はじめに
みなさん、こんにちは。
12月4日に禁止改定があり、モダンからは《激情》と《豆の木をのぼれ》の2種類のカードが禁止になりました。《激情》が禁止カードに指定されたことは大きく、Rakdos Scamを含めた複数のデッキを弱体化させることで環境のシェイクアップを図っています。《豆の木をのぼれ》の禁止も、多色コントロールの弱体化へと繋がりました。
さて、今回の連載では禁止改定が環境にどのような影響を与えるのかを解析していきたいと思います。
新環境注目デッキ紹介
Golgari Yawgmoth
Golgari Yawgmothは《激情》が退場したこともあり、今回の禁止改定によって最も恩恵を受けているデッキの一つです。
旧環境でも常に大きなイベントの上位で見られたので、新環境でも有力なデッキとされています。このデッキにとって相性が悪いとされていたRakdos Scamと多色コントロールが、両方弱体化したことも追い風です。
☆注目ポイント
《激情》が退場したことによって《喜ぶハーフリング》や《下賤の教主》といったマナクリーチャーを並べやすくなり、《召喚の調べ》の価値も上がりました。これにより、《飢餓の潮流、グリスト》や《スランの医師、ヨーグモス》といったキーカードを早い段階から展開しやすくなります。
このデッキは『エルドレインの森』から登場した《アガサの魂の大釜》によって強化され、旧環境でも結果を残し続けていました。このカードによってより早くコンボを決めることができるようになり、《飢餓の潮流、グリスト》を追放して自分のクリーチャーに能力を与えることで、トークンで場を埋め尽くしたり相手の脅威を処理することができます。
《虚空の力線》や《スランの医師、ヨーグモス》の起動型能力を対策できる《真髄の針》といった置物がこのデッキに対する主な対策になりますが、Golgari Yawgmoth側も《機能不全ダニ》《耐え抜くもの、母聖樹》《活性の力》といった置物対策がなされています。
Orzhov Scam
Rakdos Scamは《激情》が退場したことで《まだ死んでいない》が手札で腐りやすくなり、安定性が著しく失われたことで弱体化しました。しかし、1ターン目の《悲嘆》+《まだ死んでいない》は依然として環境の強力なムーブになりえます。
《激情》を失ったいま無理に赤をプレイする必要はなく、《孤独》や《儚い存在》が使えるオルゾフバージョンが有力な選択肢になりそうです。
☆注目ポイント
《激情》ほどではないものの、《孤独》も《儚い存在》や《まだ死んでいない》と組み合わせることで相手のクリーチャーを複数除去することができるため、十分強力なクリーチャーになります。
オルゾフバージョンは《悲嘆》のほかにも《潮の虚ろの漕ぎ手》が使えるなど、相手のプランを妨害する手段が豊富です。《潮の虚ろの漕ぎ手》の場に出たときの能力がスタック上にある状態で、《儚い存在》で「明滅」させると相手のカードを永久に追放させることも可能です。
疑似除去の《精霊界との接触》も「魂力」で使うことによって、インスタントスピードで場に出たときの能力持ちのクリーチャーを再利用することができ、自軍のクリーチャーを除去から守ったり、相手の《濁浪の執政》の+1/+1をリセットさせるという使い方もできます。
Living End
《悲嘆》の禁止を免れ、天敵だった《ダウスィーの虚空歩き》を擁したRakdos Scamが減少することで、Living Endも禁止改定後の有力な選択肢になりそうです。
もともと旧環境でも《ダウスィーの虚空歩き》《時を解す者、テフェリー》《虚空の杯》があるのにも関わらず、常に大きなイベントで結果を残し続けていたので今後要注目のデッキです。
☆注目ポイント
メインから採用されている《緻密》は、墓地対策の《忍耐》や《ダウスィーの虚空歩き》のほかにも、《喜ぶハーフリング》からの《スランの医師、ヨーグモス》《時を解す者、テフェリー》《創造の座、オムナス》といった脅威にも対策することができます。
『指輪物語:中つ国の伝承』から「土地サイクリング」を持つ《オリファント》と《気前のよいエント》が登場したことでデッキの安定性が向上し、土地の枚数もわずか15枚となっています。
《オリファント》はトランプル持ちなので新環境で流行るであろうGolgari Yawgmothとのマッチアップに強く、《気前のよいエント》は《森》をサーチすることができるため《血染めの月》にも耐性ができます。
Tron
Tronはプロツアーでも結果を残すほどの強さで、禁止改定の影響もなかったので今後も期待のアーキタイプです。
《血染めの月》を搭載したRakdos ScamはTronにとって脅威だったので、《激情》の退場で1ターン目の《悲嘆》に悩まされることも少なくなりそうです。
☆注目ポイント
Tronは《一つの指輪》を強く使えるデッキで、同時に《大いなる創造者、カーン》も採用しているため相手の《一つの指輪》に強いデッキでもあります。トロンランドがそろっていない状態でもプレイしやすく、無敵状態になることでトロンをそろえてフィニッシャーをプレイするまでの時間を稼いでくれます。
《四肢切断》は《敏捷なこそ泥、ラガバン》や《月の大魔術師》といった複数の異なる脅威を、わずか1マナで除去できる優秀なスペルになります。
Merfolk
Merfolkは初期のころから人気があるデッキで、最近のセットからの収穫も多いです。《激情》の退場と《豆の木をのぼれ》を使ったコントロールが弱体化したこともあり、このデッキをはじめとした多くのクリーチャーデッキが相対的に強化されています。
先月開催された『第25期モダン神決定戦』でも『イクサラン:失われし洞窟』の新カードである《ティシャーナの潮縛り》を採用したMerfolkが結果を残していたため、禁止改定後の環境でも活躍が期待できるアーキタイプになりそうです。
☆注目ポイント
現在『イクサラン:失われし洞窟』で最も注目されているカードである《ティシャーナの潮縛り》は、各種プレインズウォーカーや《一つの指輪》をはじめとしたさまざまなカードに刺さる能力を持つマーフォークです。
《ティシャーナの潮縛り》の能力によって《一つの指輪》のプロテクションの誘発を打ち消せるだけでなく、ドローも消すことができます。また、このタイプのデッキに対して大打撃となる《仕組まれた爆薬》も無力化することが可能です。相手の除去から《ヴォーデイリアの呪詛抑え》で守ることもでき、単体でもパワー3と無視できないクロックとして活躍します。
総括
Rakdos Scamの最も強いムーブである《悲嘆》+《まだ死んでいない》が懸念されていたため、《悲嘆》が禁止になると予想されていましたが、禁止になったのは《激情》でした。コンボ自体はまだ存続しますが、環境を支配していたRakdos Scamは大幅な弱体化を強いられることとなりました。今後は、《激情》が退場したことでクリーチャーデッキの復活が予想され、環境の多様化にも期待できそうです。
コントロールも《豆の木をのぼれ》の禁止で「続唱」型から《レンと六番》や《虹色の終焉》を使った伝統的な多色コントロールに戻ることが予想されます。
USA Modern Express vol.106は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!