Translated by Riku Endo
(掲載日 2023/10/16)
はじめに
プロツアーの舞台に舞い戻ります!リール(フランス)の地域チャンピオンシップでのトップ16フィニッシュのおかげで参加資格を得たので、2月にシカゴで行われるもっともレベルの高い舞台で競うことになります。
地域チャンピオンシップで選択したのは信頼のイゼットフェニックスです。使っていて楽しく、手に馴染んでいるデッキで、すでに1年前のソフィア(ブルガリア)での地域チャンピオンシップでもプロツアー行きをどうにか叶えてくれたデッキです。リールへ向かう前に動画形式でのデッキガイドも出していますよ。
今回は地域チャンピオンシップで使わなかった「ボロスヒロイック」について話したいと思います。ボロスは第二候補で、最後の数日前までデッキを決めあぐねていました。フェニックスがより苦手の少ないデッキで、結果的には勝利をもたらしてくれたとはいえ、ボロスはリールで目覚ましい勝率を出しました。
ボロスヒロイックとは
ボロスヒロイックは有利不利の激しいデッキです。干渉手段の少ないデッキに対しては有利で、1人回しのようになります。《照光の巨匠》はこのデッキのもっとも強力なツールであり、こういったマッチアップでは特に優れています。2枚の《巨怪の怒り》を絡めれば簡単に3ターン目に20点をたたき出すことができるように、あっという間にとんでもないダメージを与えることができるのです。緑単信心やロータスコンボのようなデッキは干渉手段に乏しく、大抵はボロスに圧倒されてしまいます。
そのほかのクリーチャーは《照光の巨匠》と同等なほど強力とはいえませんが、《恩寵の重装歩兵》にしろ《第10管区の軍団兵》にしろ、ゲームを終わらせるのに長い時間はかかりません。また「相手が干渉しようとしてきたらおしまい」とはならないのです!
《無謀な怒り》はこちらが一切ペースダウンすることなく多少相手を妨害するのに最適で、《巨怪の怒り》は『エルドレインの森』から追加された非常に重要なカードです。こちらの大きいクリーチャーにトランプルを付与することで、ターンを跨いでもブロッカーが問題にならなくなり、大量のダメージを出すことでこのデッキを大きく加速させるのです。
《恩寵の重装歩兵》の誘発能力は、打点による除去を用いるデッキに対しては悪夢になりえます。《神々の思し召し》は最小限の干渉手段しか持たない相手に対して有効で、動きがぎこちない、あるいは重い相手ならなおさらです。
対照的に、黒系ミッドレンジとのマッチアップは大きく不利です。《致命的な一押し》が終始きつく、《思考囲い》によってプロテクションスペルを捨てさせられる、あるいは脅威となるクリーチャーを対処され役に立たないコンバットトリックだけが残る、といったようにしてこちらの戦略に穴を開けてくるのです。《無謀な怒り》やキャントリップのコンバットトリックも《黙示録、シェオルドレッド》と相性がよくありません。
明確なのは、ボロスヒロイックを大会にあえて持ち込むのであれば、通常よりもやや有利不利の差が大きいマッチアップ相性を受け入れなければならないということです。その点を恐れなければ、しっかりと報われるかもしれません。
デッキリスト解説
ボロスヒロイックのほとんどは実質11-12体の「英雄的」を持ったクリーチャー、すなわち対象にとられた際に能力が誘発するクリーチャーを採用しており、そこに《僧院の速槍》と何枚かの2マナクリーチャーが組み合わされています。
《僧院の速槍》が場違いに感じられるときがあるかもしれませんが、このデッキは1体のクリーチャーだけでフィニッシュまで到達することは稀だということは覚えておくべきです。《僧院の速槍》の役割はクロックを増大させて、クリーチャーが場に多いときにこちらのコンバットトリックの価値をより高めてくれるのです。
《戦慄衆の秘儀術師》はおなじみの2マナクリーチャーですが、このデッキにおいては少々変わった存在です。1人回しをしていると《戦慄衆の秘儀術師》が出力できるダメージは低くなりやすく、単体では脅威とは見なされにくいです。一方で、自身が2体目のクリーチャーでメインとなる脅威に呪文を「フラッシュバック」して対象にとる役割になれば、クロックに貢献してくれます。
干渉手段の多いデッキに対しては、シンプルに《戦慄衆の秘儀術師》で各ターンキャントリップ呪文によるドローを重ねるだけでも、十分相手に除去を迫ることができます。特定のマッチアップでは活躍する、これはたしかに重要なことです。ですが、2枚目の《戦慄衆の秘儀術師》を引くのは避けたいです。なぜならば、墓地の呪文を容易に使い切ってしまうからです。
過去には《アダントの先兵》が、《致命的な一押し》を採用するデッキに除去されづらいクリーチャーとして採用されていました。ただボロスヒロイックには失ったライフを取り戻す手段がなく、《黙示録、シェオルドレッド》によるライフへのプレッシャーがある現状では《アダントの先兵》はおすすめできません。
もし強力な絆魂持ちのコンバットトリックがあれば、《アダントの先兵》は興味深い選択肢になるかもしれません。いくらかプレイアブルでライフゲインソースになる《祝福された反抗》と《天使火の覚醒》は試しましたが、どちらも実際にはパッとしませんでした。今はまだそのときではないと感じています。
サイドボードガイド
ラクドスミッドレンジ
