はじめに
こんにちは、富澤です。
猛暑日が続きますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。こう暑い日が続きますと、正直申し上げて何もやる気が出ません。こんな日は室内で過ごすのが一番ですね。デッキを手に取り、近くのカードショップへとなだれ込みましょう!
それでは、今週もはりきってスタンダードの大会結果を見ていきます。
先週末の注目トピックは?
右を向いても左を向いても黒、黒、黒と黒いデッキのオンパレード。先週末に開催された『Standard Challenge』では黒単とディミーアの両ミッドレンジが一大勢力であり、次点のエスパーコントロールまで含めると上位には黒いデッキしか見当たらない結果となりました。
そして上位からアグロが減り、ミラーマッチや対コントロール、ランプが増えたことで、少しずつですが黒系ミッドレンジの構築にも変化が生じています。
今回のトピックでは黒単ミッドレンジのカード選択を取り上げます。
アグロが減り、ミラーマッチが増えていくなかで、黒単ミッドレンジはデッキの骨格そのままに脅威を変えることで先へ進もうとしています。対クリーチャー戦以外では効果の薄い《ギックスの命令》を減らし、別のアドバンテージ獲得手段へと入れかえているのです。
今のところ候補となっているのは《裏切りの棘、ヴラスカ》と《不笑のソリン》。ハンド補充能力は共通していますが、マイナス能力が真逆の効果となっています。ミラーマッチでは《ファイレクシアの肉体喰らい》や《黙示録、シェオルドレッド》を定着させないかがひとつの焦点であり、《裏切りの棘、ヴラスカ》がやや有利といえます。
《シェオルドレッド》はミラーマッチをはじめ、プレインズウォーカーを多用しているアゾリウスやエスパーコントロールに効果的なクリーチャーです。戦場に出たときの除去効果に加えて、威迫により後続のプレインズウォーカーを牽制してくれるのです。
黒単ミッドレンジの流行はランプ戦略の増加の呼び水にもなりえるため、事前に対策がとられています。基本的には《ヴェールのリリアナ》を活かしたショートレンジのゲーム展開を狙いますが、ランプ側は《強情なベイロス》を採用するなどして対策が進んでいます。そこで《多元宇宙の突破》を採用し、中~長期戦にも備えています。
このままミッドレンジやコントロールを意識してデッキが重い方向へとシフトし続け、単体除去が減ればアグロ戦略にもチャンスが巡ってきますが、そこまではいたっていません。現状はクリーチャーへのガードはほとんど下がっておらず、わずかにカードを入れ替えている程度です。
前置きが長くなりましたが、それでは大会結果をみていきましょう。
7/16(日):Standard Challenge
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Tunaktunak | エスパーコントロール |
準優勝 | Ignotus97 | エスパーコントロール |
トップ4 | claudioh | 4色ミッドレンジ |
トップ4 | adebevoise | 黒単ミッドレンジ |
トップ8 | guiyote | バントポイズン |
トップ8 | Soto_ | 青単テンポ |
トップ8 | Coly2 | アゾリウスミッドレンジ |
トップ8 | Aardos | 黒単ミッドレンジ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
7/16(日)に開催された『Standard Challenge』はエスパーコントロールが優勝しました。トップメタである黒単ミッドレンジとエスパーコントロール以外には、ポイズンや青単などテンポに寄せたデッキも残っています。
トップ4に入賞したclaudioh選手のデッキは、ランプ戦略のマナ加速やフィニッシャーを《婚礼の発表》と《放浪皇》へ変更したドメインベースのミッドレンジ。トークンと各種除去でボードを作りながら、フィニッシャーへと繋ぎます。《ゼンディカーへの侵攻》が抜けた分《装飾庭園を踏み歩くもの》はクリーチャーとして機能しにくくなっており、「版図」のためと割り切って使う必要があります。
メタゲーム
デッキタイプ | トップ32 | トップ16 |
---|---|---|
黒単ミッドレンジ | 11 | 5 |
ディミーアミッドレンジ | 4 | 2 |
