TLS2023の現場から:クリエイティブカスケードの異常な構築

晴れる屋メディアチーム

~またはこのデッキは如何にしてミシシッピ・リバーと呼ばれるようになったか~

ミシシッピ川。

アメリカ合衆国で2番目に長い川であり、北アメリカ開拓時代から今日にいたるまで水運の要となっている重要な河川だ。マーク・トゥエインの小説『トム・ソーヤの冒険』などにも印象的に登場することでも知られる。

ミシシッピ川はみなさんご存じだろう。では、レガシーの「ミシシッピ・リバー」はご存じだろうか。

初日のメタゲームブレイクダウンに「カスケードコンボ」なるデッキの記載があった。

これが翌日には「クリエイティブカスケード」に変更された。実際のデッキ使用者にアーキタイプ名について意見を聞き、反映させた形だ。

だが、この「クリエイティブカスケード」もまた、真の名とは言えないかもしれない。

「Meleeだと、”ミシシッピ・リバー”で登録されてるんですよ。まあ、クリエイティブカスケードのほうがわかりやすいでしょうけど……」

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フィーチャーテーブルでのツルタ タクロウ選手

ここでは選手とデッキへ敬意をこめて「ミシシッピ・リバー」と呼ぼう。THE LAST SUN 2023で「ミシシッピ・リバー」を選択し、初日を突破したツルタ タクロウ選手に話を聞いた。

正体

――ミシシッピ・リバーとはどんなデッキなのでしょうか。

創造の技逆嶋の手下嘶くカルノサウルス

「大量の2マナ出る土地を使って3ターン目に5~6マナを捻出し、《創造の技》もしくは続唱を持つ6マナの呪文を唱えるとライブラリーからつぎつぎ呪文が連鎖して、最終的に速攻を持った《約束された終末、エムラクール》ほか複数のクリーチャーが殴りかかって勝利するコンボデッキです。

実演(あなたがこの呪文を唱えたとき、あなたは「これをコピーし、対戦相手1人にもこれをコピーさせる。」を選んでもよい。)

ライブラリーを切り直す。その後、土地でないカードが公開されるまで、あなたのライブラリーの一番上から1枚ずつ公開していく。そのカードを追放し、残りをあなたのライブラリーの一番下に無作為の順番で置く。あなたはその追放されたカードをマナ・コストを支払わずに唱えてもよい。

――カスケードクラッシュに似ていますが、よりデッキ構築に制限がかかった代わりにリターンが大きくなっているのですね。

銀河を焔羅のままにオーロラのフェニックス乗り込み部隊

「このデッキの前身にギャラクシーカスケードがあります。《銀河を焔羅のままに》をはじめとした赤の続唱呪文と《創造の技》を使用した構築でした」

――ツルタ選手のリストには《銀河を焔羅のままに》が入っていませんね。カバレージ担当者もアーキタイプを分類していて《銀河を焔羅のままに》が入っていない《創造の技》デッキをどう扱うか悩んだようです。

「研究が進むと《逆嶋の手下》などの赤以外の続唱呪文でも成立することがわかり、さまざまな構築が試されるようになりました」

「私のリストではティムールカラーとなってショーテルの要素も加わり、2ターン目に《実物提示教育》から《嘶くカルノサウルス》が出てコンボ開始や、単純に《引き裂かれし永劫、エムラクール》を出すこともありえます」

――ところで、このデッキを何と呼ぶべきか、実際の使用者としてご意見いただけませんか。

創造の技

Creative Technique》

「わかりやすい名前としては”クリエイティブカスケード”がいいのではないでしょうか。続唱呪文はさまざまな選択肢があって代表する固定の1枚を上げにくいのですが、《創造の技》が抜けることはないでしょう」

「MeleeではこのデッキはMississippi Riverというアーキタイプになっています。」

――なぜミシッシッピ川?

「実際にプレイしている様子を見るとわかるんですが、スタックに積まれた呪文がミシシッピ川のように長く重ねられていくんです。そのさまをミシシッピ川にたとえたんでしょうね」

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配信中の一場面。
中央の重ねられているカードはスタック上のもの

デッキ選択

――今回はなぜ「ミシシッピ・リバー」を選択したのでしょうか。

騙し討ち実物提示教育引き裂かれし永劫、エムラクール

「もともとはスニーク・ショーを使っていました。《引き裂かれし永劫、エムラクール》のようなデカブツを出すデッキが好きだったんです」

悲嘆オークの弓使い

《悲嘆》《オークの弓使い》の登場してからというもの、ハンデスに強く、キャントリップでコンボパーツを集めない踏み倒しデッキを探し始めました」

「そうしてたどり着いたのがミシシッピ・リバーです。どれだけハンデスされてもデッキに大量に入っている着火剤1枚を引くだけでコンボを開始できて、ドロー呪文を使わないので《オークの弓使い》も大きな問題になりません」

相性

――3ターン目に始動する1枚コンボと聞くとかなり強そうです。得意なデッキ、苦手なデッキはどんなデッキでしょうか。

「まず今回トップメタの多色豆の木コントロールですが、わずかに有利です」

不毛の大地時を解す者、テフェリー

「特殊土地でマナ加速をするデッキなので《不毛の大地》は苦手なのですが、多色豆の木コントロールには入っていないので安定して3ターン目に仕掛けることができます。打ち消しのあるデッキですが、続唱や《創造の技》は打ち消しで対応しにくいのでつっぱれます」

「ただ、続唱に劇的に効く《時を解す者、テフェリー》には要注意です。対戦相手にコピーさせた《創造の技》で出てきてしまうと負けです。《天上都市、大田原》《嘶くカルノサウルス》の火力で対処します」

――苦手なデッキはなんでしょうか。

暗黒の儀式最後の審判むかつき

「まず《暗黒の儀式》を使うような、こちらより早いコンボデッキです。こちらは軽い妨害が使えないので、デッキがばれるとオールインされてしまいます」

エメリアのアルコン月の大魔術師

「それから2マナ土地を咎める《月の大魔術師》や呪文を唱える回数を制限する《エメリアのアルコン》を使うデッキです。《月の大魔術師》がいると地道に土地を5枚置いて《創造の技》を撃つはめになり、大きくスピードダウンです。《エメリアのアルコン》がいる状態ではそもそもコンボに入れません」

もみ消し精神壊しの罠

「打ち消しには強いのですが、続唱を打ち消す《もみ消し》や、スタック上の呪文をまとめて吹き飛ばす《精神壊しの罠》は致命的です」

――苦手なデッキもあるのですね。今後もミシシッピ・リバーは使いますか?

《オークの弓使い》《悲嘆》《再活性》が強い環境ではショーテルが活躍するのは難しいです。そうした環境が続くようなら継続して使っていきたいです」

それは大河か銀河か

――と、ここで記事を締めるつもりだったが、執筆しているうちにまた新たな構築が生まれているようだ。ミシシッピ・リバーに銀河が帰ってきたのだ。そう、『指輪物語』とともに。

Call Forth the Tempestモリアのバルログ

ミシシッピ・リバーの流れはいずれ誰にも止められない濁流になるのだろうか。今後の発展に注目だ。

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