はじめに
みなさん、こんにちは。
来月にはモダンのプロツアーがバルセロナで開催される予定で、日本国内でも『プレイヤーズコンベンション千葉2023』でモダンオープンが開催されるということもあり、モダンは今もっとも熱いフォーマットです。
今回の連載では『Modern Showcase Challenge』と『4 Seasons Tournaments Modern Main Event』『Modern Challenge』の入賞デッキを見ていきたいと思います。
Modern Showcase Challenge 6/3
やはり最強は猿
2023年6月3日
- 1位 Izzet Murktide
- 2位 Jeskai Breach
- 3位 Rakdos Grief
- 4位 Mono Green Tron
- 5位 Izzet Murktide
- 6位 Tron
- 7位 Izzet Murktide
- 8位 Izzet Breach
トップ8のデッキリストはこちら
参加するのに40QPが必要で、Showcase Qualifierへの参加権がかかっているイベントなため、Showcase Challengeは毎週開催されるModern Challengeよりもレベルが高くなる傾向にあります。
人気構築フォーマットであるモダンのイベントだけあって、参加者300人超えのスイスラウンド10ラウンドという長丁場なイベントとなりました。
今大会では、Izzet Murktideが優勝も含めて複数の入賞者を出していました。それ以外ではJeskai BreachやRakdos Griefといったデッキも見られ、プレイオフに入賞していた半数以上のデッキが《敏捷なこそ泥、ラガバン》を採用したデッキでした。
デッキ紹介
Izzet Murktide
Izzet Murktideは筆者も好きなデッキで、モダンでメインで使っているデッキでもあります。
Temur CascadeやCreativity Comboに押されて上位から没落していた時期もありましたが、最近は息を吹き返してきており、今大会でも優勝も含めて複数の入賞者を出していました。環境によってカスタマイズが効く強いデッキではありますが、もともと非常に選択肢が多く複雑なデッキなため、相手のデッキや環境の理解度の高さが求められます。
《ドラゴンの怒りの媒介者》《ミシュラのガラクタ》《帳簿裂き》といったカードのおかげでサイドボードのカードも引き当てやすく、メイン戦で不利なマッチアップでもサイド後には違ったゲームになるため、モダンでは珍しく極端に不利なマッチアップがないデッキになります。
☆注目ポイント
Creativity ComboやTemur Cascadeを強く意識した構成になっており、メインから《呪文貫き》が3枚に加えて《否定の力》も採用されています。「諜報」持ちの《ドラゴンの怒りの媒介者》と「謀議」持ちの《帳簿裂き》によって不要な場合は墓地に送れるので、コンボ以外のマッチアップでも腐りにくくなります。
最近はメインから4枚《ドラゴンの怒りの媒介者》を採用することによってクロックの速度を上げています。このカードや《敏捷なこそ泥、ラガバン》などでプレッシャーをかけつつ、《対抗呪文》や《否定の力》などで妨害するのがコンボデッキとのゲームプランになります。その一方で《帳簿裂き》のルーターによる手札の質の向上も捨てがたいため、現在は両方採用された型が主流です。
サイドボードの《兄弟仲の終焉》は、Hammer Timeなど《ウルザの物語》を使うデッキのほかにも、最近復権してきたHardened Scalesとのマッチアップでも活躍するのでオススメのサイドカードになります。墓地対策には、同型でも相手の「探査」や「昂揚」を妨害できる《未認可霊柩車》が選択されています。
Rakdos Grief
《悲嘆》や《激情》を「想起」でプレイし、《フェイン・デス》や《不死なる悪意》によってリアニメイトすることで、場に出たときの能力を2度誘発させて相手のプランを妨害するコンボを搭載したデッキ。除去や妨害も豊富でミッドレンジとしても振る舞えるところがこのデッキの強みです。
このデッキは《血染めの月》や《ダウスィーの虚空歩き》といった特定のデッキに対して刺さるカードもあるので、多くのマッチアップにメインから有利を取ることができます。
☆注目ポイント
