《一つの指輪》って強いの?統率者戦で使ったり使われたりしてみました

いってつ

《一つの指輪》はすべてを統べるのか?

みなさんこんにちは、晴れる屋メディアのいってつです。

世間はすっかり《一つの指輪》に夢中ですね。

世界に1枚だけの「001/001」シリアルナンバー入り《一つの指輪》の話題ではなく、まっとうにそのカードパワーが評価されているのです。

先日のプレイヤーズコンベンション千葉2023で行われた「モダンオープン」では《一つの指輪》入りの緑トロンや5色エレメンタルが話題に。会期中の2日間で売買相場が2倍に高騰しました。

レガシーでも《湖に潜む者、エムリー》《一つの指輪》を戦場に戻して毎ターンプロテクションを得るデッキが考案されています。

公開当初は「統率者戦で強そう」と言われていましたが、実のところ、モダン、レガシー、ヴィンテージにまで大きな影響を与えています。

そんな《一つの指輪》ですが、統率者戦もすでに大きな影響を受けています。見ていきましょう。

《一つの指輪》のテキストを読む

一つの指輪

まずはテキストを順に見ていきましょう。

《一つの指輪》 (4)

伝説のアーティファクト

破壊不能

固有色のないカードであり、どんなデッキにもいれることができます。

破壊不能を持っており、統率者戦でポピュラーなアーティファクト対策の《削剥》《活性の力》などでは除去できません。

一つの指輪が戦場に出たとき、あなたがこれを唱えていた場合、次のあなたのターンまで、あなたはプロテクション(すべて)を得る。

「あなたはプロテクション(すべて)を得る」とは具体的には、エンチャントされず、与えられるダメージを軽減し、対象にとられないということです。

豪奢の呪い地震ジェスカの意志

また、《Copy Artifact》《彫り込み鋼》などを唱え、《一つの指輪》のコピーとして戦場に出たときも、この能力は誘発します。

Copy Artifact彫り込み鋼賢いなりすまし

T:一つの指輪の上に重荷カウンター1個を置く。その後、一つの指輪の上にある重荷カウンター1個につき1枚のカードを引く。

タップするとドロー。そのドロー枚数は起動の度に増えていきます。

起動回数をカウンターで管理しているので「増殖」でドロー枚数を増やせる一方、対戦相手が《巨怪な略奪者、ヴォリンクレックス》をコントロールしていると、カウンターが置かれず、ドロー枚数が増えません。

あなたのアップキープの開始時に、一つの指輪の上にある重荷カウンター1個につき1点のライフを失う。

ドロー能力を起動するたびに増えていくカウンターの数だけ、毎ターンライフを失います。

初期の評価

このカードがリリースされた当初は、アーティファクトのアンタップができるデッキでは強いのではないか、という評価が大勢でした。

開闢機関、勝利械巻き戻しの時計通電式キー

例えば《開闢機関、勝利械》は統率者がタップ能力を持つアーティファクトであり、《巻き戻しの時計》《通電式キー》を用いて大量のアドバンテージを獲得することができます。こうしたデッキでは強力なカードになるだろう、と考えられていました。

大いなる歪み、コジレック

無色デッキでは貴重な継続的ドローを獲得したことになります。ドローが苦手な白単などでもうれしいカードかも……という程度でした。

現在の評価

《一つの指輪》の解禁後、僕はすぐに《大いなる歪み、コジレック》に採用、その強さに目を見張りました。

なにより驚いたのは、対戦相手がみんな《一つの指輪》を使用していたということです。ごく一部の《一つの指輪》を採用していなかった対戦相手は、単純に「まだ買っていない(買えていない)」というだけだったのです。

プロテクション(すべて)は強かった

プロテクション(すべて)はモダンなどでは対戦相手のクロックを1ターン停止させることになり、なかば「追加ターン」として機能することは想像しやすいですが、同じことが統率者戦でも起こりました。

統率者戦は競技性の高いテーブルほど、決まり手がコンボとなるゲームが増えていく傾向にあるのは確かですが、ライフが意味をなさないゲームでは決してありません。

むかつき森の知恵背信のオーガ

ライフをリソースと交換するカードを使用するデッキではライフが減らされてしまうとゲームプランが狂ってしまいます。そうでなくてもライフが減っていくとコンボを始めるまでの猶予が少なくなっていきます。

打ち消しを構えながらコンボをスタートしたいが、ライフは残り少ない、という状況を考えてみましょう。「次のターンはないから、危ういけどコンボに挑戦せざるをえない……」「本当はマナクリーチャーをタップしたい、でもブロッカーが立てられなくなる……」と、ライフが減っていくと行動の選択肢は狭まっていきます。

《一つの指輪》のドロー能力のことを考えると、対戦相手は《一つの指輪》のコントローラーのライフを削って行動の選択肢を狭めたくなりますが、プロテクション(すべて)がそれを1ターン――いえ、統率者戦は4人のゲームですから――3ターン拒みます。

「コンボに入る時間を確保してくれる」「プレイできるターン数が増える」という意味では、統率者戦でも「追加ターン」と言えます。 ドローを重ねると毎ターン失うライフが増えていきますが、そのぶん「追加ターン」がついており、大した問題になっていません。

《蒸気の連鎖》などで手札に回収、再び唱えなおすことでさらなる猶予を得ることも考えられます。

ドロー能力も強かった

さて、肝心のドロー能力を見ていきます。

前評判通り、アーティファクトをアンタップできるデッキや単色デッキなどでは強力なドローカードです。実際にどんなペースでドローが可能か計算してみましょう。

起動1回目 累計1枚ドロー
起動2回目 累計3枚ドロー
起動3回目 累計6枚ドロー
起動4回目 累計10枚ドロー
起動5回目 累計15枚ドロー

設置後3ターンで6枚をドロー、5ターン目には15枚ドローできます。

リスティックの研究

統率者戦で継続的にドローするカードといえば《リスティックの研究》が思い浮かぶでしょうが、それでもこれだけのカードを引くことはそうそうありません。

カードタイプも強かった

アーティファクトであることで、比較的打ち消しが当たりにくく、色拘束もありません。そして、アーティファクトはもっともアンタップしやすいパーマネントの一つでもあります。

前兆の時計巻き戻しの時計多用途の鍵

先ほどは《リスティックの研究》と比較しましたが、こちらは色が無いため《紅蓮破》《赤霊破》が当たりません。

統率者戦でポピュラーなアーティファクト除去はその多くが「破壊」なので《一つの指輪》には対応できません。青ならバウンスで対応できますが、そうすると唱えなおされて再びプロテクション(すべて)を得られてしまいます。

また、これはデメリットとして働くこともあるでしょうが、アーティファクトはコピーしやすいパーマネントともいえます。今後は《一つの指輪》をアテにしてアーティファクトをコピーするカードが多く使われるようになるかもしれません。

彫り込み鋼ファイレクシアの変形者Copy Artifact

統率者戦のアーティファクトには明確な弱点が あります。《無のロッド》の存在です。

無のロッド石のような静寂溜め込み屋のアウフ

緑を主軸としたデッキではランプやマナクリーチャーによるマナ加速が可能であり、アーティファクトに頼る必要が無いため、《無のロッド》などで一方的な妨害が可能でした。

オークの弓使い

ところが、《オークの弓使い》が登場したことで、クリーチャーへの依存度が高い緑主軸のデッキは強く抑圧されています。誰かが追加のドローをするだけで火力を飛ばすことができ、「オーク・動員」でブロッカーもたてられてしまうのです。結果、《無のロッド》を採用できるようなデッキはトーナメントでは数を大きく減らすことになるでしょう。

大いなる創造者、カーン

一方で、相対的に《大いなる創造者、カーン》の価値が高まっています。対戦相手のアーティファクトの起動型能力を封じる《大いなる創造者、カーン》は除去も打ち消しも当たりにくく、ブロッカーさえ確保できれば非常に強力な妨害手段となります。

破壊不能を持つ《一つの指輪》を[+1]能力でクリーチャー化すれば、破壊不能の4/4となります。《剣を鍬に》が効くようになってしまいますが、《大いなる創造者、カーン》が生き残っていれば今度は[-2]能力で《一つの指輪》を追放領域から回収できます。

否定の力精神壊しの罠

《否定の力》などで追放されても《大いなる創造者、カーン》には回収されてしまいます。そのほかの打ち消しで墓地に送っても、墓地のカードを自ら追放して《大いなる創造者、カーン》で回収するような荒業もありえます。

《一つの指輪》は禁止になるか?

今のところ、《一つの指輪》をCommander Rule Committeeが監視している様子は見られません。

どの色のデッキにも採用可能な強力なカード……ではありますが、統率者戦ではただ強いカードが禁止になるわけではないので、すぐさま禁止推奨カードになることはないでしょう。

モダン、レガシー同様、統率者戦でも《一つの指輪》をいかにうまく使うか、というメタゲームが展開されるかもしれません。

ただし、これは競技志向のテーブルでの話で、カジュアルなゲームしか遊ばないのであれば、無理して用意しなければならないカードではないといってつは考えています。そういった意味で、しばらくは《魔力の墓所》に似た立ち位置になるのではないでしょうか。

来月に迫る第5期統率者神挑戦者決定戦・神決定戦でも《一つの指輪》が多くのゲームの行方を左右することになるでしょう。どんなゲームになるのか、今から楽しみです!

ちなみに、プレイヤーズコンベンションの「モダンオープン」では《一つの指輪》入りデッキどうしでのゲームが制限時間切れを頻繁に起こしていたと聞いています。

それではみなさん、《滅びの山》でお会いしましょう。

滅びの山

この記事内で掲載されたカード

大いなる創造者、カーン

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いってつ 晴れる屋メディアライターです。最近の悩みは記事執筆と動画出演で忙しくて統率者戦が1日2回くらいしか遊べないこと。 いってつの記事はこちら