エスパーコントロール | 3 | 2 |
4色ランプ | 3 | 2 |
アゾリウス兵士 | 2 | 1 |
その他 | 9 | 4 |
合計 | 32 | 16 |
前日好成績を残した黒単ミッドレンジが数を伸ばして、トップメタに躍り出ています。ほかの上位デッキを見るにミッドレンジ vs. コントロール&ランプの構図となり、ゲームは低速化の方向にあります。いずれのデッキもボードコントロール要素を持っているため、アグロは苦しい立ち回りを強いられています。
トップ8デッキリストはこちら。
ボロスピアナラー
《復興の領事、ピア・ナラー》を軸にしたトークンデッキがトップ32以内に入っていました。ベースとなっているのはパイオニアで活躍するボロスピアナラーであり、今回ご紹介するのはそのスタンダード版です。フォーマットは違えど共通するカードが多く、《スカルドの決戦》や《岩への繋ぎ止め》は代替カードで補っています。
《復興の領事、ピア・ナラー》と《無謀なる衝動》といった衝動的ドローを組み合わせ、カードアドバンテージを稼ぎながらトークンを量産していき、リソース勝負を狙った戦略となっています。全体的に軽いカードで構築されていますが、アドバンテージを稼ぐカードが多いためマリガンに強いデッキです。
デッキ名を冠する《復興の領事、ピア・ナラー》はトークン生成能力をもっており、その能力は歴代のクリーチャーと比較してもかなり緩い条件となっています。マナもタップも不要であり、同一ターンに複数回の誘発も期待できます。2マナにしては良いスタッツですが、手札で複数枚抱えていない限りすぐにプレイするのは厳禁。トークンを量産してこそ真価を発揮するため、下準備が必要不可欠です。
まずは先に《レンの決意》や《無謀なる衝動》で追放領域へカードを用意し、そのあとに召喚するのがベストです。着地後、すぐさま追放領域から呪文や土地カードをプレイすれば最低でも1体以上のトークンが生成されます。逆の手順でプレイした場合、《レンの決意》解決前に《復興の領事、ピア・ナラー》を除去されてしまうとトークンが生成されません。
生成されたトークンは《復興の領事、ピア・ナラー》がいる限り速攻を持つため、すぐさま攻撃へ参加できます。回避能力によりプレインズウォーカーを攻める手段として最適であり、《太陽降下》などの全体除去の返しとしても効果的です。戦線を横に広げていくため黒系ミッドレンジのような単体除去をベースにしたデッキに強く、ひとたびボードを構築してしまえば《ギックスの命令》でもない限り捲れません。
《復興の領事、ピア・ナラー》とシナジーを織りなすのは12枚の衝動的ドローたち。《レンの決意》と《無謀なる衝動》はパイオニアのボロスピアナラーでも見かける呪文であり、追放されたカードを2枚ともプレイできれば《表現の反復》級のアドバンテージをもたらしてくれます。
通常、衝動的ドローはマナが足りず使いきれない場合を考えて中盤以降まで抱えてしまいがちですが、このデッキは《復興の領事、ピア・ナラー》ありきで構築されているため、手札にない場合は積極的にプレイして探しにいきます。仮に2ターン目に《レンの決意》をプレイして《復興の領事、ピア・ナラー》と土地か1マナのカードがめくれれば、次のターンに一気にクリーチャーを2体確保できます。
《ミシュラの研究机》は一度に使えるカードの枚数は少ないものの「蘇生」があり、攻め札が足りない際に再度リソースを補充してくれます。
追放領域へとカードを仕込むのは《レンの決意》ばかりではありません。《ナヒリの戦争術》は対象次第でアドバンテージを稼げる火力であり、主に《黙示録、シェオルドレッド》対策です。余剰ダメージで得たカードは追放領域へと置かれ、《復興の領事、ピア・ナラー》のトークン生成条件を満たします。
《タルキールへの侵攻》は置き型の《ショック》であり、《燃え立つ空、軋賜》はいるものの2点火力として使っていきます。注目すべきは守備カウンターを0にした場合の挙動にあり、追放後に「変身」させた状態でプレイされるため、《復興の領事、ピア・ナラー》の効果が誘発するのです。数で攻める飛行機械トークンに対して《果敢な雷口》は単体でダメージを稼げるクリーチャーであり、相手からすればマスト除去といえます。
ほかにも《燃え立つ空、軋賜》や《焦熱の交渉人、ヤヤ》などシナジーを形成するカードを採用しており、デッキ全体で《復興の領事、ピア・ナラー》をバックアップする構築となっています。
ゴルガリランプ
ランプといえば3色以上の構築が多く緑と白をベースにしたものばかりでしたが、今回ご紹介するのは対黒単ミッドレンジを意識して別の色に活路を見出したものとなります。
ゴルガリランプはほかのランプ戦略と同じくマナを伸ばし、早期にマナコストの高いカードへ繋いでそのカードパワーでもってボード制圧を狙います。ほかのランプと違うのは3~5マナのクリーチャーが厚く採用されており、マナを伸ばさずにボード構築を優先したミッドレンジのような立ち回りが可能な点にあります。
除去でゲーム展開をスローダウンさせた後、対アグロでは《グリッサ・サンスレイヤー》や《黙示録、シェオルドレッド》などの高スタッツクリーチャーを、対ミッドレンジではマナ加速を優先的にプレイしていきます。
このデッキのゴールとしておかれているのは、パイオニアの緑単信心でお馴染みの《収穫祭の襲撃》。一度に複数の脅威を展開することで、テンポとカードの両面でアドバンテージを獲得しながら、相手に対処を迫ります。《黙示録、シェオルドレッド》や《沈黙を破る者、スラーン》、プレインズウォーカーなど5マナ以下の脅威をメタゲームに合わせて選択していきましょう。
ほかのランプ戦略と同様に《ヴェールのリリアナ》を苦手としていますが、懐かしのメタカードが採用されています。《強情なベイロス》はライフ回復付きの高スタッツクリーチャーであり、アグロマッチでは優秀な壁役となります。
その真価は捨てられることにあり、《ヴェールのリリアナ》の[+1]効果で捨てた場合には置換効果で戦場へと出せます。メインとサイド合わせて4枚取られていることからも、黒単ミッドレンジを意識していることがわかります。
そのほかの大会結果
7/17(土):Standard Challenge
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | FerMTG | 黒単ミッドレンジ |
準優勝 | bernardocssa | 黒単ミッドレンジ |
トップ4 | duke12 | 黒単ミッドレンジ |
トップ4 | Patxi | 黒単ミッドレンジ |
トップ8 | Lennny | エスパーコントロール |
トップ8 | kasa | 白単人間 |
トップ8 | musasabi | ディミーアミッドレンジ |
トップ8 | MJ_23 | ディミーアミッドレンジ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
7/17(土)に開催された『Standard Challenge』は黒単ミッドレンジがトップ4を独占する結果となりました。ミラーマッチに寄せて《裏切りの棘、ヴラスカ》や《不笑のソリン》を採用した構築も登場しています。
メタゲーム
デッキタイプ | トップ32 | トップ16 |
---|---|---|
ディミーアミッドレンジ | 8 | 4 |
黒単ミッドレンジ | 6 | 5 |
エスパーコントロール | 5 | 1 |
アゾリウス兵士 | 4 | 0 |
4色ランプ | 2 | 2 |
ディミーアテンポ | 2 | 0 |
その他 | 5 | 4 |
合計 | 32 | 16 |
トップ32の半数近くを黒系ミッドレンジが占める結果となりました。軽量クロック+《ヴェールのリリアナ》で遅いコントロールを攻略し、ディミーアいたってはさらに打ち消し呪文をタッチして万全を期しています。
メタゲームを見るに、現在のスタンダードは黒系ミッドレンジとエスパーコントロールの2強環境であり、その後ろにランプやそのほかのミッドレンジが続きます。テンポやアグロもいるものの、黒のボードコントロール力は高く、牙城を崩すにはいたっていません。
トップ8デッキリストはこちら。
おわりに
今回はボロスピアナラーとゴルガリランプをご紹介しました。前者についてはパイオニアのダウングレード版だろうと言われれば否定はできませんが、それでもなお、《復興の領事、ピア・ナラー》はデッキとして成り立つほどのカードパワーを秘めています。彼女と《レンの決意》が織りなすシナジーは、使えば病みつきになること間違いなし。ぜひ一度お試しください。
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それでは次回の情報局の時間にお会いしましょう。さらばじゃ。