はじめに
みなさん、こんにちは。スタンダード担当の紳さんです。
「Just Nowスタンダード!」では、主なスタンダードの大会結果をまとめてお伝えします。入賞したデッキを紹介しながら、注目のカードやメタゲームの様相、デッキテクニックなどに触れていきますので、参考になれば幸いです。
先週は「マジック:ザ・ギャザリング超感謝祭」が開催され、そのなかで公式競技イベントである『チャンピオンズカップ特別予選』が行われました。
106名の参加者のうち、『チャンピオンズカップファイナル』への切符を手にしたのは4名。勝ち残ったのはどんなデッキだったのでしょうか。 それでは早速、最新のスタンダード大会結果を見ていきましょう!
12/9(土)『チャンピオンズカップ特別予選』
それでは『チャンピオンズカップ特別予選』を勝ち残った4名のデッキを順番に紹介させていただきます。
トップ4 「赤単」
トップ4、タケザワ リョウヘイさんの赤単です。
現在、もっとも主流な《巨怪の怒り》を採用した型です。奇をてらうことなく、王道の赤単パーツを揃えて見事に結果を残しました。
サイドボードには《策謀の予見者、ラフィーン》や《輝かしい聖戦士、エーデリン》を1マナで叩き落す《石術の連射》を4枚採用。《勝負服纏い、チャンドラ》はサイド後の赤単対策を乗り越えるためのリソースを確保する切り札です。
版図ランプとのマッチアップでは《偉大なる統一者、アトラクサ》や《怒りの大天使》のような絆魂持ちクリーチャーの登場で最大の難局を迎えますが、《歪んだ忠義》が必殺の切り札となります。
メイン戦はめっぽう強い赤単。サイド後はいかにキーカードを引き当てるかが勝負の鍵となりそうです。
トップ4 「版図ランプ」
トップ4、タセ ユウヤさんの版図ランプです。メインで採用されているカードについては説明不要のパーツかと思われますので、ここではサイドボードのカードを紹介します。
《強情なベイロス》は黒系のデッキが台頭することを見越して《ヴェールのリリアナ》対策としての採用でしょうか。《アモンケットへの侵攻》などを活用した墓地利用系のデッキも少しづつ活躍を見せているようで、クリティカルな働きをする場面もありそうです。
また、赤単相手にもブロッカー兼ライフ回復要員としてサイドインする価値がありそうです。
同じくサイドボードの《痛烈な一撃》は赤単を強く意識して3枚採用。現スタンダードは赤単対策なくしてデッキを組むことは難しい環境です。
《石術の連射》はエスパーミッドレンジと人間系のアグロデッキを同時にメタれるナイスカードですが、赤マナを序盤から安定して用意できるわけではないので控えめに2枚採用。
ちなみに版図ランプ同士の対戦では消耗戦の果てにライブラリーアウトで決着することもよくあります。《完成化した精神、ジェイス》をサイドに採用しているか否かで勝率が大きく変わりそうです。
トップ4 「ラクドスミッドレンジ」
トップ4、齋藤 慎也さんのラクドスミッドレンジランプです。
フェアデッキながら《地質鑑定士》や《嘶くカルノサウルス》などの発見を誘発させるクリーチャーが8枚採用されており、カードアドバンテージの獲得を最優先した構築のようです。
《嘶くカルノサウルス》が着地し、「発見5」から《ギックスの残虐》を唱える動きはこのデッキの最大出力です。もちろん《切り崩し》がめくれてションボリ、ということもあります。
黒系のデッキではこれまで《下水王、駆け抜け侯》や《墓地の侵入者》のような墓地対策も兼ねた3マナ域のクリーチャーが採用されることが多かったのですが、《分派の説教者》と《ヨーグモスの法務官、ギックス》というドローを強く意識したクリーチャーが採用されています。
特に4枚採用されている《分派の説教者》は《ヨーグモスの法務官、ギックス》と違って伝説のクリーチャーではないため、手札でダブつくことがありません。《稲妻の一撃》で除去されないタフネス4というのも優秀ですし、攻撃時の誘発型能力はライフで負けているときは絆魂持ちの1/1クリーチャーを戦場に出し、勝っている時にはドローをもたらすので、どちらに転んでも有用です。
アグロデッキが隆盛している現スタンダード環境においてドローとひきかえにライフを失うことはとても気になりますが、3枚採用された《黙示録、シェオルドレッド》が生き残ればライフの心配はしなくてもよさそうです。
フェアなミッドレンジ戦略はランプやコントロール系のデッキを苦手とするため、サイドボードには《強迫》が4枚フル投入されています。特に《太陽降下》は天敵ですので、《強迫》で抜けるかどうかが勝負の分かれ目となりそうです。
ハンデスしながら奥義を目指せる《ヴェールのリリアナ》も2枚採用されています。
トップ4 「版図ランプ」
トップ4、加藤 健介さんの版図ランプです。メインに関しては先ほど紹介したタセ ユウヤさんのデッキと同一リストですので、サイドボードについて触れさせていただきます。
2枚採用の《強迫》は版図ランプの同型対戦やコントロール系のデッキに対して有効に働きそうです。キーカードを事前に抜き去ることはもちろん強いのですが、対戦相手の手札という「情報」を手に入れることがなによりのアドバンテージとなります。
《多元宇宙の突破》は強力なカードですが、効果についてはランダム性が強く、採用がやや珍しいカードかもしれません。
ただ、《完成化した精神、ジェイス》をサイドボードに2枚採用するリストも多いなか、《多元宇宙の突破》を1枚挿しすることの有用性は高そうです。
特に版図ランプ同士の対戦では《多元宇宙の突破》によって《偉大なる統一者、アトラクサ》を釣り上げるだけでなく、お互いにサイドインするであろう《完成化した精神、ジェイス》を戦場に出せる可能性があり、決まり手となります。
12/9(土)『Standard Challenge 32』
つづいて、マジックオンラインにて行われた12/9(土)の『Standard Challenge 32』の結果です。
- 1位 ゴルガリミッドレンジ
- 2位 ゴルガリミッドレンジ
- 3位 ゴルガリミッドレンジ
- 4位 エスパーミッドレンジ
- 5位 白単
- 6位 版図ランプ
- 7位 エスパーミッドレンジ
- 8位 アゾリウス兵士
局所的にゴルガリミッドレンジが1、2、3フィニッシュを決めるという、とても興味深い結果となりました。
優勝 「ゴルガリミッドレンジ」
優勝したリストがこちらです。ちなみに2位と3位に入賞したデッキも似たような構築ながら、同一デッキというわけではありませんでした。
ゴルガリミッドレンジはいわゆるグッドスタッフ系のデッキで、『エルドレインの森』発売直後に活躍し、有力なアーキタイプと認知されながらも最近は使用者が減っていました。
『イクサラン:失われし洞窟』発売後は新しく《大洞窟のコウモリ》《分派の説教者》《名もなき都市の歩哨》などが加わり、改めてデッキの強さが見直されているようです。
ロングゲームになると《眠らずの小屋》が強く、《開花の亀》とのコンビネーションはことさらに強力です。ちなみに優勝したリストには《開花の亀》が採用されていませんでしたが、2位と3位のデッキには採用されています。
12/10(日)『Standard Challenge 64』
最後に12/10(日)の『Standard Challenge 64』の結果を見ていきましょう。
- 1位 版図ランプ
- 2位 ラクドスコントロール
- 3位 アゾリウス兵士
- 4位 版図ランプ
- 5位 白単
- 6位 ラクドスミッドレンジ
- 7位 エスパーミッドレンジ
- 8位 パワーストーンランプ
アグロ、ミッドレンジ、ランプ、コントロールといろいろなゲームレンジのデッキがまんべんなく入賞しました。混戦のなか、版図ランプが貫録を見せつけて優勝しています。
注目入賞デッキ 「ラクドスコントロール」
惜しくも優勝を逃した2位のラクドスコントロールは、最近使用者がとても増えている印象です。
ラクドスコントロールにもいくつかタイプがありますが、現在のトレンドは《ドロスの魔神》を4枚採用した攻撃的な型のようで、好成績を収めています。
油カウンターを取り除けなかった場合の敗北という条件はほとんど達成されることなく、むしろ《ドロスの魔神》が3回殴ったら勝ちという考え方が支持されています。
6/6飛行というサイズはブロッカーとしても厚く信頼でき、特に赤単ではタフネス6をカード1枚で対処することができません。《魔女跡追いの激情》で除去される《黙示録、シェオルドレッド》に代わり、これからのエースとして活躍できそうです。
また、アグロデッキが横並べしたクリーチャーを《兄弟仲の終焉》や《家の焼き払い》で一掃する動きが強く、《ドロスの魔神》が戦場にいると全体除去+プレイヤーに大ダメージというコンボも狙えます。
対戦相手が《ドロスの魔神》の対処に時間をかけている間に、《大勝ち》から《原初の征服者、エターリ》や《多元宇宙の突破》《希望の標、チャンドラ》などのフィニッシャーへとたどりつけば勝利は目前です。
デッキの構成的に4枚目の土地が置けなかった場合が悲惨なのですが、《セレスタス》や《アイレンクラッグ》をしっかり採用しているのはさすがですね。
メタゲームについて
先週までは「白が強い」という印象のスタンダード環境でしたが、ラクドス、ゴルガリといった白が絡まない黒系のデッキが台頭してきました。特に《分派の説教者》は急激に採用率を伸ばしていて、さらなる活躍が期待される注目のカードです。
また、サイドボードに対アグロカードを多数採用することにより、版図ランプも安定した成績を収めています。どんなカードでも採用できる柔軟性は5色デッキならではの強みといえるでしょう。
数週間の間にエスパーミッドレンジ、赤単と目まぐるしくトップメタのデッキが変わっていますが、現在は版図ランプが最有力のデッキといえるかもしれません。
また、版図ランプのシェア率が高くなるようなら《テリシアの精神壊し》や《完成化した精神、ジェイス》を活用したライブラリーアウト型のコントロールデッキがメタゲームに食い込む可能性があります。
この予想が当たったら褒めてください。
今週は予想外のデッキが大会で結果を残し、スタンダードがますます盛り上がってきたと感じます。次はどんなデッキが入賞するでしょうか?来週の大会結果をお楽しみに!