はじめに
みなさんこんにちは、七度目まして。晴れる屋メディアチーム所属の島田と申します。
前回に引き続き、今回も新セット『エルドレインの森』の中から、個人的に感動したカードやみなさんに伝えたいことがあるカードを紹介していきたいと思います。
久しぶりに物語と冒険の次元エルドレインへ来訪することだし、ファイレクシアとの戦争も決着したし、童話とお菓子の明るく楽しい次元がいいなと思っていたら…ウィルとローアンが喧嘩してるー!?
共有していたプレインズウォーカーの灯が消えてしまったせいなのか、ストーリー中でウィルとローアンがずっとすれ違い続けていて辛い。エルドレインを救いたい気持ちは一緒のはずなのに、世界が2人を引き裂こうとしているかのようです。さまざまな人物の思惑が渦巻くこの次元で、物語はどう進んでいくのでしょう…
すぐキャラクターに感情移入して話が明後日の方向に進んでいくこの企画、よろしければお付き合いください。
なお、私は毎回以下のような基準でカードを選んでおります。
・絵が可愛い
・カードデザインが美しい
・ストーリーでかっこよく活躍する
・翻訳が上手い
・キャラが好き
・昔のカードのリスペクトが詰まってる
・なんか強そう
・ドラフトで100枚ピックしたい
などなど…つまり特別決まったテーマがあるわけではないので、お気楽な気持ちでご覧ください。
また、今回もMTG公式サイトに掲載されている『エルドレインの森』のストーリーのネタバレを含みます。ご了承ください。
それでは始めましょう。
カード紹介
《人狐のボディガード》
「Werefox Bodyguard」…ふむふむ、Werewolfの狐版なのか。イニストラードに人狼がいたように、この世界には人狐がいるんだな。しかも人間に攻撃的な人狼と違って、人間を護ってくれるしいざとなれば自分を犠牲にプレイヤーのライフを回復してくれる良い人!あれ?「クリーチャー – エルフ・狐・騎士」?
じゃあエルフ狐のボディガードじゃねーか!とはいえ「エルフ狐」だと語呂が悪いし、「狐男」だと女性の人狐が登場したときに困るし、「ワーフォックス」だとどういう生き物なのかわかり辛いし、どんな名前にするかは難しいところです。エルフは妖精だから「妖狐」?それはもう別物だな。
名称の話はさておき、「クリーチャータイプが人間でないこと」を参照するカードは「変容」能力や《軍団のまとめ役、ウィノータ》《イコリアへの侵攻》《眷者の神童、キナン》など多数存在するので、タイプをしっかり覚えておいて損はないでしょう。このカードも狐を対象にできないとはいえ、狐はそんなに…いるな。神河にいっぱい。
《三匹の盲目ネズミ》
イラスト怖っ!!!「盲目」ってそんな「目が身体の外に飛び出しちゃった~」みたいな感じじゃないと思うし、そもそもネズミのものにしては目が大きすぎるし、後ろの人は鬼の形相で包丁を振りかぶってるし、もしや「盲目のネズミが視力を取り戻すために人の目を食べている」的なやつですか?完全にホラーだ!このゲームのハツカネズミって1/1で人間と同じサイズだもんな。
そもそも「三匹の盲目ネズミ」とはなんぞや?と調べてみたら「Three Blind Mice」というイギリスの童謡があるそうな。この童謡も結構怖い内容で、一説では宗教弾圧の暗喩であるという解釈もあるとか…日本でも童謡や民話って冷静に考えると怖いのいっぱいあるけど、海外のそれは文化的な背景を知り切れないからまた違った怖さがある。
そのままネズミを三匹に増やしてもいいですがどうせならⅡ・Ⅲ章の能力で《エルドラージ》トークンや《クラーケン》トークンを増やして、もっとホラーな展開にしたいところです。エルドラージ・トークンもよく見たら目がないし、完全に繋がったな。《マリット・レイジ》?彼女は伝説だからちょっと…
《呪文どもり》
いろんなセットに登場する《マナ漏出》のバリエーション。今回は最初から2マナを要求し、さらにフェアリーの数に応じて要求するマナが増えていく仕様です。フェアリーが1体いるだけで《マナ漏出》と同等、しかもコモン!パウパーでの活躍はすでに約束されていると言っても過言ではない。
しかしフェアリーが多いと強くなる打ち消しって、どこかで見た記憶があるな。それにこのカード名もどこかで見覚えがあるし、英語版も見てみようかな。えーと《呪文どもり》…《呪文づまりのスプライト》だこれ!!
