はじめに
こんにちは。スタンダード・パイオニア担当の紳さんです。
先日、「プロツアー『カルロフ邸殺人事件』」が行われ、パイオニア界に「ラクドス吸血鬼」という新たな有力デッキが誕生しました。
これからパイオニア環境はどのように変わっていくのでしょうか。最新の大会結果をお伝えします!
2/25(日)プロツアー『カルロフ邸殺人事件』
多くのプロ選手たちも参加した世界最高峰のイベント、プロツアー『カルロフ邸殺人事件』の大会結果です。
プロツアー『カルロフ邸殺人事件』 結果
優勝 ラクドス吸血鬼
準優勝 ボロスヒロイック
トップ4 アブザン探検
トップ4 ロータスコンボ
トップ8 ラクドス吸血鬼
トップ8 イゼットフェニックス
トップ8 イゼットフェニックス
トップ8 ロータスコンボ
【入賞デッキリスト】
優勝は殿堂プレイヤーのセス・マンフィールド選手で、チーム調整デッキであるラクドス吸血鬼を使用し、見事に新たなトロフィーを手にしました。
セス選手はこれで自身2度目のプロツアー制覇(2017年プロツアー『イクサラン』優勝)となり、世界選手権2015優勝を筆頭にプレミアイベント9勝目という快挙を成し遂げています。
優勝 「ラクドス吸血鬼」
プロツアー優勝をきっかけに大フィーバーしているラクドス吸血鬼のリストです。
もともと黒単だったようですが、チームで調整した結果、《鏡割りの寓話》を入れることでかなりデッキの回りが安定したようです。
《鏡割りの寓話》から出るゴブリン・シャーマントークンが生き残れば宝物によるマナ加速から《血管切り裂き魔》にもつながりますし、変身後の《キキジキの鏡像》は《税血の収穫者》とのコンボが強力です。
ほかにも、従来のラクドスミッドレンジで採用されていた実績のあるカードたちがデッキの骨子となっております。ダメージリソース(フィニッシュ手段)が吸血鬼に集約されたラクドスミッドレンジ、というイメージのデッキです。
《傲慢な血王、ソリン》は《血管切り裂き魔》を踏み倒すだけのカードではなく、各[+1]能力は《変わり谷》をフィニッシャーに変えてしまうほどの強さです。「絆魂」でライフレースを逆転する場面も何度もありました。
《薄暮軍団の盲信者》はカードパワー的にかなり怪しいと感じてしまいますが、プロツアー優勝の実績を前にしては疑念が吹き飛ぶというものです。
メイン採用の《魂の洞窟》はアゾリウスコントロール対策、サイドボードの《虚空の力線》《減衰球》はそれぞれイゼットフェニックスやロータスコンボを封殺しえる対策カードでした。
トーナメントでの実績がないデッキながら、メタゲームを見事に読み切った素晴らしい優勝です。今後のパイオニア環境を変えるデッキとなるでしょうか。
準優勝 「ボロスヒロイック」
グランプリ優勝経験もある、デンマークの超強豪プレイヤー、サイモン・ニールセン選手が使用したボロスヒロイックのデッキリストです。
とてもオーソドックスな構築のボロスヒロイックですが、気になるのは「アブザン探検にどうやって勝つのか」ということです。
ライフ回復されながらブロッカーを戦場に出され、やがては即死級コンボを決められてしまうアブザン探検とはとても相性が悪く、メタゲーム的にボロスヒロイックの立ち位置が良いわけではありませんでした。
しかし、ボロスヒロイックには4枚採用の《ロランの脱出》というとっておきの対策がありました。《野茂み歩き》に破壊不能を付与することで、《アマリア・べナヴィデス・アギーレ》とのコンボが成立したとしても永久にループして処理が終わらないことでゲームに勝てはしないまでも引き分けにすることができます。
これにより、アブザン探検相手にはブン回ったときは勝ち星を掴み、勝てないゲームは引き分けにしてやり直すというウルトラCを使い、なんとか乗り越えられるデッキとなっております。
時間制限のあるスイスラウンドではゲーム自体が引き分けとなる可能性がありますが、決勝トーナメントに進めば問題はありません。事実、プロツアー準決勝では引き分けを2回挟んでの7戦目に勝利し、最終的に準優勝という素晴らしい成績を残しました。
一瞬の爆発力が魅力のデッキですが、サイド後は《スカルドの決戦》を4枚投入してロングゲームでも勝ちきれるプランが用意されています。
