スタンダード情報局 vol.131 -食物でランプせよ!-

富澤 洋平

はじめに

みなさん、こんにちは。富澤です。

毎日『エルドレインの森』の新カードが公開されるため、それが楽しみでなりません。どう使おうか、どんなデッキにしようかと頭を悩ませています。

エルドレインは過去に『エルドレインの王権』で訪れていた次元であり、『エルドレインの森』には「出来事」や「食物」といったメカニズムが再登場します。

今回の情報局では「食物/Food」に注目しながら、新カード《菓子の復讐の夜》の可能性を探ります。

「食物/Food」とは?

「食物」の定義

食物トークン

《食物》

トークン・アーティファクト – 食物

2, T, このアーティファクトを生け贄に捧げる:あなたは3点のライフを得る。

食物/Food」とは《血トークン》《宝物トークン》と同じくアーティファクトが持つサブタイプのひとつ。このサブタイプは《食物トークン》のようにほかのカードの効果で生成されるものもあれば、カード自身が持っている場合もあります。

金のガチョウ大釜の使い魔

食物・トークンの能力はシンプルにライフ回復のみですが、一部のカードは「食物」を生贄に捧げることを起動コストに含んでおり、それらとシナジーを形成します。《金のガチョウ》《大釜の使い魔》はその最たる例といえます。

ジンジャーブルート

《ジンジャーブルート》は、アーティファクト・クリーチャーに加えて「食物」と「ゴーレム」の2つのサブタイプを持ちます。そのため、クリーチャーでありながら食物・トークンと同じく《金のガチョウ》《大釜の使い魔》のコストにあてることが可能です。

「食物」の歴史

創案の火砕骨の巨人探索する獣

「食物」が初登場したのは、今から4年前に発売された『エルドレインの王権』です。《創案の火》《砕骨の巨人》《探索する獣》などの強力なカードが多数登場し、それらは今なお数多くのフォーマットで活躍を続けています。

王冠泥棒、オーコ

当時のスタンダードで最初期に活躍したのは、なんといっても《王冠泥棒、オーコ》でしょう。手ごろなマナコストとそれに見合わない忠誠度の高さ、クリーチャー処理能力と万能感のあるプレインズウォーカーでした。食物・トークンを生成するためダメージレースにも強く、アグロ戦略にも付け入る隙を与えません。

このイかした3マナのプレインズウォーカーと「食物」は見事なまでのシナジーを形成し、一時代を築きました。

シミックフードは食物・トークンとのシナジーを採用したランプデッキであり、《金のガチョウ》《王冠泥棒、オーコ》のシナジーにより安定したマナ供給を実現しています。大型クリーチャーに対してはオーコが睨みを利かせ、小型クリーチャーは《意地悪な狼》で対処するなど高いボードコントロール能力を有していました。

魔女のかまど大釜の使い魔パンくずの道標貪るトロールの王

『エルドレインの王権』期のスタンダードには食物・トークンとのシナジーを組み込んだデッキが数多く存在していました。たとえば《大釜の使い魔》《魔女のかまど》の循環エンジンを持つ「ラクドスサクリファイス」、先のデッキに《パンくずの道標》をプラスした「ジャンドサクリファイス」、《貪るトロールの王》をフィニッシャーに据えた「緑単フード」などです。

いずれにしても、副時効果として生成された食物・トークンをライフ以外のリソースへと変換できるエンジンを構築できるかが焦点でした。

新セットの「食物」カードに注目してみよう

最新セットである『エルドレインの森』にも、すでに「食物」関連のカードが登場しています。

《貪る甘味大口》は出来事で序盤のマナカーブを埋めながら、1枚で2種類のトークンを生成してくれます。内1種類がクリーチャー・トークンであるため、相討ち要員や時間稼ぎに使えます。

《ガチョウの母》は可変的なマナコストが魅力であり、余っているマナ次第ではフィニッシャーと呼べるカードです。攻撃時に食物・トークンをドローへと変換するなど追加戦力の補充までこなします。

