現在のパウパー環境
「Pauper」とは英語で貧しい者を意味する。マジックのパウパーはコモン限定の構築戦だ。強力なレアカード1枚でゲームが決まることはない。
では、パウパーはほかの構築フォーマットよりも貧弱で劣っているのか?
否!パウパーはコモン限定だがマジック30年の歴史に登場したすべてのカードが使えるエターナルフォーマット。往年の強力な呪文を自らの手で駆使して勝利を目指すのがパウパーだ。
ここからは6期目となった『パウパー神挑戦者決定戦』のメタゲームブレイクダウンをお届けする。
メタゲームブレイクダウン
デッキ | 使用者数 | 使用率 |
---|---|---|
カルドーサレッド | 20 | 14.71% |
きらきら親和 | 11 | 8.09% |
イゼットコントロール | 9 | 6.62% |
青単テラー | 9 | 6.62% |
ジェスカイブリンク | 7 | 5.15% |
ディミーアコントロール | 7 | 5.15% |
アゾリウスゲート | 7 | 5.15% |
カルニブラック | 6 | 4.41% |
ボロスシンセサイザー | 5 | 3.68% |
バーン | 5 | 3.68% |
リアニメイト | 5 | 3.68% |
壁コンボ | 5 | 3.68% |
グリクシス親和 | 4 | 2.94% |
エルフ | 3 | 2.21% |
ターボイニシアチブ | 3 | 2.21% |
白単 | 3 | 2.21% |
アブザンゲート | 3 | 2.21% |
青黒テラー | 2 | 1.47% |
無限頑強 | 2 | 1.47% |
黒単バーン | 2 | 1.47% |
グルールランデス | 2 | 1.47% |
青単フェアリー | 2 | 1.47% |
ブラッドバーン | 2 | 1.47% |
その他 | 12 | 8.32% |
合計 | 136 | 100% |
カルドーサレッド (使用者20名)
使用率1位に輝いたカルドーサレッドは、ここ数年のパウパー環境を定義している高速アグロデッキだ。
《カルドーサの再誕》はコストとしてアーティファクトを準備する必要があるものの、わずか1マナで3体のゴブリンを生み出すことができる。それに「キッカー」コストでの《ゴブリンの奇襲隊》が合わせれば、相手のライフを一気に致死圏内まで持っていくことができる。
《実験統合機》は《カルドーサの再誕》の生け贄コストになりつつ、軽いマナコストでアドバンテージを稼いでくれる。追放したカードはそのターン中にしかプレイできないが、「プレイしてもよい」であるため土地を置くこともできる。
《ゴブリンの墓荒らし》は《僧院の速槍》の禁止で弱体化が見込まれたカルドーサレッドの新しいエースだ。「アーティファクトをコントロールしている限り~」という条件も、《カルドーサの再誕》を使うこのデッキならおおむねクリアできる。1ターン目の《大焼炉》セットから《ゴブリンの墓荒らし》が2/2速攻で殴ってくるのが現代のパウパーだ。
強力であるということはそれだけ意識されるということでもある。主要なデッキのサイドボードにはほぼ確実に赤系へのアンチカードがふんだんに採用されている。青いデッキに関しては《水流破》と《青霊破》を4枚以上取っているものもある。この強烈な包囲網を、果たしてカルドーサレッドは打ち破ることができるのだろうか。
きらきら親和 (使用者11名)
きらきら親和は、『統率者マスターズ』で《きらきらするすべて》が“コモン落ち”したことで生まれた比較的新しめなデッキだ。《月回路のハッカー》や《心を一つに》を入れたアゾリウス型と、色を足して《感電破》や《実験統合機》を採用したジェスカイ型の2タイプあるが、《きらきらするすべて》で大きくなったクリーチャーで殴るというコンセプトは変わらない。
《きらきらするすべて》は、コモン落ちが判明した当初は親和デッキよりも呪禁オーラのようなデッキでの採用が想像されていた。しかし《天上の鎧》や《祖先の仮面》と異なり、アーティファクトの数も参照することは各種アーティファクト土地が使えるパウパーにおいて大きな違いだった。《きらきらするすべて》を身にまとった《羽ばたき飛行機械》がパワー10で殴ってくる様はモダンのハンマータイムを彷彿とさせる。
《金属ガエル》《マイアの処罰者》《物読み》はパウパーの親和デッキを代表する強力なパッケージだ。「0マナでクリーチャーを複数展開しながら1マナで2ドローする」なんてことはこのデッキなら日常茶飯事である。
