はじめに
みなさん、こんにちは。パイオニア・スタンダード担当の紳さんです。
先日、プロツアーが終わってひと段落がつきました。『カルロフ邸殺人事件』のカード評価もかなり定まり、いよいよ本格的に環境デッキを定義するための戦いが始まっております。
それにしてもマジックのカードは使われてみないとわからないものですね。
評価通りに活躍するカード、まったく使われずに評価が下落するカード、予想よりはるかに活躍するカードが毎回のように出てきます。
『イクサラン:失われし洞窟』のときもそうでした。ただ、《分派の説教者》のように少し時間をおいてから評価が爆上がりするカードが『カルロフ邸殺人事件』にも眠っているかもしれません。
それでは、最新のスタンダード大会結果をチェックしていきましょう!
2/25(日)『The Pizza Box Open』
まずは119名が参加した『The Pizza Box Open』の結果です。
『The Pizza Box Open』 結果
優勝 エスパーミッドレンジ
準優勝 赤単
トップ4 ナヤアグロ
トップ4 アゾリウスコントロール
トップ8 ジェスカイコントロール
トップ8 ディミーアリアニメイト
トップ8 ゴルガリミッドレンジ
トップ8 アゾリウスミッドレンジ
【入賞デッキリスト】
優勝はエスパーミッドレンジ、準優勝は赤単でした。
それはともかくとして、
少し珍しいデッキが3つほど入賞していたので、順に紹介していきます!
スイスラウンド1位 「ナヤアグロ」
スイスラウンドを1位通過し、トップ4入賞を果たしたナヤアグロのデッキリストです。
ほとんどのカードが1~2枚挿しで、明確な狙いや意図を汲み取ることが難しかったのですが、おそらくレジェンドクリーチャーの単体性能に注目したアグロデッキなのだと思います。
レジェンドクリーチャーは通常のクリーチャーに比べて戦場に1枚しか出せないというデメリットがある代わりに、ややスタッツや能力に恵まれたデザインがされています。そこに目をつけ、レジェンドクリーチャーを多用する代わりに種類を散らすことでデメリットを回避しようとしたのではないでしょうか。
デッキ内で唯一、4枚採用されている《熊野と渇苛斬の対峙》からは「アグロ戦略で勝つ」という強いメッセージ性を感じました。それにしては土地が25枚と多いのが気にはなりますが、《皇国の地、永岩城》が3枚採用されていることから「魂力」土地をやや呪文よりにカウントしているのかもしれません。
レジェンドクリーチャーが多いため、《皇国の地、永岩城》をかなり強く使えそうですね。
速攻を持つor速攻を持たせるクリーチャーも採用されており、《太陽降下》などで盤面をリセットされた返しにもなんとかライフを詰めきれる構成にはなっているようです。
メイン、サイド合わせて3枚採用された《スレイベンの守護者、サリア》はランプやコントロール系のデッキに刺さります。かなり緻密な計算によって組まれているデッキなのだと感じました。
総じてカードパワーが高く、使っていて楽しそうなデッキです。エスパーレジェンドなどもたまに見かけますが、こういった面白いデッキが今後も大会で活躍することを期待します!
注目デッキ 「ジェスカイコントロール」
トップ8に入賞したジェスカイコントロールのリストです。
アゾリウスコントロールと共通のカードを多数採用した上で、《稲妻のらせん》を4枚採用できるのが強みのアーキタイプです。苦手な赤単に対する勝率がかなり変わってきます。
また、通常のコントロールよりもやや攻撃的で、《金属の徒党の種子鮫》がメインから採用されているのは珍しいです。
コントロール対面のときにはクリーチャーで攻めたてることに勝機を見出し、《稲妻のらせん》をすべてプレイヤーに向けて撃つことができるため、このアグレッシブな構成が活きるのでしょう。
サイド後はさらに追加のプレインズウォーカーや《船砕きの怪物》などでコントロールをメタっています。
さまざまなゲームレンジに対応できそうなデッキですが、アゾリウスコントロールと比べて全体除去の枚数が少なく、《稲妻のらせん》で落とせない《策謀の予見者、ラフィーン》《分派の説教者》《名もなき都市の歩哨》を採用したミッドレンジに苦戦するかもしれません。
しかし、赤単に勝てるコントロールはとても魅力的です。ジェスカイコントロールの今後に注目しましょう。
注目デッキ 「ディミーアリアニメイト」
おなじくトップ8に入賞したディミーアリアニメイトのリストです。
リアニメイト対象は《陰謀の解明者》《偉大なる統一者、アトラクサ》という常連に加え、《碑出告と開璃》が追加されています。5マナというコストはだいたい釣り上げにかかるコストと同じため、もはや通常キャストすることを視野に入れた上での採用でしょう。
墓地にクリーチャーを埋める手段が豊富にありますが、4枚採用された《蒐集家の保管庫》がメインのパーツとなります。ルーティングしながら宝物・トークンを出せるため、早いターンでリアニメイトを成立させる場合やクリーチャーを通常キャストするために役立つ点は《蒐集家の保管庫》ならではです。
また、《漆月魁渡》はサイド後に登場する《大洞窟のコウモリ》と相性がよく、単なるルーターからドローエンジンへと変貌を遂げる点が面白いですね。
採用されているカードを見る限り、リアニメイトに全振りしたデッキではなく、ディミーアコントロールに墓地利用シナジー要素が足されたようなデッキであることがわかります。
とくに《黒の太陽の黄昏》でクリーチャー除去をしながらリアニメイトもついでに狙うというアイディアは面白いですね。
思えば、《蒐集家の保管庫》は『エルドレインの森』発表当時に「《勢団の銀行破り》の再来だ!」と騒がれたカードですが、これまでとくに活躍したことはありませんでした。このデッキが改めて《蒐集家の保管庫》の正当な評価を勝ち取ることになるかもしれません。
2/25(日)『Standard Challenge 64』
それではつづいて、78名が参加した『Standard Challenge 64』の結果です。
『Standard Challenge 64』 結果
優勝 赤単タッチ緑
準優勝 エスパーミッドレンジ
3位 エスパーコントロール
4位 ゴルガリミッドレンジ
5位 ゴルガリミッドレンジ
6位 ボロス召集
7位 版図ランプ
8位 ボロス召集
【入賞デッキリスト】
ボロス召集、エスパーミッドレンジ、ランプにコントロールとトップメタのデッキがひしめくなか、優勝したのは赤単タッチ緑でした。
優勝 「赤単タッチ緑」
優勝したデッキリストです。
《騒音の悪獣》は生け贄でダメージのダブルアップが狙え、《逃走する暗号破り》は果敢を持ち、《探索するドルイド》は緑以外の呪文を唱えるたびにどんどん強くなる一撃必殺性があります。
また、《逃走する暗号破り》と《探索するドルイド》は状況次第でリソース回復手段としても使える有用なカードで、ロングゲームでもある程度は戦えそうです。
強化したクリーチャーのダメージを確実に通すために、パワーを上げつつトランプル付与をするカードが計8枚採用されております。
これらの呪文はインスタントタイミングの除去に弱いため、かなり慎重なプレイングが求められることでしょう。
ちなみに、このデッキの方向性ならば《ロノムの発掘家、フェルドン》よりも《ピクニック荒らし》の方が強そうに見えますが採用されておりません。いざというときに速攻があるかないか、とても重要なポイントなのでしょう。
- 2024/1/26
- グルールアグロ
1マナクリーチャーを強化呪文でバックアップ
余談ですが、今回のデッキを「グルールアグロ」ではなく「赤単タッチ緑」としたのは、《ピクニック荒らし》や《タイヴァーの抵抗》が採用されていなかったことが大きいです。
緑をタッチしたことで赤単ながらサイド後に《一時的封鎖》を対処することも可能です。また、《毒を選べ》は万が一《偉大なる統一者、アトラクサ》を出されてしまった場合にも対処可能で、1マナなんて信じられませんね。
《ウラブラスクの溶鉱炉》はもはやおなじみの最強サイドボードカードですが、《騒音の悪獣》を生け贄に捧げたときの「増殖」で強化されるところに芸の細かさを感じます。
狙いがわかりやすく、とてもシンプルにまとまったデッキで今回の優勝もうなづけます。
しかし、《巨怪の怒り》や《祖先の怒り》をいかに安全に唱えるか、ダメージが通った《騒音の悪獣》を生け贄にするか否か、《逃走する暗号破り》と《探索するドルイド》は序盤から展開するべきか、温存するべきか、などなど悩むポイントも多いことでしょう。
総じてプレイングが難しいデッキという印象ですが、とても練習しがいがありますね!赤単の新しいバリエーションを求めている方にオススメです。
おわりに
ジェスカイコントロールや赤単タッチ緑など、やや変わったアーキタイプが入賞していることに環境の変化を感じる一方で、赤単・エスパーミッドレンジ・版図ランプのいずれかのデッキが勝ち続けているという印象もあり、『カルロフ邸殺人事件』登場による劇的な変化をまだ感じずにいます。
そろそろ新メカニズムの「変装」「偽装」を有効活用した地雷デッキが豪快に勝ってくれるのではないでしょうか。とくに《火炎術の演出者》はなにかしでかしそうな雰囲気が漂っているので、注目したいですね!
パイオニアのラクドス吸血鬼につづき、スタンダードにも新しい風が吹きますように!それでは、次週の大会結果もお楽しみに。