はじめに
こんにちは。Hareruya Prosの佐藤(@nano3151)です。
今回はラスベガスで開催された『第29回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権』に参加をしてきましたのでその大会レポートとなります。
今年からプロツアーが再開され、その締めくくりとなる最高峰の大会に参加するにあたりどのような準備をして臨んだかを振り返っていきます。
マジック世界選手権は滅多に参加する機会がない大会です。自分にとっては2回目の参加となりますが、次またいつ参加できるかわからないため、今このチャンスを活かすため気合十分で準備に臨みました!
世界選手権について
まずは今年の世界選手権について簡単に説明します。
本大会にはプロツアーの上位入賞者やプロツアーの精算マッチポイント獲得上位者など年間で優秀な成績を残せたプレイヤーのみ参加できる大会です。自分はアリーナチャンピオンシップにて本大会の参加権利を獲得しました。
■参加権利獲得例
・昨年の世界選手権の上位入賞者
・プロツアー上位入賞者
・プロツアーの精算マッチポイント(AMP)の上位者
・アリーナチャンピオンシップの優勝、準優勝者
・地域チャンピオンシップの優勝者、準優勝者(地域によっては優勝者のみ)
・MOCS上位入賞者
初日は『エルドレインの森』ドラフト3回戦 スタンダード4回戦を行い、4-3以上が2日目へ進みます。2日目も同じくドラフト3回戦、スタンダード4回戦を行い上位8名がTOP8シングルエリミネーションへ進みます。
プロツアーと比べて構築ラウンドの回戦数が少なく、ドラフトラウンドの比重が上がっているため、普段以上にドラフトラウンドの成績が重要になっています。
準備
チーム結成
ドラフトとスタンダードの2フォーマットの練習をする必要があるかつ、『エルドレインの森』が発売されてから3週間程度しかないため1人で準備するのでは時間がとても足りません。
今回は同じく世界選手権に参加する、小坂さん、近藤さん、セゴウさんとチームを組ませていただき練習をしました。そのほかそれぞれの所属コミュニティで協力いただけるメンバーを募りました。結果、ドラフトとスタンダードの両方でたくさんの方にご協力をいただきました。
ドラフト
ドラフトについてはたくさん試行できるMTGアリーナを使用して個々のカードの使用感や色の強弱を確かめ、本番である8人ドラフト練習は紙で行いました。
そのほかオンラインのドラフトシミュレーターを使用した練習も行い、ピックの振り返りなどにより理解を深めました。
リミテッドが得意なメンバーも多く、多くの学びを得ながら練習することができました。
スタンダード
本戦で自分は「ゴルガリミッドレンジ」を使用しました。なぜ今回ゴルガリミッドレンジの使用に至ったかを説明します。
『エルドレインの森』発売後のスタンダード環境の認識
デッキ調整を本格的に始める前に、『エルドレインの森』発売後に『ジャパンオープン2023』やMOの『Standard Challenge』の結果を参考にチームでスタンダード環境の認識のすり合わせを行いました。
現状では以下のデッキが特にデッキパワーが高そうだという認識となり、それぞれが世界選手権においても中心となるデッキと予想。
エスパーミッドレンジ
前環境から存在し、新カードの恩恵を受け強化。特に序盤のアクション兼、中盤以降の目標になる《忠義の徳目》は非常に強力。
ゴルガリミッドレンジ
新カードの恩恵を大きく受け台頭。強力な2マナクリーチャーである《苔森の戦慄騎士》、『エルドレインの森』最強のミシュラランドである《眠らずの小屋》を採用可能。
ランプ系
《アラーラへの侵攻》と《木苺の使い魔》の組み合わせより台頭。最初に見つけた人は凄い……。
《豆の木をのぼれ》を採用し、ビッグアクションを取りながらアドバンテージを獲得するタイプも存在。いずれのタイプもミッドレンジキラー。
ランプ系の台頭でそれに強く出れる赤単アグロが一時増加していましたが、単純なデッキパワーは上のデッキと比べ劣っていると考え、今回のデッキ選択肢からは外れました。
そのほか、エスパーレジェンズも候補でしたが、エスパーミッドレンジと比べた際の優位点を見出せず、こちらも選択肢からははずれました。
デッキ選択まで
チームで主に調整をしていたエスパーミッドレンジは、明確に不利なデッキが存在せず、新カードの恩恵を受けデッキパワーも高いことから第一候補でした。
またミッドレンジデッキながら打ち消し呪文を採用できるため、ほかのチームが持ち込むかもしれない「世界選手権用のスペシャルコンボデッキ」のようなものにも対応可能だろうという保証もありました。
ゴルガリミッドレンジは対エスパーミッドレンジはそこそこやれますが、やはりランプ系デッキが鬼門。
ランプ系デッキはゴルガリミッドレンジには強いが、打ち消し呪文を擁するエスパーミッドレンジには苦戦すると想定。自分たちの候補から外れていますが、直近のオンライン大会では赤単アグロが入賞しており、不安要素。
