓮術士》などに変化していきました。最近は《厚かましい借り手》や《激情》のような固定と思われた部分が減らされて、追加の脅威である《濁浪の執政》やバックアップである《神秘の論争》が増やされているタイプが主流です。
もともとの思想としては「続唱呪文を引かなかったときにどうするか」という”安定”の思想から、「続唱呪文は引いている前提」で、その上でどう戦うかという“暴力”(…)の思想にシフトしています。
《濁浪の執政》は《考慮》《表現の反復》のように呪文が呪文を探す構造になっていないため、《暴力的な突発》から入らないと十分な枚数の墓地が確保できません。
《神秘の論争》もバックアップするべき呪文がなければただの時間稼ぎにしかなりません。もちろん《時を解す者、テフェリー》を対処する意味もあるでしょうが、仮にその思想であれば最初からメインに採用されていたことでしょう。《宝石の洞窟》を採用していることからも分かる通り、狙いは超ショートレンジのゲームなので、時間稼ぎがしたいわけではありません。つまり、最速の「続唱」呪文を通す用ということです。
上記らを要約すると、最大値を引き上げる方向にシフトしているといえます。が、この変化は危険です。現状の構築では差別化が難しい・限界が来ると、現在のカスケードクラッシュのように無理をしはじめます。特にカスケードクラッシュやリビングエンドのような固定パーツの多いデッキはある意味で“完成された”デッキ=アップデートしにくいデッキともいえるので、こういった形の変化は致し方ないのかなとは思いますが。
カスケードクラッシュが勝ち得る可能性を模索しているということを否定したいわけではありません。ただ、それによって「このデッキを使う誰かは勝つかもしれないが、それは自分ではない」という現象にもなっています。要するに「このアップデートによってデッキ自体が強力になったわけではない」という認識を持つべきというのが私の見解です。真相は闇の中です(丸投げ)。
サンプルリスト
現在のテンプレートとなっているタイプの元リストです。まさか《厚かましい借り手》が減るとは思いもしませんでした。メインに2枚、サイドに1枚の《宝石の洞窟》からこのデッキの”限界”を感じますが、逆にここまですれば戦えるという点も評価すべきでしょう。
参考記事
- 2022/06/13
- 「カスケードクラッシュ」デッキガイド ~モダンを踏み鳴らすサイ~
- 増田 勝仁
ジェスカイブリーチ
イゼットマークタイドと似たような構造を取りつつ、受け寄りの《対抗呪文》や打点にしかならない《濁浪の執政》を廃して、《死の国からの脱出》を利用したコンボ要素を持たせたデッキです。
このデッキがイゼットカラーではなくジェスカイカラーにする理由は、墓地の依存度が高く、《ヴェクの聖別者》で詰みやすかったり、相手の《濁浪の執政》にまったく触れなかったり、置き物に触りづらい…などなど。イゼットカラーでは解決できない問題がいくつもあり、それを解決するためです。
一般的に採用されている白いカードは《虹色の終焉》《時を解す者、テフェリー》《摩耗/損耗》《神聖なる月光》です。種類こそ少ないものの、役割は明確です。対処したいカードがイメージできますね。
ただ、その上でなお思うのが《濁浪の執政》がキツいということ。《時を解す者、テフェリー》も構造上、そこまでデッキと相性がよいということもないので、採用枚数は2枚程度が主流です。あまりたくさんは採用できません。イゼットマークタイドであれば《対抗呪文》や、それこそ自分も《濁浪の執政》をプレイすることで対抗できますが、ジェスカイブリーチの場合は殴り切られる前にコンボを狙うしかありません。
個人的な趣味嗜好もありますが、デッキ自体は非常に面白いと感じました。特にこのデッキの《ドラゴンの怒りの媒介者》は、本当に1マナなのかと疑ってしまうくらいのパフォーマンスです。《死の国からの脱出》と組み合わせた状態での《ミシュラのガラクタ》連打による大量リソース獲得や《稲妻》連打による瞬殺など、さまざまな戦い方があるのも魅力です。
