USA Legacy Express vol.229 -新たなデルバー!?奮闘する《鍾乳石の追跡者》-

Kenta Hiroki

はじめに

みなさん、こんにちは。

来月に開催される『プレイヤーズコンベンション横浜2024』で『日本レガシー選手権・冬』が開催されます。今年初の大規模イベントなので、盛り上がりが期待できそうです。

さて、今回は先週末にMOで開催された『Legacy Challenge』と『Legacy Showcase Challenge』の入賞デッキを見ていきたいと思います。

Legacy Challenge 1/19
『イクサラン:失われし洞窟』話題の新カード

土曜日に開催された『Legacy Challenge』では、ReanimatorやDredgeといった墓地を使ったデッキが活躍していました。

また、『イクサラン:失われし洞窟』から登場した《鍾乳石の追跡者》を採用したDelverも結果を残しています。ここ最近、MOを中心に活躍しているデルバーデッキなので要注目です。

デッキ紹介

Dimir Delver

最近の青黒といえば、《カザド=ドゥームのトロール》が登場してから活躍しているDimir Scamが広く知られていますが、《鍾乳石の追跡者》を採用してテンポに寄せたDimir Delverも見かけるようになりました。

《オークの弓使い》以外のクリーチャーがすべて飛行、威迫などの回避能力持ちなので、安定してダメージを通しやすくなっているのも特徴です。ブロッカーをある程度無視できることと、《オークの弓使い》のように除去としても機能するクリーチャーの存在もあり、デッキ内の除去は少なめになっています。

軽いクロックに加えて《悲嘆》など妨害手段も多いため、コンボデッキに強い構成になっています。青黒の特性上《ウルザの物語》《虚空の杯》などの置物を対策する手段に貧しく、8 Castなどは苦手なマッチアップになります。

☆注目ポイント

Stalactite Stalker

《鍾乳石の追跡者》は威迫持ちなのでライフを攻めやすく、テンポデッキの新戦力として話題になっていました。フェッチランド以外にも「想起」でプレイできる《悲嘆》や、「サイクリング」できる《カザド=ドゥームのトロール》などパーマネントカードを墓地に落とす手段が豊富にあるため「落魄」の条件を満たしやすくなっています。

オークの弓使いTroll of Khazad-dum

《鍾乳石の追跡者》《オークの弓使い》は除去としても機能するので、メインの除去の少なさを補う役目も担っています。また、このバージョンの強みとして基本土地を採用する余裕があるところが挙げられます。1ターン目の《島》から《カザド=ドゥームのトロール》《沼》をサーチできるため、《不毛の大地》デッキに対しても耐性があります。

覆いを割く者、ナーセット

サイドの《覆いを割く者、ナーセット》は、《豆の木をのぼれ》《一つの指輪》などを止める手段として採用されています。以前と比べて《紅蓮破》の使用率が減り、スゥルタイカラーのコントロールが増加したことによって最近よく見かけるようになったカードです。

Legacy Showcase Challenge 1/20
テンポとストンピィが強い環境

先週末の『Legacy Showcase Challenge』は参加者266名、スイスラウンド9回戦と長丁場なイベントでした。

今大会で複数入賞していたのはGoblins、Red Prisonといったストンピィ系や、Temur Delver、Dimir Delverといったテンポデッキが中心でした。《オークの弓使い》が強いとされている環境ですが、今大会の決勝まで勝ち残ったデッキはTemur DelverとRed Prisonという《オークの弓使い》を含まないデッキでした。

デッキ紹介

Temur Delver

『エルドレインの森』はレガシーにも影響を与える強力なカードが複数収録されていました。《探索するドルイド》は評価されるのに少し時間はかかったものの、現在では禁止になった《表現の反復》に代わるアドバンテージ源として定着しています。

《探索するドルイド》が登場した当初は、《秘密を掘り下げる者》を減らしてミッドレンジに寄せたスタイルが試されていましたが、その分クロックが遅くなり、コンボデッキに少し弱くなっていました。今回優勝したのは《秘密を掘り下げる者》をフル搭載したバージョンとなっています。

Temur Delverとカテゴライズされていますが、緑のカードはメインに2枚採用された《探索するドルイド》のみです。また基本的に青赤の2色なので、サイドに《血染めの月》を採用することができます。

☆注目ポイント

探索するドルイド

アドバンテージ源になるとともに、クリーチャーとしてプレイすることで軽いクロックとしても機能します。X=1の《虚空の杯》があってもプレイできる脅威は貴重で、軽いスペルが多いのですぐにフィニッシャー級のサイズになります。