効果はちょっと違いますが、2マナでフェアリーが多くなるほど強化されていく打ち消しという点はそっくり。「づまり」も「どもり」も意味は似ているので、「呪文を唱えているときに言葉を詰まらせて妨害する」という手法なのでしょう。どうせなら翻訳をそろえて欲しかったけど、カード名が被ってると変換のときに大変という説もある。《激情》なんて変換候補が多すぎて、ツールで入力するより手入力するほうが早いからな。
《水生まれの錬金術師》
かわいい~~~!ぽってりとして触り心地のよさそうな胴体、丸っこいけど意外と器用そうな手足、つぶらな瞳、釜を帽子のように被っているところ、すべてがかわいさ満点。ウィザーズ的にはエルドレインのかわいい枠はお菓子クリーチャーたちだと思うのですが、彼らは牙が生えてたりして不気味かわいい方面なので純粋なキュートさは貴重です。
しかも「錬金術師」と名乗って薬の調合を行っているところから見て、このゆるふわな見た目で人並み以上の知性も持ち合わせているようです。この手で本のページをめくってるところを想像すると愛らしいな~。身体から蒸気が噴き出してるから、本が湿気でぐしゃぐしゃになりそうだけど。
昔からもちもちだったりぷよぷよな外見のクリーチャーが好きなので、いずれかわいいクリーチャー単の統率者デッキを組んでみたいですね。しかし色々なクリーチャーを入れたいから5色の統率者を選びたいけれど、かっこいいドラゴンやスリヴァーばかりでいまいちゆるふわ感が…《万物の座、オムナス》の触り心地が良いことに賭けるしかない。
《大食い戦争》
出ました今回の面白翻訳大賞。「Food Fight」と言ったら普通は「大食い競争」を想像しますが(実は和製英語で、英語だと「Competitive eating」と呼ぶそうです)、「大食い戦争」と訳すことで食べ物までも武器に使わざるを得ないほど、激しくてハチャメチャな戦いぶりを一発で想像させるナイスな翻訳。
しかしイラストをよく見ると、食べ物というよりはテーブルや食器を投げて戦っている様子。食物・トークンにアーティファクトというタイプが与えられているのは、食べ物そのものではなく食器や食卓の部分をアーティファクトとしてカウントしている説が出てきました。
もちろん食物以外のアーティファクトを投げられますし、《大食い戦争》が増えるとダメージも増えるので「このカードを中心にデッキを組むと引かなかったときに困るけど、複数枚引くと被って無駄になってしまう」問題もカバー。血でもエーテリウム電池でも屑鉄でもファイレクシアン・ダニでもなんでも使って戦い抜きましょう。食物に混じって血やダニが飛んでくる戦争、シンプルに嫌だな。
《優雅なる叩き伏せ》
テキストが…難しい…!
要は「噛みつき」系カードで、
・オーラが付いている自分のクリーチャー(0体以上、何体でもOK)
・↑で選んでない自分のクリーチャー(0体か1体)
・相手のクリーチャー
をそれぞれ対象とし、自分側のクリーチャーのパワーの合計を相手側に与えるという効果です。『指輪物語:中つ国の伝承』でもこれに似たテキストの《友情の対抗心》があったけど、1つ目で複数体選べるようになってるせいで余計ややこしい。
日本語版と英語版の違いがまた面白くて、英語版では数字が出てこないのに日本語版では「第一者」「第二者」「第三者」と訳されているのに翻訳者の工夫を感じます。第三者が法律用語じゃなくて文字通り第三者なことあるんだ!しかも第一者は複数の可能性があるし、もう何が何だか。《火炎放射》くらいシンプルになってくれてもいいのよ。
《木苺の使い魔》
木苺の使い魔だなんて可愛らしい名前~と思いながらイラストを見たら、特にイチゴ要素は見つからず。英語版の「Bramble」は普段「茨」「棘茨」と訳されており、この子も体は茨でできているようです。とはいえ訳が変なわけではなく、木苺もバラ科で棘を持つものが多いのでこの茨が木苺のものでも不思議はありません。可愛さ重視の訳、いいですね。
しかもこのカード、出来事部分の翻訳も気が利いてます。英語版の「Fetch Quest」は日本だと「お使いクエスト」などと呼ばれ、ゲームで依頼を受けてアイテムを取ってくるだけのシンプルなイベントを差します。それを「初めてのお使い」と訳すことにより、急に脳内にあのメロディが!最近はNetflixでも放送してるらしいですよ。
そんなかわいいカード名ながら効果は凶悪で、切削でめくれさえすれば《引き裂かれし永劫、エムラクール》でも《全知》でも出し放題。エムラクールの墓地に置かれたときの能力が誘発する前に《初めてのお使い》で戦場に出るので相性ばっちりです。はじめてのおつかいでエムラクールが発見される世界、怖すぎる。
《ガチョウの母》
イラスト怖っ!!!(2回目)。鳥の頭ってそんなに簡単に増えるものじゃなくないですか?ハイドラと混ぜればいいというものでもないし、そもそもシミックでもないのにどうやって混ぜたんだ。「おとぎ話」版の《倍増の季節》やちびキャラシールのデフォルメイラストだとかわいい系だったけど、写実的なイラストになるとこんなに怖いんだな。
しかしイラストが怖いとはいえ、見たところ異名もないのに伝説のクリーチャーなのはなぜでしょう。ガチョウの母…「The Goose Mother」…なるほど「マザー・グース(外部リンク)」か!童話の世界でマザーグースなら、たしかに伝説のクリーチャーにふさわしいですね。洒落た命名だ。
ある意味壮大な名前を背負うだけあって、カードとしてもかなり強力。青緑2色・マナを払うほど巨大になって出てくる・飛行持ち・ライフ回復とドローを備える、と《ハイドロイド混成体》リスペクトの能力ですが、素のサイズに優れる分ドローやライフ回復に手間がかかるのでアグロデッキ向きに見えます。そしてなんといっても《倍増の季節》との相性は抜群!これ以上首が増えたら恐ろしいけど、強いならOKです。
《似姿の物あさり》
語源たる《マーフォークの物あさり》から脈々と続くルーターシリーズの最新弾は、本家の引いて捨てるルーター能力に加えて飛行と墓地のクリーチャーのコピーになる能力を備えて登場。墓地のクリーチャーのコピー…《ヴォルラスの多相の戦士》…文章変更効果…うっ頭が…。
《ヴォルラスの多相の戦士》といえば頭痛を引き起こすほどルールがややこしいことでジャッジ界では有名(独自研究)ですが、このカードは「自分の能力で捨てたカードのコピーになれる」点を除けば《万面相、ラザーヴ》に似ていてシンプルなほうなのでジャッジも安心!とはいえコピー効果の時点で結構ややこしいのは否めませんが(コピー効果がどれだけややこしいのかはお近くのジャッジにお尋ねください)。
軽くて戦場に出るときのペナルティ能力を持ったクリーチャーをコピーするのが一番適しているので、《ファイレクシアン・ドレッドノート》や《死の飢えのタイタン、クロクサ》との相性は抜群。スタンダードなら同じセットの《眠り呪いのフェアリー》も相性が良く、こちらはアンタップ能力でルーター能力を何度も起動できるようになります。すでにフェアリーデッキで活躍しているとかなんとか?使ってみたい方、今のうちですよ。
《眠らずの小屋》
今回の2色土地枠は『戦乱のゼンディカー』『ゲートウォッチの誓い』以来の2色ミシュラ土地。5枚すべてが「攻撃するたび」に誘発する能力を持ち、黒緑は墓地のカードを追放して食物トークンを生成します。墓地のカードがなんでも食物になるなんて、SDGsにも配慮していて素晴らしい。あとイラストが顔っぽく見えるのも可愛いですね。\ハーイ/
攻撃するたびに能力が誘発するのでなるべく攻撃回数を増やせるよう大き目のパワー/タフネスであってほしいところを、《眠らずの小屋》は4マナ起動で4/4と申し分ないサイズ。同じく墓地を追放する能力を持つ《目玉の暴君の住処》と比べても一回り大きく、さらに食物まで付いてきます。これを生け贄にすれば3点回復するので、実質絆魂を持っていると言っても過言ではない。
黒マナも緑マナも出せてこんな高性能で良いんですか?またルールの話ですが「墓地にあるカード最大1枚を対象とする」なので、もし墓地に1枚もカードがなくても食物が出せることと、対象を取った場合はそのカードが能力解決時に(別の効果で追放されたりして)不適正になっていた場合は食物はでません。今後よく使われそうなカードなので覚えておきましょう。絶対に食物が欲しいときには、カードがあっても何も追放しないのもあり。
おわりに
今回はここまで。ほかにも『エルドレインの森』にはたくさんの魅力的なカードがありますので、ぜひカードリストを見てお気に入りの1枚を探してみてください。カードリストはこちら!
それではみなさま、『イクサラン:失われし洞窟』でお会いしましょう。また次回!