不利マッチを克服し、ボロスヒロイックはまだまだ高みを目指せそうです。
2/24(土)『Pioneer Challenge 64』
つづいて、69名が参加した『Pioneer Challenge 64』の結果です。
『Pioneer Challenge 64』結果
優勝 アゾリウススピリット
準優勝 不屈の独創力
3位 ラクドス吸血鬼
4位 ラクドス吸血鬼
5位 イゼットフェニックス
6位 ラクドス吸血鬼
7位 ラクドス吸血鬼
8位 ラクドス吸血鬼
【入賞デッキリスト】
この大会はプロツアーの結果が出る前に開催されましたが、プロの調整チームがこぞって持ち込んだという情報はあっという間にパイオニア界隈を席巻し、ラクドス吸血鬼が大フィーバーしています。
しかし、そんなラクドス吸血鬼を退けて優勝したのはアゾリウススピリットでした。
優勝 「アゾリウススピリット」
いかにしてラクドス吸血鬼に勝利したのか。注目のデッキリストがこちらです。
パイオニアのクロックパーミッションといえば、真っ先に思い浮かぶのがスピリットです。
『カルロフ邸殺人事件』で《喝破》を手に入れ、打ち消しに磨きがかかりました。《至高の評決》はどうにもなりませんが、禁止解除された《密輸人の回転翼機》で少し耐性が上がっています。
メインとサイドに採用された《ドーンハルトの殉教者、カティルダ》はプロテクション(吸血鬼)という、時代の最先端をいく対策カードです。ラクドス吸血鬼側は《致命的な一押し》や《苦々しい勝利》をタイミングよく合わせない限り、対処がかなり難しくなります。
『イクサラン:失われし洞窟』以降、パイオニアでも《魂の洞窟》が使えるようになり、スピリット系のデッキは立ち位置が悪いと感じていましたが、4枚フル投入された《呪文捕らえ》は《魂の洞窟》の影響を受けずにクロックパーミッション完遂を大きくサポートします。
このままラクドス吸血鬼がトップメタになるようであれば、《ドーンハルトの殉教者、カティルダ》の採用枚数が増えてさらに活躍するデッキかもしれませんね。
準優勝 「不屈の独創力」
《不屈の独創力》に新しくジェスカイというアーキタイプが誕生したようです。
パイオニアの《不屈の独創力》といえば、《マグマ・オパス》や《プリズマリの命令》で宝物・トークンを出し、それらをタネに《歓楽の神、ゼナゴス》や《世界棘のワーム》を戦場に出すコンボ系のデッキが思い浮かびます。
しかし、『カルロフ邸殺人事件』で再録された《稲妻のらせん》でアグロ対策ができるようになった影響でしょうか。除去・打ち消し・ドローで盤面をコントロールしながら、ゆっくりと《不屈の独創力》を唱えて《偉大なる統一者、アトラクサ》につなげるコントロール寄りのデッキが今回、入賞しています。
デッキ構成的にもアゾリウスコントロールがベースとなっているようですが、《鏡割りの寓話》が4枚採用されているなど、かなり最先端な試みであることは間違いありません。
ちなみにジェスカイカラーで《山》をコントロールするため、《岩への繋ぎ止め》が無理なく採用できるようです。アゾリウスコントロールよりは除去能力が高そうではありますが、《不屈の独創力》のトリプルシンボルをスムーズに唱えられるのかどうか、少し心配ではあります。
赤マナトリプルのほかにも白マナダブル、青マナダブルも多用しているため、手札の呪文と土地の噛み合いが求められそうです。
《不屈の独創力》以外にも勝ち手段がたくさんあり、使っていて楽しそうなデッキではあります。今後の活躍に注目です。
おわりに
今回、『カルロフ邸殺人事件』で《血管切り裂き魔》という最高の相棒が見つかり、見事にトップメタへと昇格した吸血鬼デッキですが、もともとファンの間では《蒐集家、ザンダー卿》や《ガルタとマーブレン》を3ターン目に出す試みが粛々と行われてきました。
こういった積み重ね(?)があり、プレイヤーたちの間で《傲慢な血王、ソリン》のポテンシャルが評価され続けてきたからこそ、今回のプロツアー優勝へとつながっているのだと思います。
マジックは一日にして成らず。みなさまが信じて使い続けているカードのなかにも、いつか華々しい舞台で活躍するものがあるのかもしれません。
ラクドス吸血鬼の快進撃はどこまでつづくのでしょうか。それではまた!