はじめに
みなさんこんにちは。
今月は『プレイヤーズコンベンション千葉2023』にて『日本レガシー選手権 夏』が開催されるので楽しみですね。
今回の連載では、『Legacy Super Qualifier』と『Italian Legacy Invitational』『4 Seasons Legacy Main Event』の入賞デッキを見ていきたいと思います。
Legacy Super Qualifier 6/2
フェアデッキの勝利
2023年6月2日
- 1位 5C Zenith
- 2位 Jeskai Control
- 3位 Mystic Forge Combo
- 4位 8 Cast
- 5位 4C Control
- 6位 Boros Initiative
- 7位 Mystic Forge Combo
- 8位 Cephalid Breakfast
トップ8のデッキリストはこちら
MOで開催されたLegacyの予選イベントは参加者200名で行われました。
今大会の上位は非常に興味深いもので、かつての王者であるDelver系が不在となっており、Jeskai Controlや4C Controlといったコントロールが結果を残しています。
コンボデッキではCephalid BreakfastやMystic Forge Comboが入賞していました。また、プレイオフ進出は逃したもののReanimatorもトップ16-32に複数残っているなど健闘しています。
デッキ紹介
5C Zenith
レガシーのミッドレンジ、コントロールは禁止改定後の環境でさまざまな形が試されています。特に今大会で優勝した5C Zenithは、ここ数年間で強力な緑のクリーチャーが登場したことで強化され、大きな大会でも結果を残しています。
デッキの多くのパーツはBant Controlやそのバリエーションである4C Controlと同様のものが見られますが、このデッキは除去と強力なクリーチャーによるボードコントロールを重視しており、カウンターも少なめなタップアウトスタイルとなっています。
《氷牙のコアトル》や《豊かな成長》など《空を放浪するもの、ヨーリオン》と相性が良いカードが多く、レガシーはカードプールが広いため、デッキ内のカードの質をそれほど下げることなく80枚デッキを構築することができます。それでも、デッキ内のカウンターが少なくもっさりとしているのでコンボデッキは苦手なマッチアップになります。DelverやJeskaiなどフェアデッキが多い環境でオススメのデッキです。
☆注目ポイント
80枚デッキにとって《緑の太陽の頂点》は安定性を向上させる手段のひとつです。《氷牙のコアトル》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《忍耐》あたりはマッチアップを問わずに手堅い選択肢となり、《ドライアドの東屋》をサーチすれば実質マナ加速にもなります。相手の脅威に対応する必要がある場合は、《飢餓の潮流、グリスト》もサーチしてくることができるなど、汎用性の高さが《緑の太陽の頂点》の特徴です。
モダンでも活躍している《復活した精霊信者、ニッサ》がこのデッキにも採用されています。《緑の太陽の頂点》でサーチ可能であり、能力により《忍耐》《創造の座、オムナス》《トレストの使者、レオヴォルド》といった優秀なカードを手に入れることができます。
DelverやJeskaiなど青いフェアデッキ用に《花の絨毯》がサイドに4枚採用されています。強力なマナ加速として機能するだけでなく、色マナも確保しやすくなるので多色デッキにとって重要なカードです。
《ガイアの祝福》はPainterコンボ対策であり、ライブラリーアウトで負けなくなります。
Italian Legacy Invitational
優勝はクリーチャーレスJeskai Control
2023年6月3日
- 1位 Jeskai Control
- 2位 Temur Delver
- 3位 Jeskai Control
- 4位 Dimir Shadow
- 5位 Izzet Delver
- 6位 Cephalid Breakfast
- 7位 Dimir Shadow
- 8位 Sneak and Show
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イタリアで4 Seasons Tournamentsが主催する大規模なレガシーのテーブルトップイベント。
今大会のプレイオフはフェアデッキが複数入賞しており、コンボデッキもCephalid BreakfastやSneak and Showといった青いコンボデッキが中心となっています。