というわけで自分の中ではエスパーミッドレンジとゴルガリミッドレンジの2択ということに。デッキリスト提出のギリギリまでエスパーミッドレンジと悩みましたが、最終的にはゴルガリミッドレンジを選択しました。
メタゲーム上のデッキでランプ系以外のデッキには戦えるデッキパワーがあると感じたことと、サイドボードでランプ系のデッキを意識することで、苦手は変わらないが勝ち筋はある状態にできたと感じましたので選択しました。時間もなく何十回とぶつけたわけではないですが、練習段階でも絶望的に勝てないわけではないことを確認できたのも大きかったです。
チームで調整したエスパーミッドレンジも当然試しており、素晴らしいデッキであることは認識していました。ただ最終的には、より長く試し手に馴染むということでゴルガリミッドレンジを選択しました。ほかにはミシュラランドを一番うまく使えるデッキが環境を制するとも考えており、一番強いミシュラランドをストレスなく使えるというのも理由の一つでした(結果はそうはなりませんでしたが……)。
デッキ調整過程
最終的に使用したリストは以下となります。『エルドレインの森』のカードが多数採用されており新セットの影響を強く感じます。
調整点
一般的に採用されているカードについては省略し、主に今回こだわって採用したカードに絞り紹介します。
《失われし伝承の歩哨》
ミラーマッチやエスパーミッドレンジに対して有効と考えて採用しました。出たときに以下の能力を望む数選べます。
・自分の「出来事」カードの使いまわし
・相手の「出来事」カードの妨害
・墓地追放
どちらのデッキも「出来事」カード(《執念の徳目》《忠義の徳目》)と墓地(《苔森の戦慄騎士》《敬虔な新米、デニック》)を利用するためアドバンテージの獲得に繋がります。状況を選ぶカードであり、過信は禁物ですが採用する価値はあると感じました。
サイドボードもこのカードでの使いまわしを意識し、《ストームケルドの先兵》を採用しています。
《土建組一家の監督所》
土地が26枚と少し多く採用されていますが、《開花の亀》での切削で土地が落ちないことも当然あります。そのため、ハズレを少しでも緩和する狙いで採用しました。
また、2色デッキでありながらダブルシンボルのカードが多いのと、無色ランドである《ミシュラの鋳造所》の採用により、色マナトラブルが結構発生したため、その緩和も兼ねています。
《ランクルのいたずら》
ランプ系デッキへの対策枠になります。ランプ系デッキを意識し、メインボードとサイドボード合わせて《強迫》と《ヴェールのリリアナ》を合計4枚づつ採用しています。ランプ系デッキへの勝ち筋としては、手札を攻めつつクロックを刻むことになります。
手札を攻めることで、ランプ系デッキがやりたい土地を伸ばしつつビッグアクションを行うという動きを妨害できます。《ランクルのいたずら》は自分にも影響はありますが、手札を2枚削りつつライフも4点削ってくれるので有効だと考えました。
大会レポート
ここからは大会レポートとなります。
先に述べていますが、初日にドラフト3回戦とスタンダード4回戦を戦い、4-3以上が初日抜けとなります。
まずはドラフトから。
ドラフトラウンド
『エルドレインの森』のドラフトについて、色の強弱だけでいうと黒=赤>緑>>>青>白という印象です。基本は2色の組み合わせでデッキを構築するので単純にはいきませんが、練習する中でも黒赤緑のいずれかの組み合わせが得意と感じ、可能であればやりたいと考えていました。
リミテッドにおいては軽く使いやすい除去は重宝されます。今回はアグロ寄りの環境ということで特に価値が高いです。黒と赤には《がぶりんご飴》と《塔の点火》という環境屈指の軽量除去呪文があり、下手なレアより優先してピックすることがあるほどです。
緑は除去呪文という観点では赤と黒に劣りますが、格闘除去である《人狐の呪い》も決して悪くはありません。クリーチャーの質は黒と赤よりもよく、特に「協約」で早いターンに着地した《小村の大食い》は頼もしいフィニッシャーです。
青と白は上記3色に比べる少し劣る印象です。単体の性能がほかの色より劣り、組み合わせありきという印象です。強力なレアが出ないかぎり、黒赤緑から1色選びもう1色を探るという感じでしょうか。
1stドラフトポッド
ドラフト始まります。 pic.twitter.com/9uOtu4hkc3
— Keisuke Sato (@nano3151) September 22, 2023
世界選手権なので当然見知った名前ばかりです。殿堂のWilly Edel選手、Hareruya ProsのMarcio Carvalho選手、今回トップ8のAnthony Lee選手、そして同じチームの近藤選手と同卓しました。
1stドラフトピック
初手は《タリオンの伝書使》か《トーテンタンズの歌》の2択でした。ほかにも《石断ちの稲妻》があったりと赤が濃い目だったので赤が込むことを想定し、《タリオンの伝書使》をピックすることで青に進むことも検討しましたが、《トーテンタンズの歌》は十分パワーのあるカードかつ、やりたい赤でもあったので素直にそちらをピックしました。
初手のピックを活かすため赤と組み合わせ模索。しかしなかなか決め切れずフラフラし、最終的には赤白デッキになりました。
世界選手権ドラフトラウンド 赤白
— Keisuke Sato (@nano3151) September 22, 2023
赤緑1-2
黒緑0-2
青緑1-2
悲しみの0-3… スペルは強いがシナジーは特に無くとてもきついドラフトだった。 pic.twitter.com/YgZ3QIoKFC
組み上がったデッキの印象としては、スペルは強力だが、赤白のテーマである祝祭シナジーはなく、クリーチャーの質に難ありという感じ。質が低いながらもマナカーブ通りクリーチャーを展開し、強力なスペルでバックアップしながら押し切るというのが基本路線と捉えました。
ポストにある通りドラフトラウンドは0-3で終了。ラウンド1-2ともに少し有利な盤面で《荒々しい三つ子》が出てきて敗北しました……。
スタンダードラウンド
切り替えてスタンダードラウンドへ移行。デッキは先述の通りゴルガリミッドレンジです。大会前にメタゲームブレイクダウンが公開されました。
メタゲームブレイクダウンを見た感想としては、ゴルガリミッドレンジにとってはそこまで悪くないフィールドだと思いました。理由としてはランプデッキが最大勢力ではなかったことが大きいです。使用者上位のデッキは概ね想定通り。ラクドスリアニメイトとアゾリウス兵士はチームで持ち込んでいるだろうということで少し気になるといった程度でした。
ドラフトが0-3のため初日抜けには4-0縛りという厳しいものとなりました。
それでは結果となります。
対戦結果
ラウンド4:5色ランプ(《アラーラへの侵攻》) 1-2
ラウンド5:5色ランプ 2-1
ラウンド6:アゾリウス兵士 1-2
ラウンド7:エスパーレジェンズ 2-0 (No Show)
スタンダードラウンドは2-2。ドラフトと合わせて2-5となり初日抜けは叶いませんでした。
大会の反省点
今回の反省点は成績からみてもやはりドラフトラウンドになります。練習については決して手を抜いていたわけではなく、できるだけの準備をしていただけに結果に結びつかず残念でした。
チーム練習の方向性はあっていたと思うので、練習のなかで自分自身での課題を認識し、それに対しどう取り組むかが大事だと思いました。
本番では2色目を決めるタイミングで今回失敗したと感じているので、流れているカードからどの色へ参入するかの判断をもっと磨く必要がありますね。色を決める/色を変える分岐点をどこで何をもって判断するかは、今後の練習で意識したいポイントの一つです。
《タリオンの伝書使》は流したものの、1パック目の時点では青いプレイアブルなカードは流れていました。2パック目の初手で《有角の湖鯨》があり、そこから青をピックする方向へ舵を切る選択もあったかもしれません。
🎉Congratulations to the #MTGWorlds Top 8!🎉
— PlayMTG (@PlayMTG) September 24, 2023
Lorenzo Terlizzi
Greg Orange
Kazune Kosaka
Reid Duke
Simon Nielsen
Jean-Emmanuel Depraz
Willy Edel
Anthony Lee pic.twitter.com/UPt84mtdxx
構築については満足行く調整ができたと思います。自分はゴルガリミッドレンジを使用しましたが、ほかのチームメンバーはエスパーミッドレンジを使用し、小坂さんは準優勝でセゴウさんは13位と大成功でした。
事前に擦り合わせたスタンダードにおける各デッキの立ち位置についてチーム内の認識と結果が合っていたことが大きく、デッキ選択及び細かな調整に反映ができていたのだと思います。
おわりに
ここまでご覧いただきありがとうございました。
大会に向けて調整と練習に付き合っていただいた方にまず感謝させていただきます。ありがとうございました!
今回印象的な出来事としては、なんといっても同じチームで調整していた小坂さんが見事に準優勝となったことでしょう。チーム調整の結果が出ており、少しでも貢献できてうれしく思います。改めておめでとうございます!
テーブルトップで再開される世界選手権に参加できるということで気合十分で臨みましたが、個人としては成績が振るわず、悔しさが残る結果となりました。今回良かった点は継続し、見つかった課題については改善をして力をつけていきたいです。
世界選手権という大舞台はなかなか参加できるものではなく、次回いつ参加できるかわかりません。もし、また参加する機会を得たならば、努力を怠らず良い成績を残せるよう頑張りたいです。
今回は以上となります。それではまたどこかの機会でお会いしましょう!