ただ、正直なところ《死の国からの脱出》をフェアに使おうという発想は良いと思いますが、それが《濁浪の執政》を使うべきデッキ(イゼットマークタイドとの比較です)で使っていないという点については疑問が残ります。そしてそれは、ジェスカイブリーチの現在のポジションにそのまま直結しているのでしょう。要するに「イゼットマークタイドで良いのでは?」ということです。
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アミュレットタイタン
《精力の護符》を使った土地コンボデッキ。
《マイコシンスの庭》は確実なアップデートではありますが、真の意味での強化かといわれると微妙なところです。この手のデッキが真に求めているのは足回りのほうです。《マイコシンスの庭》は爆発力が増すタイプのカードなため、このカードの追加でアミュレットタイタンが最強になった!!とはなりづらいです。
足回りという意味では界隈で話題(?)の《永久の水蓮》を使ったタイプは気になります。従来のような《原始のタイタン》ではなく、《不屈の巡礼者、ゴロス》《永久の水蓮》《大いなる創造者、カーン》を用いているため、《古きものの活性》を強く使うことができます。《古きものの活性》は《精力の護符》やお帰りランドのような必須パーツから《不屈の巡礼者、ゴロス》のようなフィニッシャーまですべてサーチ可能です。
これがアミュレットタイタンの未来を変えるのでは?と思っていますが、実際のところ、本当に変わるのであればすでに流行しているので、結局はビックリドッキリオモシロデッキ止まりということなのでしょう…残念。
サンプルリスト
参考記事
- 2022/01/31
- 『アミュレットタイタン』デッキガイド ~マナを”インチキ”せよ!~
- 増田 勝仁
ヨーグモス医院
《スランの医師、ヨーグモス》と「不死」クリーチャーを使ったコンボ・ミッドレンジデッキ。
ヨーグモス医院は《スランの医師、ヨーグモス》と《飢餓の潮流、グリスト》だけで成り立っています。ほかのカードはすべてオマケです。それくらい《スランの医師、ヨーグモス》と《飢餓の潮流、グリスト》のカードパワーは異常です。
ヨーグモス医院には小テクが多く、このデッキにファンが多いのは頷けます。実際、使用していて非常に楽しいデッキだと感じました。
たとえば《忍耐》を「想起」で唱えて、生け贄に捧げる前に《召喚の調べ》を唱えてそのコストにあてることで、0マナでコストを1増やせたり、《異界の進化》に対応して《神聖なる月光》を唱えられた場合、《飢餓の潮流、グリスト》を持って来ると取り除かれずに戦場に出たりなどです。
ただ、残念ながらtier2止まりのデッキだなという認識は崩れませんでした。とにもかくにもマナクリーチャー+《スランの医師、ヨーグモス》+サーチカードという構造が現在のモダン環境には合っていません。《極楽鳥》《下賤の教主》の返しに《レンと六番》が出てきて何度ディスプレイを割ったことか…
また、対戦相手側の理解度が求められるタイミングも多く、現在の戦場からどの程度のカードが追加されるとどの程度の被害が出るのか、というイメージと逆算ができるかどうかで適切にプレイできるかに繋がってきます。その判断が適切にできないと、コンボが成立しない場合に無駄に構えてしまったり、逆にコンボが成立しないと勘違いしてオールインした結果、返しにコンボを決められてしまったり。なので、相手の自爆によってデッキのポテンシャル以上に勝率が出ているなという印象を受けました。
《スランの医師、ヨーグモス》の性質上、強く使うためには直前にクリーチャーをばら撒いておく必要があります。マナクリーチャーに頼らない構成になれば、ブレイクスルーはありえるかもしれませんが…きっと誰かがやってくれることでしょう。
サンプルリスト
マナクリーチャーを使っていて《血染めの月》に怯えるなんてナンセンス!ということで《沼》は不採用ですが、一般的にはほぼ100%採用されているので恐らくあったほうが良いのでしょう。ただ、初手近辺に素引きするとイライラしてしまうので、個人的にはなくても…と思っています。
《黙示録、シェオルドレッド》は面白いサイドカードです。サイド後は除去を追加されやすいデッキなので、除去に弱いクリーチャーを追加することがあるのか?と最初は役割を理解できなかったのですが、ミラーマッチで役に立ったり、《激情》に耐えるサイズだったりと、意外な活躍を見せました。
