スタンダード情報局 vol.138 -ミッドレンジに狙いを定めて-

富澤 洋平

はじめに

みなさん、こんにちは。富澤です。

先日は禁止制限カードの改定日でしたが、すべてのフォーマットで変更なしと発表されました。ないだろうと思っていても公式の声明があるまでは何とも落ち着かないものですね。

次のエキスパンション発売までのもうしばらくの間、この環境と付き合っていかねばなりません。《婚礼の発表》《黙示録、シェオルドレッド》は引き続き、環境屈指のパワーカード足りえるのです。

それでは、先週末の大会結果を振り返っていきましょう。

先週末の注目トピックは?

依然としてアゾリウス兵士中心のメタゲームが形成されているわけですが、エスパーやゴルガリといったミッドレンジタイプのデッキも増加傾向にあります。そんななか、10/11(水)に開催された『Standard Preliminary』において、WaToOがエスパーコントロールにて好成績を残しました。

昔からマジックを遊んでいる方はご存知かと思いますが、WaToOとはマジック・プロツアー殿堂であるGuillaume Wafo-TapaのMOアカウントです。普通のエスパーコントロールと思いきや、細部に調整が見られます。

今回のトピックでは、コントロール戦略を得意とし、ドロー呪文を何よりも好む彼の独創的な構築を取り上げたいと思います。

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エスパーコントロールは打ち消しと除去呪文で脅威を対処し、ドロー呪文やプレインズウォーカーでアドバンテージを稼いでいく防御的な戦略です。デッキの大半がインスタント呪文で構築されているため相手の動きに応じた最適解をプレイしやすく、動かなければ《記憶の氾濫》でドローを進めたり、《放浪皇》でトークンを並べるといった風に臨機応変なプレイが可能です。

速足の学び

全体的に重く、アグロよりもミッドレンジをメタった構築になっています。《切り崩し》数枚をサイドボードに移しており、空いたスロットには《速足の学び》が足されています。《速足の学び》が増えた分だけ土地も伸びやすくなっており、安定して《放浪皇》《太陽降下》へと繋げるという狙いがあります。

《速足の学び》《記憶の氾濫》をともに4枚ずつ採用した構築は珍しく、中~長期戦に非常に強くなっているのです。

本質の散乱中略雲散霧消

コントロールの基本要素である打ち消し呪文にも手が加えられています。確定枠と思われていた《かき消し》を解雇し、代わりに《本質の散乱》《中略》が採用されているのです。中盤以降も無駄にならず、確定カウンターとして機能するものを優先しています。

現環境には《敬虔な新米、デニック》《しつこい負け犬》《見捨てられたぬかるみ、竹沼》など墓地をリソースとして数えるカードがあります。その対策として《中略》《雲散霧消》が割り当てられているのです。3枚の《雲散霧消》はかなりインパクトがあり、対ミッドレンジへの意識の高さが伺えます。

コイロスの洞窟地底の大河

最後に注目していただきたいのがマナベースです。既存の構築ではファストランドである《闇滑りの岸》4枚が定番でしたが、なんと0枚。1マナの《切り崩し》をサイドボードに移している影響もありますが、それよりもタップインはキッチリと序盤に処理し、4ターン目以降はビッグアクションに備えてアンタップで土地を確保したいという思想が垣間見えます。そのため、ファストランドの代わりにダメージランドとスローランドが優先されているのです。

廃墟の地

さらに《ミレックス》の姿はなく、《廃墟の地》が2枚採用されています。このことからもランプやコントロールの《ミレックス》や、ゴルガリミッドレンジの土地クリーチャーを強烈にメタっているとわかります。まずはコントロールの確立ありき、フィニッシャーは二の次です。相手の脅威に対処さえできれば、《ミレックス》に頼らずとも《放浪皇》《時間の旅人、テフェリー》がゲームを決めてくれるのです。

