はじめに
みなさん、こんにちは。
『指輪物語:中つ国の伝承』がリリースされ、『SCG CON Baltimore 2023』と『プレイヤーズコンベンション千葉2023』といった大型イベントも開催されました。
今回の連載では上記イベントで開催された大会と、マジックオンラインで行われた大会の入賞デッキを見ていきたいと思います。
SCG CON Baltimore – $10K Legacy
コンボデッキの時代
2023年6月17日
- 1位 Cephalid Breakfast
- 2位 Food Chain Goblins
- 3位 Black Saga Storm
- 4位 Boros Initiative
- 5位 Painter
- 6位 Maverick
- 7位 Infect
- 8位 Lands
トップ8のデッキリストはこちら
アメリカ・メリーランド州の都市であるボルチモアで『SCG CON Baltimore 2023』が開催され、目玉イベントとして『$10K Legacy』と『$5K Legacy』が行われました。『$10K Legacy』は参加者265名と大盛況だったようです。
『指輪物語:中つ国の伝承』プレリリースの週末だったので、新カードが使えた最初の大きな大会ということでとても注目を集めたイベントでもありました。
プレリリースの初日が金曜日だったため、土曜日の朝に開催された今大会までにカードを集めるのは難しそうでしたが、それにも関わらずプレビュー段階から話題だった《オークの弓使い》など新カードを採用したデッキも複数見られました。
デッキ紹介
Cephalid Breakfast
スイスラウンド9回戦という長丁場なイベントを制したのは、クリーチャーベースのコンボデッキであるCephalid Breakfastでした。前環境でも好成績を収めていたデッキで、禁止改定の影響を受けなかったので新環境後の有力なデッキとして注目されていました。
デッキの主な動きは《セファリッドの幻術師》と0マナでクリーチャーを対象にできる《コーの遊牧民》/《手甲》を組み合わせてライブラリーのカードを墓地に落とし、最終的に《戦慄の復活》によって《タッサの神託者》をリアニメイトして勝利します。
メインはカウンターや《ウルザの物語》パッケージに加えて、サイド後には《剣を鍬に》や《虹色の終焉》といった除去が投入されるため、コンボを搭載したコントロールデッキとして振る舞うこともできます。
☆注目ポイント
コンボデッキにとってサイド後の妨害を乗り越えることは重要です。《厚かましい借り手》は《虚空の杯》や《虚空の力線》といった厄介な置物をどかすことができ、《時を解す者、テフェリー》《オアリムの詠唱》はコントロール相手にコンボを決める助けになります。
特に《時を解す者、テフェリー》と《オアリムの詠唱》は、相手にとってマストカウンターになるためリソースを消費させることができます。コントロールなどカウンターが主な妨害手段のマッチアップでは、《オアリムの詠唱》を《神秘の聖域》で再利用することで相手のカウンターを枯渇させることが可能です。
「ウィザード・サイクリング」を持つ《通り抜け》は、キーカードである《セファリッドの幻術師》や《タッサの神託者》をサーチしてくることができるため、このデッキの安定性を支えています。
《語り部の杖》は《ウルザの物語》や《改良式鋳造所》ともシナジーがあり、強力なアドバンテージエンジンとして機能します。
《ウルザの物語》はコンボパーツの《手甲》をサーチする手段であると同時に、バックアップの勝ち手段としての役割を担っています。相手がカウンターを構えているなら、《ウルザの物語》や《改良式鋳造所》でトークンを生成しつつ、《語り部の杖》でアドバンテージを取り続けることで勝つこともできます。
SCG CON Baltimore – $5K Legacy
話題の新カードが大活躍
2023年6月18日
- 1位 Mono Red Prison
- 2位 Lands
- 3位 Grixis Delver
- 4位 ANT
- 5位 Mono White Initiative
- 6位 Grixis Delver
- 7位 Painter
- 8位 Cephalid Breakfast
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日曜日に開催された$5K Legacyは参加者106名で行われました。
土曜のイベント上位には不在だったデルバーデッキが入賞しており、話題の《オークの弓使い》を採用したGrixis Delverが中心でした。《オークの弓使い》はPainterやCephalid Breakfastなどでも採用されており、レガシーの定番カードとして幅広いデッキで活躍が期待できそうです。
デッキ紹介
Grixis Delver
新戦力《オークの弓使い》を採用したGrixis Delver。最近はIzzet型かTemur型が中心でしたが、《表現の反復》が禁止になったことでアドバンテージ源やカードパワーを求めてほかの色を足す必要が出てきました。
Anthony Laverde氏は同デッキで先週末のLegacy Challengeでも準優勝しており、現環境の有力なDelverの形として今後もよく見られそうです。
Grixis型の弱点として、基本土地を採用する余裕がないため《血染めの月》を使ったMono Red Prisonや、《不毛の大地》を毎ターン使いまわしてくるLandsなどが苦手なマッチアップになります。
☆注目ポイント
《オークの弓使い》の強さは前評判通りだったようです。レガシーは《渦まく知識》や《思案》といったドローを多用するデッキが多く、相手の《渦まく知識》に合わせて出すことで、4/4トークンを出しつつ好きな対象に4点のダメージが入ります。今後黒いデッキを相手にする際は、今まで以上に相手のマナ状況に注意する必要が出てきそうです。
Death & TaxesやElvesなど小型クリーチャーを使うデッキにも睨みをきかせつつ、プレインズウォーカー対策としても優秀です。また、Delver系にとって頭痛の種であった《悪意の大梟》や《氷牙のコアトル》といったクリーチャーも対処できるなど、フェアデッキ全般に有効なクリーチャーになります。
現環境でも「イニシアチブ」デッキは健在なので、《殺し》は有力な除去になります。Delver系とのミラーマッチでも《濁浪の執政》の解答として活躍しますが、黒いクリーチャーである《オークの弓使い》には効かないため、メインから複数採用されるかは環境に左右されそうです。
プレイヤーズコンベンション千葉2023 – 日本レガシー選手権 夏
8 Castが夏のレガシーのイベントを制する
2023年6月25日
- 1位 8 Cast
- 2位 ANT
- 3位 Reanimator
- 4位 Witherbloom Combo
- 5位 Belcher
- 6位 Death’s Shadow
- 7位 Rakdos
- 8位 Grixis Delver
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参加者226名と大盛況だった『日本レガシー選手権 夏』。今大会のプレイオフは、禁止改定後の環境らしくフェア、コンボ、プリズン系とさまざまなデッキが入賞していました。
8 CastとANTが決勝戦にまで勝ち残り、最終的に優勝したのは8 Castでした。禁止改定後の環境は、Delver系が減少傾向にあり、コンボデッキが強い環境になっています。
デッキ紹介
Reanimator
禁止改定後の環境においても最前線で活躍するReanimator。Legacy Showcase Challengeでも優勝するなど、Tier1に位置する強さを見せます。
流行りの《オークの弓使い》の影響をそれほど受けないことも、このデッキを選択する理由になります。
☆注目ポイント
かつては代表的なフィニッシャーであった《グリセルブランド》ですが、《偉大なる統一者、アトラクサ》や《残虐の執政官》といった強力なクリーチャーが登場したことと、追加のドローを咎める《オークの弓使い》の存在でわずか1枚の採用となっています。
サイド後は相手の墓地対策に備えて、《実物提示教育》で手札から直接《偉大なる統一者、アトラクサ》や《残虐の執政官》といったクリーチャーを出していく選択肢もあります。ただ3マナなのでソフトカウンターにやや弱いのが難点です。
サイドには《オークの弓使い》が採用されています。Death & Taxesのヘイトベアーに対する除去としても機能するので、今後は定番のサイドカードになりそうです。サイド後は相手も除去を減らす傾向にあるので、デッキリストが非公開のイベントでは特に有効です。
Legacy Showcase Challenge 7/2
バリエーション豊かなテンポデッキ
2023年7月2日
- 1位 Reanimator
- 2位 4C Control
- 3位 Death’s Shadow
- 4位 Grixis Delver
- 5位 Painter
- 6位 Reanimator
- 7位 Death’s Shadow
- 8位 Jeskai Delver
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Grixis Delver、Jeskai Delver、Death’s Shadowなど多種多様なテンポデッキが活躍しています。最終的に優勝したのはReanimatorでした。
デッキ紹介
Jeskai Delver
Delver系は《オークの弓使い》を採用したGrixis型が主流ですが、『指輪物語:中つ国の伝承』統率者デッキで登場した《進め、エオルの家の子よ!》をフィーチャーしたJeskai型も見られます。
白を使うメリットは《虹色の終焉》や《剣を鍬に》といった優秀な除去を使えることです。特に《虹色の終焉》は、こちらの動きを大きく制限する《虚空の杯》をメインから処理することが可能になります。
☆注目ポイント
《進め、エオルの家の子よ!》はX=0でプレイしても攻撃を通せば統治者になることができるので、最速2ターン目から追加のドローを狙うことができます。
1マナ域のクリーチャーをメインから10体採用しているのでそれほど難しい条件ではなく、軽い除去もあり統治者を維持させやすいです。《進め、エオルの家の子よ!》のトークンは速攻持ちなので、《至高の評決》などスイーパーを使ったあとのリカバリーが効くのも優秀な点です。
《虹色の終焉》と《剣を鍬に》により、《死の影》や《濁浪の執政》といったクリーチャーの対処に優れています。最近黒いデッキで使われている《カザド=ドゥームのトロール》も処理でき、追放なので《再活性》で再利用される心配もありません。
Legacy Challenge 7/8
新たなエスパーの形
2023年7月8日
- 1位 Esper Midrange
- 2位 Mystic Forge Combo
- 3位 Mono Red Prison
- 4位 Izzet Delver
- 5位 Paradigm Shift
- 6位 Death’s Shadow
- 7位 Mono Black Helm
- 8位 Temur Cascade
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今大会を優勝したのは《オークの弓使い》をフィーチャーしたEsper Midrangeでした。
デッキ紹介
Esper Midrange
環境を問わず効率的なスペルを活用したデッキを制作して結果を残しているOzymandias17氏は、今大会でも新カードの《オークの弓使い》をフィーチャーしたEsper Midrangeで優勝を果たしました。
《瞬唱の魔道士》や《悪意の大梟》《オークの弓使い》といったアドバンテージが取れるクリーチャーでゲームをコントロールしていきます。《悪意の大梟》や《オークの弓使い》に加えて白い優秀な除去が使えるので、特にクリーチャーデッキに強い構成になっています。
☆注目ポイント
墓地に落ちた《オークの弓使い》を再利用できる《再活性》や、《再活性》を「フラッシュバック」できる《瞬唱の魔道士》があることで、相手よりも多く《オークの弓使い》をプレイすることができ、フェアデッキとのマッチアップで有利にゲームを進めることができます。
沼の基本地形タイプを持つ土地を「サイクリング」できる《カザド=ドゥームのトロール》は、地味ながらデッキの安定性の向上に一役買っています。「サイクリング」したあとに《再活性》によって墓地から復活させることもできるので、最速で2ターン目から回避能力持ちパワー6のクリーチャーを展開することができます。
Legacy Challenge 7/9
オークの時代
2023年7月9日
- 1位 Abzan Depths
- 2位 Death’s Shadow
- 3位 Sultai Midrange
- 4位 Mystic Forge Combo
- 5位 Esper Control
- 6位 Jeskai Control
- 7位 Temur Cascade
- 8位 Grixis Delver
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日曜日に開催されたLegacy Challengeも、《オークの弓使い》を採用したデッキがプレイオフの半数以上を占める結果となりました。
《オークの弓使い》を採用していないデッキは、Temur CascadeやMystic Forge Comboといった小型クリーチャーやキャントリップスペルを使用しないデッキが中心になっています。
デッキ紹介
Death’s Shadow
《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」にしたデッキはDeath & TaxesやBlue Zenithといったデッキが中心でしたが、最近はDeath’s ShadowやDelver系でも見られるようになりました。
《不毛の大地》+《目くらまし》デッキは妨害とクロックをバランスよく引きやすい60枚のほうが安定するとされていましたが、80枚バージョンのDeath’s ShadowはLegacy Showcase Challengeでも結果を残していたことからも、このデッキの強さは本物のようです。
《空を放浪するもの、ヨーリオン》がゲーム前に提示されれば、たいていはDeath & Taxesかコントロール・ミッドレンジ系でしたが、今後はDeath’s Shadowなどテンポデッキである可能性も想定する必要が出てきそうです。
☆注目ポイント
《サウロンの交換条件》は青いフェアデッキの新たなアドバンテージ源として注目を集めています。《嘘か真か》と似た効果で、ドローではないので《オークの弓使い》に引っかからないのも評価点になります。墓地にカードが落ちるため「探査」とも相性が良く、クリーチャーが落ちた場合は《再活性》によって再利用することもできます。
サイドの《無のロッド》は、《一つの指輪》が登場したことによって強化されたMystic Forge Comboなどアーティファクトをベースにしたデッキに有効なため、今後定番のサイドカードになりそうです。
総括
『指輪物語:中つ国の伝承』リリース後の環境を見ていきましたが、やはり新カードの《オークの弓使い》の強さが目立ちます。強すぎるという意見も見られますが、青いデッキに対しては非常に強力である反面、プリズン系やTemur Cascadeなどドロースペルを使用しないデッキとのマッチアップでは極めて平凡なクリーチャーで、マッチアップによって評価が大きく分かれるカードでもあります。
《オークの弓使い》の影響で小型クリーチャーを使ったデッキが環境から締め出されてしまう懸念はありますが、《渦まく知識》などドロースペルをプレイするタイミングなど駆け引きが面白くなったのも事実です。今後プレイヤーがどのようにして《オークの弓使い》環境に対応していくか要注目です。
USA Legacy Express vol.220は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!