はじめに
みなさん、こんにちは。スタンダード担当の紳さんです。
「Just Nowスタンダード!」では、主なスタンダードの大会結果をまとめてお伝えします。入賞したデッキを紹介しながら、注目のカードやメタゲームの様相、デッキテクニックなどに触れていきますので、参考になれば幸いです。
先週は関西帝王戦が晴れる屋トーナメントセンター大阪で開催されました。第17期スタンダード帝王の座を射止めたのはどんなデッキなのでしょうか。 そのほか各スタンダード大会の結果と共にお伝えします!
12/17(日)『第17期関西帝王戦スタンダード』
晴れる屋が主催するイベントのうち、神決定戦と双璧をなす大型大会である関西帝王戦。『第17期関西帝王戦スタンダード』の結果からお伝えします。
- 優勝 ゴルガリミッドレンジ
- 準優勝 アゾリウスフィッシュ
- トップ4 エスパーレジェンズ
- トップ4 エスパーミッドレンジ
- トップ8 アゾリウスミッドレンジ
- トップ8 エスパーミッドレンジ
- トップ8 赤単
- トップ8 アゾリウスフラッシュ
優勝がゴルガリミッドレンジ、準優勝がアゾリウスフィッシュという結果になりました。
優勝 「ゴルガリミッドレンジ」
見事、第17期スタンダード帝王の栄冠を掴み取ったのはゴルガリミッドレンジでした。
一見するとオーソドックスなグッドスタッフ系のゴルガリミッドレンジに見えますが、《向上した精霊信者、ニッサ》と《危難の道》がメインに2枚ずつ採用されるなど、現在のメタに合わせた帝王独自のチューンナップが随所に見えます。
アグロを抑え、ランプやコントロール相手にもロングゲームで競り負けない、ゴルガリミッドレンジ特有の粘り強い戦い方ができそうです。
《グリッサ・サンスレイヤー》や《眠らずの小屋》などゴルガリカラーの強いカードはたくさんありますが、このデッキを使いたくなる最大の理由が《苔森の戦慄騎士》の存在です。
出来事面のドローは恒久的なリソース確保手段として優秀。アグロ相手には1点のライフロスが痛い場合もありますが、3枚採用された《黙示録、シェオルドレッド》がいれば逆にライフゲイン手段にもなりえます。
対戦相手からするとドローされるのが嫌なため、《苔森の戦慄騎士》をなるべく死亡させないようにプレイした結果、3点のダメージをずっと受け続けるという場面も少なくありません。《婚礼の発表》などで出した1/1トークンでチャンプブロックしようにも、トランプルを持っているのが厄介です。
ちなみに《苔森の戦慄騎士》のループを止めようと《塔の点火》や《放浪皇》をプレイされた場合、《切り崩し》で自らの《苔森の戦慄騎士》を墓地に送るといった選択肢もあります。相手のデッキ次第で腐ることも多い《切り崩し》ですが、こういった使い方もあるため無駄になりません。
サイドボードのカードを含め、ドロー・ハンデス・パーマネント破壊・ライフ回復・墓地追放とマジックで勝つための基本的な戦略がほぼすべて実行できるデッキです。
極端に不利なマッチアップがないため、ゴルガリミッドレンジは今後もメタゲームの一角を担うことになりそうですね!
準優勝 「アゾリウスフィッシュ」
わずかに帝王に及びませんでしたが、アゾリウスフィッシュはメタ外のデッキながら準優勝という優秀な成績を残しました。
《風変わりなペット》から出てくる魚・トークンは1/1ながらブロック不可。《婚礼の発表》や《忠義の徳目》で強化されはじめると手がつけられないほどの暴力性があります。
とはいえ、強化されるのは5ターン目以降。赤単やアゾリウス兵士とダメージレースで勝つことはできるのでしょうか?
