はじめに
みなさんこんにちは、8度目まして。晴れる屋メディアチーム所属の島田と申します。
前回に引き続き、今回も新セット『イクサラン:失われし洞窟』の中から、個人的に感動したカードやみなさんに伝えたいことがあるカードを紹介していきたいと思います。
再びの来訪となるイクサラン次元、今度の舞台は広大な地下世界。前回は《不滅の太陽》を巡って争ったさまざまな勢力が、今度は《内なる太陽、チミル》を巡って駆け引きや激戦を繰り広げます。この世界何個太陽あんだよ!いや、太陽が複数なんてマジックの世界ではよくあることか。
さらに今回は新メカニズムやルール的に気になる挙動をするカードが多く、ジャッジ的にも興味半分怯え半分でカードリストを見ていました。特に「落魄」くん、君とはこれから長い付き合いになりそうな予感がするぜ。
毎回ルールの話をどれだけ掘り下げていいのか迷うこの企画、よろしければお付き合いください。
なお、私は毎回以下のような基準でカードを選んでおります。
・絵が可愛い
・カードデザインが美しい
・ストーリーでかっこよく活躍する
・翻訳が上手い
・キャラが好き
・昔のカードのリスペクトが詰まってる
・なんか強そう
・ドラフトで100枚ピックしたい
などなど…つまり特別決まったテーマがあるわけではないので、お気楽な気持ちでご覧ください。
また、今回もMTG公式サイトに掲載されている『イクサラン:失われし洞窟』のストーリーのネタバレを含みます。ご了承ください。
それでは始めましょう。
カード紹介
《勇敢な旅人、ケラン》
前回衝撃の設定と共に初登場した『エルドレインの森』の主人公の一人、ケランくんが2セット連続の登場。前回はクリーチャー部分が赤で出来事部分が白でしたが、今回はクリーチャー部分が白で「出来事」部分が緑とお父さんの《王冠泥棒、オーコ》にちょっと近づきました。正直あんまり似ないほうが君のためなのでは?
前回のストーリーで発揮されていた、出会った人を次々味方に付けていくコミュニケーション能力は今回も健在。こいつまた新しい女の子落としてる!どうやらお父さんも昔はだいぶ女たらしだったようなので、モテ力が遺伝したんでしょう。頼むからお母さんのように優しくて良い子のまま育ってくれ。
正直お父さんに関してもカードの性能が有名すぎるせいかあんまり人となり(フェイとなり?)がわかっていないので、いずれ再登場していろんな側面を見せてほしいところです。今のところ権力者が嫌いなことと度の過ぎた悪戯好きなこと、意外と好きになった人に情熱的なこと、あと露出度の高い服が好きなことしかわかってない。
《永遠溢れの井戸》
見事本セットのルール怖い大賞に選ばれたのはこのカード!というか正確には第二面の《無限の池》ですね。最初テキストを読んだとき「パーマネントがパーマネント・呪文のコピーになるってどういうこと?もしかして誤訳?」と失礼な勘違いをしてしまったほど。マジック界に存在する全てのカードを知ってるわけではないですが、おそらく初登場の効果でしょう。
パーマネント・呪文のコピーという概念が初めて登場したのが《石成エンジン》と《分かたれし水流、ヴェラゾール》が収録された2020年9月発売の『ゼンディカーの夜明け』で、そのときに「パーマネント・呪文をコピーするとコピートークンが出るが、トークンを生成したことにはならない」と聞いて首を傾げたのですが今度はどんなルールになっているやら。
とはいえ、普通の使い方ならそんなにおかしなことは起こらないはずなので、プレイヤーのみなさまは安心してご利用ください。クリーチャーを唱えて戦場にあるパーマネントをそのコピーにすることで、疑似的に速攻があるような動きにするのが一番シンプルな使い方かな?
《非化石化》
英語版のカード名は「Defossilize」。「fossilize」が「化石化」で、「De」は否定の接頭辞なのでカードの効果と合わせると「化石化していた恐竜などの生き物を、元生きていたような状態に戻す」という魔法なんでしょう。最終カウンターが乗らずに復活するってことはちゃんとした生体に戻っていると思われるので、地味にすごい効果だ。
しかしこれを日本語に訳そうとすると…うわーっ難しい!日本語で否定の接頭辞というと「非」のほかにも「不」や「反」や「未」や「無」などさまざまありますが、このカードの効果にうまく当てはめるのがなかなか難しい。「脱化石化」?急にSDGsを感じさせる名前になったな。
否定の「De」から始まるカードの場合、過去の日本語訳では接頭辞を使わずに訳している例が多いようです。しかしこのパターンも語彙が豊富じゃないと適した訳語を見つけられず、使うのは大変そう…翻訳って難しい!あと現実世界では物を解体したり稼働停止させたりすることはあっても、非化石化することは滅多にないから訳語が存在しないんだろうな。非石灰化だったら医学用語として一般的に存在してるんですが。
《頭蓋マイマイ》
イラスト怖っ!いやでもよく見ると可愛いかも…やっぱり怖い!と感情をかき乱すイラストと、妙に語呂がよくてつい口に出したくなる名前が特徴の一枚。とりあえず頭蓋って名前に入ってるカードの中で一番イラストが可愛いのは確かそうです。狭いジャンルだなー。
このカタツムリから生えているキノコ、ストーリーでは吸血鬼や邪神と同レベルかそれ以上な最大級の驚異として描かれているので、興味のある方はぜひストーリー記事をご覧ください。どうやってあんなにヤバいやつらを何百年・何千年も抑え込めてたんだ?《帝王マイコイド》、敵キャラとしての格が高すぎる。
実は「カタツムリ」というタイプはこのカードが初登場。カタツムリを餌にすることで有名なオサムシはすでにマジック界に複数いるので、これからは彼らも餌に困ることはないでしょう。でもこんな危なそうなやつ食べて大丈夫か?現実のカタツムリにも寄生虫がいることがあるので、あまり素手で触らないほうがいいですよ。子供のとき結構触ってたかもしれん……
《ゾヨワの裁き》
「発見」の値が大きければ大きいほどなにかと悪用されそうですが、なんとXでの登場です!
さすがに「マナ総量が1以上」の制限が付いているため、トークンやアーティファクト土地を使って「発見0」を狙うことはできませんが、1が狙えるだけでも充分。「続唱」ですら狙って1マナをめくろうと思ったらかなり大変で、2マナ狙いでも充分モダン環境で活躍していますからね。
《ゾヨワの裁き》のすごいところは、相手のパーマネントにも打てること。対象こそ限定されていますが、1マナ軽い《混沌のねじれ》のように使えます。こっちの方面でも悪用できるかもと思ったけど、トークンに使えないから《禁忌の果樹園》で対象を用意する作戦が使えないのと、唱えるか手札に加えるかの選択権が相手にあるからなかなか難しそう。何かいい案があったら教えてください。
《ダイヤのツルハシ》
破壊不能のダイヤのツルハシ!?そんなのもう「マインクラフト」コラボ第2弾じゃないですか!
急になんだという方に説明しますと、過去にマジックでは有名なサンドボックスゲーム「マインクラフト」とコラボしたことがあり、『基本セット2015』にマインクラフトの作者の方がデザインしたカードが収録されたり、マインクラフト側にマジックのキャラクターのスキン(キャラの外見を変えられるアイテム)が実装されたりしたんですよ。マイクラ絵柄のチャンドラの広告カード可愛かったなー。
そのマインクラフトには「ダイヤのツルハシ」というそのものズバリな名前のアイテムが存在し、なんなら見た目も結構似てます。マインクラフト版のダイヤのツルハシは耐久性が高いとはいえ一応壊れるので、「破壊不能」なマジック版のほうが頑丈な可能性さえあります。さらに攻撃すると宝物・トークンが出る効果もあるけど、壊れないダイヤのツルハシのほうがよっぽど宝物じゃない?やっぱりコラボカードってすごい(誤解)。
《中心核の瞥見》
イラストがめっっっっちゃ綺麗!イクサランやゼンディカーなど土地をテーマにしたセットは美しい地形を描いたイラストが多く、風景画好きとして大変ありがたいです。みなさまには推し風景イラストはありますか?私は《高地の湖》《闇孔の小道》《アズカンタの探索》あたりが特に好きです。
イラストを描かれているFrancisco Miyaraさんは、これまで《日没を遅らせる者、テフェリー》のショーケース版などマジックでは20枚ほどイラストを手がけているものの、現時点では土地のイラストは0枚。もっと土地のイラストを書いてほしいな、Wizards宛てに要望とファンレターを送っておくか。
さらにこのカード、フレーバーテキストもたいへん洒落てます。長く暗い洞窟を抜け、地下世界の奥地に広がる雄大な景色を目にして最初に出てくる言葉が「詩人を連れてきてよかった」という感性、素敵!もう宝を巡る争いなんてやめて、自然の中で詩を歌って暮らしましょうよ。いや、実現したら新しいセットが発売されなくなるからダメだな。
《喧嘩腰号》
前回の『イクサラン』ブロックでヴラスカ船長やジェイスが乗り込み、冒険を繰り広げたあの「喧嘩腰号」が待望のカード化!今回は地下世界での冒険がテーマなのでストーリー中にはあまり登場しませんでしたが、ファンサービス的にこうやってカード化してもらえるのは嬉しいですね。
今回ストーリーでメインキャラとして活躍するマルコムやブリーチェスはこの船の乗員で、特にマルコムは回想シーンでヴラスカのことを「会いたかった」「無敵といっていいかつての船長が死ぬなどとは信じたくなかった」と言及しているので船員たちの絆は相当強かったのでしょう。ほんとヴラスカとジェイスはどうしてるんだ、ずっと消息不明なのは生存フラグだと信じてるぞ。
カードの能力もまた格好良いです。航海に乗り出せば(=攻撃すれば)宝を手に入れ、さらに冒険の間(=そのターンの間)は未来に手を伸ばして夢を実現できる(=《未来予知》相当の効果が得られる)!能力の主人公感がすごい。これで再登場したヴラスカに青か赤が入ってたら感動で泣きますよ。
《千年暦》
「千年暦の上に1000個以上の時間カウンターがあるとき」「1000点のライフを失う」……1,000個!?1,000点!?マジックではときおり妙に大きい数がテキストに登場してプレイヤーをびっくりさせることがありますが、1,000はおそらく初でしょう。100万が出てきたことはあったけど、あれは銀枠セットだもんな。
1枚のカードの上に1,000個もカウンターを置いたらテキストが読めなくなってしまうので、実物で使おうと思ったらなんらかの工夫が必要でしょう。増えるときも一気に増えるので、数え間違えないようにしたいところ。またカウンターが一気に増やせることを利用して、《完全なる統一》とのコンボも考えられているみたいです。みんな頭いいな。
最初ネタだと思われていた《霊気貯蔵器》もコンボデッキでフィニッシャーとして活躍したし、このカードも大会で活躍してガンガン1,000点失わせる日が来るかもしれません。雑な計算ですが、アンタップされるパーマネントが10個もあれば、毎ターン起動するのと合わせて6ターンくらいで1,000個に到達するはず。数を倍にしていくとあっという間に大きくなるの、紙を42回折ると月に届く話を思い出すな。
《洞窟めいた大口》
「洞窟めいた」って単語、人生で初めて見た!日本語に「○○めいた」という言葉はそれなりにありますが(「春めいた」「きらめいた」など)、マジックではこれまで「謎めいた」しか登場しておらず、このカードがそれ以外の形第一号のようです。「○○めく」の形でも「よろめく」「きらめく」「ゆらめく」くらいで結構レア。
マジック的造語なのかと思ったけど、“Cavernous”という単語は「洞窟のような」「小さなくぼみの多い」「多孔質の」という意味で実在し、主に医学用語として使われているようです。「○○めいた」って本当に○○なパターンにも○○じゃないけどそれに近いパターンにも使うけど、このカードはタイプが洞窟だから前者だな。
このカードの日本語版には訳の誤りがあり、能力の正しい起動制限は「(前略)あなたがコントロールしていてこれでない洞窟の数とあなたの墓地にある洞窟・カードの枚数の合計が3以上でなければ起動できない。」なのでご注意ください。はっ、もしや「洞窟めいた」が実際に洞窟なのかそうでないか(=このカードを洞窟として数えるか数えないか)の解釈が訳に影響してしまった!?さすがに深読みしすぎだな。
おわりに
今回はここまで。ほかにも『イクサラン:失われし洞窟』にはたくさんの魅力的なカードがありますので、ぜひカードリストを見てお気に入りの1枚を探してみてください。
それではみなさま、『カルロフ邸殺人事件』でお会いしましょう。また次回!