もちろん、この構築が完璧というわけではありません。アグロデッキが多いメタゲームでは成す術もなく負けてしまうことでしょう。

ですが、メタゲームがミッドレンジやコントロール方向へと進んだとすればどうでしょう。マナベースからドロー呪文、打ち消し呪文の採択にいたるまで徹底した対ミッドレンジ仕様であり、最適な構築となりえます。

このデッキからは、メタゲームの奥深さと彼の構築力の高さを思い知らされるばかりです。前置きが長くなりましたが、それでは大会結果をみていきましょう。

10/15(日):Standard Challenge

順位 プレイヤー名 デッキタイプ
優勝 GL4You ゴルガリミッドレンジ
準優勝 jpstache 白単人間
トップ4 MTGHolic ゴルガリミッドレンジ
トップ4 Franticore エスパーミッドレンジ
トップ8 Mogged エスパーミッドレンジ
トップ8 Mizl1zzie 4色レジェンズ
トップ8 Folero エスパーミッドレンジ
トップ8 fingers1991 エスパーレジェンズ

(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)

10/15(日)に開催された『Standard Challenge』はゴルガリミッドレンジが制しました。トップ8にアゾリウス兵士の姿はなく、代わりにゴルガリやエスパーなどのミッドレンジが多く入賞していました。ゴルガリミッドレンジは攻め手が多彩であり、除去も単体+全体とそろっているため、クリーチャーデッキ中心のメタゲームでは適したデッキです。

復活したアーテイ

強豪・Moggedが持ち込んだエスパーミッドレンジは、なんと《黙示録、シェオルドレッド》抜き。《復活したアーテイ》を優先するなどインスタントタイミングで動けるカードを増やし、対応力を上げた構築になっています。高コストカードの多いミッドレンジやコントロールに対しては劇的な効果が見込めますが、思い切った選択です。

スレイベンの守護者、サリア大スライム、スローグルク天上都市、大田原

Mizl1zzieが使用したのは4色レジェンズ。伝説のクリーチャーを並べて《天上都市、大田原》などの「魂力」コストを下げ、それを《大スライム、スローグルク》で使いまわします。エスパーレジェンズと同じく、《離反ダニ、スクレルヴ》+《スレイベンの守護者、サリア》のハメパターンを有しており、《大スライム、スローグルク》でリソース勝負に強くなったデッキです。単色や2色デッキに比べるとマナベースは不安定なものとなりますが、《英雄の公有地》が支えることでデッキとして成立しています。

メタゲーム

デッキタイプ トップ32 トップ16
エスパーミッドレンジ 8 5
ゴルガリミッドレンジ 5 4
アゾリウス兵士 4 2
4色ランプ 3 1
赤単アグロ 2 1
その他 10 3
合計 32 16

トップ8デッキリストはこちら

ゴルガリミッドレンジ

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グリッサ・サンスレイヤー黙示録、シェオルドレッド下水王、駆け抜け侯

ゴルガリミッドレンジは、高スタッツのクリーチャーを除去でサポートしながら押し込む攻め手の厚い中速デッキです。単体で攻防を制圧できる《グリッサ・サンスレイヤー》《黙示録、シェオルドレッド》、時間経過とともにトークンを量産してくれる《下水王、駆け抜け侯》などでボードにプレッシャーをかけていきます。

喉首狙いヴェールのリリアナ執念の徳目

攻撃をサポートするのは万能《喉首狙い》《ヴェールのリリアナ》といったお馴染みの面々。《執念の徳目》はソーサリーではあるものの、序盤のガードを下げずに長期戦でも活躍できる用途の広い1枚です。

苔森の戦慄騎士開花の亀眠らずの小屋

長期戦で気になるリソース面は《苔森の戦慄騎士》《しつこい負け犬》《開花の亀》が補充してくれます。土地には《眠らずの小屋》といたるところに脅威が潜んでおり、どこからでも攻められる隙のないデッキなのです。

向上した精霊信者、ニッサ

《向上した精霊信者、ニッサ》は長期戦でフィニッシャーとなるプレインズウォーカーです。そのトークン生成能力、サイズともにほかのプレインズウォーカーと比較して群を抜いており、対ミッドレンジやコントロール戦では[+1]を連打しているだけでボードを圧倒できます。