Golgari YawgmothやLiving Endといった墓地コンボから、《レンと六番》を使うCreativity ComboやIzzet Murktideなど多くのデッキが墓地をリソースとして使用しているため、《ダウスィーの虚空歩き》は強力な妨害+クロックとして機能します。起動能力もハンデスと相性が良く、相手の脅威を逆に利用することができます。
《血染めの月》を無理なく運用できるので、多くのデッキに対してメインから有利が取れます。ハンデスでは対処できない《ウルザの物語》を対策でき、Creativity Comboに対しても《ドワーフの鉱山》からトークンが出せなくなるためコンボを決めるのが難しくなります。
《フェイン・デス》や《血染めの月》といったカードは、状況やマッチアップによっては役に立たないカードになるリスクがありますが、《歴戦の紅蓮術士》はそれらを有効牌に変換でき、「想起」コンボによって消費された手札を補充してくれる重要な役割を担ってくれます。もちろん《フェイン・デス》で使いまわすことも可能です。
Tron
Tronとカテゴライズされていますが、一般的な緑単トロンと異なり《古きものの活性》や《森の知恵》は不採用で、アーティファクトベースのデッキです。
《刻まれたタブレット》や《探検の地図》といったサーチを利用し可能な限り早くトロンランドをそろえて、《大いなる創造者、カーン》から強力なアーティファクトをサーチしてゲームを決めます。トロンランドをそろえるために、フリーマリガンできる《血清の粉末》も積極的に利用していきます。
メインから《罠の橋》や《バジリスクの首輪》+《歩行バリスタ》を採用しているため、クリーチャーデッキ全般に強い構成になっています。
☆注目ポイント
《罠の橋》や《真髄の針》など相手の行動を制限するプリズン要素が多く見られます。トロンランドを求めてマリガンできる《血清の粉末》はこのデッキと相性が良く、追放されたアーティファクトも必要なら《大いなる創造者、カーン》の能力でサーチすることもできます。
メインから採用されている《呪文滑り》は、タフネスが4あるのでブロッカーとしても有用で《大いなる創造者、カーン》や《罠の橋》に向けられた除去の避雷針になってくれます。
《大いなる創造者、カーン》によってサイドボードから《虚空の杯》や《石の脳》をサーチしてこれるので、コンボに対してもメインから渡り合えます。モダンでは《マイコシンスの格子》が禁止カードになっているため、相手をロックする手段として《取り憑かれた扉》が採用されています。
4 Seasons Tournaments Modern Main Event
定番のデッキが勢ぞろい
2023年6月3日
- 1位 5C Creativity
- 2位 Temur Cascade
- 3位 Breach Combo
- 4位 4C Elementals
- 5位 Temur Cascade
- 6位 Golgari Yawgmoth
- 7位 Hardened Scales
- 8位 Izeet Murtide
トップ8のデッキリストはこちら(※スイスラウンド順)
先々週末にイタリアで開催された大規模なテーブルトップのイベントで、参加者400名を超えるなど大盛況でした。
今大会のプレイオフは、Izzet Murktide、Temur Cascade、Creativity Comboといった定番なデッキが中心でした。また新カードによって強化されたElementalsやHardened Scalesといったデッキも見られました。
デッキ紹介
Temur Cascade
現在のTemur Cascadeは、アメリカの若手プレイヤー・Isaac Bullwinkleによって改良されたものがMOで結果を残して以来、世界王者のNathan SteuerもSCGのイベントで優勝するなど立て続けに活躍しています。現在では、Creativity ComboやIzzet Murktide、Rakdos Griefと並んで人気があるデッキになっています。
「続唱」スペルを確実に3ターン目唱えたいので、追加の《宝石の洞窟》などが加えられて土地が25枚(サイド後は26枚)と多めにとられています。《焦熱島嶼域》があるので、フラッドもある程度緩和することができます。
☆注目ポイント
現在のモダンで人気があるデッキは、Creativity Comobo、Izzet Murktide、Jeskai Breach、同型など青いデッキが多く、《神秘の論争》はメインからでも十分に活躍するスペルです。
「続唱」戦略の本来のコンセプトと異なりますが、《濁浪の執政》は最高のフィニッシャーとして活躍します。Izzet Murktideと違って墓地対策されることがないので、サイド後もプレイしやすいのが優秀です。
《濁浪の執政》や《神秘の論争》の枠を確保するために置物対策になる《厚かましい借り手》の枚数が削られていますが、脅威の種類を散らすことで過去のバージョンと比べて《虚空の杯》などで容易にシャットアウトされにくくなっています。
《忍耐》は墓地対策としてはもちろん追加の勝ち手段としても有用で、長期戦では自分を対象にして墓地に落ちた《衝撃の足音》をライブラリーに戻して再度「続唱」スペルからプレイするという使い方もできます。
Modern Challenge 6/10
モダンを代表するビートダウンコンボ
2023年6月10日
- 1位 Hammer Time
- 2位 Izzet Murktide
- 3位 Yawgmoth
- 4位 Rakdos Grief
- 5位 5C Creativity
- 6位 Izzet Murktide
- 7位 Temur Cascade
- 8位 Jeskai Breach
トップ8のデッキリストはこちら
《敏捷なこそ泥、ラガバン》デッキが安定した成績を残すなかで優勝したのはHammer Timeでした。
Izzet Murktideの主な妨害手段は火力除去とカウンターになるため、《巨像の鎚》を装備させることでクリーチャーを強化できるHammer Timeは現環境では良チョイスになります。
デッキ紹介
Hammer Time
『モダンホライゾン2』がリリースされて以来、モダンの定番デッキとして活躍しているHammer Time。《純鋼の聖騎士》や《シガルダの助け》の能力を利用して《巨像の鎚》で瞬殺するコンボがメインのプランですが、除去を多用するデッキに対しては《ウルザの物語》や《石鍛冶の神秘家》でアドバンテージを稼ぎつつ、構築物・トークンなどを《火と氷の剣》や《影槍》といった装備品で強化してビートダウンしていくプランも用意されています。
最近はコンボデッキ対策に《呪文貫き》といったカウンターが使える青白バージョンも見られますが、Rakdosなど《血染めの月》を使うデッキが散見される現環境では白単バージョンのほうが安定します。
☆注目ポイント
《石鍛冶の神秘家》と《エスパーの歩哨》によるアドバンテージのおかげで、《巨像の鎚》コンボ以外でもゲームに勝つこともできます。《石鍛冶の神秘家》は3ターン目に《カルドラの完成体》を出すことができるので、相手にとってはマスト除去になります。
非クリーチャースペルに対して追加のマナを要求する《エスパーの歩哨》は、除去の避雷針になります。相手に追加のマナを支払うことでコンボに対して無防備になるか、カードを引かせることによってより多くの脅威を対処することになるかという難しい選択を強いることができます。また、これらのクリーチャーに除去を使わせることによってより安全にコンボを狙うことができます。
『機械兵団の進軍』から登場した色対策シリーズである《救済の波濤》が新戦力としてメインからフル採用されています。1マナと軽く《夏の帳》を彷彿とさせるスペルで、単体除去だけでなくハンデスや布告系の除去にも耐性が付きます。
現在多くのデッキのサイドに採用されている《神聖なる月光》は、《不屈の独創力》《衝撃の足音》《死せる生》対策が主ですが、《鏡割りの寓話》に対しても効果があります。ヘイトベアーの《ドラニスの判事》も、Jeskai Breachなどコンボデッキとのマッチアップで重宝します。
総括
現環境では、Izzet MurktideやRakdos Griefといった《敏捷なこそ泥、ラガバン》デッキがTemur CascadeやCreativity Comboとともに安定した成績を残しています。
モダンは人気がある構築フォーマットで、『指輪物語:中つ国の伝承』がリリースされることに加えて『プレイヤーズコンベンション千葉2023』のモダンオープンやプロツアーなど大規模なテーブルトップのイベントも開催されるため、今後もさらに盛り上がることが期待できそうです。
USA Modern Express vol.97は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!