はじめに
みなさん、こんにちは。
今週末は『第25期モダン神挑戦者決定戦』が開催されます。『イクサラン:失われし洞窟』発売直後の大会なので、どのような結果になるか楽しみですね。
さて、今回の連載では『Modern Qualifier』『SCG CON 10K Modern』『SCG Con 5K Modern』の入賞デッキを見ていきます。
Modern Qualifier 11/5
新たな形のEnsoul ArtifactデッキがRakdosの海に
2023年11月5日
- 1位 Tron
- 2位 Rakdos Grief
- 3位 Rakdos Grief
- 4位 Burn
- 5位 Rakdos Grief
- 6位 Living End
- 7位 Izzet Ensoul Artifact
- 8位 Orzhov Coffers
MOで開催されたRCQは、現環境のトップメタであるRakdos Griefがプレイオフに3名と安定した強さを見せました。
また優勝こそ逃したものの、殿堂プレイヤーであるbobthedog(Gabriel Nassif)が使用していた《一つの指輪》フル搭載のIzzet Ensoul Artifactが印象的でした。
デッキ紹介
Izzet Ensoul Artifact
過去のモダンで活躍していたハサミ親和のキーカード《アーティファクトの魂込め》と、『モダンホライゾン2』から登場した破壊不能のアーティファクト土地、そして土地を破壊する《浄化の野火》《爆裂/破綻》といったカードをフィーチャーしたGabriel Nassif氏のオリジナルデッキ。
《アーティファクトの魂込め》によるビートダウンと《爆片破》などの火力スペルでライフを攻めるプランもある一方で、《一つの指輪》によって長期戦にも耐えられる構成になっています。
☆注目ポイント
アーティファクトシナジーが強力なため、アーティファクト土地の大半はモダンでは禁止されていますが、『モダンホライゾン2』で破壊不能を持つアーティファクト土地が登場しました。《浄化の野火》や《爆裂/破綻》ともシナジーがあり、2マナの《石の雨》として機能します。
アーティファクト土地を複数採用しているため《アーティファクトの魂込め》や《爆片破》の種には困らず、《感電破》の「金属術」の条件を満たすのも容易です。
強力なアドバンテージ源である《一つの指輪》が息切れ防止として採用されているため、従来の《アーティファクトの魂込め》デッキよりもロングゲームに対応しやすくなっています。
SCG CON Modern 5K 11/10
『エルドレインの森』で強化されたHardened Scale
2023年11月10日
- 1位 Hardened Scales
- 2位 Hammer Time
- 3位 Izzet Murktide
- 4位 Rakdos Grief
- 5位 Amulet Titan
- 6位 Rakdos Grief
- 7位 Burn
- 8位 Temur Rhinos
先週末にアメリカ・ピッツバーグで開催されたSCG Conでは、金・土・日の3日連続でモダンの大規模なテーブルトップのイベントが行われました。
金曜日のイベントで優勝したのは『エルドレインの森』で大幅に強化されたHardened Scalesでした。
デッキ紹介
Hardened Scales
《アガサの魂の大釜》はGolgari Yawgmothなどクリーチャーベースのコンボデッキで活躍しており、Hardened Scalesも恩恵を受けているデッキになります。
Hardened Scalesはデッキの動きが複雑なので使いこなすには練度が必要になりますが、現環境トップメタのRakdos Griefに対して構造上有利なため、現環境ではいい立ち位置にあります。
《ウルザの物語》がRakdos側のハンデスに引っかからず、アーティファクト中心のデッキなので構築物・トークンのサイズも馬鹿になりません。また《硬化した鱗》や《打ち砕かれた尖塔、オゾリス》でクリーチャーが相手の火力圏外になりやすく、Rakdos側の除去がうまく機能しにくいのが有利な理由のひとつになります。
☆注目ポイント
《歩行バリスタ》や《電結の荒廃者》など+1/+1カウンターと強力なシナジーを持つ能力を持ったカードが多いので、《アガサの魂の大釜》によって得られる恩恵がかなり大きいです。《歩行バリスタ》を墓地から追放することができれば、容易に相手に致死ダメージを与えることができます。
『機械兵団の進軍』から登場した《打ち砕かれた尖塔、オゾリス》は、追加の《硬化した鱗》として機能します。メインから採用されている《機能不全ダニ》は《ウルザの物語》でサーチしてこれる置物対策で、《一つの指輪》への解答にもなります。
《耐え抜くもの、母聖樹》はメインを圧迫せずに採用できる置物対策です。《微光蜂、ザーバス》という1マナの伝説クリーチャーのおかげで、1マナで「魂力」の能力を使うことができ、1ターンに複数のアクションが取りやすくなります。
SCG CON Modern 10K
Hammer Timeがリベンジを果たす
2023年11月11日
- 1位 Hammer Time
- 2位 Rakdos Grief
- 3位 Temur Rhinos
- 4位 Amulet Titan
- 5位 Golgari Yawgmoth
- 6位 Rakdos Grief
- 7位 Golgari Yawgmoth
- 8位 Rakdos Grief
土曜日に開催された『SCG CON Modern 10K』は、現環境トップメタのRakdosがプレイオフに3名入賞と強さを見せますが、優勝したのはHammer Timeでした。
余談ですが、今大会で優勝したTravis Brown氏は、同デッキで金曜日に開催されたModern 5Kでも準優勝という好成績を残しています。
デッキ紹介
Hammer Time