注目ポイントは《有望な信徒》の「訓練」と《遠眼鏡のセイレーン》の地図・トークンがもたらす「探検」です。《風変わりなペット》を唱えたときに+1/+1カウンターが乗っているクリーチャーがいると魚・トークンにも+1/+1カウンターが乗るため、序盤から安定したダメージクロックを用意することができます。
ブロック不可で価値が高い魚・トークンで殴りつづけ、そのほかのクリーチャーをブロック要員に回すことでアグロデッキ相手にも優位に戦えそうです。
魚・トークンがブロック不可である以上、このデッキのビートダウンが膠着することはありません。よって、警戒すべきは魚・トークンが除去されることのみと考えられます。
青が得意とする各種打ち消しで魚・トークンを守り続ければ、いつかは勝利というゴールにたどり着くことができるでしょう。
対戦相手が魚・トークンの打点を上回る脅威を展開してきた場合は白の除去で対応ができそうです。
現在のスタンダード環境に一石を投じる伏兵・アゾリウスフィッシュの活躍。回避不能の新型クロック・パーミッションとして、メタゲームを脅かす存在になれるでしょうか。
注目入賞デッキ 「エスパーレジェンズ」
こちらはトップ4に入賞したエスパーレジェンズのデッキリストです。
エスパーレジェンズといえば今年、ジャン=エマニュエル・ドゥプラ選手が使用して、今年の第29回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権を制したデッキでもあります。
伝説のクリーチャー31枚+《喉首狙い》3枚。残りは土地。
ジャン=エマニュエル・ドゥプラ選手は《かき消し》を1枚採用していましたが、今回のデッキリストからはそれさえも抜けています。
エスパーレジェンズは《太陽降下》ですべてを失いそうに見えますが、《スレイベンの守護者、サリア》と《復活したアーテイ》が簡単に通しません。
ひとたびクリーチャー除去に失敗すれば、《策謀の予見者、ラフィーン》を中心としたビートダウン戦略が対戦相手のライフを即座に奪い去ります。
防御面では《策謀の予見者、ラフィーン》の「謀議」能力と《黙示録、シェオルドレッド》の組み合わせが強く、大量のライフゲインを可能にします。
フェアデッキ同士の対戦ではライフレースが一気にひっくり返ってしまうため、《策謀の予見者、ラフィーン》か《黙示録、シェオルドレッド》のどちらかを対処しない限り勝ち目は薄いでしょう。
また、土地を一番強く使えるのもエスパーレジェンズの強みです。これらの土地は実質的に呪文と変わらないほどの強力な能力を持ちます。
《英雄の公有地》は伝説のクリーチャーを単体除去から守り、4枚採用の《皇国の地、永岩城》と3枚採用の《天上都市、大田原》が《喉首狙い》以外の貴重な除去として機能します。
今回のリストにはサイドボードに《軽蔑的な一撃》が4枚採用されているのも特徴的です。版図ランプを強く意識しているのでしょうか。
《魂の洞窟》の影響で採用しづらい《軽蔑的な一撃》ですが、たしかに《集団失踪》《太陽降下》《ゼンディカーへの侵攻》を打ち消せると考えれば4枚採用するバリューが十分にありそうです。
最近は使用者が減っている印象のエスパーレジェンズですが、世界一に輝いたこのデッキが再びスタンダード環境を席巻しても不思議はなさそうです。
12/16(土)『【周年イベント】TOP16賞品有!超レア孔雀アルティメット賞争奪スタンダード』
続いて、12/16(土)に晴れる屋横浜店で開催された『【周年イベント】TOP16賞品有!超レア孔雀アルティメット賞争奪スタンダード』の結果を見ていきましょう。
- 優勝 版図ランプ
- 準優勝 ラクドスミッドレンジ
- トップ4 ジャンドミッドレンジ
- トップ4 アゾリウス兵士
- トップ8 ゴルガリミッドレンジ
- トップ8 アゾリウスフラッシュ
- トップ8 版図ランプ
- トップ8 ゴルガリミッドレンジ
優勝は版図ランプ、準優勝は最近勢力を伸ばしている発見型のラクドスミッドレンジでした。
優勝 「版図ランプ」
見事、《急使の手提げ鞄》を4枚採用した版図ランプが優勝しました。版図ランプの強さについては説明不要かと思いますので、リストの気になった部分のみ触れさせていただきます。
《豆の木をのぼれ》登場以降は《急使の手提げ鞄》を採用しないリストも多いなか、今回のリストは《急使の手提げ鞄》をメインに4枚採用し、《豆の木をのぼれ》はサイドボードに4枚という珍しい構築。
現スタンダード環境はアグロデッキが台頭していることから、《急使の手提げ鞄》の価値をより大きく考えているようです。
版図ランプが苦手とするアグロ系のデッキに対して、《急使の手提げ鞄》から出る1/1市民・トークンがブロック要員として役に立ちます。
いざとなれば《急使の手提げ鞄》を宝物として使用することで、《豆の木をのぼれ》のみを採用している型よりも1ターン早く《集団失踪》や《太陽降下》を唱えることが可能ですし、ロングゲームになるのであれば3枚ドローとして活用できます。
《豆の木をのぼれ》に比べると、対戦相手の動きに合わせて用途を使い分けられるのが《急使の手提げ鞄》の強みといえるでしょう。
そのほかの気になるポイントとしてはサイドボードに3枚採用された《真髄の針》でしょうか。
版図ランプ同型戦で致命的なカードとなる《完成化した精神、ジェイス》、全体除去後に脅威として残り続ける《地底のスクーナー船》《ミシュラの鋳造所》など、《真髄の針》は版図ランプにとって対処しづらいカードをピンポイントで止めることができる素晴らしいサイドボードです。
優勝するデッキは一味違うな、と思わせるさすがの構築テクニックですね!
12/16(土)『Standard Challenge 32』
最後にマジックオンライン上で行われた『Standard Challenge 32』の結果です。
- 優勝 アゾリウス兵士
- 準優勝 赤単
- 3位 エスパーミッドレンジ
- 4位 版図ランプ
- 5位 ディミーアミッドレンジ
- 6位 ラクドスミッドレンジ
- 7位 版図ランプ
- 8位 アゾリウス兵士
優勝はアゾリウス兵士、準優勝は赤単とアグロデッキが最終的に勝ち残りました。
優勝 「アゾリウス兵士」
赤単とのアグロ対決を制し、瞬速クリーチャーを多めに採用したアゾリウス兵士が優勝しています。
こちらも比較的メジャーなデッキですので、リストの気になるポイントにだけ触れさせていただきます。
これらの瞬速クリーチャーは全体除去に対する返しで即座に殴れるアタッカーとして有能です。
《人狐のボディガード》はブロッカーを排除しながらすぐに攻撃に参加できますし、《微風の歩哨》は対戦相手が唱えた除去呪文の対象となったクリーチャーに対して使うとリソースを減らすことなく打点を維持することができます。
サイドボードに3枚採用された《過充電縫合体》はわりと珍しいカードかもしれません。打ち消しとしても使えますし、いざとなれば単に瞬速で呼び出せる飛行3/3アタッカーとしてプレイすることもありそうです。
コストが4マナと重いのは気になりますが、これまで打ち消し呪文枠としてアゾリウス兵士に採用されてきた《交渉団の保護》よりも攻撃的で理にかなっているのかもしれません。
さらにサイドボードに4枚フル採用された《ランタンのきらめき》にも注目で、除去をしながらのライフゲインは同型戦を含めた各種アグロデッキに対するアンチカードとして、かなりクリティカルな刺さり方をしそうです。
コンスタントに結果を残し続けるアゾリウス兵士ですが、《ランタンのきらめき》の採用によって「アグロデッキに対する勝率が高いアグロデッキ」として確固たる地位を築くことになるでしょうか。
メタゲームについて
アゾリウスフィッシュなど、メタ外のデッキも活躍していますが、全体としてはかたくTier1のデッキが勝ち続けているという印象です。
そのなかで版図ランプが《真髄の針》を採用するなど、サイドボードで差をつけて勝ち切るデッキ構築がとても参考になりました。
メタゲームが固まれば同型戦も増えますので、勝つためにはサイドボードでの工夫が必要不可欠となるでしょう。
来週はどんなデッキ構築テクニックを拝めるでしょうか。
個人的にはそろそろ、緑のカードの活躍が見たくなってきました。それでは、また来週。