USA Modern Express vol.108 -《ティシャーナの潮縛り》で増す勢い、マーフォークの波-

Kenta Hiroki

はじめに

みなさん、こんにちは。

2024年もモダンの情報をみなさんにお届けしていきたいと思うので、よろしくお願いたします。

今回の連載では『SCG CON Cincinnati 2024』で開催された2つのイベントと、マジック・オンラインの『Modern Super Qualifier』の入賞デッキを見ていきたいと思います。

SCG Con Modern $10K
新カードで強化されたマーフォーク

アメリカ・オハイオ州のシンシナティで開催された『SCG CON Cincinnati 2024』で、モダンの大規模なテーブルトップイベントがありました。

定番のデッキが結果を残すなかで、優勝したのはMerfolkでした。

デッキ紹介

Merfolk

『イクサラン:失われし洞窟』で登場した《ティシャーナの潮縛り》によって強化されたデッキです。

Merfolkは長い間モダンで活躍しているアーキタイプで、《ヴォーデイリアの呪詛抑え》《海と空のシヴィエルン》など最近のセットからの新戦力を獲得して強化され続けています。

禁止改定により《激情》が退場したことも、単体では小粒なサイズのクリーチャーを並べるこのデッキにとっては朗報です。《霊気の薬瓶》《魂の洞窟》のおかげでカウンターに耐性があるため、青いデッキに強い構成になっています。

☆注目ポイント

ティシャーナの潮縛り

《ティシャーナの潮縛り》起動型能力をカウンターできるので、《仕組まれた爆薬》《忘却石》といったスイーパー対策になります。《ヴォーデイリアの呪詛抑え》《マーフォークのペテン師》と同様に瞬速持ちなので奇襲性もあり、隙を作らずに展開していくことができます。

Deeproot PilgrimageRishadan Dockhand

『イクサラン:失われし洞窟』から登場したもうひとつの新戦力である《深根の巡礼》は、《リシャーダの荷運び》のようにタップ能力を持つマーフォークと相性が良く、除去を多用するデッキとのマッチアップで役に立ちます。

呪われたトーテム像虚空の杯

増加傾向にあるGolgari Yawgmothを対策するために、サイドには《呪われたトーテム像》が採用されています。

Merfolkは《虚空の杯》を強く使えるデッキです。X=1で設置しても《霊気の薬瓶》《魂の洞窟》があるのでそれほど自分には影響がなく、《稲妻》《致命的な一押し》などの1マナ除去を封じることができます。X=0で設置すれば、Living EndやTemur Rhinosといった「続唱」デッキ対策にもなります。

SCG Con Modern $20K
禁止改定後のモダンのトップメタ

SCG CON Cincinnati 2024』で開催されたもうひとつの目玉イベント。禁止改定後の環境で結果を残し続け、現在はトップメタの一角に位置しているGolgari Yawgmothが優勝しました。

ほかには、Temur RhinosやRakdos Scamなどが中心で、4C ControlやAzorius Controlなどコントロールも見られました。

デッキ紹介

Golgari Yawgmoth

このデッキもまた《激情》の禁止による恩恵を受けたデッキで、Amulet TitanやRakdos Scamなど相性が悪いマッチアップは存在するものの、現在トップメタの一角に位置しています。

『エルドレインの森』から《アガサの魂の大釜》を獲得したことで、全体的にデッキパワーが向上しました。今大会では見事に優勝、トップ4にも1名と安定した強さを見せます。

☆注目ポイント

アガサの魂の大釜

《アガサの魂の大釜》は、《歩行バリスタ》《根の壁》《スランの医師、ヨーグモス》といった有用な起動型能力を持つクリーチャーを搭載したこのデッキにフィットしたアーティファクトです。

墓地から「不死」で復活してきた《絡み根の霊》《若き狼》《オークの弓使い》のトークンには+1/+1カウンターが乗っているため、《アガサの魂の大釜》で追放したクリーチャーの能力を得ることができ、大量のマナとカードアドバンテージを獲得することができます。

飢餓の潮流、グリストスランの医師、ヨーグモス

《飢餓の潮流、グリスト》の能力を与えることでトークンを並べることができ、《スランの医師、ヨーグモス》が除去されてしまったとしても、《アガサの魂の大釜》でヨーグモスの能力を付与することができるため、安定してコンボが決まりやすくなっています。

《アガサの魂の大釜》墓地対策としても機能するため「昂揚」や《レンと六番》を妨害することができ、Rakdos Scamとのマッチアップでは《悲嘆》《まだ死んでいない》コンボを対策できます。ミラーマッチでも、相手の「不死」クリーチャーが墓地から復活してくるのを防ぐことが可能です。

Modern Super Qualifier 1/13
禁止改定後の環境でも強いRakdos

Rakdos Scamは、今大会でもプレイオフに3名(1名は権利獲得)と安定した強さを見せます。キーカードの《激情》が禁止になり弱体化したとはいえ、1ターン目の《悲嘆》《まだ死んでいない》の強力な妨害コンボは健在なため、新環境でもトップメタの一角に存続しています。

デッキ紹介

Rakdos Scam

昨年、禁止改定直後に開催された大規模なイベント『Grand Open Qualifier Barcelona 2023』で優勝したことで、《激情》がなくともトーナメントレベルのデッキだということが証明されました。

ハンデスや《血染めの月》などのおかげで、Amulet Titan、Tronといった土地コンボや、そのほかのコンボデッキに強いミッドレンジになります。

☆注目ポイント

歴戦の紅蓮術士鏡割りの寓話

このデッキに限らず《オークの弓使い》を採用したデッキが多いので、《歴戦の紅蓮術士》よりも《鏡割りの寓話》が優先的に採用されています。

月の大魔術師血染めの月

メインから《月の大魔術師》《血染めの月》よりも優先されて採用されているのも特徴です。Amulet Titanとのマッチアップでは、《血染めの月》《耐え抜くもの、母聖樹》で割られていまいますが、《四肢切断》数枚以外にクリーチャー除去が採用されていないため、処理されづらい《月の大魔術師》に軍配が上がります。

Molten Collapse

『イクサラン:失われし洞窟』から登場した《溶鉄の崩壊》は、《終止》と同様に定番の除去として定着しています。「落魄」するとボーナスを得ることができ、フェッチランド以外でも《鏡割りの寓話》のⅡ章などで墓地に捨てた際も達成できます。

Modern Qualifier 1/14
安定のイゼット

《豆の木をのぼれ》が禁止になったことでコントロールが弱体化し、Temur Rhinos、Living End、Amulet Titanなどが中心になったため、いい立ち位置にあるIzzet Murktide。

先週末のMOの予選大会でも優勝、今大会でも予選通過者も含めるとプレイオフに3名と大活躍でした。

リストにも変化が見られ、Temur RhinosやLiving Endが中心だった環境では《帳簿裂き》をフル搭載したリストがポピュラーでしたが、Amulet Titanが上位に増えたことで、ここ最近は《緻密》をメインから採用したバージョンが成功を収めています。

デッキ紹介

Izzet Murktide

《緻密》に加えて、《ドラゴンの怒りの媒介者》《敏捷なこそ泥、ラガバン》計8体の1マナのクロックとカウンターによるバックアップで、土地コンボとのマッチアップは有利にゲームを進めることができます。

☆注目ポイント

緻密

《緻密》《魂の洞窟》からプレイされた《原始のタイタン》にも対応することができます。Amulet TitanやTron、Golgari Yawgmoth、4C Controlなど、多くのマッチアップで活躍するクリーチャーになります。

呪われたトーテム像仕組まれた爆薬

サイドにはGolgari Yawgmoth対策として《呪われたトーテム像》が採用されています。《仕組まれた爆薬》が3枚と多めですが、Temur Rhinosのサイ・トークンやMerfolk、Hammer Time、Hardened Scalesなど幅広いマッチアップでサイドインできます。

総括

悲嘆衝撃の足音原始のタイタンスランの医師、ヨーグモス

Rakdos ScamやTemur Rhinos、Amulet Titanが勝ち続けており、Golgari Yawgmothが増加したことと多色コントロールが減少傾向にある以外では、禁止改定後のモダン環境はそれほど大きな変化はない印象です。

Rakdos Scamは環境のベストデッキではなくなったものの、強力なコンボと《血染めの月》をもっとも強く使えるデッキということもあり、依然としてトップメタの一角に位置しています。

USA Modern Express vol.108は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!

この記事内で掲載されたカード

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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら