はじめに
みなさん、こんにちは。
各地の地域チャンピオンシップが終了し、新たなモダン環境が顔を見せました。
今回の連載ではヨーロッパ・日本・アメリカ・カナダで開催された地域チャンピオンシップの入賞デッキを見ていきたいと思います。
Legacy European Championship Ghent
モダンのベストデッキ
参加者948名で行われた『Legacy European Championship Ghent』を制したのはTemur Rhinosでした。
今大会で高い勝率だったのが、Temur Rhinos、Golgari Yawgmoth、Amulet Titan、Living Endで、特にGolgari Yawgmothはプレイオフに3名、Temur Rhinosも2名と安定した強さを見せます。Rakdos Scamの勝率は今大会では46%とまずまずで、新しいフェアデッキと形容されていました。
参加者900名以上の競技イベントのデータということで、今後のモダンの環境を解析するうえでも参考になると思います。
デッキ紹介
Temur Rhinos
今大会で見事に優勝したMarco Del Pivo氏は、『プロツアー・指輪物語』でもTemur Rhinosを使用してトップ8入賞経験のある強豪プレイヤーです。
Temur Rhinosは、「続唱」スペルから《衝撃の足音》をプレイしてサイ・トークンでビートダウンしていくデッキです。カウンターや除去なども多数搭載されており、「続唱」コンボというよりはミッドレンジデッキになります。
「続唱」の関係で《稲妻》など軽い除去や妨害が使えないなどデッキ構築の面で制限がかかりますが、《火/氷》や《死亡/退場》といった分割カードや《緻密》《否定の力》といったピッチスペルをうまく使っていくことでカバーしています。
☆注目ポイント
同型戦とほかの青いデッキとのマッチアップを意識していたようで、メインから《濁浪の執政》と《神秘の論争》が採用されています。《緻密》はGolgari YawgmothやAmulet Titanに有効であり、Rakdos Scam相手にも《悲嘆》に対応できる優秀なクリーチャーです。
『イクサラン:失われし洞窟』から登場した《ティシャーナの潮縛り》は、このデッキにとってやっかいな《虚空の杯》や《飢餓の潮流、グリスト》《原始のタイタン》など環境のさまざまな脅威に対応できます。
《アノールの焔》はメインから無理なく採用できる《虚空の杯》対策で、《黙示録、シェオルドレッド》や《スランの医師、ヨーグモス》といった脅威も処理できる大変フレキシブルなスペルです。以前はウィザードが《変わり谷》しかいませんでしたが、《ティシャーナの潮縛り》が増えたことでボーナスを受けやすくなっています。
不利なマッチアップであるLiving End用に、サイドには《忍耐》が複数枚とられています。『カルロフ邸殺人事件』によってLiving Endは強化されているので、今後も4枚採用することが推奨されます。
チャンピオンズカップファイナル シーズン2 ラウンド2
日本でも「続唱」祭り
開催日:2024年2月11-12日
優勝 Living End
準優勝 Temur Rhinos
3位 Rakdos Scam
4位 Temur Rhinos
5位 Living End
7位 Temur Rhinos
8位 Amulet Titan
『チャンピオンズカップファイナル シーズン2 ラウンド2』はLiving Endが優勝となりました。
現環境のトップメタであるLiving EndやTemur Rhinosは、各地の地域チャンピオンシップでもポピュラーなデッキです。日本国内でも「続唱」デッキがプレイオフに半数以上と猛威を振るっており、決勝戦まで勝ち残った2つのデッキも「続唱」デッキとなりました。
デッキ紹介
Living End
Living Endは同じくトップメタであるTemur Rhinosに対して有利なデッキであり、爆発力と妨害を搭載しているため相性差に関係なく回ればどんなデッキにも勝ちうるデッキです。
古くからモダンに存在する定番デッキですが、『モダンホライゾン2』から《断片無き工作員》《悲嘆》《緻密》、『指輪物語:中つ国の伝承』から《オリファント》《気前のよいエント》といった優秀なカードを獲得したことで強化され続け、今回の『カルロフ邸殺人事件』からも「諜報」ランドが登場してより動きが安定するようになりました。
☆注目ポイント
《緻密》は、このデッキにとってやっかいな《ダウスィーの虚空歩き》や《時を解す者、テフェリー》に対処できるだけでなく、《喜ぶハーフリング》経由で出てきた《スランの医師、ヨーグモス》にも対応できる優秀なクリーチャーです。
《オリファント》と《気前のよいエント》の2種類の土地サイクリングのおかげで、デッキの安定性が大きく向上しています。《気前のよいエント》は《森》をサーチすることができるため、《血染めの月》を置かれた後でも動きやすくなりました。
『カルロフ邸殺人事件』から登場した諜報ランドは、フェッチランドのあるモダンでも使える土地として話題になっていました。今回優勝したリストにも、3種類の諜報ランドが採用されています。Living Endにとって特に手間なくクリーチャーを墓地に送れる手段は貴重で、諜報しながら「続唱」カードを探せるため非常にデッキと相性がいい土地になります。