忠誠度の高さから戦闘ダメージで落ちにくく、定着すれば毎ターンタダでクリーチャーを生成してくれます。《かき消し》などの打ち消し呪文には弱いものの、着地さえしてしまえば対処手段は限られてしまいます。ミラーマッチをはじめ、コントロール、ランプ相手には確実に着地させたいところです。

トークン生成ばかりに目がいきがちですが、メインボードで《力線の束縛》を割れる貴重なカードでもあります。ランプやバントコントロールにはほかの脅威を優先して出し、相手が《力線の束縛》を使用したあとにプレイして破壊しましょう。

アイレンクラッグ

めずらしいのは2マナ域に採用された《アイレンクラッグ》です。以前はマナ加速と長期戦の受けになる《木苺の使い魔》が採用されていましたが、ミラーマッチで《切り崩し》の的となるのが難点でした。

《アイレンクラッグ》対処されにくいマナ加速であり、アグロや特定のマナ域に先にアクセスする必要があるマッチなどで重宝します。3ターン目に《黙示録、シェオルドレッド》をプレイしてアグロの攻勢を止めたり、ミラーマッチでは相手よりも先に《執念の徳目》《向上した精霊信者、ニッサ》をプレイすることで強固なボード構築を助けてくれるのです。

基本的にゴルガリミッドレンジのカードタイプはダメージソースか、クリーチャー除去などの干渉手段のいずれかのカテゴリーに分類されます。《アイレンクラッグ》も例外ではなく、マナが十分にたまった後は「装備品」《英雄の遺産、エヴァーフレイム》へと姿を変えます。《英雄の遺産、エヴァーフレイム》は修正値が高いため、どんなクリーチャーもフィニッシャーへと転身させてくれます。

そのほかの大会結果

10/14(土):Standard Challenge

順位 プレイヤー名 デッキタイプ
優勝 _Falcon_ アゾリウス兵士
準優勝 Venom1 アゾリウス兵士
トップ4 DarthStone エスパーレジェンズ
トップ4 Karolmo ゴルガリミッドレンジ
トップ8 Magicofplayer1 4色ランプ
トップ8 ruin000 青単テンポ
トップ8 ItsSwiftyTime 4色ランプ
トップ8 pokerswizard エスパーミッドレンジ

(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)

10/14(土)に開催された『Standard Challenge』の優勝はアゾリウス兵士。決勝戦のミラーマッチを制した_Falcon_が頂点を掴みました。

錠前破りのいたずら屋手練証人保護

また、前回ご紹介した青単テンポがトップ8に入賞しています。《傲慢なジン》と軽量カウンターによるテンポアドバンテージ獲得を狙った戦略であり、メタゲームがコントロール方向へとシフトするほどチャンスが巡ってきます。

《知識の流れ》がある手前、《黙示録、シェオルドレッド》対策は必須。サイドボードの《証人保護》がその役割を担います。

メタゲーム

デッキタイプ トップ32 トップ16
アゾリウス兵士 6 4
エスパーミッドレンジ 5 3
4色ランプ 5 3
赤単アグロ 4 2
ゴルガリミッドレンジ 3 2
エスパーレジェンズ 3 1
その他 6 1
合計 32 16

トップ8デッキリストはこちら

おわりに

今回も最新スタンダードの情報をお届けしました。現環境はコントロール愛好家の方々にとっては肩身が狭いかと思いますが、メタゲームと構築次第では勝てるデッキであると殿堂プレイヤー・Guillaume Wafo-Tapaが証明してくれました。

そうこうしているうちに『イクサラン:失われし洞窟』の発売まで1ヶ月を切っています。来週にはプレビューが始まり、次の環境へと動いていきます。新しいカードとの出会いにワクワクが止まりません。

次回もスタンダードの情報をお届けしたいと思います。それでは!

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富澤 洋平 晴れる屋メディアチームスタッフです。最近は《黙示録、シェオルドレッド》に夢中な日々です。 富澤 洋平の記事はこちら