vs. ラクドスミッドレンジ
スタッツを大きくするだけのコンバットトリックでは《致命的な一押し》に対して効果的ではありません。そういったカードは減らしましょう。また、《照光の巨匠》を相手の《砕骨の巨人》へさらす機会を少なくするために、数を減らしています。
《スカルドの決戦》は黒絡みのミッドレンジと戦う上でもっとも強力なツールとなります。相手からの干渉に対抗するのに十分なカードアドバンテージを得ることができ、複数枚続けてプレイできれば簡単に相手を圧倒することができます。ただ、運が悪いと4マナまでたどり着くのには苦労するかもしれません。サイド後のゲームでは土地が多めでもキープしましょう。
ユーティリティランドの枠として《バグベアの居住地》より《反逆のるつぼ、霜剣山》を個人的に好んでいるのは、トップデッキしたときにすぐに《スカルドの決戦》をプレイできるからです。《スカルドの決戦》は自信をもってこのデッキに採用したいと思えるサイドボードの数少ない1枚なのです。
《邪悪を打ち砕く》は《黙示録、シェオルドレッド》に対処するために採用されたスマートとはいえないカードです。もしも容易に採用できる絆魂持ちのカードがあれば、それで打ち勝つことを考えてみてもいいかもしれません。現段階では不可能ですけどね。
緑単信心
vs. 緑単信心
緑単信心はおそらくボロスヒロイックがもっとも得意とするマッチアップです。相手には除去がないので《神々の思し召し》は減らしましょう。たとえ《神々の思し召し》がブロッカーを通り抜けるのに役立つ手段だとしても2枚も引きたくありませんし、《巨怪の怒り》があれば相手のサイズの大きいブロッカーも問題になることは稀です。
《流動石の注入》はとりわけボロス側が後攻のときに、1ターン目のマナクリーチャーから逃げ切られないようにするのに役立ちます。
ラクドスサクリファイス
vs. ラクドスサクリファイス
ラクドスサクリファイスへはラクドスミッドレンジと同様のアプローチをしますが、いくつか例外もあります。《照光の巨匠》はここではさらに苦しめられてしまいます。《波乱の悪魔》のせいで育てることが不可能で、《無謀な怒り》も使いづらくなるからです。
白単人間
vs. 白単人間
アグロデッキに対して《スカルドの決戦》を入れるのは奇妙に思えるかもしれませんが、どちらのプレイヤーもサイド後には大量の除去をサイドインするのでゲームがすぐには終わりません。より強力なトップデッキをできるようにしたほうが、こういった状況では有用なのです。また、早期決着を狙ったり《神々の思し召し》でクリーチャーを守ろうとするのも、《スレイベンの守護者、サリア》がいるとうまく機能しません。
スピリット
vs. スピリット
《引き裂く流弾》をデッキのもっとも弱いコンバットトリックと数枚差し替えるくらいが丁度よく、このマッチアップではサイドボードを入れ替えすぎる必要はありません。相手のクリーチャーは白単のクリーチャーと比べてサイズが小さくスピードも遅く、どっちにしろブロックすることもできないので、ゲームは自然とダメージレースになっていくでしょう。
イゼットフェニックス
vs. イゼットフェニックス
《無謀な怒り》は《帳簿裂き》に対しては非常に使い勝手が悪いのですが、対戦相手が2マナクリーチャーに《氷の中の存在》を採用しているなら4枚とも入れたままにしたくなります。
数枚の《スカルドの決戦》があると相手の手札に除去が多い場合に役立ちますが、《呪文貫き》が刺さってしまう可能性がある点と、イゼットフェニックスは黒系のデッキよりもクロックが早い点には注意したいです。
サイドから《安らかなる眠り》を入れるので、アンチシナジーを避けるために《戦慄衆の秘儀術師》は抜くのも手かもしれません。個人的には《安らかなる眠り》を引けないときに、相手に対して除去を迫ることができる点で気に入っています。
《恩寵の重装歩兵》は相手のどの赤い除去に対しても強いので、インスタントを構えられるまで待ってから《恩寵の重装歩兵》をプレイしてみる価値はあるかもしれません。
ロータスコンボ
vs. ロータスコンボ
《無謀な怒り》は《樹上の草食獣》やサイド後のマナクリーチャーへの解答になります。それ以外はなるべく早くゲームを終わらせることだけを考えましょう。《流動石の注入》でもマナクリーチャーに対処することはできますが、大抵は追加のコンバットトリックとして役に立ちます。また相手から《一時的封鎖》といった全体除去が飛んでくるので、できれば速攻持ちのクリーチャーは手札に温存しましょう。
また、《神々の思し召し》では《天上都市、大田原》の効果は無色扱いなので、この効果からクリーチャーを守ることができないことは覚えておくべきです。
アゾリウスコントロール
vs. アゾリウスコントロール
先ほどと同じですが、全体除去を打たれた返しに唱えるために速攻持ちのクリーチャーを温存しましょう。
《邪悪を打ち砕く》なら《一時的封鎖》やサイズの大きい《サメ台風》のトークンに対応することができます。また《農家の勇気》は《放浪皇》に対するカウンターになってくれます。
たまに見る《威厳あるカラカル》以外には、特に《無謀な怒り》が必要になることはないでしょう。
今回の記事はここまでです。それではまた次の記事でお会いしましょう!
ピオトル・グロゴゥスキ (X / Twitch / Youtube)