F2F Tour Championship – Ottawa Round 5
環境のソリューション
開催日:2024年2月10-11日
優勝 Living End
準優勝 Azorius Control
3位 Temur Rhinos
4位 Temur Rhinos
6位 Temur Rhinos
7位 Temur Rhinos
8位 Temur Rhinos
カナダで開催された『F2F Tour Championship – Ottawa Round 5』のプレイオフは「続唱」デッキがトップ8中6名とかなり極端な結果となりました。
決勝戦まで勝ち残ったAzorius Controlは、「続唱」デッキが幅を利かせる今大会で活躍したデッキとして要注目です。
デッキ紹介
Azorius Control
Azorius Controlが「続唱」トップメタの現環境で準優勝という好成績を残しました。
といっても従来のリストとは違い、《対抗呪文》や《大魔導師の魔除け》などのカウンターが不採用となっており、《孤独》《力線の束縛》《至高の評決》で脅威を捌きつつプレインズウォーカーや《一つの指輪》などを展開していくタップアウトコントロールになっています。
《覆いを割く者、ナーセット》+《一日のやり直し》コンボによるロックが、このデッキの主な勝ち手段です。
☆注目ポイント
《覆いを割く者、ナーセット》+《一日のやり直し》のコンボによって相手をロックするまで時間を稼げればいいので、《緻密》や《一時の猶予》といったテンポが稼げる妨害が中心になっています。特に《一時の猶予》は《対抗呪文》よりも色拘束が緩く、《夏の帳》や《神秘の論争》に引っかかりません。《衝撃の足音》や《死せる生》といったスペルに対しては、ほぼ確定カウンターのように機能します。
サイドにフル搭載された《厳しい説教》は、《黙示録、シェオルドレッド》を除くGolgari YawgmothとRakdos Scamのほとんどの脅威をカウンターできます。《計略縛り》はあまり見かけないカードですが、多くのマッチアップで有効なカードで相手のフェッチランドの起動をカウンターすることもできます。
U.S. Regional Championship
『カルロフ邸殺人事件』がモダンに与えた影響
アメリカで開催された『U.S. Regional Championship』のプレイオフは、「続唱」デッキが3名と日本やカナダほどではなかったものの高い勝率を出していました。Golgari YawgmothもトップメタのTemur Rhinosに少し不利ではありますが、3名も入賞と大健闘しています。
また、今大会直前に話題になっていた《ギルドパクトの力線》を使ったデッキも入賞していました。諜報ランドも使われており、『カルロフ邸殺人事件』がモダン環境に与えた影響が大きかったことが分かります。
デッキ紹介
Domain Rhinos
直前のModern Preliminaryで4-0していたことで話題になったDomain Rhinos。『カルロフ邸殺人事件』からの新カードである《ギルドパクトの力線》が出ている状態でゲームを始めれば、警戒・呪禁・絆魂・先制攻撃・トランプルを持つ《ドラコの末裔》をわずか2マナでプレイすることができます。
基本的な動きはTemur Rhinosとそれほど変わらず、カウンターでバックアップしつつサイ・トークンでビートダウンしていきます。一般的なバージョンと異なる点は《力線の束縛》が使えることで、《虚空の杯》や《時を解す者、テフェリー》を対処しやすくなっています。
☆注目ポイント
《ドラコの末裔》や《力線の束縛》など「版図」と相性が良い《ギルドパクトの力線》ですが、必ず初手からプレイする必要はなく《緻密》や《否定の力》をピッチでプレイするためのコストとして手札に残しておくという選択肢もあります。各種ショックランド・トライオーム・諜報ランドのおかげで、《ギルドパクトの力線》抜きでも《ドラコの末裔》や《力線の束縛》を少ないマナでプレイすることが可能です。
諜報ランドがこのデッキにも採用されています。「版図」とのシナジーもあり、フェッチランドで持ってきながらドローの質を高めることができるので、モダン定番の土地として今後もよく目にすることになりそうです。
《死亡/退場》が抜けたことで1ターン目にプレイできる除去がなくなりましたが、《虚空の杯》や《時を解す者、テフェリー》を対処できる《力線の束縛》が除去枠に入ったことで、より多くの場面に対応できるようになっています。
総括
各地のチャンピオンシップの結果を見ていきましたが、『カルロフ邸殺人事件』から登場した諜報ランドによって安定性が向上したTemur Rhinosが猛威を振るっていました。
各地のチャンピオンシップの結果から「《暴力的な突発》を禁止にしたほうがいいのでは」という意見も見られますが、今年リリース予定の『モダンホライゾン3』によってまた環境が激変する可能性もあるため難しいところです。果たして今後のモダンはどうなっていくのでしょうか。
USA Modern Express vol.109は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!