Just Nowスタンダード! vol.6 -2023年のメタゲームを振り返る-

紳さん

はじめに

みなさん、こんにちは。スタンダード担当の紳さんです。

「Just Nowスタンダード!」では、主なスタンダードの大会結果をまとめてお伝えします。入賞したデッキを紹介しながら、注目のカードやメタゲームの様相、デッキテクニックなどに触れていきますので、参考になれば幸いです。

今回は今年最後の大会結果をお伝えしながら、2023年を振り返ってメタゲームがこの1年間でどのように変わっていったのかまとめていきます!

12/23(土)『Standard Challenge 32』

まずはマジックオンライン上で行われた『Standard Challenge 32』の結果です。

  • 優勝 版図ランプ
  • 準優勝 セレズニアエンチャント
  • 3位 アゾリウストークン
  • 4位 ラクドスミッドレンジ
  • 5位 版図ランプ
  • 6位 ラクドスミッドレンジ
  • 7位 エスパーミッドレンジ
  • 8位 ボロスコントロール

トップ8デッキリスト

メタ外のデッキが多く入賞する波乱のなか、優勝はTier1の版図ランプでした。版図ランプについては何度も取り上げてきましたので、ここでは注目入賞デッキを2つ紹介してまいります。

注目入賞デッキ 「アゾリウストークン」

3位に入賞したアゾリウストークンのリストがこちらです。

セゴビアへの侵攻忠義の徳目婚礼の発表

《セゴビアへの侵攻》を4枚採用し、《婚礼の発表》はサイドボードというユニークなデッキ構築です。

威厳あるバニコーン内なる空の管理人

《威厳あるバニコーン》《内なる空の管理人》をすぐに強くしたい場合《婚礼の発表》よりも《セゴビアへの侵攻》の方がスピードの面で優れています。

セゴビアへの侵攻放浪皇交渉団の保護

さらに《セゴビアへの侵攻》の裏面は強力な召集付与とアンタップ能力を持つため、クロックを展開しながら《放浪皇》《交渉団の保護》を構えることができます。

ランタンのきらめき呪文貫き軽蔑的な一撃

サイドボードにはアグロ対策と版図ランプ対策のカードを多めに採用。

トークン·デッキの特性上、赤単相手には《ランタンのきらめき》を1回唱えるだけでライフレースは逆転しそうです。逆に赤単側は《ランタンのきらめき》の対象に取られたクリーチャーを自らの火力呪文で焼き払うなどの対応が求められるでしょう。

兄弟仲の終焉一時的封鎖太陽降下

トークンを一掃するクリティカルな全体除去は《呪文貫き》《軽蔑的な一撃》で打ち消します。版図ランプ相手には《ゼンディカーへの侵攻》を打ち消せれば脅威を展開される前にゲームを終わらせることができそうです。

セゴビアへの侵攻威厳あるバニコーン内なる空の管理人

横並びの「面」と一点突破の「点」を兼ね備えた対処しづらい攻撃を仕掛けてくる新型アゾリウストークン。今後の活躍に期待します。

注目入賞デッキ 「ボロスコントロール」

8位に入賞したボロスコントロールのリストです。

太陽降下告別

メインから《太陽降下》4枚と《告別》2枚を採用し、ロングゲームを目指します。

ウラブラスクの溶鉱炉婚礼の発表トカシアの歓待

《ウラブラスクの溶鉱炉》ターン数が経過すればするほどトークンが強くなるフィニッシャーです。《婚礼の発表》は説明不要の強さですし、《トカシアの歓待》はトークン戦略と非常に相性が良いドローサポートです。

放浪皇永遠の放浪者

《告別》と各種プレインズウォーカーも相性がよく、更地となった戦場でリソースを稼ぎ続けてくれます。

最深の基盤、オヘル・タク

《最深の基盤、オヘル・タク》はこれまでに実績こそありませんでしたが、《ウラブラスクの溶鉱炉》とのコンボは極めて強力です。《放浪皇》《永遠の放浪者》が生成するトークンも3体ずつ出るようになり、ゲームを終わらせるスピードは随一でしょう。