《豆の木をのぼれ》を搭載した多色コントロールが流行っているのもあり、Hammer Timeにとっては決していい環境とはいえなかったものの、現環境トップメタのRakdos Griefに強いデッキです。決勝戦でも強豪プレイヤーのCorey Baumeister氏のRakdos Griefに勝利しています。
Hammer Timeはカウンターのために青をタッチしたバージョンなどいくつかバリエーションが存在しますが、Travis Brown氏は白単を選択していました。
☆注目ポイント
白単色にするメリットは何といっても安定したマナ基盤で、Rakdosがメインに採用していることもある《血染めの月》に耐性ができます。《エメリアの呼び声》はマナ基盤として機能しつつ、サイドにフル搭載されている《孤独》のピッチコストに充てることもできます。
『機械兵団の進軍』から登場した色対策カードである《救済の波濤》は、優秀な保護スペルとして機能します。Rakdosが使う《オークの弓使い》や《激情》から守ることができ、赤黒のダメージを軽減するためコンバットトリックとして使用することで、相手のクリーチャーを一方的に打ち取る使い方もできます。
サイドの《ヴェクの聖別者》は、プロテクション(赤)(黒)と墓地対策によってRakdos Griefにとって大きな脅威となります。《マナの税収》は白が使えるめずらしいカウンターで、リスト非公開だとめったにケアされないため、相手の虚を突くことができます。《呪われたトーテム像》はHardened ScalesやGolgari Yawgmothなど、起動能力持ちのクリーチャーを多用するデッキ用です。
Golgari Yawgmoth
起動型能力を持つクリーチャーを複数搭載したGolgari Yawgmothもまた、《アガサの魂の大釜》を強く使えるデッキになります。
《絡み根の霊》や《若き狼》といった「不死」クリーチャーは、墓地から復活してきた際に+1+1カウンターが乗っているため《アガサの魂の大釜》で追放したすべてのクリーチャーの能力を得ることができます。
『指輪物語:中つ国の伝承』からも《喜ぶハーフリング》や《オークの弓使い》といった強力な新戦力を得ているため、現環境では常に上位で見かけるデッキのひとつです。
☆注目ポイント
《アガサの魂の大釜》によって《スランの医師、ヨーグモス》や《飢餓の潮流、グリスト》などの能力を与えることができ、多大なアドバンテージを稼ぐことができます。
《アガサの魂の大釜》は《歩行バリスタ》と組み合わせたコンボも可能になりました。《スランの医師、ヨーグモス》で「不死」クリーチャーを生け贄にすることで+1/+1カウンターが乗った状態で場に戻るので、その後《歩行バリスタ》を《アガサの魂の大釜》で追放します。
《歩行バリスタ》のダメージを飛ばす能力でカウンターをリセットできるので、《スランの医師、ヨーグモス》でライフをドローに変換しつつ1点のダメージを与えるというループが完成します。クリーチャーカードを追放した際にクリーチャーに+1/+1カウンターを置く起動能力も、単純にクリーチャー強化能力として有用で、コンボに頼らずにビートダウンでゲームに勝つことももちろん可能です。
また《アガサの魂の大釜》は墓地対策としても機能するため、《悲嘆》+《まだ死んでいない》のコンボや同型の「不死」クリーチャー、Living Endなど墓地を使った戦略をメインから対策することができます。
SCG CON Modern 5K
モダンでも探索するドルイドが活躍
2023年11月12日
- 1位 4C Beanstalk
- 2位 Burn
- 3位 Rakdos Grief
- 4位 Temur Murktide
- 5位 Izzet Murktide
- 6位 Domain Zoo
- 7位 4C Creativity
- 8位 5C Beanstalk
日曜日に開催されたModern 5Kのプレイオフは、Rakdos Griefがわずか1名で、さまざまなデッキが入賞していました。
デッキ紹介
Temur Murktide
テンポデッキの新たなアドバンテージ源として、レガシーのTemur Delverなどで活躍している《探索するドルイド》がタッチされています。
《定業》が解禁されて安定性が増したIzzet Murktideでしたが、ほかのデッキが強化されるなかでこれといった新戦力に恵まれなかったこともあり、苦戦を強いられていました。
《探索するドルイド》は「出来事」を赤のみでプレイすることができ、モダンには《不毛の大地》がないので《繁殖池》1枚のみでマナ基盤にそれほど負担をかけることなく緑をタッチすることができます。
☆注目ポイント
《探索するドルイド》はレガシーでは《表現の反復》に代わるアドバンテージ源として使われているカードで、適切なタイミングでプレイすることでカード3枚分の働きをします。《探索するドルイド》と《表現の反復》のおかげでトップデッキも強くなり、Rakdosとの相性もいくらか改善されています。
《探索するドルイド》を「出来事」でプレイする前に《ミシュラのガラクタ》《定業》《ドラゴンの怒りの媒介者》の「諜報」などでライブラリートップを操作しておくことで、必要なカードが手に入りやすくなります。
さまざまなデッキで採用されている《一つの指輪》ですが、4マナと重いため《呪文貫き》が効きます。《厳しい説教》は《オークの弓使い》をはじめとした、環境の多くのクリーチャーをカウンターできる優秀なカウンターになります。
総括
現環境のモダン、特にMOではModern Challengeのトップ32の半数近くがRakdos Griefになるなど、圧倒的な支配力を見せています。
しかし、今回紹介したテーブルトップのイベントでは異なる結果が出ていることもあります。今後のメタゲームの推移にも注目です。
USA Modern Express vol.105は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!