はじめに
みなさん、こんにちは。今月からスタンダード関連の記事を担当します、ローグデッキ使いの紳さんです。
「限界突破スタンダード!」では、スタンダードの大会で実績を挙げたユニークな構築のローグデッキをたくさん紹介していきます。
記念すべき第1回目となる当記事では、新カードセット『イクサラン:失われし洞窟』(2023年11月17日に公式リリース)の発売直前スペシャル企画として、『イニストラード:真夜中の狩り』~『エルドレインの森』環境時のスタンダードで登場した注目のローグデッキたちをまとめて紹介します!
ローグデッキ紹介
アゾリウスブリンク(《超常の旅》)
「アゾリウスブリンク」は『エルドレインの森』で登場した《超常の旅》を軸に据えた斬新なビートダウン戦略をとるローグデッキです。《超常の旅》は青ダブルシンボルに加えてダブルXマナという重さから、環境初期では注目されなかったカードです。しかし、「クリーチャーが追放領域から場に出たときにカードを1枚引く」という常在型能力に目を付け、X=0で唱えるプレイヤーが現れ、《束の間の霊魂》とのコンボが発見されて以降、大注目のカードとなりました。
《束の間の霊魂》は手札からカードを1枚捨てると自身をブリンクさせる起動型能力を持っています。コストとして支払ったカード1枚分のアドバンテージは《超常の旅》の効果で取り戻すことができ、除去が極めて困難なクロックとして定着します。
一方で、相手の場に出た脅威は《人狐のボディガード》や《骨化》で対処が可能な上、《機械の母、エリシュ・ノーン》が出ていれば複数枚のカードを同時に追放することができるので、横並び系のデッキに対してもそれなりの耐性があります。この手の白のパーマネントによる追放除去は当該パーマネントが場を離れた際、相手の場に再び脅威が戻ってしまうことがネックでしたが、《超常の旅》のドロー能力が誘発することで新たな除去札を引き込みやすくなります。
また、このデッキには試作や出来事を持ったクリーチャーも多く採用されています。試作クリーチャーはブリンクすることで完成品として場に戻すことができますし、「進行中の出来事」は追放領域のため、出来事として使用した後に《撚り合わせる双子》や《有角の湖鯨》を場に出すことでもやはり《超常の旅》のドロー能力が誘発します。
ブリンクをきっかけにあらゆるシナジーが生まれ、カードアドバンテージを取りながら「対処が難しい」ビートダウンを続けることができる「アゾリウスブリンク」。環境後期に登場したローグデッキのために研究がそこまで進んでおらず、現在もいろいろなカードが試されています。今後は『イクサラン:失われし洞窟』で新たに登場するカードも加わり、メタの一角を担う可能性も十分に考えられる注目のデッキです。
アーティファクト招集
「アーティファクト招集」はデッキ内の大半を占める低コストのアーティファクトクリーチャーを並べ、早い段階での招集やアーティファクトシナジーを活かしながら必殺の一撃を叩き込むローグデッキです。一見するとアグロデッキのように見えますが、実際はコンボデッキに近い動きをします。
デッキの展開力は高く、1ターン目に1体、2ターン目に2体の1マナクリーチャーをプレイできていれば、すぐさま《光素跳び》を招集で唱えることができます。また、《イーオスの遍歴の騎士》は実質的に2枚ドローに近い働きをする4/4のタフなクリーチャーであり、全体除去などで場をリセットされた後の再展開を助けてくれます。
そして、このデッキが目指す明確なゴールは2つ。速攻持ち以外ブロック不可能力を付与できる《ジンジャーブルート》や飛行を持つ《舞い降りる見張り》を《魅知子の真理の支配》の能力でパワーを爆上げして殴ること、そして、アーティファクトクリーチャーを横並べして《板金鎧の猛攻》で一気に大ダメージを与えることです。
対戦相手としては上記のコンボを警戒しながらも、すくすくと成長していく護法2を持った《継ぎ接ぎ自動機械》の対処を迫られます。このデッキには現環境で最強の単体除去である《喉首狙い》がほとんど効かないことも強みとなるでしょう。
とはいえ、現環境には白の強い全体除去がメインにもサイドにも多数採用されているため、それらの対策カードを引かれるとかなり苦しい展開になることは否めません。黒系のデッキが流行れば、かなり良い立ち位置になりそうなローグデッキだと感じます。
また、モダンやパウパーなどで親和デッキを愛用している方にはとても馴染みやすいスタンダードのデッキですので、参考になればと思います。
5色レジェンズ
「5色レジェンズ」は《統べるもの、ジョダー》をフィニッシャーに据えた、環境屈指の爆発力を持つローグデッキです。
デッキ内のほとんどのカードが伝説のクリーチャーのため、マナレシオが非常に高いクリーチャーが並びます。
加えて、妨害・ドロー・マナ加速・打ち消し・パーマネント破壊など、あらゆる動きが可能で、デッキ構築の自由度も非常に高いです。
5色デッキということでマナベースに多少の不安は抱えますが、このデッキにおける《英雄の公有地》はデメリットなしで好きな色を生み出せる最強のアンタップイン土地となりますし、《ガイアの眼、グウェナ》が安定した色マナの供給を助けてくれます。
終盤、伝説のクリーチャーが並んだ後に登場する《統べるもの、ジョダー》は、対処できなければ「ほとんど即死」に近いほど強力な全体強化能力を持ちます。例えば、自分の場に伝説のクリーチャーが2体しかいなかったとしても、《統べるもの、ジョダー》+αの着地が期待できるので、全体に+8/+8の修正が加わります。
ただし、シナジーを優先して伝説のカードをたくさん採用したことが裏目に出ることも。同名のクリーチャーを固めて引いてしまったり、《統べるもの、ジョダー》の能力ですでに場にいるクリーチャーがめくれてしまったり、思うような展開ができないこともあるでしょう。また、大ぶりなデッキのため、クリーチャー除去、打ち消し、全体除去も刺さります。このように、5色レジェンズはわかりやすい弱点を抱えたデッキという面があります。
勝率こそ安定はしないかも知れませんが、デッキ全体のカードパワーは極めて高いです。爽快に殴り勝つことができますし、採用する伝説のクリーチャー次第でデッキ全体の雰囲気がガラッと変わります。これといった正解の構築も不明で、自由自在に飽きることなく遊べそうなローグデッキです。
また、『イクサラン:失われし洞窟』では《魂の洞窟》が再録されます。クリーチャー・タイプに「人間」を指定することで、《統べるもの、ジョダー》を打ち消されずに唱えることが可能に!デッキ全体の伝説クリーチャーを人間に寄せることで、打ち消しに耐性を持った5色人間レジェンズというデッキが組めるかも知れませんね。
ラクドスサクリファイス
パイオニアではTier1でおなじみの「ラクドスサクリファイス」ですが、スタンダードではローグデッキの立ち位置です。
さすがに《大釜の使い魔》《魔女のかまど》《波乱の悪魔》の三種の神器のような強力なカードはありませんが、『エルドレインの森』で新たに加わった《食事を終わらせるもの、ジンジャー卿》が想像以上に強力で、生贄戦略と非常にマッチしています。
基本戦略としては、血トークンを生み出す低マナ域のクリーチャーや、生贄にすることで逆にアドバンテージが得られるアーティファクトを展開しながら、《鬼流の金床》の着地を狙います。《鬼流の金床》のエサとなるアーティファクトには困りませんし、定着してしまえば毎ターン、構築物トークンを出しながらじわじわと対戦相手のライフを削ります。
最終的には成長した《食事を終わらせるもの、ジンジャー卿》のアタックでゲームを終わらせることが理想です。
仮に《鬼流の金床》が引けなかったとしても、パーマネントを生贄にすることで対戦相手のライフをガンガン詰めるカードが多数採用されており、デッキとしての完成度は高いです。《一時的封鎖》や《告別》は天敵ですが、コピーを含めた《敵対するもの、オブ・ニクシリス》が場に残れば勝ち切ることもありえます。
また、ラクドスカラーはライフを削りきるためのアプローチが豊富なため、いろいろなカードの採用が検討されます。《霜剣山の製錬者》によるアグロ戦略や、安定して能力が誘発する《擬態する歓楽者、ゴドリック》によるビートダウン、《太陽降下》への解答となる《ウラブラスクの溶鉱炉》の採用なども有力です。
絆魂などのライフゲイン戦略に弱かったり、場に出たエンチャントをまったく触れないなど、いろいろと弱点もありますが、序盤から攻勢を仕掛けつつ、テクニカルにライフを削りきる独特の楽しさがあるラクドスサクリファイス。『イクサラン:失われた洞窟』で登場する新しいキーワード「落魄」とも相性が良いデッキなので、今後の活躍に期待したいですね!
ナヤトークン
「ナヤトークン」は爆発力もさることながら、手札を切らさずに戦線を維持し続けることができる、なかなか骨太なデッキです。特に《復興の領事、ピア・ナラー》と《探索するドルイド》の相性がよく、《探索するドルイド》の出来事は2マナで実質的に2ドロー+飛行1/1トークン2体をもたらしてくれます。
なんといっても、トークン戦略は全体強化とのシナジーが強力無比。《花粉盾の兎》《ゴバカーンへの侵攻》《婚礼の発表》《忠義の徳目》に加えて、《イモデーンの徴募兵》による一時的な強化+速攻付与もゲームエンド級の効果となることが多々あります。
構築によっては《トーテンタンズの歌》+《宴の結節点、ジェトミア》or《ジェトミアの情婦、ジニー・フェイ》のような一撃必殺コンボを搭載している場合もあり、ローグデッキ使いの心をくすぐります。トークン戦略の都合上、やはり全体除去には弱いのですが、噛み合いによっては《ゴバカーンへの侵攻》で対戦相手の手札にあるクリティカルなカードを封じたまま、ビートダウン完遂を狙えるのも良いところです。
ちなみに、初期は《レンの決意》や《無謀なる衝動》が採用されていて、より《復興の領事、ピア・ナラー》とのシナジーに重点が置かれていました。しかし、《復興の領事、ピア・ナラー》を序盤に引き込めなかった場合の動きが弱いことを懸念してか、現在の形に落ち着いているようですね。
《忠義の徳目》や《婚礼の発表》の枠を《イーオスの遍歴の騎士》と《毅然たる援軍》のパッケージに変えるなど、《復興の領事、ピア・ナラー》と《探索するドルイド》によりアクセスしやすくするための構築も考えられます。今後のさらなる進化が気になるローグデッキです。
おわりに
流星の如く現れ、流星の如く消えてゆくローグデッキたち。その一瞬の輝きを見逃さないために、「限界突破スタンダード!」ではこれからも様々なデッキを紹介していきます。
そして、まもなく発売を控えた『イクサラン:失われし洞窟』で登場する新カードたちも間違いなく、ローグデッキ界に新たなインパクトを残すことでしょう。どんなデッキが誕生するのか、恐竜は予想通りに暴れるのか?マーフォーク・吸血鬼・海賊などの部族デッキも出てくるのか?とても楽しみです!
また、『イクサラン:失われし洞窟』の特設ページがオープンしております!各種商品の予約や注目カードがご覧いただけますので、ぜひご活用ください!