リビングエンド
アンフェアキーワード能力「続唱」デッキのアンフェア担当。カスケードクラッシュと異なり、堂々とアンフェアの見た目と動きをします。
ここ半年ほどは鳴りを潜めていたというか、あまり目立った活躍はない印象でしたが、直近ではまた再流行の兆しを見せています。再び流行し始めた理由の一番は独創力コンボに強いというのが大きいでしょう。たいした妨害もなく、《不屈の独創力》から《残虐の執政官》が出てきても全然気になりません。単純なコンボスピードもリビングエンドのほうが早いため、普通に回れば普通にリビングエンドが勝つでしょう。
リビングエンドは研究され尽くしており、ほとんどリストに変化はありません。改めて使ってみても、「まあそうだよな…」という感じで、特に新しい発見などもありませんでした。デッキの9割が固定スロットなため、あまり開拓の余地もありません。こればかりは仕方ないです。一度ある程度マスターしたら、後はポジションが良いと思われるタイミングで使う、という形がベストでしょう。
サンプルリスト
参考記事
- 2022/05/23
- 「リビングエンド」デッキガイド ~勝利は墓地からやってくる~
- 増田 勝仁
グリクシスシャドウ
ジェスカイブリーチ同様、このデッキもまたイゼットマークタイドの亜種です。イゼットマークタイドと似たような構造を取りつつも、より軽く・より能動的に動くことを意識しています。
《死の影》は過小評価されているクリーチャーだと思います。初手にこそ唱えられないものの、墓地を使わず、1マナという軽コストで複数展開も可能(実践では《孤独》をケアして並べないことも多いですが…)で、サイズも非常に大きい。《濁浪の執政》に負けず劣らず強力なクリーチャーです。
また、グリクシスシャドウが《濁浪の執政》を採用しないことで《死の国からの脱出》を採用するのも理解できます。デッキ全体が軽く、特にデッキ最大のクロックである《死の影》の再展開を《死の国からの脱出》から可能です。これは《濁浪の執政》では不可能です。イゼットマークタイドではなくグリクシスシャドウのメリットだと胸を張っていえるでしょう。
ただ、ほかの黒いカードがそこまで環境に合っていないというのがマイナスポイントです。
《思考囲い》は能動的なライフペイこそデッキには合っているものの、相手の呪文をマナを払って落としている/相手はマナを支払わずに墓地にカードが貯まるため、《ドラゴンの怒りの媒介者》や《邪悪な熱気》《濁浪の執政》のようなカードの手助けになってしまう場面もしばしばあります。
《湖での水難》は2マナという重さや序盤に当たらないなどの不安定さがネックです。特に《レンと六番》を使ったデッキは、フェッチランドを回収して使いまわすことから意外と墓地が貯まらず、適正ターンの《時を解す者、テフェリー》や《創造の座、オムナス》を打ち消せないということがしばしばあります。
デッキが軽いというメリットも、デッキの色拘束から結局スムーズに動くためには土地枚数はそれなりに必要であり、そうなると2色でまとめられたイゼットマークタイドと比較してあまりメリットがない=結局、イゼットマークタイドを使えば?という結論になりがちなのが、グリクシスシャドウの評価を大きく下げているのでしょう。
ただ、デッキの強さの割には過小評価されているデッキだとは思いますし、進化の余地もまだまだ残されている気がします。
サンプルリスト
一般的に採用されている《思考囲い》は《呪文貫き》《呪文嵌め》に変更しています。また、イゼットマークタイドが《考慮》込みで土地が19枚なのに対して、グリクシスシャドウは《考慮》を採用せずに土地が19枚なのはおかしいのでは?と思ったため、土地枚数は気持ち多めにしています。
また最近は独創力コンボの《時を解す者、テフェリー》の採用枚数増加を受けて、《狼狽の嵐》よりも《神秘の論争》を優先しています。このあたりは環境に合わせて変更するのが良いでしょう。
ジャンドサーガ
《レンと六番》で《ウルザの物語》を拾い、構築物・トークンが《敏捷なこそ泥、ラガバン》の宝物・トークンで強化される夢のようなデッキ!
《敏捷なこそ泥、ラガバン》《レンと六番》《ウルザの物語》のモダン三種の神器(勝手にそう呼んでますが、まあ大きく外してはいないでしょう)に加えて、最強除去の《稲妻》や新進気鋭《鏡割りの寓話》などなど。強力すぎるパワーカードがてんこ盛りですが、なぜか微妙な感じになってしまうという不思議なデッキです。なぜかは調査中です。
前述の三種の神器だけを使うだけならグルールカラーだけでまとめられますが、干渉手段が限られ過ぎて限界があります。特に《濁浪の執政》が重く、これを倒すためにも《終止》は必要という思想でジャンドカラーになっているのでしょう。
余談ですが、ジャンドサーガの《終止》以外にも独創力コンボの《力線の束縛》《時を解す者、テフェリー》も同様の思想です。《濁浪の執政》という1種のクリーチャーを倒すために色すらも歪めるということが、《濁浪の執政》の影響力の高さ・強さを物語っています。
ミッドレンジらしくフェアなトレードには滅法強く、ラクドス想起やイゼットマークタイドといったフェア対決では有利に立ち回れます。個人的には合法で《虚無の呪文爆弾》をメインに採用できる点が良いなと感じました。地味ながらほかのデッキにはなかなかないメリットです。また、《タルモゴイフ》は《ウルザの物語》でサイズが上昇しやすく、簡単に《邪悪な熱気》を耐えるサイズまで成長します。令和でも活躍する《タルモゴイフ》くん、凄い!
反面、見た目通りコンボには無力です。リビングエンド、アミュレットタイタンのように対策が刺さりやすい相手ならまだしも、独創力コンボは《万物の姿、オルヴァール》を取らないことにはどうしようもありません。フェッチランド&ショックランドで色マナを確保しているのでカスケードクラッシュ、バーンのようにライフを詰める相手も苦手で、サイド15枚では全然足りません。残念ながらtier2止まりかなという印象です。せめてもう少し有利な相手が多ければ良かったのですが……。
サンプルリスト
《創造の座、オムナス》を使ったデッキが苦手なので《戦慄の朗詠者、トーラック》は取りたいものの、《ウルザの物語》や《踏み鳴らされる地》などが採用されている中でを用意するのは至難の業です。
また、独創力コンボに必敗のような見た目をしているので《万物の姿、オルヴァール》は絶対に欲しいですが、最近は《時を解す者、テフェリー》が多めに採用されているので、そもそも《ウルザの物語》《タルモゴイフ》がハメられて《不屈の独創力》に関係なく負けることもあったりなかったり。…魑魅魍魎が跋扈する現在のモダン環境において、コテコテの超フェアデッキが生き残る術はあるのか。こうご期待!(丸投げ)
おわりに
「モダンの最前線に迫る!」は以上になります。
最新セットである『機械兵団の進軍:決戦の後に』がモダン環境へ与える影響も気になるところです。個人的には《復活した精霊信者、ニッサ》が《創造の座、オムナス》のように活躍してくれるのではと期待しています。
また、次回プロツアーのフォーマットはモダンということもあり、今後もモダン環境から目が離せません!それでは!
増田 勝仁(Twitter)