どれも魅力的なカードですが、『エルドレインの王権』の《王冠泥棒、オーコ》《金のガチョウ》と比較するとやや大人しめなデザインな印象です。デッキの根幹となるようなカードを求めていると《菓子の復讐の夜》に目がとまりました。

《菓子の復讐の夜》

エンチャント

《菓子の復讐の夜》が戦場に出たとき、食物・トークン1つを生成する。

あなたがコントロールしているすべての食物は「TGを加える」を持つ。

5GG,《菓子の復讐の夜》を生贄に捧げる:ターン終了時まで、あなたがコントロールしているすべてのクリーチャートークンは+X/+Xの修正を受ける。Xは、あなたがコントロールしている食物の数に等しい。起動はソーサリーとしてのみ行う。

《菓子の復讐の夜》は「食物」にマナ生成効果を付与するエンチャント。単体のマナ加速数では《ゼンディカーへの侵攻》に劣りますが、下準備次第では爆発的なマナ加速が見込めます。5ターン目に緑の大型クリーチャーを召喚したり、多色化して《偉大なる統一者、アトラクサ》《原初の征服者、エターリ》などの召喚が狙えそうです。

さらにマナの余りがちな中盤以降では、自身を生贄に捧げることで全体強化も可能です。起動コストは7マナと重いものの、食物・トークンからのマナをあてることで十分に届きます。

マナ生成とバフ効果のどちらも「食物」の数を参照するため、事前に頭数を揃えておく必要があります。

《菓子の復讐の夜》の可能性

《菓子の復讐の夜》の効果は構築に左右されます。事前に「食物」の数を確保しておくことで大量のマナ加速が狙えるため、3マナ以下のカードに注目していきます。

《貪る甘味大口》と《甘歯村の断罪人、グレタ》は1枚でクリーチャーと食物・トークンを生成し、ボード構築とマナ加速に向けた下準備を同時におこなえます。ランプ戦略の弱点であるボード構築の弱さを補えるのです。後者は優れたスタッツに加えて食物をライフ以外のリソースへも変換してくれるため、マナが余った際に別の用途が生まれランプ戦略と噛み合っています。

ですが、マナ加速という点ではより優れたカードがあります。

《菓子の復讐の夜》の影響下であれば、《堅いクッキー》と《僻境からの帰還》のどちらも1枚で2マナ加速が見込めます。《堅いクッキー》は戦場へ出たときに食物・トークンを生成することに加えて、自身のサブタイプが食物であるため、トークンと自身の両方から色を捻出できます。

《僻境からの帰還》は《不屈の自然》に食物・トークン生成効果が付与されており、同じく2マナ加速となります。

《菓子の復讐の夜》の定着が必須ではあるものの、2~3マナのカードで2マナ以上のマナ加速として機能するため、《ゼンディカーへの侵攻》も真っ青な加速率といえるでしょう。

街並みの地ならし屋偉大なる統一者、アトラクサ原初の征服者、エターリ

実際のところ、《堅いクッキー》か《僻境からの帰還》からはじめて《菓子の復讐の夜》をプレイすれば、5ターン目のセットランド込みで8マナへ到達します。緑単色ならば《街並みの地ならし屋》、多色化していれば《偉大なる統一者、アトラクサ》《原初の征服者、エターリ》をプレイすることができるのです。

おわりに

今回は『エルドレインの森』に再登場する「食物」に注目しました。食物にマナ生成効果を付与する《菓子の復讐の夜》は新たなフードデッキの基盤となるのでしょうか。フードランプの登場に期待しましょう。

プレビュー期間も残りわずかとなりましたが、かつての《貪るトロールの王》のような緑単色で食物シナジーを持つ巨大クリーチャーの登場を願いたいところです。

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富澤 洋平 晴れる屋メディアチームスタッフです。最近は《黙示録、シェオルドレッド》に夢中な日々です。 富澤 洋平の記事はこちら

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