はじめに
みなさん、こんにちは。スタンダード記事担当の紳さんです。
「限界突破スタンダード!」では、スタンダードの大会で実績を挙げたユニークな構築のローグデッキをたくさん紹介していきます。
今回も王道ローグデッキ(?)から複雑なコンボを狙う異端のローグデッキまで、面白いデッキがたくさん揃いました。これらのデッキがちゃんと大会で勝っているというのがなにより興味深いです。
すべてのデッキの真価を100%お伝えできるかわかりませんが、最後までお付き合いいただけると幸いです。
ローグデッキ紹介
《もがく出現》リアニメイト
リアニメイトはクリーチャー以外を釣る時代になりました。
具体的には《多元宇宙と共に》《ファイレクシアへの門》の2枚を狙います。
リアニメイトといえばこれまで「ファッティを釣り上げる=マナコストを踏み倒す」ことが主流でした。
しかし、《多元宇宙と共に》や《ファイレクシアへの門》を釣り上げることでさらにパワフルな動きが実現します。
《多元宇宙と共に》はそもそも手札やライブラリートップの呪文をすべて踏み倒すことができますし、《ファイレクシアへの門》は戦場に出たときの強力な除去効果に加えて、毎ターン墓地のクリーチャーをリアニメイトすることができます(しかも、対戦相手の墓地からも釣れる!)。
ちなみにエンチャントやアーティファクトを墓地から戦場に出すカードはこれまでにもありましたが、白のカードに限定される上にやや重く、少し使いづらい印象がありました。
それに比べると《もがく出現》は3マナと軽く、黒緑には「切削」関連のカードが多いため使いやすいです。《ファイレクシアへの門》や《多元宇宙と共に》を釣るためには8~9枚のパーマネント・カードを墓地に送る必要がありますが、このデッキは目当てのカードを墓地に送るためにたくさんの切削をするため、自然と条件を満たすことができます。
《ファラジの考古学者》と《錠前破りのいたずら屋》の出来事面は切削をしながら《もがく出現》を探すことができるナイスカードです。
《第三の道の創設》は第I章で《異世界の凝視》や《錠前破りのいたずら屋》《大嵐の雄鹿》の出来事面を唱え、第II章で4枚切削し、第III章で墓地に落ちた《もがく出現》のコピーを唱えることができるなど、すべての能力が嚙み合っています。
全体除去や追加のリアニメイト手段に関して、ソーサリーではなくバトルを採用しているのも細かなテクニックです。《錠前破りのいたずら屋》や《大嵐の雄鹿》などのクリーチャーを採用していることからも、墓地に落ちたときにパーマネントであることを重要視しています。
墓地対策カードは天敵ですが、現スタンダード環境で採用されている墓地対策は《羅利骨灰》で対処できるものが多いため、サイド後に著しく不利になるということもありません。
リアニメイト戦略のついでに《迷いし者の魂》や《忘れられた者たちの嘆き》など「落魄」を軸にしたカードを採用しても強そうです。
墓地活用デッキに対するガードが下がれば、環境的にかなり強いポジションを得られるデッキだと感じます。今後も注目のアーキタイプですね!
