はじめに
みなさん、こんにちは。
12月に開催予定の『THE LAST SUN 2023』のフォーマットにレガシーが採用され、各地でも予選が開催されています。そして気になる禁止改訂の結果は、長らく禁止だった《精神の願望》が解禁されました。
《精神の願望》は発売前からその強さが話題となり、レガシーというフォーマットができたときから《記憶の壺》など歴代の壊れカードとともに禁止カードになっていました。最近はカードパワーが向上し、0マナでもプレイできるコンボ対策カードも増えたため、《精神の願望》を軸にしたコンボが今後どのように活躍するのか楽しみですね。
さて、今回の連載では『第23期レガシー神決定戦』『Legacy Showcase Qualifier』『Legacy Challenge』の入賞デッキを見ていきたいと思います。
第23期レガシー神決定戦
テーブルトップでもオークが大活躍
2023年7月16日
- 1位 Painter
- 2位 Blue Zenith
- 3位 Mono Red Prison
- 4位 Reanimator
- 5位 Sneak and Show
- 6位 Initiative
- 7位 Elves
- 8位 ANT
トップ8のデッキリストはこちら
参加者218名で開催された『第23期レガシー神決定戦』。
今大会のプレイオフはDelver系が不在で、Blue Zenith、Initiative、Mono Red Prisonなどさまざまなデッキが見られ『指輪物語:中つ国の伝承』の影響が大きかったことが分かります。
最終的に優勝したのは、青単に《オークの弓使い》をタッチしたPainterでした。
デッキ紹介
Painter
《絵描きの召使い》+《丸砥石》はレガシーの定番コンボです。《ゴブリンの溶接工》や《紅蓮破》、最近では《ゴブリンの技師》や《鏡割りの寓話》といったカードが登場したのもあり、長い間赤ベースが主力でした。
しかし、ここ数年の間に《思考の監視者》や《河童の砲手》などの青い強力なアーティファクトが登場したため、青ベースの構築も見られるようになりました。
8 Castにコンボをハイブリットした構成になっており、《思考の監視者》や《物読み》といったドロースペルでアドバンテージも稼げるため、対策カードを多用するデッキとのマッチアップでも粘り強く戦うことができるようになりました。
このデッキは、コンボだけでなく《ウルザの物語》や《河童の砲手》といった攻め手があるので対策をひとつに絞られにくく、カウンターも多く採用されているのでほかのコンボとも互角以上に渡り合えます。
☆注目ポイント
《意志の力》でバックアップされた《絵描きの召使い》+《丸砥石》コンボは相手にとって大きな脅威です。《丸砥石》は《ウルザの物語》でサーチしてくることができ、《絵描きの召使い》もサーチ手段こそないものの《湖に潜む者、エムリー》や《物読み》《思考の監視者》などでデッキを掘り進むことで引き当てやすくなります。
《湖に潜む者、エムリー》はこのデッキの重要なエンジンで、対処された《絵描きの召使い》や《丸砥石》を墓地から再利用することができます。《ミシュラのガラクタ》と組み合わせれば、手軽なアドバンテージエンジンとして機能するため、相手にとってはマスト除去になります。
ベースは青単ですが《オークの弓使い》のために黒がタッチされています。黒マナは《産業の塔》《水蓮の花びら》《オパールのモックス》から捻出することができるので、プレイに困ることはそこまでありません。
このデッキから《オークの弓使い》が出てくるとは相手も考えにくいので、予選で活躍したことが予想されます。アーティファクトではないため《溶融》で流れないのも評価点であり、このクリーチャーに除去を使ってくれれば《湖に潜む者、エムリー》や《絵描きの召使い》といったカードも生き残りやすくなります。
Legacy Showcase Qualifier 7/19
ショーケースでもオークの群れ
2023年7月19日
- 1位 Painter
- 2位 Grixis Delver
- 3位 Dark Depths
- 4位 4C Control
- 5位 Azorius Stoneblade
- 6位 Lands
- 7位 Grixis Delver
- 8位 Death’s Shadow
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予選を通過したプレイヤーのみが参加できたイベントで、優勝者にはMOCS本戦への参加権が与えられました。
トップ8のうち6名が《オークの弓使い》を採用したデッキを選択しており、トップ4にまで勝ち残ったすべてのデッキが《オークの弓使い》デッキという極端な結果になりました。
そして、優勝したのは《オークの弓使い》をタッチした赤単のPainterでした。
デッキ紹介
4C Control
『指輪物語:中つ国の伝承』の目玉カードである《一つの指輪》は、レガシーの多くのデッキを強化しており、多色コントロールのアドバンテージエンジンとしても定着しています。
もともと多色コントロールはフェアデッキの頂点に位置していましたが、《一つの指輪》《喜ぶハーフリング》《オークの弓使い》といった強力なカードが加わりさらに強化されました。
優秀な除去にアドバンテージエンジン、フィニッシャーとそろっているため、対応力があり環境の多くのデッキと互角以上に渡り合えます。
☆注目ポイント
《一つの指輪》は過去にコントロールのフィニッシャーを務めていた《精神を刻む者、ジェイス》とよく比較されます。《精神を刻む者、ジェイス》と大きく異なる点は、多くのデッキに採用されている《紅蓮破》で対処されないところです。戦闘によって墓地に送られることもなく、プロテクションにより安全にターンを迎えることも容易です。
前環境からフェアデッキのフィニッシャーとして活躍していた《自然の怒りのタイタン、ウーロ》ですが、《一つの指輪》によるライフロスを回復できるので重要性がさら増しています。この2枚がそろってしまえば、大量のカードをもたらしてくれるので速やかにゲームを終わらせてくれます。
《喜ぶハーフリング》は《自然の怒りのタイタン、ウーロ》や《一つの指輪》《時を解す者、テフェリー》といった強力なカードを、カウンターされることなく1ターン速く出すことを可能にします。タフネスが2なので《オークの弓使い》で落とされないのも優秀です。
ドローを多用するこのデッキにとって《オークの弓使い》は厄介なので、効率的に対処する手段としてこのデッキにも《オークの弓使い》が採用されています。こういったフェアデッキはコンボデッキに弱いのが常ですが、このカードのおかげでドロースペルを咎めながらプレッシャーをかけやすくなっています。
Dimir Shadow
《死の影》は《表現の反復》禁止後の環境で失ったパーツがなく、Izzet Delverが弱体化した影響で増加したコンボデッキにも強いことで有力なデッキとされていました。
Dimir Shadowは《オークの弓使い》を強く使えるアーキタイプです。《致命的な一押し》で相手の《オークの弓使い》を対処しやすく、《再活性》によって相手よりも多く《オークの弓使い》をプレイする機会があります。
☆注目ポイント
《オークの弓使い》の影響で黒いデッキが増加したため、《殺し》よりも《四肢切断》や《致命的な一押し》が優先されたりと除去の選択にも変化が見られます。
このデッキが『指輪物語:中つ国の伝承』から得たものは《オークの弓使い》だけではありませんでした。「土地サイクリング」カードを持つ《カザド=ドゥームのトロール》は、1マナで《湿った墓》や《Underground Sea》をサーチすることができ、デッキの安定性の向上に一役買っています。
《カザド=ドゥームのトロール》をサイクリングして《再活性》することで、2ターン目からクロックを展開することもできます。黒いクリーチャーなので《紅蓮破》や《殺し》などの除去に耐性があるのも優秀です。また、ライフを減らせる《再活性》は《死の影》と相性が良く、今後はこのデッキの標準装備になることが予想されます。
Legacy Challenge 8/12
黒が強い時代
2023年8月12日
- 1位 Mono Black Helm
- 2位 Jeskai Control
- 3位 Lands
- 4位 Doomsday
- 5位 Lands
- 6位 Grixis Delver
- 7位 Grixis Delver
- 8位 Death and Taxes
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今大会は《オークの弓使い》によって強化されたHelm Comboが優勝を収めました。強力なトークン生成スペルである《進め、エオルの家の子よ!》をフィーチャーした、Jeskai Controlも準優勝と健闘しています。
デッキ紹介
Mono Black Helm
レガシーでは長い間不遇の時代を過ごしてきた黒でしたが、ここ数年《ダウスィーの虚空歩き》《敵対工作員》《悲嘆》といった強力な黒いカードが登場したことで過去の話になりつつありました。そして《オークの弓使い》を獲得し、黒単というアーキタイプもLegacy Challengeで優勝するほどにまで強化されました。
《Helm of Obedience》+《虚空の力線》/《ダウスィーの虚空歩き》によ る瞬殺コンボも搭載されており、《暗黒の儀式》や《金属モックス》などのマナ加速を利用することで最速で1ターン目に仕掛けることもできます。
《悲嘆》や《思考囲い》によるハンデスや、《ダウスィーの虚空歩き》《敵対工作員》といった妨害で相手の行動を制限したりと黒単色とは思えないほどの対応力持ち合わせています。
☆注目ポイント
強いコンボの条件としてコンボパーツが単体でも有用なことが挙げられます。コンボパーツである《虚空の力線》は、ゲーム開始時に置ければReanimatorやCephalid Breakfastなど墓地デッキに対してほぼ勝ちが確定します。フェアデッキも最近は「昂揚」や「探査」、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》など墓地をリソースとしているため、効果的に働きます。
また、《虚空の力線》や《ダウスィーの虚空歩き》がある状態で《不正利得》が通れば、相手の手札をすべて追放したうえで、自分の墓地から3枚のカードを手札に戻すことができます。
《黙示録、シェオルドレッド》に加えて《オークの弓使い》も獲得したため、《渦まく知識》や《思案》を多用するデッキにとって脅威となります。《大いなる創造者、カーン》によるシルバーバレット戦略も取られており、アタッカーをシャットアウトする《罠の橋》やコンボパーツの《Helm of Obedience》など状況に応じたアーティファクトをサーチします。
Legacy Challenge 8/13
あらゆるデッキで活躍するオーク
2023年8月13日
- 1位 Death and Taxes
- 2位 Abzan Depths
- 3位 Grixis Delver
- 4位 Mono Red Prison
- 5位 Doomsday
- 6位 Death’s Shadow
- 7位 Death’s Shadow
- 8位 Lands
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《精神の願望》が解禁されても環境は変わらず、Grixis DelverやDeath’s Shadowなど《オークの弓使い》を強く使えるデッキが中心でした。《精神の願望》を活かせるのは主にコンボデッキなので、これらのデッキが多い環境では厳しくなりそうです。
デッキ紹介
Death and Taxes
《オークの弓使い》はDeath and Taxesでも使われています。黒をタッチすることでデッキ本来の強みであったマナ基盤の安定性こそ下がりますが、全体的なデッキパワーは上がっています。
タフネス1のクリーチャーが多いので《オークの弓使い》は天敵であり、このデッキは減少傾向にありました。しかし、《孤独》や《剣を鍬に》といった追放系の除去は増加傾向にあるAbzan Depthsなどに強く、Death’s Shadowなども基本有利なマッチアップになります。
☆注目ポイント
《オークの弓使い》は小型クリーチャーに睨みをきかせつつ、ドローを咎めるヘイトベアーのように機能します。このデッキではさらに《ちらつき鬼火》で能力を使いまわすことができ、出てくるトークンも装備品との相性が良いです。
《虚空の力線》《フェアリーの忌み者》《精神壊しの罠》《耳の痛い静寂》など、サイドボードはコンボ対策が多めです。コンボの最速のアクションを妨害することで、ヘイトベアーを展開するまでの時間を稼ぐことができます。特に《精神壊しの罠》はStorm、Doomsday、Reanimatorなど、《暗黒の儀式》から複数のスペルをプレイするコンボ相手に貴重な0マナの妨害として活躍します。
総括
《精神の願望》が解禁されましたが、《満潮》や青系のストームコンボが強化された以外は環境に与える影響はそれほど大きくないようです。《オークの弓使い》や《虚空の杯》を使ったデッキが多数存在する現環境では、コンボデッキはそれほど脅威になることはなく比較的安全な変更だったといえます。
《精神の願望》を強く使えるデッキとして《満潮》コンボが有力で、アメリカのプロであるReid Duke氏がLegacy Preliminaryで4-0した動画が挙がっているので興味がある方は観てみてください。
USA Legacy Express vol.221は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!