はじめに
みなさん、こんにちは。スタンダード担当の紳さんです。
一昨日、昨日と「プレイヤーズコンベンション横浜2024」が開催され、『ジャパンスタンダードカップ』と『リバウンドスタンダード』という2つの賞金制大会が行われました。
『カルロフ邸殺人事件』環境、最初の大型大会を制したのはどんなデッキだったのでしょうか。全国の強豪プレイヤーが熱戦を繰り広げた、注目の大会結果をお伝えします!
2/12(日)『ジャパンスタンダードカップ』
まずは448名が参加した『ジャパンスタンダードカップ』の結果です。
『ジャパンスタンダードカップ』結果
優勝 エスパーミッドレンジ
準優勝 ドメインランプ
トップ4 ラクドスミッドレンジ
トップ4 アゾリウストークン
トップ8 もがく出現リアニメイト
トップ8 ディミーアミッドレンジ
トップ8 エスパーミッドレンジ
トップ8 エスパーレジェンズ
【入賞デッキリスト】
直前予想では《ひよっこ捜査員》《ヴォルダーレンの美食家》《上機嫌の解体》パッケージに加え、《戦導者の号令》という強烈な新兵器をたずさえた「ボロス召集」が最有力デッキといわれていました。
事実、当日は63名のプレイヤーが「ボロス召集」を使用し、14.2%の高シェア率でトップメタとなりましたが、意外にもトップ8には残れず。
優勝賞金$4,300(約64万円)を勝ち取ったのは佐藤 啓輔さんのエスパーミッドレンジでした。
優勝 「エスパーミッドレンジ」
見事優勝した、佐藤さんのデッキのリストがこちらです。
まだ実績がない新カード、《捜査の達人、アルキスト・プロフト》《華やかな支配者、テイサ》をこの大舞台でいきなり採用するのは見事なチャレンジ精神で、結果も素晴らしいものとなりました。
4枚採用の《大洞窟のコウモリ》がこのデッキの根幹を支え、1/1飛行戦力は《華やかな支配者、テイサ》の誘発を大きくサポートします。
《華やかな支配者、テイサ》によって手掛かり・トークンが並べば、こんどは《捜査の達人、アルキスト・プロフト》で無尽蔵に《スフィンクスの啓示》。
《捜査の達人、アルキスト・プロフト》はすぐに単体除去されても、「調査」1回分のアドバンテージを残してくれる優秀なクリーチャーですね。
《謎めいた外套》も新戦力として加わりました。3マナ3/2アンブロッカブルは悠長かもしれませんが、確実なダメージリソースとして働きます。将来的には《婚礼の発表》の裏面や《忠義の徳目》《放浪皇》の+1/+1カウンターで強化され、クロックとしての信頼度が大幅に上がりそうです。
手札に戻すことで何度でも同様の戦力を送り出すことが可能であり、継戦能力が高い点も見逃せません。地味ながら変装クリーチャーに備わる「護法2」も対処を難しくさせるポイントです。
前環境を含め、スタンダードではもう2年近くも活躍し続けているエスパーミッドレンジ。今環境でも絶対的な覇者として君臨することになるのでしょうか。
準優勝 「ドメインランプ」
準優勝した 「ドメインランプ」のリストです。いわずとしれたカードパワー最強デッキは『カルロフ邸殺人事件』の新カードを必要としませんでした。
しかし、メインから《一時的封鎖》を採用するなど、それなりにアグロやトークン戦略を意識したチューンナップが見てとれます。
サイドと合わせて3枚採用された《一時的封鎖》は、トップメタの「ボロス召集」を倒す必殺の一手にもなったようです。
おなじくサイドに2枚採用された《温厚な襞背》は《謎めいた外套》や《戦導者の号令》を破壊し、墓地追放やライフ回復までこなす器用さが魅力です。
対応できる範囲が広く、今後も緑系のデッキには積極的に採用されることでしょう。
新カードを使うか、新カードに対応して勝つか。依然として変わらぬ強さを見せつける版図ランプは、今後どこまで勝ち続けるでしょうか。
注目デッキ 「もがく出現リアニメイト
これまで目立った活躍がなかった「もがく出現リアニメイト」ですが、トップ8という快挙を成し遂げました。
カードパワーは高いものの、とにかく下準備が大変な「もがく出現リアニメイト」。448名の強豪プレイヤーがしのぎを削った大一番で、いかにしてトップ8に残ったのでしょうか。
採用された「諜報」ランド、実に5枚。『カルロフ邸殺人事件』登場後、土地に関してもっとも伸びしろを埋めたのはこのデッキのようです。
1枚でも多くのパーマネントを墓地に送りたいこのデッキにとって、土地をセットしただけで「諜報1」が行えるのは破格の恩恵といえるでしょう。
普通のリアニメイトデッキであれば、ピンポイントで釣り上げたい対象が落ちないと意味がありません。しかし、《もがく出現》にとってはパーマネントであればなにが落ちてもメリットとなります。
第一目標である「墓地にパーマネントカードが7枚落ちている」状況をつくれれば、わずか3マナでゲームエンド級のクリーチャーを戦場に出すことが可能に。
8枚、9枚と墓地にあるパーマネントの数が伸びれば、《多元宇宙と共に》や《ファイレクシアへの門》といったさらに上位概念のフィニッシャーを釣り上げることができます。
《第三の道の創設》が絡むと最速3ターンで決まる可能性があるデッキです。そうでなくても4ターン目のリアニメイト成立はかなり現実的なラインと考えられます。
- 2023/12/25
- 限界突破スタンダード! vol.3 -《もがく出現》で《ファイレクシアへの門》を釣る-
- 紳さん
そのほか、おおまかなデッキ構成やデッキの動きについては以前の記事で紹介いたしました。
「諜報」ランドを獲得し、明確にパワーアップをした「もがく出現リアニメイト」。今後さらなる活躍が楽しみです!
2/12(日)『リバウンドスタンダード』
つづきまして、190名が参加した『リバウンドスタンダード』の結果です。
『リバウンドスタンダード』結果
優勝 アゾリウスコントロール
準優勝 赤単
トップ4 《陰謀の解明者》コンボ
トップ4 版図ランプ
トップ8 ボロス召集
トップ8 ボロス召集
トップ8 エスパーミッドレンジ
トップ8 エスパーレジェンズ
【入賞デッキリスト】
トップメタの「ボロス召集」に加え、「赤単」「エスパーミッドレンジ」「版図ランプ」と前環境の覇者たちがこぞって入賞するなか、Sangjoon Kongさんが「アゾリウスコントロール」で大会を制し、優勝賞金$2,500(約37万円)を手にしました。
優勝 「アゾリウスコントロール」
Sangjoon Kongさんのデッキリストです。
《魂の洞窟》登場以降は苦戦していた、打ち消し軸の純粋なコントロールデッキがここにきて大きな仕事をしました。
メインとサイド、合わせて10枚の打ち消しを採用。《アーテイの嘲笑》はやや珍しいですが、ラクドスミッドレンジの「発見」から唱えられるカードを打ち消したり、アグロの猛攻を少しスローダウンさせる狙いがありそうです。
メインから《一時的封鎖》を4枚採用と、徹底的にアグロやトークン戦略をメタっています。《豆の木をのぼれ》や《地底のスクーナー船》の対処も少し考えているのかもしれません。《群れの渡り》から出てくるトークンも一掃できますね。
さらには《太陽降下》も4枚採用、《告別》もメインから投入と、クリーチャー主体のデッキに対してかなり強そうな構成です。
コントロールデッキの命であるアドバンテージ獲得手段に関しては《速足の学び》と《記憶の氾濫》というシンプルに強いカードを採用しています。
コントロールデッキが苦手な《ミレックス》や各種ミシュラランドに対処するため、《廃墟の地》も4枚フル投入。3色のエスパーコントロールではなかなか選べない選択肢ですが、アゾリウスコントロールでは無理なく採用できますね。
また、このデッキと1戦目を戦い終えた対戦相手は、手札で腐った《喉首狙い》などのクリーチャー除去をついつい抜いてしまいがちです。そうなると、サイドから投入された《金属の徒党の種子鮫》や《探偵社社長、エズリム》が暴れまわることが容易に想像できます。
サイドから投入されるカードの読みあいを難しくさせるのも、このデッキの強みといえるでしょう。
最大の天敵、「赤単」に対してもサイドから投入される4枚の《痛烈な一撃》で互角以上に戦えるようです。
王道かつ、シンプルな構成の新生「アゾリウスコントロール」デッキ。新環境のメタゲームの一角を担うことになりそうですね!
準優勝 「赤単」
惜しくも「アゾリウスコントロール」に敗れましたが、前環境でトップメタだった「赤単」も準優勝と堂々の活躍ぶりを見せました。
新戦力の《逃走する暗号破り》ですが、表面は「果敢」「速攻」と前のめりに尖った性能でありながら、「変装」で戦場に出してから表返すことでロングゲームにも強い3ドローをもたらしてくれる便利なカードです。
サイドに1枚だけ採用された《真紅の鼓動の事件》もロングゲームに強いカードですが、《逃走する暗号破り》は序盤の脅威としても運用できることを考えると、やや使いやすく感じます。
こちらも新戦力の《火炎術の演出者》ですが、ブロッカーがたくさん並んでしまった状況からでも「変装」で戦場に出して表返せば《稲妻の一撃》相当のダメージを飛ばすことが可能です。これだけだとパワー不足に感じますが、複数体並ぶことを考えると6点、9点とダメージが伸びる可能性もあるため、かなり強力なクリーチャーだと考えられます。
《逃走する暗号破り》も終盤は「変装」コストが減った状態でプレイできるため、《火炎術の演出者》とシナジーを持たせながら手札が補充できるナイスカードとなります。
『カルロフ邸殺人事件』ではほとんどアップデートがないと思われた「赤単」でしたが、まさか「変装」を利用して大ダメージを狙ってくるとは予想外でした。
新環境の「赤単」はこの変装型が主流となるのでしょうか。
注目デッキ 「《陰謀の解明者》コンボ」
今回、もっともさまざまなアーキタイプが試されたであろう《陰謀の解明者》コンボがいきなり好成績を残しました。
《陰謀の解明者》《多元宇宙の突破》《貯蔵スカーブ》が揃うと、ループコンボによってそのままライブラリーアウト勝利を狙うことができます。
- 2024/02/06
- 戦場に出たら即死の《陰謀の解明者》コンボで『発見!天才デッキビルダー』に応募してみた!
- 紳さん
こちらのコンボに関しては晴れる屋メディアでもたびたび取り上げましたが、どうやって安定してコンボに入れるかが考えどころです。
今回入賞したデッキは、マナ加速をしたり、即座にパーツを揃えてコンボ成立を目指すのではなく、盤面と向きあうことを選んでいました。
4枚採用された《間の悪い爆発》は、あるときはリアニメイトしたいカードを捨てながらの全体除去、あるときはドロー呪文としての運用が可能です。
おなじ「リアニメイトしたいカードを捨てながらの行動」でも、《大勝ち》でスピードアップを狙うのではなく、《間の悪い爆発》でリセットをするほうが確実にゲームに勝てるという発想は素晴らしいと思いました。
また、デッキリストを見ると「必ずしも《陰謀の解明者》コンボにこだわらず、《偉大なる統一者、アトラクサ》の着地でも十分」というメッセージが込められていました。
狙いが《陰謀の解明者》コンボ一辺倒ですと、《多元宇宙の突破》を《喝破》で打ち消されたときや《陰謀の解明者》を《力線の束縛》で追放されたときにコンボが止まって二の矢が継げないことも多そうです。
一方、《偉大なる統一者、アトラクサ》は即勝利とはいきませんが、手札を補充して《陰謀の解明者》コンボに繋げることもできるため、より安全に勝ちにいくことができるでしょう。
これらのクリーチャーはコンボパーツを探しながら墓地を肥やすこともでき、いざというときはブロッカーとしての使命もまっとうします。
サイドボードには追加の勝ち手段まで用意されています。とても堅実で、「オールインをしない」コンボデッキのお手本のような考え抜かれたリストですね!
環境に決して多くないコンボデッキですが、《陰謀の解明者》がメタゲームに新たな道を示したようです。
注目デッキ 「ボロス召集」
『カルロフ邸殺人事件』環境、最初のトップメタデッキとなった「ボロス召集」。最終的な結果は5位でしたが、スイスラウンドは見事1位で抜けております。
新カード《ひよっこ捜査員》の加入により、《上機嫌の解体》が安定してプレイできるようになりました。
ひとたびクリーチャーが並び始めると爆発的な攻撃力を生み出します。とくに《上機嫌の解体》から最速2ターン目に着地する《イーオスの遍歴の騎士》は驚異の一言であり、いわゆる「ブン回り」したときに手がつけられないスピードです。
新カードの《門道急行の事件》も強力で、クリーチャー除去をしながら全体強化エンチャントに化けるというテンポの良さが魅力です。
そして、なんといっても《戦導者の号令》がとにかく強い!「ボロス召集」の新兵器はさっそく、新環境を定義づける活躍ぶりを見せました。
たとえ全体除去をされてもダメージソースともなる《戦導者の号令》が戦場に残る限り、すぐにライフを詰めることができます。終盤、《ヴォルダーレンの美食家》という少し残念なトップデッキをした場合ですら2点ダメージが飛ばせるのは驚異です。
とはいえ、トップメタであるゆえ、大会などでは対策の嵐が予想されます。
「ボロス召集」が対策を乗りこえて真の王者となるために、どんな方向に進化を遂げるのかとても楽しみです!
おわりに
『ジャパンスタンダードカップ』『リバウンドスタンダード』は新環境にふさわしく、『カルロフ邸殺人事件』の新カードがたくさん活躍し、どちらも素晴らしい大会となりました。
入賞したデッキリストはどれも洗練されていて、環境初期とは思えない充実ぶりを感じています。
しかし!『カルロフ邸殺人事件』環境は始まったばかりです!つぎなる大会では、私たちが予想もしなかったデッキ、カードが活躍するかもしれません。
こんどはどんなデッキが活躍するでしょうか。来週の大会結果もお楽しみに!