紅蓮破相殺先触れ

《紅蓮破》《相殺》といったカードがメインから採用されており、デルバー同型やDimir Scamといったほかの青いデッキを意識していたことが分かります。

9枚目のキャントリップとして《定業》ではなく《先触れ》が選ばれています。《定業》よりも見れるカードが多く、《秘密を掘り下げる者》も変身させやすくなります。スロートリップであることも問題になることは少なく、有力なキャントリップの選択肢になります。

血染めの月

《血染めの月》はこのデッキが苦手とする多色コントロールやLandsをシャットアウトすることができます。これらのデッキがデルバー対策としてサイドインしてくる《花の絨毯》も、《血染めの月》のもとではマナを生み出すこともありません。

Dimir Hogaak

Dimir ScamとHogaakをハイブリットしたようなデッキで、今大会でもっとも印象に残ったデッキのひとつでした。

1ターン目から《悲嘆》《再活性》によって相手のプランを半壊させつつプレッシャーをかけることができるため、コンボデッキに対して強い構成になっています。リアニメイトプランに《甦る死滅都市、ホガーク》と墓地をフルに活用したデッキなので、《虚空の力線》など墓地対策には弱くなっています。

☆注目ポイント

甦る死滅都市、ホガーク

《甦る死滅都市、ホガーク》は「召集」で色マナを確保するために2体のクリーチャーを用意する必要があるので、《濁浪の執政》のほうがプレイのしやすさに関しては優れていますが、《紅蓮破》に引っかからない大きなメリットがあります。たとえ除去されたとしても、墓地を肥やすことで再度プレイすることも可能です。

Stitcher's Supplierオークの弓使い

《縫い師への供給者》は墓地を肥やしつつ《甦る死滅都市、ホガーク》の召集の助けになります。《再活性》と相性も良く、黒いカードなので《悲嘆》のコストにすることもできます。また《オークの弓使い》もトークンを生成するので、召集と相性のいいクリーチャーです。

Powder Keg

青黒カラーは置物対策が限られていますが、《火薬樽》はアーティファクト土地や《ウルザの物語》の構築物トークン、《虚空の杯》などをまとめて流せるので、このタイプのデッキにとってベストな置物対策カードになります。

Mono Red Prison

Mono Red Prisonはレガシーを代表するストンピィ系のデッキで、2マナランドや《金属モックス》《猿人の指導霊》といったマナ加速を利用して、《血染めの月》《虚空の杯》《三なる宝球》などを最速1ターン目からプレイすることで対戦相手をロックします。

《ゴブリンの熟練扇動者》《混沌の洞窟の冒険者》などの脅威も対処が遅れると即ゲームが終了するほどのインパクトがあり、《血染めの月》《虚空の杯》で行動が制限されている状況では、相手も対処することが非常に困難になります。

最近は手札の余分な赤いカードをコストにプレイできる《激情》や、不要牌を有効牌に変換できる《鏡割りの寓話》を得たことによって決定力に欠けるという弱点も緩和されています。

☆注目ポイント

Broadside Bombardiers

『イクサラン:失われし洞窟』の統率者セットから登場した《舷側砲の砲撃手》は、不要になった《金属モックス》などを2点火力に変換できる「誇示」能力を持ちます。強引に《激情》をプレイして、7点ダメージといったことも可能です。

Caves of Chaos Adventurer

最速で1ターン目から《混沌の洞窟の冒険者》をプレイすることができ、《ゴブリンの熟練扇動者》のトークンによって「イニシアチブ」の維持も容易です。

Magus of the Moon未認可霊柩車

追加の《血染めの月》となる《月の大魔術師》はクリーチャーなので除去されやすいですが、Landsなど《活性の力》《耐え抜くもの、母聖樹》を多用してくるマッチアップでは機能します。

《未認可霊柩車》はメインから使いやすい墓地対策で、リアニメイトに効果的なだけでなく「昂揚」や「探査」なども妨害したりと幅広いマッチアップで活躍します。

総括

《オークの弓使い》が広くプレイされていますが、『Legacy Showcase Challenge』ではTemur DelverやRed Prisonなど《オークの弓使い》を使わないデッキも活躍しており、現在のレガシーはバランスが取れている環境といえます。

新たな1マナの戦力《鍾乳石の追跡者》を採用したDimir Delverや、Dimir Hogaakなど現在のレガシーにはまだまだイノベーションの余地があるようです。来月に横浜で開催される予定の『日本レガシー選手権・冬』ではどんなデッキが活躍するのか楽しみですね。

以上、USA Legacy Express vol.229でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!

この記事内で掲載されたカード

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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら