USA Modern Express vol.103 -コンボに込めるアガサの魂-

Kenta Hiroki

はじめに

みなさん、こんにちは。

構築フォーマットのなかでも人気があるモダン。最近では《豆の木をのぼれ》《アガサの魂の大釜》など『エルドレインの森』の影響もあり、面白い環境となっています。

さて、今回の連載では『Modern Challenge』の入賞デッキを見ていきたいと思います。

Modern Challenge 9/30 #1
現代版のDomain Zoo

2023年9月30日

  • 1位 Domain Zoo
  • 2位 Rakdos Grief
  • 3位 Titan Shift
  • 4位 Amulet Golos
  • 5位 5C Omnath
  • 6位 Bant Control
  • 7位 Hardened Scales
  • 8位 Hardened Scales

トップ8デッキリスト

Hardened ScalesやBant Controlなど『エルドレインの森』で強化されたデッキが複数上位で見られます。

今大会の決勝戦まで勝ち進んだデッキは、現環境トップメタのRakdos Griefと現代の強力なカードを多数搭載したDomain Zooでした。

デッキ紹介

Rakdos Grief

Rakdos Griefはもともと強かったデッキですが、プロツアーを制したことで人気度がさらに上がり現在でも高い勝率を維持しています。

多色コントロールなど相性が悪いデッキは存在するものの、絶望的なマッチアップが少なく特定の対策カードが存在しないため、今後も安定して上位で見かけることになるアーキタイプになることが予想されます。

悲嘆死せざる邪悪

最速1ターン目から《悲嘆》《死せざる邪悪》のコンボで相手のプランを半壊させる動きはデッキを問わず強力です。コンボ以外でも妨害能力を内蔵した《オークの弓使い》《ダウスィーの虚空歩き》、アドバンテージを稼ぐ《鏡割りの寓話》とそろっているためミッドレンジとしても十分な強さを発揮します。

☆注目ポイント

Not Dead After All

《まだ死んでいない》は『エルドレインの森』から登場した《フェイン・デス》の亜種です。《フェイン・デス》の場合は+1/+1カウンターが置かれてしまうため、《死せざる邪悪》の「不死」と相性がよくありませんでした。《まだ死んでいない》であればエンチャントによる修正であり、おまけに1点ライフルーズもついています。

死の飢えのタイタン、クロクサ

《死の飢えのタイタン、クロクサ》は同型やIzzet Murktide、多色コントロールとの消耗戦に強いカードです。「脱出」持ちなので《鏡割りの寓話》のⅡ章と相性が良く、《激情》《悲嘆》をピッチでプレイするコストにもなります。また誘発した能力は対象を取らないので、《一つの指輪》のプロテクションで守られた相手にも有効です。

血染めの月

土地コンボよりも同型やTemur Rhinoが人気の現環境では、《血染めの月》がサイドに採用される傾向にあります。多色デッキやTronが流行るメタならば再びメインに採用する選択肢もあります。

Bant Control

『エルドレインの森』で登場した《豆の木をのぼれ》のために緑をタッチしたアゾリウスコントロール。

《豆の木をのぼれ》を採用したデッキといえば4C Omnathが挙げられますが、《対抗呪文》《至高の評決》《覆いを割く者、ナーセット》《時を解す者、テフェリー》といったカードを採用しているなど、より古典的なコントロールに近いスタイルに仕上がっています。

緑のタッチは必要最低限に留まっていますが、《力線の束縛》を採用しているため《ラウグリンのトライオーム》《ゼイゴスのトライオーム》といったトライオームが複数採用されています。

☆注目ポイント

論理の結び目

《対抗呪文》が再録されて以来プレイされなくなった《論理の結び目》でしたが、《豆の木をのぼれ》とのシナジーがあるということでここにきて再評価されています。墓地に十分なカードが溜まっていればX=3以上でプレイすることも容易で、《豆の木をのぼれ》を誘発させることでアドバンテージを獲得できます。

Cosmic Rebirth

《星界の再誕》《覆いを割く者、ナーセット》《時を解す者、テフェリー》といったプレインズウォーカーをリアニメイトできます。インスタントなのでカウンターを構えつつプレイすることができ、サイクリングしたトライオームなども戻せます。ライフゲインもアグロデッキとのマッチアップで地味にうれしい効果です。

水辺の学舎、水面院Geier Reach Sanitarium

能力持ちの土地を有効活用しており、《水辺の学舎、水面院》《一つの指輪》でアドバンテージを稼いだり、《ガイアー岬の療養所》《覆いを割く者、ナーセット》によるソフトロックコンボも搭載されています。

Modern Challenge 9/30 #2
新セットによって強化されたHardened Scales

2023年9月30日

  • 1位 Grinding Station
  • 2位 Hardened Scales
  • 3位 Burn
  • 4位 Dimir Coffers
  • 5位 Rakdos Grief
  • 6位 Golgari Yawgmoth
  • 7位 Rakdos Grief
  • 8位 Golgari Yawgmoth

トップ8デッキリスト

新戦力《アガサの魂の大釜》を採用したHardened Scalesが今大会でも準優勝という好成績を残していました。ほかのイベントでも複数入賞しており、現環境で要注目のデッキになります。

デッキ紹介

Hardened Scales

モダンのデッキのなかでは使いこなすのが難しいデッキになりますが、《硬化した鱗》《打ち砕かれた尖塔、オゾリス》《電結の荒廃者》の強力なシナジーを活かし、《歩行バリスタ》に大量の+1/+1カウンターをのせて相手を突然死させるパワーがあります。

☆注目ポイント

Agatha's Soul Cauldron歩行バリスタ

《アガサの魂の大釜》は+1/+1カウンターと強力なシナジーを持ち、《電結の荒廃者》《搭載歩行機械》《歩行バリスタ》など優秀な能力を持つクリーチャーを搭載したこのデッキに非常にマッチしています。

《歩行バリスタ》を墓地から追放できれば、容易に相手に致死ダメージを与えることができます。能力を起動した際にクリーチャーにカウンターを乗せることもできるので、《硬化した鱗》《打ち砕かれた尖塔、オゾリス》との組み合わせも強力です。

ウルザの物語オゾリス微光蜂、ザーバス

《ウルザの物語》は強力なカードアドバンテージ源であると同時に、《オゾリス》《微光蜂、ザーバス》といった重要な1マナのアーティファクトをサーチする手段にもなります。アーティファクトづくしのこのデッキでは、構築物・トークンのサイズもフィニッシャー級になるのでミッドレンジやコントロールとのマッチアップでも有利に立ち回ることができます。

Ozolith, the Shattered Spire

『機械兵団の進軍』から登場した《打ち砕かれた尖塔、オゾリス》は、追加の《硬化した鱗》として働くだけでなく自身の能力でカウンターを乗せれるため、いろいろなカードとシナジーします。ただ、伝説であることと《アガサの魂の大釜》と同じ2マナであるため現在ではメインに2枚ほどの採用になっています。

Modern Challenge 10/1
エルドレインの森からの新カードが活躍

2023年10月1日

  • 1位 Golgari Yawgmoth
  • 2位 5C Omnath
  • 3位 Rakdos Grief
  • 4位 Domain Zoo
  • 5位 Mono Red
  • 6位 Selesnya Company
  • 7位 4C Omnath
  • 8位 Jund Saga

トップ8デッキリスト

Rakdos Grief、4C Omnath、Jund Sagaといった現環境の定番のデッキが結果を残すなか、優勝したのはGolgari Yawgmothでした。

デッキ紹介

Golgari Yawgmoth

Golgari Yawgmothはクリーチャーベースのミッドレンジコンボデッキです。デッキ名でありキーカードでもある《スランの医師、ヨーグモス》は、強力なアドバンテージ源であると同時に「不死」クリーチャーとのコンボパーツにもなります。

Hardened Scalesと同様に《スランの医師、ヨーグモス》《根の壁》《歩行バリスタ》といった起動型能力持ちのクリーチャーを複数採用しているため、《アガサの魂の大釜》を強く使うことができるデッキです。

除去としてもアドバンテージ源としても機能する《オークの弓使い》《飢餓の潮流、グリスト》といったカードのおかげで、ミッドレンジデッキとしても振る舞うことが可能です。マナクリーチャーなどを一度に複数除去できる《激情》を搭載したRakdos Griefは、苦手なマッチアップになります。除去やスイーパーを使用するデッキに対抗する手段として、サイドには《一つの指輪》などクリーチャーでない追加のアドバンテージ源が取られています。

☆注目ポイント

アガサの魂の大釜飢餓の潮流、グリスト

《アガサの魂の大釜》が新戦力として採用されています。強力な起動型能力持ちのクリーチャーが多くいますが、このデッキでは《飢餓の潮流、グリスト》を追放することで自軍のクリーチャーにプレインズウォーカーの能力を付与することができます。トークンを並べたり相手の脅威を処理したりなど、大量のアドバンテージを稼ぐことが可能です。

《飢餓の潮流、グリスト》はクリーチャーカードとしてもカウントされるため《召喚の調べ》《異界の進化》でサーチすることができ、《否定の力》《呪文貫き》にも引っかかりません。《濁浪の執政》などを処理しつつ毎ターントークンを生成することができるので、クリーチャーデッキにとって脅威となります。

喜ぶハーフリング

《オークの弓使い》の影響もあって現在はタフネス1のマナクリーチャーが減らされ、《喜ぶハーフリング》が優先的に採用されています。《スランの医師、ヨーグモス》《飢餓の潮流、グリスト》《アガサの魂の大釜》《一つの指輪》など多くの重要なカードを安全に着地させる有用なクリーチャーです。

総括

豆の木をのぼれアガサの魂の大釜

『エルドレインの森』から登場したカードで現在のモダンに大きな影響を与えているのは、《豆の木をのぼれ》《アガサの魂の大釜》になります。

《豆の木をのぼれ》は主にコントロールで活躍しており、《アガサの魂の大釜》はHardened Scalesの復権に貢献するだけでなくGolgari Yawgmothのようなクリーチャーベースのコンボでも活躍しています。

USA Modern Express vol.103は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!

この記事内で掲載されたカード

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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら