USA Legacy Express vol.230 -冬のレガシー選手権を凱旋する者-

Kenta Hiroki

はじめに

みなさん、こんにちは。

『日本レガシー選手権・冬』も終了し、今週末には『第25期レガシー神挑戦者決定戦』が開催されるなど、今年もレガシーのイベントが充実していますね。

さて、今回の連載では『日本レガシー選手権・冬』と『Legacy Showcase Challenge』の入賞デッキを見ていきたいと思います。

日本レガシー選手権・冬
《聖カトリーヌの凱旋》入りの多色コントロールが制する

開催日:2024年2月11日

優勝 Bant Control

準優勝 ANT

3位 Temur Rhinos

4位 Goblins

5位 Smog Combo

6位 Dimir Shadow

7位 Omni-Tell

8位 Jewels Cat

トップ8デッキリスト

プレイヤーズコンベンション横浜2024』で開催された『日本レガシー選手権・冬』を制したのは、昨年アメリカで開催された『Eternal Weekend 2023 NA』でも優勝していた《聖カトリーヌの凱旋》入りのコントロールデッキでした。

大きなイベントの上位では必ずと言っていいほど見かけるデルバー系が、今大会のプレイオフには不在だったのが印象的でした。Temur Rhinos、Goblinsなど最近のセットで強化されたデッキが中心となっています。

デッキ紹介

Bant Control

今大会で見事に優勝したのは《聖カトリーヌの凱旋》を採用した多色コントロールでした。《聖カトリーヌの凱旋》がMOに実装されていないため、MOを中心に遊んでいる筆者はまだ対戦したことがありませんが、昨年アメリカで開催された『Eternal Weekend』でも優勝しているなどその強さは本物です。

『Eternal Weekend』の優勝デッキ《オークの弓使い》などをタッチした4色デッキでしたが、Oda Koichi氏のリストは3色にまとまっており、《血染めの月》《発展の代価》などアンチ特殊地形カードにも耐性があります。

豆の木をのぼれ聖カトリーヌの凱旋濁浪の執政

《豆の木をのぼれ》のおかげで除去やフィニッシャーを展開しながらアドバンテージを得られるのでデルバー系に強く、イニシアチブやコンボデッキは苦手なマッチアップになります。《濁浪の執政》《聖カトリーヌの凱旋》で速やかにゲームを決めることができるなど、一般的な多色コントロールと比べるとミッドレンジ寄りの構成になっているので、このタイプのデッキにありがちな引き分けも起こりにくくなっています。

☆注目ポイント

Triumph of Saint Katherine

《聖カトリーヌの凱旋》は5マナなので《豆の木をのぼれ》と相性がよく、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》よりも優先して採用されるほどです。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》と異なり墓地対策の影響を受けず、「奇跡」によって3ターン目からプレイすることができます。5/5というサイズはデルバーのクロックが止まり除去もされづらく、絆魂はコントロールにとってアドバンテージを稼ぐのに必要な時間を稼いでくれます。

無のロッドContainment Priest

Bantバージョンは置物を複数流せる《破滅的な行為》《溶融》といったカードを使えないことがネックとなります。《無のロッド》が多めにとられていますが、8 CastやPainterなど《ウルザの物語》デッキとのマッチアップは4-5色バージョンのときよりも若干厳しくなりそうです。

3枚と多めに採用されている《封じ込める僧侶》は、日本国内で人気があるSneak and Showや、最近増加傾向にあるGoblinsとのマッチアップで活躍が期待できます。

Smog Combo

《ウィザーブルームの初学者》+《煙霧の連鎖》による無限ドレインコンボをフィーチャーしたデッキ。『ストリクスヘイヴン:魔法学院』がリリースされた当時から注目を集め、当時はこのコンボが搭載されたテンポデッキやミッドレンジも流行りました。

Chain of SmogWitherbloom Apprentice

《煙霧の連鎖》を自分を対象にプレイすることで無限にコピーできることを利用したコンボで、《ウィザーブルームの初学者》が場にある状態であれば「魔技」によって無限にドレインすることができます。

☆注目ポイント

夏の帳森を護る者

除去されやすい《ウィザーブルームの初学者》がコンボパーツなので、安全にコンボを通すための工夫が随所で見られます。メインから3枚採用された《夏の帳》はカウンターや除去、ハンデスからコンボを守ります。《森を護る者》も除去から《ウィザーブルームの初学者》を守ることができ、除去を多用するマッチアップ全般に有効です。

悲嘆再活性カザド=ドゥームのトロール

《悲嘆》《再活性》のパッケージと《カザド=ドゥームのトロール》も採用されているので、コンボを対策されても勝ち手段に困ることはなさそうです。《悲嘆》《再活性》によって相手の除去や妨害を落としてコンボを決める動きは、マッチアップ問わず脅威となります。