6マナとかなり重いですが、除去耐性もあるのでコントロールにもってこいのクリーチャーです。

炎心の決闘者聖なる火塔の点火

コントロールデッキが苦手とするアグロ戦略に対しても、メインから対策をしています。

《炎心の決闘者》は火力呪文に絆魂を持たせ、《聖なる火》との組み合わせでは4点のライフを得ることができます。

兄弟仲の終焉

サイド後には《兄弟仲の終焉》も加わり、《炎心の決闘者》やトークンが巻き添えになる代わりに膨大な量のライフを得ることができそうです。

ゲームが長引けば、先述した各種置き物とプレインズウォーカーが勝利をもたらしてくれます。

最深の基盤、オヘル・タクウラブラスクの溶鉱炉炎心の決闘者

とてもユニークな構築ですが、勝つためのアイディアとテクニックが詰まったデッキです。打ち消しを軸としたコントロールが成立しにくい現スタンダード環境において、このようなアプローチのコントロールデッキが登場したことはとても興味深いですね!

12/24(日)『Standard Challenge 64』

つづいて『Standard Challenge 64』の結果です。

  • 優勝 赤単
  • 準優勝 版図ランプ
  • 3位 エスパーミッドレンジ
  • 4位 ラクドスミッドレンジ
  • 5位 版図ランプ
  • 6位 ディミーアミッドレンジ
  • 7位 エスパーミッドレンジ
  • 8位 版図ランプ

トップ8デッキリスト

前日に比べると波乱は少なく、王道デッキが順当に勝利を収める結果となりました。ここでは6位に入賞したディミーアミッドレンジを紹介したいと思います。

注目入賞デッキ 「ディミーアミッドレンジ」

王道デッキがひしめくなか、6位に入賞したディミーアミッドレンジのリストです。

遠眼鏡のセイレーン大洞窟のコウモリヨーグモスの法務官、ギックス

採用カードを見る限り、エスパーミッドレンジと構築が似ています。

策謀の予見者、ラフィーン婚礼の発表邪悪を打ち砕く

エスパーミッドレンジとディミーアミッドレンジを比べると、《策謀の予見者、ラフィーン》の存在は大きく、打点ではエスパーに軍配が上がるでしょう。また、白が絡むことでエンチャントも壊せますし、除去性能もエスパーの方が上です。

このディミーアミッドレンジというデッキが特別に優れている点はなんでしょうか?

ドロスの魔神黙示録、シェオルドレッドヴェールのリリアナ危難の道

1つはダブルシンボルカードの採用しやすさにあると思います。とくに黒絡みのダブルシンボルには強力なカードが多く、最近ではラクドスミッドレンジでも採用されることが多い《ドロスの魔神》は4マナ域の最強クリーチャーとの呼び声も高いです。

ヨーグモスの法務官、ギックス漆月魁渡

《ヨーグモスの法務官、ギックス》はエスパーでも採用されるカードですが、安定して出せるわけではないため1枚採用であることが多いです。一方、今回のディミーアミッドレンジでは3枚と多めに採用されています。

同じく3マナ域の《漆月魁渡》もドローサポートとして優秀なカードで、序盤に展開した軽量飛行クリーチャーを活かすデッキ構築となっています。

不穏な浅瀬

また、ミシュラランドを採用できるのも2色デッキならでは強みです。《集団失踪》《太陽降下》などで全体除去をされた返しに殴れるなど、ビートダウンを継続して勝ちきることができます。

こういった要素がエスパーよりもディミーアが優れている点だと感じました。今回の6位入賞という結果も、このデッキの有用性を物語っています。

2023年のメタゲームを振り返る

それでは最後に2023年の締めくくりとして、この1年を振り返りながら、スタンダード環境メタゲームの変遷についてまとめたいと思います!

絶対王者「グリクシスミッドレンジ」

鏡割りの寓話絶望招来勢団の銀行破り

2023年最初のトップメタはグリクシスミッドレンジでした。

デッキタイプ 1日目 2日目
グリクシスミッドレンジ 61 26
エスパーミッドレンジ 11 5
赤単アグロ 11 4
白単ミッドレンジ 10 3
アゾリウス兵士 10 3
イゼットランプ 10 4
マルドゥミッドレンジ 7 2
ラクドスミッドレンジ 4 1
ジャンドミッドレンジ 3 1
その他 19 2
合計 146 51

こちらは2022年の末に開催された「The Last Sun 2022」のメタゲームの様相です。ご覧の通り、グリクシスミッドレンジが支配的なメタゲームとなり、この流れを引き継いで2023年がスタートします。

グリクシスミッドレンジ

グリクシスミッドレンジの代表的なリストです。

鏡割りの寓話絶望招来勢団の銀行破り

3色デッキにもかかわらず、クァドラプルシンボルの《絶望招来》がスムーズにプレイできてしまうのは恐ろしすぎましたね。

税血の収穫者死体鑑定士黙示録、シェオルドレッド

採用されているカードがすべて強く、多くのプレイヤーを魅了したデッキです。

ちなみにグリクシスミッドレンジ以外では、エスパーミッドレンジ・赤単・アゾリウス兵士なども有力なアーキタイプとされていました。

偉大なる統一者、アトラクサ離反ダニ、スクレルヴ敬慕される腐敗僧

依然としてグリクシスミッドレンジの王政はつづきますが、2月10日に『ファイレクシア:完全なる統一』が発売されたことで少しだけメタゲームに変化が訪れます。多色コントロールとセレズニアポイズンの登場です。

多色コントロール

版図ランプの前身ともいえる多色コントロールは、莫大なハンドアドバンテージとボードアドバンテージを同時に獲得できる《偉大なる統一者、アトラクサ》をフィニッシャーに据えたコントロールデッキです。

偉大なる統一者、アトラクサ力線の束縛告別

このデッキの登場ですぐに《偉大なる統一者、アトラクサ》のカードパワーが異常なまでに高いことに多くのプレイヤーが気がつきましたが、多色コントロールのゲームレンジは当時のスタンダード環境には合わず、目覚ましい活躍はできませんでした。

《偉大なる統一者、アトラクサ》が大暴れするのは、もう少しあとの話です。

セレズニアポイズン

毒性持ちクリーチャーによるアグロ戦略でスピーディーにゲームを終わらせるセレズニアポイズンは、王者に輝いた瞬間があります。

離反ダニ、スクレルヴスクレルヴの巣敬慕される腐敗僧

2023年3月に行われた「プレイヤーズコンベンション横浜」。参加者194名で開催された「チャンピオンズカップファイナル サイクル2」にて佐藤 レイ選手がセレズニアポイズンを使って優勝を収めました。

素晴らしい実績ですが、その後セレズニアポイズンがTier1のデッキになったかというと、そんなことはありませんでした

一時的封鎖兄弟仲の終焉ギックスの命令

低マナ域のクリーチャーを並べて殴る、というストレートな戦略のセレズニアポイズンは対策がたてやすく《切り崩し》なども含めて次々にTier1のデッキたちが対策カードを採用したことにより、メタゲームの主役にはなれなかったようです。

強すぎる「ラクドス」がプロツアーを席巻

グリクシスミッドレンジがトップメタの道をひた走るなか、4月21日に『機械兵団の進軍』が発売されます。

ゼンディカーへの侵攻太陽降下

《ゼンディカーへの侵攻》《太陽降下》を手に入れ、この時点で版図ランプがほぼ完成するのですが、同時に版図ランプをも上回るスケールのデッキが誕生してしまいます。

多元宇宙の突破希望の標、チャンドラ原初の征服者、エターリ

最強デッキ、ラクドスです

3種類のラクドスデッキ

鏡割りの寓話絶望招来勢団の銀行破り

グリクシスミッドレンジで活躍していたパワーカードはそのままに、2色に絞って安定性を増した上でさらなるパワーカードを加え、ラクドスはメタゲームを瞬く間に制圧してしまいました。

ひとえにラクドスといっても、ミッドレンジ型、ランプ(ブリーチ)型、リアニメイト型と3種類のラクドスが存在し、5月5~7日で開催された「プロツアー・機械兵団の進軍」では名だたるプロプレイヤーがいずれかのラクドスデッキを選択。

アゾリウス兵士、版図ランプ、オルゾフコントロールなども抵抗をしますが、優勝はネイサン・ストイア/Nathan Steuer選手が使ったラクドスミッドレンジとなりました。

強すぎるラクドス。パワーカードたちの夢の競演ですね。

ローテーション変更と禁止改定、2つの大きな出来事

5月7日。スタンダード環境に関する極めて重大な発表がありました。

ローテーション期間の変更

MTG公式の発表により、スタンダードにおける全カードのライフサイクルが1年延長され、各エキスパンション・セットがローテーションによって姿を消すのが2年周期から3年周期へと変更となりました。

この変更に関してはいろんな意見があると思いますが、事実としてはスタンダードのカードがより長く使え、カードプールがより広くなったということです。

禁止改定

5月29日。スタンダードに関する禁止改定が発表されました。

鏡割りの寓話絶望招来勢団の銀行破り

禁止となったのは《鏡割りの寓話》《絶望招来》《勢団の銀行破り》の3枚。やはりダメでした

これらのカードは、グリクシス時代から数えると2023年のメタゲームを半年近くも制圧しつづけたことになりますね。

そして、絶対王者がいなくなり、混沌のメタゲームが幕をあけます。

混沌のメタゲームへ

禁止改定以降はいろんなデッキに活躍のチャンスが生まれます。コントロールが勝ち、アグロがコントロールを咎め、ミッドレンジがアグロを潰すという理想的なメタゲームの回り方となりました。

その後は9月8日『エルドレインの森』が発売、11月17日『イクサラン:失われし洞窟』が発売と、かなり強力なカードがスタンダードに流れ込んできましたが、メタゲームが壊れることはなく、絶妙なバランスを保ちます。

12月3日には第25期スタンダード神決定戦赤単を使用した矢島 広道選手が優勝するなど、アグロの奥深さを感じさせる勝利を上げました。

激動の1年間を経て、今が一番の良環境なのではと思います。

今、一番強いデッキは?

この記事を書いている2023年12月27日現在。健全にメタが回り、良環境を維持しつづけている現在のスタンダードであえて一番強いデッキを決めるとするならば?

版図ランプ

ここ最近のスタンダードを見続けてきた、スタンダード記事担当者としてあえて選ぶとするならば版図ランプが一番強いデッキだと思います。

豆の木をのぼれ怒りの大天使群れの渡り

『エルドレインの森』で《豆の木をのぼれ》を獲得し、もはや《偉大なる統一者、アトラクサ》に頼らずともゲームに勝てるカードパワーの高さは環境随一です。

大群退治向上した精霊信者、ニッサ

最新型は《大群退治》《向上した精霊信者、ニッサ》の1枚挿しが流行っているようですね。《大群退治》は2マナで唱えられる可能性がある全体除去ながら《豆の木をのぼれ》でカードを引けるため、《集団失踪》より強い場面がありそうです。

《向上した精霊信者、ニッサ》は【+1】のトークン生成と【-1】の置き物破壊がどちらも強く、《群れの渡り》でトークンを並べてからの【-7】による必殺技でゲームを終わらせることもできるなど、隙がありません。

2024年2月9日には『カルロフ邸殺人事件』が発売を控えており、またメタゲームに影響が出るとは思いますが、それまでは版図ランプがトップメタデッキとして君臨することは間違いなさそうです。

次点としてはエスパーミッドレンジが版図ランプにつづくデッキだと思います。

大洞窟のコウモリ策謀の予見者、ラフィーン婚礼の発表

アグロに対する対応力、安定性は版図ランプよりも上。この1年を通してずっと活躍していた印象です。

おわりに

ローテーション期間の変更、禁止改定など大きな出来事がありましたが、1年を通していろんなデッキが活躍する場面を目にすることができました。良環境がつづき、これからますますスタンダードが盛り上がっていくのではないでしょうか。

今後もJust Nowスタンダード!では最新の大会結果を中心に楽しい情報をお伝えしていきます。

最後まで読んでくださりありがとうございました。それでは良いお年を!

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紳さん マジック愛に生きるフリーライターです。モダン、パイオニア、スタンダードでローグデッキを使い、勝利を目指す! 至って真剣勝負の毎日です。 紳さんの記事はこちら