パウパーの親和デッキを根幹から支えているのは各種アーティファクト土地の存在だ。土地をプレイするだけで呪文のコストが軽くなっていく感覚は、このフォーマットならではのものかもしれない。『モダンホライゾン2』の破壊不能を持つ2色の“ブリッジランド”サイクルも、親和デッキの多色化を容易なものにしている。
しかし、赤系アグロと同じく親和デッキもまたサイドボードで厳しくマークされているのがパウパーの常。
白いデッキのサイドボードには《塵は塵に》や《存在の破棄》のようなアーティファクト追放系のカードが標準搭載されている。これらはアーティファクトクリーチャーへの除去として働くだけでなく、特定の色マナの出る土地を追放してデッキを機能不全に陥らせる戦略も取られてしまう。
《火の中へ投げ捨てる》は赤単色では貴重なアーティファクトを追放できる呪文だ。2体のクリーチャーに1点ずつ与えるモードもパウパーでは腐ることが少なく、イゼットコントロールやジェスカイブリンクのようなデッキではメインデッキから採用されていることも珍しくない。親和デッキを使う上では意識しておく必要があるだろう。
イゼットコントロール (使用者9名)
使用率3位となったのはイゼットコントロール。青のドローと打ち消し、赤の除去で盤面をゆっくりと掌握していくコントロールデッキで、カルドーサレッドやきらきら親和とは対照的なデッキだ。
「《対抗呪文》でカウンターします」と言いたくてパウパーで遊んでいる方も少なくないのではないだろうか。最近ではイニシアチブや統治者といった強力なクリーチャーも増えてきているなか、わずか2マナで対戦相手の脅威をはじくことができるのは令和になっても変わらず強力だ。
あらゆるフォーマットで活躍する最強の火力呪文《稲妻》は、晴れる屋デッキ検索のパウパー採用枚数ランキングでも1位に輝いている。クリーチャーのスタッツが低めなパウパーでは信頼できる除去だ。
《雪崩し》は、《稲妻》では届かない高タフネスのクリーチャーにも対処できる。最近のパウパー環境ではよく見る《トレイリアの恐怖》や《グルマグのアンコウ》《つぶやく神秘家》のようなクリーチャーは放っておくと一瞬でゲームを終わらせてしまうため、的確に除去していきたい対象だ。
《蒼穹艦隊の提督》や《真紅艦隊の准将》のような統治者を得るクリーチャーも複数採用されている。簡単にアドバンテージを得ることが難しいパウパーにおいて、毎ターン追加でドローできれば大きく勝利に近づくだろう。もちろん相手に奪われるリスクも兼ね備えている。しかしゲーム終盤に手札を膨らませたイゼットコントロールから統治者を奪うことは、そう簡単なことではない。
青単テラー (使用者9名)
イゼットコントロールと並び使用率3位となったのは青単テラー。《きらきらするすべて》と同じく『統率者マスターズ』で《謎めいた海蛇》が”コモン落ち”したことで生まれたデッキだ。それまで主流だったディミーアテラーと異なり、青単になったことでよりテンポを意識したデッキとなっている。
レガシーフォーマットでお馴染み《秘密を掘り下げる者》は、青単デルバーでも優秀なダメージ効率を誇るアタッカーだ。《渦まく知識》や《思案》で能動的に変身させ、序盤からライフを詰めていくプランも取ることができる。
最速3ターン目から展開される《謎めいた海蛇》と《トレイリアの恐怖》は、一瞬でゲームを終わらせてしまうパワーがある。5/5と6/5の高スタッツクリーチャーを早いターンから連打していくことがこのデッキの強力な勝ちパターンだ。
《ロリアンの発見》はパウパーの青いデッキに革命をもたらしたとも言えるカードだ。デッキの土地枚数を切り詰めることを可能にし、ゲーム序盤のマナトラブル回避、《渦まく知識》後のデッキシャッフル手段、後半は5マナ3ドローで息切れ防止……ゲームの最後まで腐ることがない。
おわりに
『第6期パウパー神挑戦者決定戦』のメタゲームブレイクダウンはいかがだっただろうか。最多勢力はカルドーサレッドだったものの、どのアーキタイプの使用率もバラつきがあり多種多様な環境であると言えるだろう。
ショップのストレージに入っている安価カードや、昔遊んだまま自宅の押し入れに眠っているカードが活躍できるのがパウパー最大の魅力でもある。気になったデッキを気軽に組んでみたり、複数デッキを組んで友人を誘ってみたり。この記事がそのきっかけになってもらえたなら幸いだ。