《深根の巡礼》マーフォーク
最近、ちょくちょく対戦する機会の多い《深根の巡礼》を活用したマーフォークデッキです。
《深根の巡礼》は自分がコントロールするトークンでないマーフォークがタップすると、呪禁を持つ1/1のマーフォーク・トークンを戦場に出します。
攻撃したり《地底のスクーナー船》に搭乗したり、なにかとマーフォークをタップするだけでトークンが出続けるのは驚異的なパフォーマンスです。これがわずか2マナのエンチャントというのはにわかに信じられません。
《深根の巡礼》ともっとも相性が良いのが《ヴォーデイリアの呪詛抑え》。全体強化して殴るだけでも強いのに、マーフォークを生け贄にするだけで1マナ要求する打ち消し能力はやりすぎな気がします。
対戦相手はマナに余裕がなければ、除去をすることすら困難となります。トークンは犠牲になりますが、《深根の巡礼》や《ヴォーデイリアの呪詛抑え》が残るのなら怖いものはありません。なぜならマーフォークをタップするだけでトークンが出続けるのですから。
《深根の巡礼》を引き込めなくても、意外とプレイアブルなマーフォークがゲームを成立させます。
《名もなき都市の歩哨》はカード単体で見てもかなり強く、探検で+1/+1カウンターを乗せ続ければフィニッシャーになりえる性能。(警戒は《深根の巡礼》と微妙にアンチ・シナジーですが)。
《ティシャーナの潮縛り》の強さは言うまでもなく、厄介なアーティファクトやプレインズウォーカーもただの置き物に変えてしまいます。
《深水淵の残響》はマーフォークにしては4マナと重いですが、《ヴォーデイリアの呪詛抑え》のコピーになることで全体強化能力が重複するなど強い場面が多そうです。
弱点としては、青緑というデッキカラーに強い除去カードがないことでしょうか。サイドボードに採用されているカードを見ても少し苦しそうです。
気になる部分も多いですが、トークンが並び始めたときのイケイケ感は脳汁がヤバそうです。
マーフォークといえばパイオニア・モダン・レガシーでも活躍する種族なのでファンも多そうですよね。普段はスタンダードをやらないけど下環境でマーフォークを使っているという方。ぜひ、この機会にいかがでしょうか。
ボロスヒロイック
体重を乗せた一撃にすべてを懸ける。そんなローグデッキはいかがでしょうか。
基本戦略は《照光の巨匠》や《双刃の霊》のような二段攻撃を持ったクリーチャーを超絶強化して一撃を狙います。
《騒音の悪獣》は攻撃が通ったタイミングで、命と引き換えにパワー分ダメージを与えられるため、瞬間的に二段攻撃と同等のダメージを与えることが可能です。
クリーチャー強化呪文は単に打点が稼げるものよりも、キャントリップやフラッシュバックがある方がリソースが尽きにくくなるため価値が高いといえます。
《巨怪の怒り》のように怪物・役割・トークンをクリーチャーにつけたり、+1/+1カウンターを乗せるといった呪文も継続的にクリーチャーのスタッツを底上げしてくれるため重宝します。怪物・役割・トークンがトランプルを付与する点も見逃せません。
このあたりの採用カードはパイオニアでボロスヒロイックを使用したことがある人には馴染みやすいですね。
もちろん、除去は天敵です。クリーチャー強化呪文に対応して除去をされるとわかりやすくカードアドバンテージを失います。
対戦相手のタップアウトを狙ったり、《離反ダニ、スクレルヴ》や《天使の介入》などでクリーチャーを守れる状況をつくってから一撃必殺を狙うというのがデッキの主な回し方となるでしょう。
サイドボードの《祝福された反抗》は対アグロデッキでライフレースをひっくり返すのに使えます。
こちらのクリーチャーにトランプルがつくと、対戦相手はブロックせずにクリーチャーをスレ違いさせて、殴りあいの勝負に活路を見出そうとするでしょう。そういった場面では《祝福された反抗》による絆魂付与が決め手となります。
スピーディーかつ爽快に勝負を決められるボロスヒロイックですが、クリーチャーばかり引いて強化呪文が引けない、もしくは逆に強化呪文ばかり引いてしまう、といった手札事故が頻繁に起きることが予想されます。
また、採用している土地の枚数はわずか18枚です。一撃の精度を高めるために土地を削ぎ落としているため、マリガン、土地事故は避けられないタイプのデッキといえるでしょう。
そんなリスクと引き換えに、デッキが理想通りに回ったときは最強クラスの速度と破壊力を誇ります。己のヒキを信じられる方、剛腕の持ち主にはうってつけのデッキですね!
《最深の力、オヘル・アショニル》サクリファイス
以前、「限界突破スタンダード! vol.1」でラクドスサクリファイスについて紹介しましたが、『イクサラン:失われし洞窟』からの新戦力で大幅に強化されたことはご存じでしょうか。
《最深の力、オヘル・アショニル》と《鬼流の金床》のコンボが超強力なのです。
これまでのラクドスサクリファイスは血・トークンや《実験統合機》《ミシュラの研究机》などを生け贄にして《鬼流の金床》を起動し、対戦相手に1点のダメージを与えながら構築物・トークンを出すという動きで満足していました。
その《鬼流の金床》によって与えられるダメージが《最深の力、オヘル・アショニル》のパワー分へと変換され、ダメージ効率が4倍以上に跳ね上がったのです。
そればかりか《ヴォルダーレンの美食家》や《熊野と渇苛斬の対峙》が戦場に出たときのダメージ、デビル・トークンの死亡時誘発によるダメージまでも《最深の力、オヘル・アショニル》のパワー分へと変換されます。
さすがに1点のダメージが最低4点に変換されるのは強すぎます。
個人的には、《巨怪の怒り》を使って《最深の力、オヘル・アショニル》のパワーを上げ、1点のダメージを7点にしてみたいです!
…まぁ、やりすぎですかね。
…現実的に考えると、《巨怪の怒り》よりは《強迫》で安全確認をして《最深の力、オヘル・アショニル》が除去されないようにするとか、《熱狂的な献上》で《鬼流の金床》か《最深の力、オヘル・アショニル》を探しにいくほうが強そうです。
また、《最深の力、オヘル・アショニル》は除去されても一旦は土地に姿を変えて残るのが強みです。《電圧のうねり》などでなんらかの対象に4点以上のダメージを与えれば、神として再び戦場に戻せるため、またさらに大ダメージコンボの夢を見ることができます。
デッキ全体としてはシナジーを優先するあまり、どうしても脆弱なカードが多くなっています。コンボパーツを引けなかったときに苦戦しそうですが、《最深の力、オヘル・アショニル》がもたらす圧倒的な火力を一度は体験してみたいですね!
《太陽の高揚、サヒーリ》ETB
「戦場に出る/Enters the battlefield」。英語の頭文字をつなげてETB。
戦場に出たときに誘発する能力のことをETB能力と呼びますが、このデッキはETBを何回も誘発させて勝つデッキです。
デッキの一番重要なカードが《太陽の高揚、サヒーリ》です。
2マナでありとあらゆるクリーチャーやアーティファクトのコピー・トークンを戦場に出せるため、デッキ内の有用なETB能力をもつパーマネントをコピーすることで何度でもETBを誘発させることができるのです。
しかし、《太陽の高揚、サヒーリ》には除去耐性もなく、スタッツも平凡。すぐに除去をされてしまいますよね。
そこで活躍するのが《アガサの魂の大釜》。+1/+1カウンターが乗っているクリーチャーに《太陽の高揚、サヒーリ》の起動型能力を持たせることができるため、追放除去されない限りは止められません。
とはいえ、繰り返しETBを誘発させるだけでゲームに勝てるでしょうか?
ドロー・打ち消し・除去・トークン生成……
墓地追放・リアニメイト……
はい。どうやら《告別》されない限りは勝ちそうです。
《アーボーグのラタドラビック》も面白いカードです。伝説のクリーチャーが死亡したときに、そのクリーチャーの「伝説でない」コピー・トークンを戦場に出すことができます。
《太陽の高揚、サヒーリ》によって伝説のクリーチャーのコピー・トークンを出すと状況起因処理によって即座に墓地へと送られますが、《アーボーグのラタドラビック》の能力が誘発するので「伝説でない」コピー・トークンが戦場に出ます。
ややこしいですが、ETB能力が合計で2回誘発し、ゾンビとなったコピー・トークンが戦場に残るというわけです。
コンボパーツを揃えるのは大変そうですが、決まれば《復活したアーテイ》のETB能力をほぼ無限に誘発させることもできるため、以降は対戦相手の呪文をすべて打ち消せる「ロック状態」をつくることも可能。
盤面が複雑になりそうですが、かなり独特な動きをするローグデッキですね!クリーチャーコンボが好きな方にオススメします。
おわりに
いかがでしたでしょうか。今回紹介したデッキは強力な動きをするローグデッキばかりで、近い将来Tier1になってもぜんぜんおかしくないと感じています。
とくに《もがく出現》のカードパワーには目を見張るものがあり、スタンダード環境には下環境ほどの強い墓地対策カードがないことからも、かなり暴れるのではないかと予想しています。
同様の理由で《アガサの魂の大釜》を利用したコンボデッキなどにも注目です。
現状でも有力とされるアーキタイプは出てきており、研究が進むにつれて、今後はメタゲームに食い込むデッキが登場するのではないでしょうか。
《眠り呪いのフェアリー》《囁かれる希望の神》のどちらかが戦場、どちらかが墓地にあるだけで即座に有色無限マナ。イージーウィンが狙えそうですよね。
最後まで読んでくださりありがとうございました。それではまた、次回の記事で!