優勝したのは、プレインズウォーカーが多めでメインにクリーチャーを一切採用していないJeskai Controlでした。
デッキ紹介
Jeskai Control
禁止改定後のレガシーはさまざまなバリエーションのフェアデッキが活躍しています。そのなかでもJeskai Controlは、《フェアリーの黒幕》など瞬速クリーチャーを多用するリストや、《一日のやり直し》コンボ型、《語り部の杖》を採用した重コントロール、《石鍛冶の神秘家》などバリエーションが豊富です。
今大会で優勝したバージョンは、先日の『Legacy Super Qualifier』でも準優勝していたリストと同様のもので、メインはノンクリーチャーで《時を解す者、テフェリー》《覆いを割く者、ナーセット》《放浪皇》といった強力なプレインズウォーカーが多数採用されているのが特徴です。
赤はサイドボードのカードのために軽くタッチされているだけなので《不毛の大地》に強く、軽い除去にも恵まれているためDelverなどクリーチャーデッキに強い構成となっています。
《意志の力》《否定の力》《軽微なつまづき》といったカウンターに加えて、相手の追加のドローを封じる《覆いを割く者、ナーセット》もあるのでコンボとのマッチアップも見た目ほど不利にはならず、Cephalid Breakfastなどクリーチャーベースのコンボには有利です。ただ、デッキの構造上「イニシアチブ」デッキはかなり厳しいマッチアップになります。
☆注目ポイント
このデッキの主な勝ち手段は《放浪皇》と《サメ台風》ですが、《覆いを割く者、ナーセット》+《一日のやり直し》のコンボが決まればほぼ勝ちの状態に持っていくこともできます。
メインから3枚と多めに取られている《激しい叱責》は主に《ウルザの物語》対策になりますが、《タッサの神託者》《偉大なる統一者、アトラクサ》《孔蹄のビヒモス》など強力な効果を持つクリーチャーを止められるようになります。また、《引き裂かれし永劫、エムラクール》のような除去耐性を持つクリーチャーも処理できるようになるなど、フェアからコンボまでさまざまなマッチアップで活躍します。
サイドの《封じ込める僧侶》はReanimatorやSneak and Showのほかにも、《緑の太陽の頂点》を使ったデッキやCephalid Breakfast、ANT、Initiativeなどにも有効です。《イニシアチブ/地下街》の「死せる三者の玉座」の効果も妨害することができるので覚えておきたいところです。
4 Seasons Legacy Main Event
群雄割拠な環境
2023年6月4日
- 1位 Doomsday
- 2位 4C Control
- 3位 Boros Initiative
- 4位 Mono Green Post
- 5位 Black Saga Storm
- 6位 Izzet Delver
- 7位 Mono Black
- 8位 Jeskai Control
トップ8のデッキリストはこちら(※スイスラウンド順)
先ほどと同じくイタリアの4 Seasons Tournamentsが主催するメインイベント。参加者300人超えと大盛況で配信もされていました。
今大会ではフェアからコンボまで多種多様なデッキが勝ち残っており、禁止改定後のレガシーらしい結果になっています。グランプリ・ボローニャ2019を制したコントロールのスペシャリスト・Marc Vogt氏や、DoomsdayのエキスパートであるLucs Fasoli氏など強豪プレイヤーも活躍していました。
デッキ紹介
Doomsday
《最後の審判》を使用してコンボパーツとドロースペル以外のカードをライブラリーから追放し、勝ち手段の《タッサの神託者》につなげていくコンボデッキ。相性の悪かったDelverが弱体化したため、現環境でいい立ち位置にあります。
今大会で入賞したバージョンは、《夏の帳》《突然の衰微》《花の絨毯》を採用したタッチ緑型で青いデッキとのマッチアップを意識した構成になっています。また《親身の教示者》が3枚と速度を重視しており、ハンデスやカウンターで無理やりコンボを決めに行きます。
☆注目ポイント
サイド後は《最後の審判》コンボと《黙示録、シェオルドレッド》という2種類の異なる脅威でプレッシャーをかけていきます。サイド後は除去がサイドアウトされる傾向にあるため《黙示録、シェオルドレッド》が場に残りやすく、《渦まく知識》などドロー呪文に制限をかけるので追加の勝ち手段として申し分ない性能です。Doomsdayを相手にした際は、サイド後も除去を少し残しておきたいところです。
《花の絨毯》は《目くらまし》や《呪文貫き》などソフトカウンターにも耐性が付き、《暗黒の儀式》や《水蓮の花びら》などと違ってカードアドバンテージを犠牲にすることなく追加のマナを捻出できるため 青いデッキとのマッチアップでは重要なカードになります。
《夏の帳》は青いデッキやハンデスに対しても有効で、特にサイド後に《黙示録、シェオルドレッド》をカウンターや《厚かましい借り手》から守ることもできます。
《突然の衰微》は《虚空の杯》《倦怠の宝珠》《激しい叱責》など、このデッキにとって厄介な置物や各種ヘイトベアー、Delver系のクロック対策になります。
Black Saga Storm
ANTなどほかのストーム系のコンボと比べても非常に軽い構成となっており、キーカードとサーチスペル以外では0-1マナのスペルが中心なので《むかつき》によるライフの損失も大きくありません。
基本的にマナ加速から《燃え立つ願い》で《永劫のこだま》をサーチし、手札を補充して「ストーム」を稼ぎ最終的に《苦悶の触手》で勝利を狙います。また、追加の勝ち手段兼アドバンテージ獲得手段として《ウルザの物語》も採用されています。ストームコンボと構築物・トークンによるビートダウンは異なる解答が要求されるため、相手にとっては対策の的を絞りにくくなります。
☆注目ポイント
基本的にストーム系のコンボに対しては、除去が減らされて《否定の力》《相殺》《耳の痛い静寂》などがサイドインされる傾向にあるので、《ウルザの物語》は強力なバックアッププランになります。第Ⅲ章の効果によって《ライオンの瞳のダイアモンド》をサーチでき、メインのプランをスムーズに実行させる役割も担っています。
この戦略を理解している相手は、マナ・アーティファクトと構築物・トークンを同時に流せる《溶融》や《兄弟仲の終焉》をサイドインしてきますが、このデッキもサイド後は《虚空の力線》と《Helm of Obedience》を投入してHelmコンボへと変形する選択肢も用意されています。
《致命的な一押し》はDelverのクロックや《スレイベンの守護者、サリア》などヘイトベアーを除去できます。《大群への給餌》は除去であると同時に《耳の痛い静寂》などの置物に触れる貴重なカードです。
4C Control
カードアドバンテージ源&フィニッシャーとしても機能する《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を使ったデッキは、《表現の反復》亡き後のレガシーで もっとも成功を収めているフェアデッキのひとつです。
カウンターとドロースペル、白の優秀な除去とそろっているためゲームをコントロールしていくのが容易で、Delver系やJeskai Controlなどフェアデッキ全般に有利が付きます。ただ、メインがほぼノンクリーチャーという構成上「イニシアチブ」デッキは不利なマッチアップになります。また、クロックも遅いため相手にセットアップする猶予を与えてしまうので、Doomsdayなどコンボデッキも苦手なマッチアップになります。
☆注目ポイント
《語り部の杖》はトークン生成とドローを兼ねたカードで、トークンを生成する手段がほかにあれば強力なアドバンテージエンジンになります。このデッキのトークン生成手段は、《語り部の杖》以外では《時を超えた英雄、ミンスクとブー》のみとなっています。
《大魔導師の魔除け》は色拘束こそキツいものの、カウンター・ドロー・コントロール奪取といろいろな状況で使える便利なカードです。特にレガシーでは《秘密を掘り下げる者》や《ドラゴンの怒りの媒介者》のほかに、《マリット・レイジトークン》《改良式鋳造所》といった1マナ以下の脅威が多いため、コントロール奪取がより強力に働きます。
《壌土からの生命》は安定してマナをそろえる手段になり、《不毛の大地》を使いまわして相手をロックすることもできます。「発掘」によって墓地のカードを増やせるので、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》とも相性が良いです。
総括
先週末はMOとテーブルトップの両方でレガシーのイベントが開催され、現環境のレガシーを解析をする助けになりました。
禁止改定から3ヶ月が経ちますが、テーブルトップでもオンラインでもさまざまなデッキが結果を残しています。特にDoomsdayやSneak and Showなどのコンボデッキは、Delverの弱体化により増加傾向にあります。ただ弱体化したとはいえ、デッキの中核である効率的なクロックと妨害は健在なので現在でも上位でよくみられるデッキです。
USA Legacy Express vol.219は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!