一つの指輪

《一つの指輪》《悲嘆》のピッチコストやマナ加速によって消耗したアドバンテージを取り戻してくれます。《暗黒の儀式》から高速展開する動きも非常に強力です。

Legacy Showcase Challenge 2/17
オークが支配する環境

先週末に開催された『Legacy Showcase Challenge』のプレイオフは、ReanimatorやGrixis Delverといった《オークの弓使い》を採用したデッキが中心でした。

Grixis Delver以外で上位でよく見かけるテンポデッキではTemur Delverが挙げられます。Temur DelverとGrixis Delverはどちらも一長一短であり、前者であれば《探索するドルイド》が使えます。《探索するドルイド》は「出来事」でプレイするだけでも十分な性能であり、《オークの弓使い》に引っかからないアドバンテージ源として定着しています。

デッキ紹介

Grixis Delver

Grixis DelverはMOで全体的に安定した勝率を出しており、《秘密を掘り下げる者》《ドラゴンの怒りの媒介者》といった軽いクロックと《オークの弓使い》の組み合わせでライフを攻める動きは、コンボデッキや《豆の木をのぼれ》などを使うデッキに有効です。また、対処が困難な脅威である《聖カトリーヌの凱旋》が未実装なことも、このデッキの勝率が高い理由のひとつになります。

コンボデッキとストンピィ系に強いため環境の幅広い戦略に対して対応可能で、苦手なコントロールがコンボやイニシアチブなどに押され気味なのもこのデッキの勝率を後押ししています。

☆注目ポイント

もみ消し

このリストの特徴はメインに2枚採用された《もみ消し》です。フェッチランドの起動を妨害して相手を事故らせる以外でも、Goblinsの各種ETB能力や「イニシアチブ」「奇跡」、《タッサの神託者》の誘発など現環境のさまざまな能力を打ち消します。

Molten Collapse

《溶鉄の崩壊》は同型の《濁浪の執政》やストンピィ系の《虚空の杯》、このデッキ相手にサイドインしてくるであろう《花の絨毯》も触れるなどたいへん優秀な除去になります。「落魄」を利用することで相手の脅威を除去しつつ、《金属モックス》を割って相手のテンポを削ぐという使い方もできます。

墓掘りの檻相殺

Reanimatorが多かった今大会で墓地対策がサイドに《墓掘りの檻》2枚のみですが、同型やDimir Scamなど多くのマッチアップで使える《相殺》もReanimatorに効果的です。

Dimir Reanimator

一見するとDimir Scamでおなじみのカードばかりのように見えますが、《納墓》によって《偉大なる統一者、アトラクサ》などをサーチして釣り上げることもできるなどDimir ScamとReanimatorをハイブリットしたような構成になっています。

Reanimatorはメイン戦では無類の強さを見せ、墓地対策が投入されるサイド後は苦戦を強いられる傾向にありましたが、最近は《ダウスィーの虚空歩き》《オークの弓使い》など墓地を経由しない勝ち手段が複数見られるため対策が困難になっています。

このバージョンはサイド後にリアニメイトパッケージをサイドアウトして、《ダウスィーの虚空歩き》《厚かましい借り手》などをサイドインすることでDimir Scamに寄せる選択肢もあり、《外科的摘出》など墓地対策に引っかかりにくくなります。

☆注目ポイント

再活性オークの弓使い動く死体

《オークの弓使い》が登場して以来、リアニメイトプランに頼らずにゲームに勝ちやすくなりました。《オークの弓使い》を除去されてもこちらは《再活性》《動く死体》によって墓地から復活させることができるので、相手よりも多く《オークの弓使い》をプレイする機会があります。また、相手が《オークの弓使い》の対処にリソースを消費してくれればリアニメイトプランを実行しやすくなります。

Undercity Sewers

『カルロフ邸殺人事件』から登場した諜報ランドの《地底街の下水道》が早速採用されています。タップインランドですがフェッチランドでサーチ可能なため、モダン以下の環境でも使える土地ということで話題になっていました。

能動的にカードを墓地に落とせる「諜報」は、リアニメイト戦略と相性がいいメカニズムです。フェッチランドから《地底街の下水道》をサーチして「諜報」の誘発にスタックで《渦まく知識》をプレイすることで、手札を整えつつ手札のクリーチャーを墓地に落とすことができます。

偉大なる統一者、アトラクサ残虐の執政官

リアニメイト用の主なクリーチャーは《偉大なる統一者、アトラクサ》になりますが、《残虐の執政官》《マリット・レイジトークン》対策になり《イス卿の迷路》に対しても能力は誘発するため、Landsとのマッチアップで重宝します。

総括

ケイオス・ディファイラー聖カトリーヌの凱旋銀河を焔羅のままに

《聖カトリーヌの凱旋》をはじめとした『統率者デッキ:Warhammer 40,000』のカードが、先日ついに実装されることが告知されました。

これで筆者を含めたMOを主戦場とするレガシープレイヤーも、テーブルトップと同様の環境でプレイできるようになりますね。《聖カトリーヌの凱旋》を使ったコントロールデッキがMOでも活躍できるのか要注目です。

USA Legacy Express vol.230は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!

この記事内で掲載されたカード

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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら